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第5話 炸裂!怒りのダイノパワー!!後編 投稿者:クローンウィング 投稿日:10/06-23:27 No.1410  

麻帆良の地に現れた魔人、メッツラー。
そして立ちはだかる2匹のティラノサウルス。

いま、あまりにもスケールの大きい戦いが3-Aの少女たちの前で展開されようとしていた。

「行くぜテラァ!!」

半ば巻き舌になりながら爆竜ティラノが猛然と体当たりをかける。
文字通り、捨て身の一撃だ。
食らえばただでは済まない。

「馬鹿が!そんな真正面からの攻撃に当たるか!」

だが、メッツラーは闘牛士の様に、ひらりとティラノの攻撃をかわした。
彼は隙だらけの赤い背中に自分の眼を向ける。

「そら、お返しだ!メッツラービー…」
「させるか!」

アームドティラノの叫びとともに守護獣ティラノサウルスが後ろから迫る!
全体重をかけた体当たりだ!
ドォォンと音を立て、衝撃が大地に響く。
重さ96トン、時速120キロで迫るそれは文字通りの必殺。
メッツラーは強風に煽られる紙くずの如く、弾き飛ばされた。

「やったー!」

地上で観戦していた少女達が叫ぶ。

「…ぬぅうん!」

だが、一方のメッツラーも転んでもただでは起きない。

「くらえ!」

彼は倒れたままの姿勢から、マジックハンドで守護獣ティラノの足を掴み、ひっくり返す。

「くそっ!」

足を取られ、起き上がろうとする守護獣ティラノ。
だが、

「ふん!」

魔人が容赦なく、地面に伏した守護獣の胸を蹴り上げた。
愉悦を顔に浮かべながら、彼は何回も蹴り続ける。

「ぐぁぁ!」

うめく守護獣。
そして、搭乗者のアームドティラノレンジャー。

「ゲキ先輩!」

爆竜ティラノは2人に駆け寄ろうとした。
だが、メッツラーは背後を見もせずに右手を後ろに伸ばす。
彼の感覚器官は巨大化する際にパワーアップされたらしい。
マジックハンドは正確にティラノの頭を直撃した!

「がぁ!」
「ふん、弱いな」

ことばを吐き捨てメッツラーは立ち上がる。
先ほどの守護獣ティラノの体当たりも効いていない。
巨大化することで上がったのは感覚だけではなかった。
防御も、そして攻撃も、巨大化する前とは桁違いだ。
そして、彼はその妖しい魔眼を爆竜ティラノたちに向ける。

「これで終わりだ!メッツラービーム!」

閃光…光の槍は寸分違わず守護獣をかばった爆竜の胸部を打ち抜いた!!

「テラァァ!!」

彼らは地に付す。
あの攻撃を食らって体が砕けないのはさすがというところか。

「…ティラノ…おい、ティラノ?」

アバレッドが声をかける。
だが爆竜は答えない。
ティラノの目は輝きを失い始めていた。

「…テ…ラ」
「ここまでだなぁ!そもそも人間が我々に刃向かう時点で明日は無かったんだ。諦めろ!」

ぎりっ…自分の相棒を気遣う際に吐き捨てられた無粋な言葉。
不快なその言葉に、アバレッドはマスク越しに歯を噛み締めた。

「くっ…俺たちは皆の思いを背負っているんだ!負けられるかぁ!!」
「…そう…だ…テラ」

相棒の声を聞き、再び爆竜は立ち上がろうとする。
だが、彼は足を動かすことが出来ない。

「俺たちの心で熱く燃えるこの想い…ダイノガッツがある限り…決して負けはしない!!」

守護獣はなんとか立ち上がる。
ただ、彼らもすでに足はふらつき、満身創痍だ。

一端回避したはずの危機が再びヒーロー達に襲い掛かってきた


Side 3-A

「た、大変です!」

戦況を見守っていたのどかたちが悲鳴を上げた。
超とハカセはダイノ伝記をめくり続ける。

「おかしいネ。あの二体は爆竜、守護獣の中でも単体で戦えるほどの攻撃力を持っているはずなのに…」
「それだけあの怪人…メッツラーが桁外れなんでしょう」

そして、2人が話をしているその脇で杖に寄りかかりながら一人の少年が立ち上がり、空に飛び立とうとした。

「兄貴!何してんだ!そんな体で」
「とめないでカモ君!ティラノさんたちを助けなきゃ……!」

ネギ・スプリングフィールド。
彼は自分の命を懸けて魔人の進行を止めようとする。
だが、その言葉に、カモだけでなく周りの人全員が止めに入った。

「無茶です!あんな巨大化した化け物に立ち向かうなど…」
「そうだぜ兄貴!大体、ティラノの旦那達ですら苦戦してるのにどうやって俺たちが戦うんだよ!」

夕映とカモの静止を振り切り、ネギは飛び立とうとする。

「ここで行かなきゃ…もうあの怪人を止められなくなります。僕じゃとどめを刺すのは無理だろうけど、隙を作るくらいなら…」

ネギはこの状況において尚、諦めようとしなかった。
その瞳はどこまでも澄んでいて、そして紛れも無い闘志が浮かんでいる。
彼の中のダイノガッツは再び燃えていた。

「先生…」
「ネギ君…」
「ネギ坊主…」

夕映、ハルナ、超がネギの固い決意とその眼差しに思わず押し黙る。
そして、そのネギの決意は2人のダイノヒーローとティラノサウルスたちにも届いていた。

(…なんだ、テラ?)

爆竜ティラノは、意識が混濁する中で、聞き覚えのある声を聞いた。
自分が気に入った少年の声だ。

「とめないでカモ君!ティラノさんたちを助けなきゃ……!」
(バカ…ネギ、お前は早く、逃げろ、テラ)
「ここで行かなきゃ…もうあの怪人を止められなくなります。僕じゃとどめを刺すのは無理だろうけど、隙を作るくらいなら…」
(だから、逃げろ…と言ってるじゃねぇか、テラ)

そして、もう一人、自分に呼びかけている者がいる。

「ティラノ!目を覚ましてくれ!!このままじゃ街の人たちが…」
(分かっているテラ、凌駕。すぐ立ち上がるからちょっと待ちやがれテラ)

彼は、立ち上がろうとした。
いや、足に力を込めようとした。
だが…動かない。
自分の体が限界を迎えている。


…以前にもこんな時があった。

まだ凌駕と出会う前、ダイノアースにいたころ、自分が一人で出撃したときのことだ。
アイツに助けられ、体に格納されてから唐突にあの野郎…ブラキオは聞いてきた。

(お前に戦う理由はあるか?ブラ)

どうにも、説教くさいやつだった。

(何のために戦うブラ?)

…じぶんが戦う理由。

(復讐のためかブラ?)

それもあるだろう
だが、自分は…復讐だけではない。

きっとそれは…。

「俺はこれ以上、子供が死ぬとこを見たくねぇんだ、テラ。だから俺は戦うテラ」

それは、竜人の子供でも爆竜の子供でも同じ。
人間だっておんなじだ。

「…心なき正義では何も守れないブラ。守るべきものが、動けぬお前を立ち上がらせるブラ」

(…しゃくだが、その通りだテラ。こういう時、お前の言葉が浮かんでくるのは何でだろうな?テラ)

足に力を入れる。
今度は動いた。
尻尾で体を支える。
…大丈夫だ。自分はまだ、戦える。

(俺は一人じゃないテラ)

自分の体内にいる相棒を、後方にいる先輩を、そしてダイノガッツをもつ少年を見て、

「ここから先は通さねぇ、ぜってぇ皆を護ってみせるテラ!!」

ひときわ大きな声で、ティラノサウルスは吠えた!





「凌駕、爆竜…」

アームドティラノは、前を見た。

「ティラノザウルス…」

目の前の、後輩が立ち上がる様を見る。
彼の姿はぼろぼろだが、とても眩しい。

「ティラノサウルス!俺たちも、まだ戦えるよな?」

その言葉にティラノサウルスは吼える。

「そうだな、後輩ばかり戦わせては先輩の面目がたたない…行こう!!」



2体の紅蓮の竜。
彼らは立ち上がる。
どれだけ傷つこうとも。





「…」

ネギは黙って見ていた。

2体の竜が立ちはだかり、自分達を護ろうと立ち上がる。

「先生、ここに居ては彼らの邪魔になります」

逃げましょう、と 夕映はことばを続けようとしてその言葉を飲み込んだ。
ネギは、唇を噛み締めていた。
そこからは一筋の血が流れている。

「みなさん…僕は」

ネギは葛藤していた。
自分の身を案じて、爆竜は逃げろと言った。
自分は生徒達を引き連れ逃げるのが筋なのだろう。

「でも…、でも!僕は!」

たとえ、微々たるものでも力になれるならその力を存分に振るいたい。
自分の大切な存在がただ傷つけられるのをこのまま見ているのは…あまりにも辛い。
京都で、自分の非力さを痛感した。
大勢の人々を危険な目に合わせた。
だから、自分は

例え、敵わないと分かっていても

それでも―――彼らの力になりたい―――!!


少年の思いはあまりに真摯だった。
そして、その想いにこたえようとするものがいる。
それは、一冊の書物を通してつながっている一台のスーパーコンピューター。

戦士の息吹に答え、
オリジナルアーカイブは新たなデータを開放する!


初めは一条の閃光だった。

ダイノ伝記から溢れるその光はネギの杖に注がれる。
己の中のダイノガッツが命じるままに、ネギはそれを天に掲げた。

ダイノ伝記が再び輝き、かってにページをめくりだす。
そこには1体の恐竜が印刷されていた。

その名をパキケファロサウルス。


だが、それは彼の真の名ではない。

彼は、ネギと同じく、その群れの中で一番年下だった。
皆が戦っている時、ただ見ていることしか出来なかった時期があったのだ。
だから、少年の苦悩が理解できた。
何より、護りたいと言うその意思、戦いたいと願うその熱い想いは彼を従えるのにふさわしい。

故に、ネギ・スプリングフィールドは竜を従えて戦う。
幻想種のドラゴンではない。
その竜はパキケファロサウルスが超ハンマー進化し、攻撃に特化した爆竜。
彼の拳は、全てのものを粉砕する!!
その名は――!!

「現れよ!爆竜バキケロナグルス!!」

一条の閃光は天に吸い込まれ、雷となって大地に降り注ぐ!!
太古の力…勇気のDNAが麻帆良に光臨した!!

「な!?あらたな爆竜だと!?」

現れた竜を前にメッツラーが動揺する。

「バキケロ!!」

アバレッドが叫ぶ。
目の前に現れたのは確かに自分の仲間だ。
金色の拳、紫色のメタリックな体。
一度見たら間違いようの無い。
スティラコサウルスの力でなければ呼び出せないはずの彼をネギはこころの叫びにより召喚したというのか。

その推論を肯けるように、証拠に彼の足元には1つの魔方陣。
陣自体は簡素なもので円の中に竜のマークが描かれているだけ。
アバレッドの胸のマークによく似ている。
だが、そのマークに映し出されているのはティラノサウルスではない。
ネギのダイノガッツに応えた竜が彫られているのだ。

即ち、爆竜 バキケロナグルスが!

「この陣から漏れてる魔力は…ひょっとして仮契約のか!?」

カモが呻いた。
人間の魔法使いと恐竜が仮契約なんてとんでもない話だ。
キスを行わない仮契約は確かに存在する。

だが、こんな方法は聞いたことが無い!

ドラゴンを使い魔に従えた賢者の話なら聞いたことがあるが、いくらなんでもこれは…。

「…お願いします!バキケロナグルスさん!!貴方の力を貸してください!!」

一方のネギは陣の中にいる竜に頭を下げる。
そして、その返事はメッツラーを除き、全員が待ち望んでいたものだった。

「水臭いバキ。ネギ君、今の召喚を兼ねた契約であっしたちは一心同体。これから先は苦楽を共にする仲間バキ。なので、あっしのことは気軽にバキケロと呼んで欲しいバキ!」

その言葉とともにネギの手の中に一枚のカードが現れる。
そこにはポーズを決める爆竜とラテン語の文字。

『拳打の竜戦士』

そこにはそう書かれていた。
そして、そのカードを握り締め、ネギはメッツラーを見据える。
そこには10歳の少年とは思えないほどの凛々しさがあった。
ネギは感じる。
そのカードを通して目の前の爆竜の熱き想い…ダイノガッツを!!

「ティラノさん!僕も戦います!!」

ネギは杖を構える。

奇跡…ヒーロー達が現れたのも奇跡なら、今、ここでネギの新たな従者が現れたこれもまたミラクル。

いや、それはもう必然だったのかもしれない。
魔法の根本にあるのは勇気。
そのちいさな体に溢れんばかりの勇気を詰め込んだその少年に、ダイノガッツが応えないはずが無い!!


先ほどみたいに単身突貫をするわけではない。
今は、大事な人を誰一人失わずに勝利する道がある!!

「……ええい!!でかいトカゲが一匹や二匹増えたところで勝負が変わるか!!来い!まとめて叩き潰してやる!!」

その言葉に2体のティラノサウルスが立ち塞がる。
その右手にはバキケロが。

さらにその後方にはネギが。


状況が次々とひっくり返る中、ついにメッツラー編がその幕を閉じる!



そして次回、君はアバレンオーでも大獣神でもない巨人を目にする!!


次回 麻帆良レンジャーズストライク!!



第6話 新たなる力!恐竜王光臨!!



今回の新規登場


爆竜 バキケロナグルス

ネギのダイノガッツにより召喚された爆竜。
硬い頭と拳を武器に、戦う。
本人曰く、「向こう見ずの元気」がとりえらしい

麻帆良レンジャーズストライク!! 第6話 新たなる力!恐竜王光臨!!

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