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第11話 拳の流儀 料理の心③ 投稿者:クローンウィング 投稿日:06/03-23:52 No.2494  


「おーい、こっちだ」

亮は己と同じく赤いマスクをつけた戦士を見つけ手を振った。
それに呼応するように赤い戦士……ティラノレンジャー・ゲキもその手を振り返す。

やってきた5人――ゲキ、ネギ、アスナ、超、五月。

超はクーに早足で歩み寄り友人の無事を確かめる。
古菲が大事に至っていないことを確かめると超はほっと胸をなでおろした。

「クー、よかた。無事だたんだネ?」
「すまないアル、超。連中にやられてしまった」
「いや、そんなことはない。………君はちゃんと捕虜を捕まえてくれタ!」

そういうと、ほとんど予備動作を見せず、超は――銃口を文左衛門と彼の背後に隠れているヤツデンワニに向けた。

「超! いきなり何を――」
「クー! こいつらはDA、闇の陣営ダ。捕縛して我々の本部まで連れて行く」

友人の豹変振りに戸惑いながらも古菲は超に事情を問う。
それを説明する超。
だが、古菲は文左衛門がダークアライアンスに所属していることを知っていた。
知っていた上で、古菲は文左衛門を信じたのだ。

「超、誤解しているヨ! この人達・・は……」
「こいつ等は人じゃない!!」

その言葉は辺り一帯に響いた。
憎しみを抑えきれない声に、古菲はもちろん、成り行きを黙ってみていたネギたちも肩を震わせる。

「ち、超さん?」
「ちょっと、どうしちゃったのよ? 超ちゃん」

心配するネギたちをよそに超は憎しみのこもった目で文左衛門を睨み付ける。

「貴様らの素性は知ている。鬼の末裔と、三種類の物体を掛け合わせて作られた生命体め。何が目的ダ?私達の内部情報か?………それとも、これだけ壊してもまだ飽き足らず、都市を、命を奪いに来たか!!」
「超! 冷静になるアル! いつもの超はどうしたアルか? このおっちゃんたちは『だぁくあらいあんす』を抜け出してきた被害者ネ! 悪くないアルよ」

古菲は超の肩をガクガクと揺する。
彼女は古菲の手を無情にも払いのけると少しだけ悲しそうに言った。

「クー、今の私は3-Aの生徒じゃない。反DA勢力レジスタンスのリーダー、戦士だ。――ヤツラがスパイでないという証拠はない。DAを相手にするなら隙を見せてはいけないんダ。さもなくば私達が殺されてしまう………」
「――でも!」
「どいてくれ!」

ドン、と片手で古菲を地面に倒し、彼女は文左衛門とヤツデンワニに手錠をかける。
手錠に紐をくくりつけ、その先端を握り締める。非常にも彼女は紐を引き、「歩け」と彼らを連行した。
去り際に文左衛門が――寂しそうに古菲に詫びる。

「ごめんな、嬢ちゃん」

その言葉にどういう意味があったのか。
友を遠ざけてしまった自分の存在に対する罪の意識か。
それとも、別のもっと深い意味なのか。

去ってゆく友を見ながら、古菲は起き上がることができなかった。
彼女の横顔を涙が濡らす。
それに呼応するようにはるか空からも水滴が降ってきた。

「………立てるか?」

声を聞き見上げると、そこには1人の青年の姿。
自分の窮地を助けた男。リュウレンジャー・亮。 

「………何も言い返せなかったアル。超は私の知らないところであれだけの憎悪を抱えていた」

拳を握り締める。その握り締めた拳から、一滴の血がにじみ出た。

「不甲斐ない。超の苦しみにきづけていれば……いや私がもっと強くなって、あいつら―カマキリ野郎をしっかり捕まえておけば……」

雨でぬれた髪をかきあげて古菲は空を見た。
暗雲が立ち込めている。その空を見ながら、古菲は僅かに思う。
晴れるのだろうか?あの空と……そして、自分の心は。

つい先ほど自分の悩みを振り切ったばかりだというのに。
少女は再び、苦悩の淵に立たされた。



Side TYAO


「三人の捕虜から手に入れた情報により、私達の知りたいことがあらかた分かった。皆心して聞いて欲しい」

麻帆良学園会議室。
そこに超と数人のレッド。そして麻帆良の住人達が集まっていた。
レッドで集合しているのはティラノレンジャー=ゲキ。アバレッド=白亜凌駕。デカレッド=赤座伴番。バルイーグル=飛羽高之。そして先ほど合流したボウケンレッド=明石暁とゴーレッド=巽マトイ。全員が変身を解除し、その素顔を皆に曝している。

リュウレンジャーはまだ戻っていない。
対する魔法使い側には超とハカセ、そして学園長を初めとする魔法先生と魔法生徒達。

そして合金製のワイヤーで縛られ猿ぐつわをかまされたバラモビル、文左衛門、ヤツデンワニ。

「まず、一つ。私達の魔法を封じている術だが、これは対処の使用があることが分かった」

超の言葉に合わせてハカセがメインスクリーンに麻帆良の都市部の映像を映し出す。

「私達の力を封じているのはかつてサウザンドマスターが闇の福音を封じるのに使った結界だ。学園全土に張り巡らされたこの結界はエヴァンジェリン個人の魔力を封じている。だが、困ったことにいまではその結界の対象者が魔法使い全員に変更されている訳なんだネ。ここまでで、何か質問はあるカナ?」

超は皆を見回した。
魔法使いの中にはエヴァンジェリンがいるとは知らなかった者もいたらしい。一部で恐怖の叫びが起きている。

「……特に、質問もないようだから続けようカ。この結界は学園全体に張り巡らされ、主に電力で供給されている。困ったことにこの結界は現在、こちらからの指令は一切受け付けないんだ。ただ――」


もったいぶって話を続ける超。

「そこにいる怪人、バラモビルの話では現在DAの拠点は二つある。うち一つはこの麻帆良にあるらしい。ハカセ、出して」

ハカセは言われるままに機械を操作し、その画面を映し出した。

「ここって………」

映し出されたのは麻帆良に数箇所ある発電所のうちの一つ。

「ここがダークアライアンスの拠点なんですか?」
「正確に言うと拠点の入り口と見るべきカナ。結界の操作はこの発電所で行われていて、その発電所の地下からDAの地底基地に繋がる隠し通路がある―――間違いないな?」

ネギの質問に答えながら、口調をガラリと変えて超はその視線をバラモビルに向ける。

どんな尋問を受けたのか。彼は超の睨みに泣いていた。
目から黄金色のオイルを流して、もげるくらい激しく首を縦に振ろうとするバラモビル。
だが、悲しいかな。彼には首がなく、胴と頭が直結しているため、体全体を縦に振り『ヴヴヴヴ』と振動することしかできない。
身の丈2mの怪人が泣きながら体を振動させる様はかなり気持ちが悪い。
超はバラモビルのきわどい姿を見なかったことにして話を進めた。

「レッドの諸君はこの発電所に奇襲をかけてほしい。ただし、全員が出払っても困るんダ。現在開放されている戦隊ヒーローは7人。魔法使いの方は魔力を必要としない気の使い手だけが戦闘を行える状態にあるから、全員が出陣するのではなく1人はここに残り警護を続けて欲しい」

「了解した。俺達からは今、この場にいる6人が行こう」

一同を代表して飛羽が返事をする。
すでに他の面々は立ち上がり、準備を整えていた。

ただ一人、アバレッド 凌駕を除いてである。
その凌駕は何かを言いたそうにしていたが超と目を合わせ、何かを訴えるような視線を彼女に送った後、立ち上がりその場を後にした。

この後、戦士たちは熾烈きわまる戦いを行うこととなる。
だがその前に舞台は再び少女たちへと戻る。

拳で夢を掴もうとする少女と。
料理で人の心を救う少女に。









Side KUFE

古菲は、ぼーっと台にひざを着き、屋台に座っていた。
その視線はあてもなくうつろう。
先ほどまで文左衛門とヤツデンワニが料理を作っていたその場所には、今 誰もいない。

「おっちゃん……ワニ……」

彼らとはついさきほど知り合ったばかりだというのに、古菲にはまるで彼らが10年来の親友のように感じられた。

そしてもう一人。

「超……」

同じ中国の出身ということで意気投合し、ずっとつるんできた超鈴音。
彼女の心の闇を見た瞬間、自分の口からは言葉が出なくなった。
その悲しみは生半可な言葉では……今の自分では払えないと分かってしまったからだ。

(私は、無力アル……)

コト、と目の前に皿が置かれる。
五月が何か差し入れてくれたのか、と思ったその先には 料理用の白衣を着た青年。
先ほど自分を諭した戦士 リュウレンジャー・亮の姿。

「貴方は……」
「さっきはきついこと言ってごめん。それ、お詫びの印だ。よかったら食べてくれないか?」

目の前に差出された熱いギョーザ。
だが、彼女はソレを見つめたまま手をつけようとしない。

「貴方は強いアルな。どうやって、そこまで己を鍛えたアルか?」
「……君は」
「私はもっと強くなりたいアル。強くなって、みんなを守りたい。……あなたのように、もっと上手く気を扱うことができたら……」
「………」

亮は黙ってギョーザを一つ、己の口に入れた。
――合格点。だが、ニンニクの風味が少し強い気がする。
彼はソレを食べると、唐突に語りだした。

「もし君が………強くなりたいと願うなら俺が力を貸そう」

顔を上げた古菲。
彼女はゆっくりと亮を見上げる。
その目には僅かであるが、気迫が宿っていた。

「本当アルか?」
「君は……俺に良く似ているんだ」

その危うさが。その境遇が。

亮は思う。
戦いとは孤独なものだと。

「俺には仲間がいた。おれたちもゴーマ……DAと戦っていたんだが ある時、俺は自分が皆と一緒に戦っていいか分からなくなったんだ」
「何故アルか?」
「俺のオヤジはDAの幹部だった」
「!」

古菲は驚いて亮の顔を見た。
彼はそのまま言葉を続ける。

「敵だったオヤジは最後、俺をかばい死んだ。DAの連中だって全員が悪人って訳じゃない」

でも……と、言葉を区切り 亮はそのまま『のれん』を腕で分け、外に出た。
未だ、雨が降りしきる中、彼はそのまま、大きく息を吸い込み体内を気で満たす。

「DAは世界を滅ぼす。その事実は否定しない。でも、それは俺達人間も同じなんだ」
「!?」

戦士としては信じられない言葉を亮は吐いた。
動転する古菲をよそに亮は目を閉じ、構えたまま続ける。

「俺達人間は悲しい生き物だ。互いに争いあって、傷つきあって、生きてきた。その俺達が生きるために今もこの自然を破壊し続けている。でも………それでも、決して少なくはない人間が人と地球を守ろうと戦っている」
「……」
「光があれば……闇もまた尽きることはない。戦いが終わることはないのかもしれない。………でも、力を授かった俺や……力を得たいと願う君にも、戦う義務がある。『悪』という名の……『己の闇』と」

亮は古菲に告げる。

「最初の話に戻そうか。気を使うには………だったね。気には。色々種類がある――『激気』や『気力』、『オーラパワー』と呼ばれる……光の系譜を告ぐ、人々に道を示す光。
対して人の心に闇をもたらす気を『妖力』や『臨気』という。性質はまったく違う二つの力。
でも、どちらも大元は一つなんだ……俺達の心に光と闇が混在するように、『気』にもまた光と闇がある」

亮の手のひらから紅蓮の『気』が噴き出す。

「『気』とはすなわち『生きる力』。気を磨くには「命を鍛えること」が、何よりも重要なんだ」
「命を鍛える……」
「そう、これは先輩の受け売りになるけれど、命を鍛えるというのは『精一杯生きること』という意味なんだ。そして人間が自分の命を究極まで鍛え、己の心の中にある闇を克服した時、俺達の『気』……オーラパワーは黄金に輝く」

亮の掌の気が紅から黄金へと揺らめく。
そこで消える炎。

亮は古菲を見た。

「力はすでに君の手にある。良く考えて、その拳が誰を、何を打ち倒すのかを」

古菲は一言一言を胸の奥で反芻した。
そして、黙って片手で拳を包み頭を下げる。

「謝謝」

短い、だが思いのこもった言葉。
古菲には今、本当にしなければならないことが分かった。
その時、彼女は屋台の陰に、ある物を見つけて視線をそれに止める。

「これは……?」

それは一つの懐中時計。
そこには、おそらく、五月だろう。彼女らしい優しい文字でこう書かれていた。

―超さんからの餞別です。きっと、貴方を助けてくれるはずだと―

古菲は天を見て謝謝と言い、今度は笑顔を浮かべた。
いつの間にか雨もやみ、日の光が差し始める。

だが、それをかき消すように亮のオーラチェンジャーから通信が響いた。


















Side MAGI&MONSTARS


鉄格子の嵌ったドア。そこに二体の怪人の姿があった。
腹を抱えて、ため息をつているのはヤツデンワニ。
それを見て呆れたように呟くのは文左衛門。

「おなかが減ったなぁ……ベルベル」
「てめぇ、さっきあれだけ食っただろうが」


2人が漫才を行っているその時、かすかに足音が聞こえてきた。
ビクン!とヤツデンワニが震え、鼻をフガフガと鳴らす。
短い間だが、それなりにワニと付き合いのある文左衛門は、それが『近くに食べ物がある』サインだと知っていた。

料理を持ってきたのは先ほど文左衛門たちを連行したときに一緒にいた少女。

―お食事です―
「ありがてぇ、例を言うぜ嬢ちゃん」

少女――五月は文左衛門の礼に笑みを浮かべるとそのまま鉄格子の前に腰を下ろした。
彼は五月が握ってくれた肉まんを一つほお張り、残りをヤツデンワニに渡した。
うれしそうにガフガフと音を立てて肉まんを飲み込むヤツデンワニ。
その2人を見て、五月は少し申し訳なさそうに2人に詫びた。

―こんなところに閉じ込めてすみません。でも、超さんを恨まないでください―

「ああ、大丈夫。嬢ちゃんが便宜を図ってくれたお陰で『お隣さん』みたいな酷い目に合わずに済んでるからな。それにあの子、未来から来たんだよな。俺たちが滅ぼした世界を変えるために」

文左衛門は悲しそうに言った。

「本当に申しわけねぇなぁ。あの子が俺達を恨むのも無理ねぇよ。おれたちぁ、いつも、こんなあくどい事ばかりして……」

ぐすっと、鼻をすする文左衛門。
だがその時、会議室本部に激震が走った。

それにあわせるように響く爆破音。

「こいつぁ……!」

浮き足立つヤツデンワニと文左衛門に五月が目を配った。
いや、正確に言うと彼女が目を配ったのはさらにその隣、さきほど文左衛門が『お隣さん』と称したバラモビルが幽閉されている牢である。

がたがたと鉄格子を鳴らす彼は、先ほど超に怯えていたときとは違う……その本性、否 本能を剥き出しにしていた。

―来てください!―

今は一人でも救援が欲しい。
ヒーロー達が出払った今、麻帆良の戦力は明らかに少ないのだ。

バラモビルのような怪人とは違う何かを感じ取った五月は鍵を取り出し、文左衛門とヤツデンワニの牢の鍵を開ける。
文左衛門はバラモビルを鉄柵越しに一回蹴り飛ばして気絶させた。
かれらはそのまま地上へと続く階段を上がる。

だが 五月たちがいるその真上では恐ろしい事態が起きていた。






――今再び 闇が芽吹く――





次回予告

ついに出会った亮と古菲。五月と2人の怪人。
だが、DAはさらにその戦力を増して襲い掛かる。
目覚めろ! 戦士たちよ!
その体は闇の者であろうと、今は拙き力であろうと君達には黄金の力が眠っている! 

次回 麻帆良レンジャーズストライク!!

拳の流儀 料理の心④

お楽しみに!!

麻帆良レンジャーズストライク!! 第11話 拳の流儀 料理の心④

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