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Episode7 ガンスリンガー・ボーイミーツガール 下編 投稿者:クローンウィング 投稿日:10/30-21:55 No.1537  

「…!!こちらスナイプ1!聞こえるか?エリアA21で敵を確認した!これより迎撃を開始する!」

龍宮はヘッドフォンについているマイクにそう叫ぶと、ライフルの照準を化け物たちに合わせた。
轟音とともに弾丸が打ち出され、ヒドラー兵を次々に射抜いていく。
恐ろしいことに一発の銃弾で彼女は二体以上のヒドラー兵を打ち抜いていた。

「そこの君!早く逃げろ!!」

麗しのスナイパーはそう言いながら、ヒドラー兵に襲われている少年に屋上から声を掛けた。
だが、一方の少年は腰が抜けてしまったらしい。
地面に倒れたまま、手だけを振りまわしている。

「くそっ!」

柄にもない悪態をつきながら、彼女は屋上からロープを使い地面に下りる。

(近いうち、麻帆良に現れる怪人たちを倒し、多くの命を助けて欲しい。今回の依頼、金に糸目をつけるつもりはないヨ。事が終わたら好きな金額をこれに書いて渡してくれればいいカラ)

ざぁぁぁ!と縄と黒い革のグローブが擦れる音を聞きながら
大学部の校舎を滑り降りる際に自分に小切手と謎のカードを渡したクラスメイトを思い出す。

「…なるほど、珍しく太っ腹だと思ったらそういう訳か。納得したよ。超」

特殊部隊も真っ青な技能を見せ、龍宮は大地へ降り立った。
脇に下げたホルスターから二丁の拳銃を抜くと、彼女はそれをヒドラー兵に向け放つ!
襲いかかってきた青い怪物は苦悶のうめきを上げながら大地へと還っていく。
だが彼女は油断していた。
本来ならありえないミスだ。
それは姿を表す際に魔力を感じさせなかった。
故に『シュル…』と音を立てた瞬間には、地面を突き破り、少女に猛然と襲いかかる!!

「な!?」

龍宮真名はその悪しき手に拘束されてしまう。
なす術は無かった。


「♪~」


背後で恋歌が聞こえる。
あの少年。

彼が…ヒドラー兵を引き連れた本体だったのだ。

「くっ…ぐぅ!!」

自分を縛り付ける紐に力が込められる。
龍宮は正面を向かされた。

吐き気を催すような、不気味な体躯がそこにある。

首の上には巨大な円環とその中の不気味な一つ目。
おそらく、それが頭部なのだろう。
その頭部から幾本も口をつけた触手や目をつけた触手が伸びてそれぞれが意思を持つようにウネウネとうごめく。

「…私、紐男爵。貴方の命、いただく」




Side MAGI

「超さん。龍宮さんから通信!……DAが襲撃してきています。場所は………ここの隣!?」
「な!?」

ハカセの緊張した声が響く。
全員が最後の言葉に窓を開き、その景色を見た。

なんと、3-Aの生徒、龍宮真名がハカセの言葉通り、怪人と戦っている!

しかも一方的にやられているのだ。

「急ぐぞ!」

ゲキを筆頭に何人もの魔法使いたちが、扉を開けようとするが…突如、それを制する声が響いた。

「全員動くな!」

それは一体のコウモリから発せられていた。
そいつは天井に張り付いていたが、ゆったりとテーブルに舞い降りる。
一体いつの間にもぐりこんでいたのか?

「全員無駄な抵抗を止め、おとなしくしろ」

えらそうなコウモリに何人かの魔法使いたちがカチンと来たらしい。
杖を振り上げようとするが、それより先にコウモリが衝撃の言葉を紡いだ。

「変な行動を起こしてみろ。この機械コウモリ・・・『メカバット』を経由してこの建物を爆破するぞ!」
「「「「「「「「「「な!?」」」」」」」

驚く魔法使い達を尻目に機械コウモリの口を通じ、アブレラは愉快そうに言った。

「この建物の数箇所に私の部下が爆弾を仕掛けさせてもらった。君達の命は私の手の上だ。だが、君たちが私の願いを聞いてくれるなら、爆破はやめてやろう」
「願いだと…?」

ガンドルフィーニがまだ直りきっていない傷を抑えながら問う。

「そうだ。何、たいしたことではない。君たちはそこで事の成り行きを黙ってみていてくれればいい」
「ふざけるな!あの少女を見殺しにしろというのか!」

ゲキが龍宮を指差しながら吼える。
彼の中にある正義がそれを許すはずも無い。
だが、下手に動いたらもっと大勢の人々が傷つく。

「皆…ヤツの言うとおりにして欲しい」
「超さん!?」

超が黙って椅子に座った。
だが、その瞳は油断無くメカバットを見据えている。

「ダイジョウブ。真名は助かるヨ」

その言葉にハカセ以外の全員が驚愕する。
いや、メカバットだけは嘲笑した。

「ふざけるな。少々銃器の扱いが得意なだけの人間にDAの怪人が倒せるものか」
「そうだろうネ。彼女だけなら無理だろう。でもネ、どこの世界でも……ヒーローは遅れてやってくるものなんダヨ?」





Side MANA

「くっ…がぁ!!」

紐が締まり、ミシミシと自分の骨がきしむ音を聞きながら龍宮は苦悶の声を上げる。

「はははは」

嫌な笑い声が聞こえる。
目の前の怪物が笑っているのだ。

「助かりたいか?女」

紐男爵はそういいつつ自分を円環の中心にある目で睨み付ける。
龍宮も何も言わずにその目を睨み付けた。

「…ダークアライアンスに入れば命は助けてやるぞ?」
「なに?」

目の前の怪物からとんでもない言葉が出てくる。
龍宮は自分の耳を疑った。

「仲間になれ…日給手取り『バルバン金貨20枚』、この国の通貨で2百万」

「………ハッハッハッハ!」

これほど愉快なことがあるだろうか?
こともあろうに化け物から『仲間になれ』ときたものだ。
龍宮の笑いを勘違いしたのか紐男爵も一緒に笑う。

「…はははは?」
「ハッハッハ―失せろ化け物!」

がらりと声を変え、視線を鋭くし、スナイパーは一蹴した。

「私が金さえ積めば動くハイエナだと思うな。仕事人である前に私も人類。貴様らごときに貸せるような安い腕も銃も持っていない!」

「…」

ここまで反論されると思っていなかったのか、呆然とする紐の人。
だが、一瞬の内にその目に殺意が灯った。
もともと人間などという格下の存在に情けを起こしたのが間違いだった……彼はそう考え、

「ならここで死ね」

と呟くと、触手の締め付ける力を挙げる。
メキメキ…という嫌な音が彼女の体から響いた。
彼女は自分のロケットに映っている人物に心の奥で詫びる。


(…すまない…私はここまでだ)


だが、薄れ行く意識の中、彼女はおかしな音を聞いた。
それは、ファンファンファンという緊張感に満ちた音を立てながら、徐々に大きくなっていく。

そして、サイレンの音が最も大きくなった時、そのサイレンすらかき消すように一人の男の叫びが少女を救う!

「おれのパトストライカーは疾風怒濤!ってか年頃の女の子に何をしてるんだぁぁ!!」

彼の声と一台のパトカーが龍宮と怪人の間に入り、その触手を引きちぎった!!

「ぐっ………警官?」

地面に転がり、龍宮は自分を助けてくれた主を確認した。
ツンツンに逆立てた頭。
赤と黒を基調とした変わった形のスーツ。
右手に拳銃を持ち、左手には見慣れない物を掲げている。

「見つけたぞ!ダークアライアンス!!」
「…貴様、何者だ!」

紐男爵の声が響く中、彼は構える…。
宇宙の正義を示すその名は………!!

「S・P・D 絶対正義の宇宙警察だ!!」

拳銃を持ち、左手で宇宙警察官の証…SPライセンスを彼は起動する。

「エマージェンシー!デカレンジャー!!」

光と共に彼の体を覆うのは異世界『オリジナルアーカイブ』内に封印されている、形状記憶宇宙合金、デカメタル製の特殊スーツ!

「フェイス・オン!」

額に赤い閃光が輝き、彼の頭部がマスクで覆われ変身が完了する。
それは息をつかせぬあっという間の出来事だった。



S.P.D
それは「SPECIAL  POLICE  DEKARANGER」の略称である。

今ここに、燃えるハートでクールに戦う一人の宇宙刑事がいる。
彼の任務は異世界へ侵攻を開始した悪を倒し、人々の安全と平和を守ること。

「1つ!非道な悪事を憎み!!
2つ!不思議な事件を追って!!
3つ!未来の科学で捜査!!
4つ!よからぬ宇宙(異世界)の悪を!!
 5つ!一気にスピード退治!!」

警察官は五本の指全てを順々に立ててゆく。
赤いマスクの両耳の部分に灯されているハザードランプが先ほどのファンファンという警戒音と共に点滅した!

「特捜戦隊!デカレンジャー!!」

ポーズを決めるデカレンジャーのレッド。
そして、彼がポーズを決めると同時に紐男爵が襲い掛かってきた!

「ゴーマ帝国の力…ゴーマ拳法『紐拳』を食らえ!」

触手の一本一本が踊るようにデカレッドに迫る。
ある触手は自分をその濁った目で睨みつけ、
またある触手は、ケタケタと彼を嘲笑い。
空を裂き、地面をえぐる紐男爵の脅威の拳法は赤い刑事を追い詰めていく!

「っ当たるかぁ!!」

横っ飛びに紐拳を回避し、両手のディーマグナムを用いて、彼は光線を乱射する。

いや、乱射といいつつも彼が打ち出した光線はその全てが紐男爵の触手を打ち落としていた。
驚くべき技量である。

「くそ!だがまだだ!」

男爵の声と共に触手が再生された。
再びゴーマ拳法がデカレッドに襲い掛かる!!

「げ!マジかよ!?」

本気の触手はデカレッドを狙う。
さらに、紐男爵の口からとんでもない言葉が出てきた、
「攻撃をよけるな!そこの建物を爆破するぞ!これを押したら、屋内の人間は全員死ぬ!!」
「な!?」

分かりやすい爆破スイッチを見せ付ける紐男爵。
だがその脅しも、無意味に終わる。
遥か上空から響く銃声によって!

「ぁば!?」
「え!?」

紐男爵は触手の一本を抑える。
その触手が握り締めていたスイッチは見事に弾き飛ばされ、運よくデカレッドの足元へと転がる。
彼は思わず屋上を見やった。

先ほど、自分の助けた褐色の肌を持つ少女が屋上へと戻り、ライフルを悠然と構えていた。

「今だ!やつを倒せ!!」

自分の攻撃では致命傷にならないと分かっているのだろう真名はすでに次弾を打ち出し、叫ぶ。

「ありがとう!!」

デカレッドは変身する。
彼の必殺技を放つために!

「スワットモード・オン!」

その言葉と共に彼の胸部には何層にも重ねた強化プロテクター…スワットベストが。

脚部にはスワットベストと同じ装甲、レッグアーマーが。

頭部右側にはどんな痕跡も逃さないように感知システムであるカメラ、左側には通信システムであるアンテナがそれぞれ装着される。

「デカレッド・スワットモード!!」

そして、彼はSPライセンスを起動する。
SPライセンスは変身するだけの道具ではない。

その能力…それは!

「ゴーマ怪人・紐男爵!異世界侵略罪及び大量殺人未遂さらには婦女暴行未遂罪で………ジャッジメント!!」


 Judgment time!!


アリエナイザーの所属するダークアライアンスに対してはSPライセンスを通じ、オリジナルアーカイブの要請により、遥か異なる時空のかなたにある宇宙最高裁判所により判決が下される!!

そう、これがSPライセンスの機能。ジャッジモード。
銀河を渡る裁きの光。今、宇宙の正義は彼…デカレッドの手の中に示される!!
そしてその判決結果は…。

 [×

「デリート許可!!」

「まて!私、アリエナイザーじゃ…」
「残念だけど!DAの怪人はアリエナイザー、時間犯罪者に関係なく、ジャッジメント及び圧縮冷凍が適用されるんだよ!!」

デカレッドの言葉に紐男爵の動きが完璧に固まった。
どうやらショックだったらしい。

SPライセンスがスワットモード用の特殊武器 ディーリボルバーにセットされる。

「ディーリボルバー…マックスパワー!!」

デカレッドの強化プロテクターに施されている1のエンブレムが波打つように、ディーリボルバーのエネルギーゲージと側頭部左のハザードランプがそれぞれ点滅する。

「ターゲットロック………ストライクアウト!!」
「せ、せめて巨大化爆弾を……ってああ!ぎゃああ!!」

デカレッドの攻撃で紐男爵は木っ端微塵と砕け散る。
ちなみに彼の巨大化爆弾は大学部に仕掛けられた他の爆弾と一緒に紛れていた。

合掌。

バン「これにて一件コンプリート!そこのお嬢さんありがとう!」

デカレッドは変身を解除し、屋上の少女に手を振る。
かくして、紐男爵は倒れた、が…。




Side MAGI

「やった!」

ネギが拳を高く掲げる。
だが、それと同時にメカバットは窓を突き破り外へと逃げ出した!

「あ、待て!」

何人かが魔法の射手を放つ。
だが、メカバットはそれを難なくかわし遥か上空へと逃げていく。



そして………


Side DA

「おのれ、ついに現れたか…デカレンジャー!!(スワットモード)」

怨嗟の声をあげるアブレラ。
彼の脳裏には過去に儲けそこなった額の札束が羽根を付け飛び交っていた。

「だが、まあいい。紐男爵は役目を果たした。あとはブーバたちがレドン鉱石をあの火山に投げ込めばすべてのことは終わる」

彼はそういうと、立ち上がった。
既にサーガインとウルザードはこの地を後にしている。
とは言うものの、地下に本拠地を移しただけなのだが。

「せいぜい、今のうちに足掻くがいい人間共。貴様らが我らの企みに気付いたときこの地はすでに火の海だ」



そう言ってアブレラはいずこへと消える。





紐男爵は撃破したが、未だ争いの火は消えていない。
急げ!ヒーローたち!!
麻帆良崩壊の日は着々と近づいている!!


次回予告

新たに魔法使いたちの中に加わったヒーロー デカレッド。
だが、彼の歓迎をする間もなく恐るべき作戦が、DAの手によって実行されていた!!

次回 麻帆良レンジャーズストライク!!

『阻止せよ!麻帆良ファイヤー作戦!!』


新規登場

紐男爵 (五星戦隊ダイレンジャー)

ゴーマ帝国の率いる怪人。
本来彼は、巨大化爆弾と呼ばれるものを使い巨大化するのだが
今回は手放していたため、巨大化できなかった。


デカレッド (特捜戦隊デカレンジャー)

宇宙警察官、赤座番伴の変身した姿。
熱いハートでクールに戦う。
謎の四字熟語と二丁拳銃を用いた特殊戦闘術、「ジュウクンドー」
を操る。

メカバット (特捜戦隊デカレンジャー/オリジナル)

アブレラの偵察用こうもり。
偵察以外にも通信、怪人の巨大化などに使う。
名称は作者のオリジナル。

麻帆良レンジャーズストライク!! 第8話 阻止せよ!麻帆良ファイヤー作戦!!①

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