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第39話 過去がくれる希望、新たな決意をこの胸に! 投稿者:仮面ライダーマンティス 投稿日:06/15-18:23 No.2541
タタタタタッ!
「ったく!あのバカは何考えてんのよ!」
「と、とにかく急ぎましょう!」
「ええ、お嬢様、お先に!」
電王のいる場所へ向かう5人のうち、常人離れした脚力をもつアスナ、ネギ、刹那の三人が猛スピードで走り、他の二人を置いていった。
タタタタタっ
(・・・・・)
ソレとはまさに逆方向。先ほど電王と接触し、慌ててその場を去ろうとする懐中時計の男もまた走っていた。
スッ!
(!! ウソ!あの時計って・・・)
そんな男とアスナたちがすれ違った瞬間、ちらりと見えた男の手にあった時計。一瞬だったとは言え、アスナにはその懐中時計に見覚えがあり、思わず立ち止まってしまった。
「アスナさん?」
突然立ち止まったアスナに驚くネギと刹那、
「ゴメン、二人とも!私、あの人を追いかけてくる!」
「えっ!?ちょっ・・・」
二人にロクに説明もせず男を追いかけ逆方向に走り出すアスナ。
状況的に考えて、ピンチの良太郎も気になるがそれ以上に、今すれ違った男のことが気になった。
何故なら彼は、持っているはずのないものを持っていたのだ!
(今の人・・・なんであの時計を持ってんの? まさか・・・)
それはありえない話。
しかし、これまで幾度かのタイムトラベルを体験したアスナにとっては全くない話ではないと無意識のうちに自覚できた。そして、そんな彼女の推理が当たったなら、あの男は必ず捕まえなければならない。
良太郎のため・・・何より愛理のため・・・
「なんで逃げんのよ!待ちなさーーーい!“桜井さーーーーん”!!」
・・・・・
一方、倒れた電王にトドメを誘うとするナイトイマジンの前に突如現れた。赤い髪の女性と二体の喋るヌイグルミ。
「で? 今日はどっちでやるんだマスター?」
「そうね・・・リンディンでいくわ・・・私の良を傷つけたこいつは直接切り刻みたいから・・・」
「やっり~!悪いねウィル!じゃあいきますか!」
くすりと冷淡な笑みを浮かべ、男のヌイグルミの質問にこたえる女性、二枚のカードのうち一枚をしまい残った片方ー女性のイマジンのカードをかかげ叫んだ!
「契約執行120秒間、フィリアの従者リンディン!」
パアアア!
女の子のヌイグルミに魔法光がともる!
「来た来た来た来たーーー!パワーアップ完了!じゃあフィリア、今回は相手もイマジンだし、ついでにあれやってもいいよね?」
「もちろん・・・来なさいリンディン」
「は~い!」
シュウウウウン・・・
ポト、
やたらとハイテンションだった女の子のヌイグルミが力なく倒れ、そのヌイグルミから放たれた光の球が女性の身体に入る!
すると女性の雰囲気はがらりと変わった!白いドレスだった服は黒いシャツとスパッツに代わり、その上に紅い胸当てなどの急所のみを守る簡単な装甲と赤いヘルメットが装着され、瞳の色は緑から黒に変わった!
「う~ん、久々のヒューマンボディ最高! やっぱ目線が違うと世界も変わるな~」
何より人格が別人に成り代わり、さっきまでの物静かな態度とは逆のやたらとピョンピョン飛び跳ねるハイテンションな女性に変貌したのだ。
「雰囲気が変わった・・・どうやら唯の人間ではないようだな。しかし生身で私に勝てるか?」
<勝てるかどうかなんて知らない・・・私はただ、“やらなきゃいけないと思ったことはやる”ただ、それだけ・・・>
女性の変身に驚きながらも、負ける気はしないといった雰囲気で剣を抜くナイトイマジン。ソレに対し、憑依された体の主である女性は決意のこもった声でそう言い放った。
「そうゆうことだね・・・じゃあ、いっくよ~!」
シャッ!
先ほど女の子のヌイグルミ=リンディンが持っていた双剣を振りかざし、素早くナイトイマジンの懐に近づく女性!
瞬動などを使ったわけではないがその素早い身のこなしは明らかに人間離れしたものである。
「ハァッ!」
キンキン!
「クッ!」
ブン!
「おっと!」
素早く剣で斬りかかる女性だが、ナイトイマジンの装甲にはダメージを与えられない。しかし、やはり身のこなしでは上をいくらしく、ナイトイマジンの反撃は素早くかわし、また間合いを取った。
「かった~~!どうしよう?私の力じゃやっぱあの鎧はきついかも~」
「フフフ、さっきの動き、恐ろしい運動神経を持っているようだがやはりパワー不足のようだな。どうする?」
<・・・・何度も言わせるな。私は・・・私のすべきことをやるだけ・・・>
シュウウン!
一瞬、人格だけ本来の女性に戻りギロリとナイトイマジンを睨みつける女性、その瞳には劣勢にもかかわらず一切の恐れがなかった。まさに覚悟を決めた瞳である。
「(この女・・・危険だ。このままやって負ける気はしない・・。しかしこの女、どういうわけか自分の身以上にあの特異点を守ろうとしている。・・・それこそ腕がもげようと足が引き千切れようと・・・。経験上ああいうタイプとは戦うのを避けるべき・・・それに)フフ、気に入りましたよお嬢さん、しかし今ココでアナタを倒すのはつまらない。アナタの話を聞く限りじゃ、そこの特異点に手を出さなければ、私には用がないみたいだのだろう? 正直、私としてもそんな弱い邪魔者はいてもいなくてもどうでもいい。加えて指示もないようですから一旦退きましょう」
バッ!
そう言ってナイトイマジンは踵を返し、去ってしまった。
シュウウン・・・
「ふう、正直危なかったね~。契約も、もってあと一分ちょいだったし、やっぱイマジン相手はしんどいよ~」
憑依を解き本来のヌイグルミの中に戻るリンディン
「まったくなさけねーな~。で?この後どうするんだフィリア。こいつまだぶっ倒れたままだぜ?」
「・・・そうね、ひとまず・・「「良太郎さ~ん!」」・・・チッ、今さら・・・」
近づいてきたネギたちの声に舌打ちする女性=フィリア
「あれ?あなたは一体・・・」
(この人・・・どこかで見覚えが・・・)
現場に到着し、いなくなったイマジンの代わりにその場にいたフィリアに驚くネギ。刹那はそんな彼女を何処かで見たような不思議なデジャヴにおそわれた。
「・・・・随分とお早い到着で・・・・良のお荷物さん?」
((!))
そんな二人に対し、フィリアは冷静な口調でそう言い放った。
「ショック? だってそうでしょ?・・・・あんたたちがもう少し早く来ていれば・・・少しでも良の抱えてる苦しみをわかってあげればこんなことにはならなかった・・・・邪魔にならなくても使えないなら、それはただのお荷物。・・良は私が看病するから、食堂車に戻りなさい。」
「えっ?食堂車を知ってるってことはまさか・・・?」
「わからないの?・・・随分鈍い天才少年ね・・・」
そう言ってフィリアはポケットから一枚のカードを出した。
それは金色に輝くチケット・VIP席乗車券であった!
・・・・・
一時間後・デンライナーVIP車両
「う・・・う~ん・・・あれ?ここは・・・」
車両にあるふかふかベッドでで目を覚ます良太郎。何故、自分がこのようなところで寝ていたのか?そもそもここはどこなのか?辺りを見回すと一人の見覚えのある10歳の少女がコーヒーを淹れていた。
「気が付いた?」
目が覚めた良太郎に気が付くと少女=10歳の姿のフィリアは微笑みかけコーヒーを渡す。
「き、君は昨日店にいた娘? なんでここに・・あれ、そもそもここって・・・」
何が何だか状況が読めず混乱する良太郎、少しずつ気を失うまでの記憶を遡る。
「あの時・・・イマジンと戦って・・・気を失って・・・その前に何か・・・!! そうだ!桜井さん!桜井さんが・・・・!」
ガバッ!
思い出した出来事、接触に思わず立ち上がる良太郎
「落ち着いて良・・・太郎。どの道、もう探しようがない・・・・それより改めて自己紹介させて・・・・私の名前はフィリア・ナターシャ。このVIP車両の乗客であなたと同じ“特異点”で、未来から来た魔法使い。それとそこにいるのがリンディンとウィル、私の従者でイマジン」
「よっ!はじめましてでいいよな電王」
「よろしくね~♪」
そんな良太郎をなだめ、先ほどまでとは別人のように優しい口調で語りかけるフィリア
「あ・・・ごめんね。でも、未来の魔法使いって一体? それにその子たちがイマジンって・・・」
「・・・ごめん、色々話したいし、実際話しても私の存在にはなんの問題もないんだけど。今はまだ詳しいことは内緒・・・でも一つ言えるのは・・」
ヒシッ!
「えっ?わあああ!」
バタン!
突然フィリアは良太郎に抱きつく。びっくりした良太郎はそのままベッドに倒れてしまった。
「言えるのは、あなたが私にとって、未来でかけがえのない人で、私はアナタの味方・・・それだけ」
そう言って少女は初めて満面の笑みを浮かべながら良太郎に擦り寄ったのだった。
「え、ええと・・・一体どういうことかな・・・?」
少し困った顔をする良太郎、子供は苦手というわけではないが、ここまで懐かれたのは初めてだし、正直対応に困っていた。
「えへへ・・・」
「オイオイ、あのドSの女王様があんなに人になついてるの初めてみたぜ」
「しょうがないよ。フィリアにとっては“お父さん”みたいなもんだし・・・」
その後数分間、フィリアは子供のような状態で良太郎にスリスリしていた。
「さてと・・・気も済んだし、気になってることを教えてあげるね。あなたがさっきぶつかった人・・・“桜井侑斗”について」
「!! じゃ、じゃあ、やっぱり桜井さんだったんだ! 桜井さんは今何処に!?」
「・・・それはわからない・・・けど言えることは二つ。一つは気が付かなかったかも知れないけど、これまでも“桜井佑人”はあなたが過去に飛ぶ度にその時間に現れ、あなたの戦いを見ていた。いつもはすぐに帰っちゃうんだけど、今回はたまたま見つかっちゃったんだね・・・」
「桜井さんが・・・ずっと・・・」
「それともう一つ。あなたが探している答えのヒントは、その時計に刻まれている・・・」
「刻まれている・・・?」
時計の裏側を見つめながら復唱する良太郎は刻まれた英文を読んだ
“the pust shold give us hope”―――過去が私達の未来に希望をくれる。
「・・・桜井さんは過去にいて、その桜井さんが残した言葉が過去が希望をくれる・・・それってつまり!?」
「そう。あなたがこの先も電王として戦い続け、過去を飛び回ればかならず辿り着ける。その人の所にも、真実にも・・・」
「僕が・・・戦い続ければ・・・」
「そう」
ニコリもう一度微笑みかけ、立ち上がるフィリア
「・・・それじゃあ私、少しだけ食堂車に用事があるから・・・少し休んでからゆっくり来てね?」
そういい残しフィリアは良太郎を残して前の車両に向かった。
・・・・・
「じゃ、じゃあ・・・その女の人の部屋に良太郎はいるってこと?」
あれから探し回ったが、結局見つけることができず遅れてデンライナーに戻ってきたアスナがネギたちから説明を受ける。
「は、はい・・・」
「なんや、怖そうな人やったけど、良太郎君大丈夫やろか・・・?」
「いやいや、案外よろしくやってるかもよ?」
「何がよろしくだ! ざけてんじゃねえぞ、亀!」
バン!
テーブルをたたきつけ突然怒鳴りだすモモタロス
「もう何がなんだかわかんねーよ! 良太郎は俺らを呼ばねーし、わけわかんねー女は出てくるし! その上なんなんだよ!? クマパン女が見かけたっていうその・・・」
「桜井さん?」
「それだそれ! 一体なんなんだよ、こいつは! クマパン女とこのかだけ勝手に納得しやがって! 知ってることがあるなら全部話やがれ!」
まるで何も分からない不安な気持ちを隠すように、精一杯声を張り上げるモモタロス。他のイマジンたちも口は閉じていたが内心ではモモタロスと同じ気持ちであった。
「アスナ~」
「・・・ふぅ、わかった話すよ。ネギたちにもまだ言ってなかったしね・・・桜井さんっていうのは、愛理さんが結婚するはずだった人で・・・今年の初めに行方不明になった人なの・・・」
((・・・・・))
(((((!!!!)))))
アスナが話した過去に衝撃を受けるタローズ、ハナ、ネギ、ナオミ、そしてオーナー。アスナと同じく事情を知るこのかと先ほど事情を聞いた刹那は黙ったままアスナの話の続きを聞いた。
「で、でも・・・、愛理さんそんなふうには・・・」
「覚えてないのよ・・・桜井さんとの思い出とかだけ全部・・・多分だけど、良太郎がコッチに戻ってきたのも、そんな愛理さんが心配で、できるだけ近くにいてあげたかったからじゃないかな?」
「なるほど・・・しかし、アスナ君? あなたが見た人が一年前の桜井侑斗であるという可能性も充分あるんじゃないんですか?」
話を続けるアスナに質問をぶつけるオーナー、それは正論であり、現実問題、そちらの可能性の方が高い。しかし、アスナにはそれはないと確かに言える根拠が二つあった。
「それはないんです。・・・だってあの日は私もこのかもミルクディッパーに行って桜井さんと会ってますし。・・それに私がすれ違った桜井さんは、去年のクリスマスに愛理さんが送った懐中時計を持ってた。プレゼント選びには私達も一緒だったから良く覚えてる」
アスナの言葉にこのかも頷いた。
「なるほど・・・それは大変興味深い話ではありますね。方法は検討がつきませんが、恐らくその桜井なる人物は何らかの方法で過去に飛ぶ術を持っている・・・」
アスナの話に納得し、食堂車をあとにするオーナー、残されたものたちの間では重苦しい空気が漂った。
「・・・アスナさん、その話って、逆算すると僕が日本に来る1,2週間前くらいなんですよね?」
「えっ・・?うん、そうなるわね・・・」
「だとすると良太郎さんってそんな事件があってから直ぐ電王になって・・・そんなこと今まで一度も話さなかったのに・・・」
ある日突然、家族同然とも言える人がこの世界から姿を消した。
状況はかなり違うが、ネギにはその気持ちが痛いほどよくわかった。
そして、自分にはあった悲しみを癒してくれる姉や幼馴染も、時間もなく、自身もまた大きな運命の渦に巻き込まれながらも今日までそんな弱さを見せずに戦ってきた良太郎のことをネギは心の底からスゴイと思っていた。
「殿にそのような過去が・・・」
「あいつ・・・なんで今まで言わなかったや?」
「そんなのアンタたちに言ったってどうにもならないからよ・・・」
(((((!!)))))
突然聞き覚えのない声に振り返る一同、其処には再び大人の姿になったフィリアがいた。
「あなたは・・・」
「オイ!どういうこった!俺らに話しても意味がねーってのは! つーか、お前はいったい・・「うるさいバカ犬・・・」“パシッ”・・えっ?」
パシュウウン!
「ぎゃあああ!」
「モモタロスさん!」
自分に対し高圧的な態度で接してきたモモタロスの胸に手を添えるフィリアするとなんとモモタロスは良太郎に憑依する前のあの光の球の状態に戻ってしまった。
「な、ななな、何がどうなってんだ! ちきしょー、元に戻せーーー!」
光の球になった状態でフィリアにつかまれるモモタロス、まさに手も足も出ない状態である。
「少し“躾け”が必要ね・・・これでいいわ」
パシュウウン!
フィリアは掴んでいた光の球を近くにあったコーヒーカップに押し当てる。すると・・・
「でええ!? 俺がコーヒーカップに!!???」
「「「「「えええっ!!???」」」」」
衝撃を受ける一同、なんと押し当てられた球とカップは一つになり、真っ赤な喋るコーヒーカップ=Mコーヒーカップとなったのだ!
「・・・確かあなた、ここのコーヒーが大好きだったわね?」
そう聞いてフィリアはMコーヒーカップの中にコーヒーを注ぎこむ。
ゴボゴボ・・・
「ぎゃああああ!熱い熱い!背中が焼けるーーーーーー!!!」
「ウフフ、大好きなコーヒー・・・たっぷり飲めて幸せでしょ?」
クスクスと静かに微笑みながら淵一杯までコーヒーを注ぎ込むフィリア。その顔には良太郎に見せる時とは違う恍惚とした笑みを浮かべていた。
(え、Sや・・・)
怖くて口にしなかったが、このかは心の中でそうつっこんだという。
「全く・・・あきれたものよね? ご主人様の言うことも満足に聞かない“駄犬”が4匹に、関係もないのにただついてくるだけで役に立たない“おばさん”三人・・・。おまけに、えらそうな目標をもつ癖して何の力も持たない未熟な魔法使いの子供・・・あなたたちに何を話せっていうの?」
「だ、駄犬・・・」
「お、おおおおば・・・・」
「・・・・」
サディスティックな口調でネギたちを攻め立てるフィリア。
「な、何よ!アンタさっきっから何も知らないくせして偉そうに! ていうか良太郎はどこよ!?」
「フフ、そうやってすぐ感情的になって大きな声を出すなんてみっともない・・・年はとりたくないかも・・・」
「ぬわんですってーーーーーー!!!」
「まーまーアスナ~。ここで暴れたらオーナーさんに怒られるって~」
フィリアの言葉にプチンとキレるアスナ。そんな今にも飛び掛りそうなアスナを必死に止めるこのかと刹那
「テメー、コノヤロー!何時までも調子に乗ってんじゃねえぞコラ!大人」
そんなアスナに口だけ加勢するコーヒーが少し冷め、落ち着いたMコーヒーカップ。しかし、それは大きな間違いであった。
「アラ? まだ自分の立場がわからないの?」
ジャッ
そう言ってフィリアは一旦入っていたコーヒーを流しに捨て、
ピッピ、
「あっ、お湯の温度をそんなに上げちゃ・・・」
ジュウウウ!
「ぎ・ぎやあああ~~~~~~!!!!」
「ウフフフ、どうやら頭の中は雑菌だらけのようね。熱湯消毒してあげる・・・」
お湯の温度を設定の限界まであげると、フィリアはコーヒーカップに注ぎ込んだ。そのなんの躊躇もなく・・・というか楽しんでモモタロスに拷問をする姿に一同は凍りついた。年がら年中モモタロスを蹴り倒すハナやアスナでさえ、ここまではしない・・・
(いや~~、なかなか素敵な性格をしてるね~。ま・ここはおとなしくしてよ・・ゴメンね先輩♪)
皆がモモタロスに同情的な視線を向ける中、若干一名不謹慎な考えの亀が一匹・・・
「わかった?・・・今後私に逆らったら・・・今度は便所たわしに憑依させる・・・「皆、心配かけてゴメン」・・!・・」
パリーン!
「って、モモタロスさーーーーーーん!!??」
モモタロスをいじめて楽しんでいるフィリアの後ろから扉が開き、現れる良太郎。フィリアは驚き、思わず持っていたコーヒーカップを落とし割ってしまった。
「死・・死んじゃったとか・・・?」
「あっ、大丈夫や!元に戻ってヒクヒクしとる!」
安否が気遣われたモモタロスであるが幸い(?)背中にたっぷりの熱湯を浴びただけで生きている。
一方そんなモモタロスに対し、あまりにも酷い仕打ちをしたフィリアはそんなモモタロスの存在など忘れて・・・
「良太郎! 身体、もう大丈夫なの?」
「う、うん、もう平気・・・それより・・フィリア・・さん?」
大人の姿のフィリアを始めてみて驚く良太郎。フィリアの代わりようはどこかのノート・デスの記憶を取り戻したかのようなである。
「そっか、こっちの姿は見せてなかったもんね・・・ホントはどっちの姿でもいいんだけど・・・コッチだとあのおばさんたちと同じみたいだったから・・・」
「だーかーらーっ! 誰がおばさんよ! ていうか良太郎!アンタなんでそのドS女とそんなに仲いいのよ!?」
「うん、危ないところを助けてもらって、色々教えてくれたんだ。とってもいい人だよ。」
「いい人!?そいつはね・・「良太郎も元気になったし、私、もう戻るね・・・」って人の話を聞けーーー!」
アスナの話を無視し、VIP車両に戻ろうとするフィリア、どうやら良太郎の前では本来のドSっぷりを隠したいらしい。
「あっ、そうそう。私の車両には良太郎はいつでも来ていいから、その駄犬たちやおばさんに愛想つかしたらいつでも来てね?」
最後に強烈な一言を残し・・・
「「ぬおおおおおーーーー!なんなの(だっていうんだよ)あのクソ女ーーー!いつか絶対泣かす!」」
フィリアが去ったあっと大声で声を同調させるモモタロスとアスナ、二人がここまで同じ気持ちになるのはウラタロスの一件以来である。
まあ、それはひとまず置いといて・・・
「皆、今回は色々心配かけてゴメンね・・・実はちょっと自分が弱いのとか・・やんなってて・・」
「それで一人で戦おうとしたでござるか・・・」
「なるほどね~」
「じゃあ、別に俺らに愛想つかしたとかやないんやな?」
「う、うん!もちろんだよ。昨日倒れちゃったのも僕が弱いのが原因だし・・・これからはちゃんと鍛えて大丈夫なようにするから」
(((ほっ!)))
良太郎の言葉を聴き、胸をなでおろす3体、リストラ問題も杞憂に終わり安心したのだが、一人納得できない顔をしたものがいた。
「おい良太郎!だったらなんでちゃんと言わねーんだよ? 姉ちゃんのこととかもよお・・」
「えっ?だって・・ちょっと恥ずかしかったし・・・姉さんのことも直接関係ないのに話したら迷惑かなって・・・「冗談じゃねえ!そんなもん黙ってられたほうがずっと迷惑だ、バカヤロー!!」」
良太郎を怒鳴りつけるモモタロス。
「ったく良太郎のくせにカッコつけやがって・・・似合わねーんだよ!」
「モモタロス・・・」
「ま・確かにちょっとショックだよね~。今までまあ、それなりに頼りにされてきた自信はあったのにさ」
「ウラタロス・・・」
「せやで良太郎! 俺らに隠し事なんて水臭い!一心同体やろ?」
「キンタロス・・・・」
「殿、失礼ながら拙者もモモと同意見でござる。ここにいるものは皆、事情は違えど好きで殿と共に歩む道を選択した者達でござる。拙者など、殿に死ねといわれれば笑って死ぬし、戦えと言われれば相手が神だろうと戦いを挑む覚悟はある。ただ、一番つらいのは殿に隠し事をされること・・・それではなんの力にもなれんでござるよ・・・」
「ワカマルス」
モモタロスに続き、自分達の思いを良太郎にぶつけるタローズたち
性格からなにまで違う彼らのたった一つの共通点、それは皆、良太郎のことが好きであることなのだ。
「て、てめーら!俺が言おうとしたことを横取りすんじゃねー!」
「うわ~、ここでそういうこと言うなんて・・空気読んでよね、先輩」
「ほんまやで! 折角ええこと言うたと思ったのに・・・」
「全く、最後までかっこのつけられない男でござるな・・・」
「う、うるせーうるせー! と、とにかくあれだ、良太郎! もう隠し事とかすんじゃねー! あと、鍛えるのはいいけどな、もう一人で戦おうとかすんじゃねーぞ!・・・べ、別に心配とかじゃなくて・・お、お前が強くなっちまったら俺の出番がなくなっちまうからな!!」
「うわー、モモちゃん顔真っ赤やで?照れとる?」
「う、うるせえぞ、このか!元々だ、元々!!」
「アハハハ!」
「ありがとう・・・モモタロス・・・皆・・」
雨降って地固まる。
思いもよらぬ良太郎の過去などで一時重苦しい空気につつまれたデンライナーだったが、モモタロスの発言をきっかけに無事、いつもの騒がしい電車に戻った。
・・・・・・
それから一息つき、デンライナーの停車時間になった。
「それじゃあ私はちょっと外に出てイマジンを探してくるから、良太郎は休んでてね」
「うん、気をつけて」
「あっ、ウチもちょっとだけ出てきてええかな?」
先ほど取り逃がしたナイトイマジンを見つけ出すため一旦外に出ようとするハナにこのかも続く
「お嬢様、でしたら私も」
「大丈夫なの、このか?」
「うん、直ぐ済むと思うし」
・・・・・
その一時間後・東京駅前
「なるほど・・・確かに多くの人間がいるな。ここを破壊すればいいのか?」
「ええ、ここは恐らく日本でも有数の巨大ステーション。ここを壊すだけでも、何百万人という人間の予定が崩れますし、コレだけの人間が姿を消せば、時刻の運行が乱れてもおかしくはありません」
ナイトイマジンにアドバイスをするのは、謎の老紳士であった。
「ふふ、誰だか知らないが助かったぞ。何しろ私は非効率的なことはキライでな」
「左様ですか。ご武運をお祈りしてますよ。」
そう言ってナイトイマジンの元を離れると、老紳士はココから少し離れた場所で見学をすることにした。
(はてさて、前回は予想外の事態でしたが、果たして今回は・・・おや?)
チチチチチチ・・・
老紳士の視界には懐中時計の男―桜井が映った。
(さっきあんなことがあったというのに・・・まあ、彼との接触が私のお気に入りのあの少年にどう影響するか・・・フフ、見ものですね~)
「では参るぞ! ハアアッ!」
ガシャーーーーーン!
「「「「「きゃあああああ----!」」」」」
行動を開始し、東京駅を襲撃するナイトイマジン!
駅はその衝撃で火災が発生し、炎と混乱に包まれた!
・・・・・・
TRRRR♪
「はい、こちらデンライナー・・・わかりました!」
ガチャ
突然なった内線をきるナオミ
「ハナさんからの連絡です!イマジンが東京駅で暴れてるって!」
「きやがったな!」
「行こう!今度は皆で」
・・・・・・
ガシャーーン!
「うわああああ!」
「フフフフ・・・フハハハハハ!すばらしい!これほど効率的に破壊活動が出来るとは、あの老紳士に感謝しなくてはな!」
ファアアアアン!
「!! あの音は・・・!」
・・・・・・
タタタタタタ!
デンライナーからおり走ってナイトイマジンを探す良太郎、それにアスナとネギも続く、
「酷い・・・良太郎さん、消防署の人が来るまで、魔法でやれるだけやってみます!」
そう言って杖に乗り火災現場に向かうネギ
「ネギ君!」
「やらせてあげなって良太郎。・・・私らだって悔しかったんだから、あんな女にえらそうなこと言われて・・・その、ゴメンね、良太郎。私達、今まで何もしなくて・・・!!・・良太郎、あの人!」
走りながら良太郎に謝るアスナ。そんな二人の視界にまたもあの懐中時計の男が映った。
思わず立ち止まる良太郎。しかし、今度は近づこうとせず、ただ、男のことを見つめていた。
チチチチチ・・・
(・・・・・・)
そんな良太郎の視線に気づき、またも踵を返しその場を去ろうとする男。そのとき、良太郎は叫んだ!
「桜井さん!!」
(・・・・!・・・)
良太郎の叫びに男は立ち止まる。良太郎は聞こえているかなどわからないが力の限り声を張り上げて言った。
「なんで・・なんでアナタが僕を避けるのか・・・なんで過去にいるのかは分からない・・・けど、僕は諦めたくない! 絶対アナタを連れ戻して、姉さんに会わせたい!」
(・・・・・)
(ほう。つまり、この場を捨て置き彼を追いかける・・・やはりそうしますか?)
「・・・けど、今は追いかけません。今はやらなきゃ行けないことが・・・残っているから・・・・アナタが昔、僕に言ってくれたように、僕は“僕に出来ること”をやります!」
それだけ言って良太郎は再び走り出した。
(・・・・・・・・)
「ふふふ。やはり、そうでなくてはね・・・」
・・・・・・
「ちょっと良太郎! 本当いいの?」
目の前に桜井と思われる人物がいたにもかかわらずソレをみすみす見逃した良太郎を心配するアスナ。
「・・・大丈夫。フィリアちゃんが言ってたから・・・僕が戦い続けていれば、いつか答えが出るって。・・・それに、あの人が桜井さんならやらなきゃいけないことをほったらかしにして追いかけたら怒ると思うし・・・きっと姉さんも・・」
追いかけたい気持ちはある。
しかし、今は自分がやるべきこと、やらなきゃいけないことをやるために自らの思いを胸にしまい、良太郎は炎の中に飛び込んだ。
それは、過去に桜井とした約束だから・・・
「アスナちゃんはネギ君の所へいってあげて・・・・変身」
ピッ、
<ROD FORM>
ファアアアン
ガシャン!
「さてと・・じゃあ、釣りにいってくるよ、アスナちゃん♪」
ダッ!
ロッドフォームに変身し、ナイトイマジンとの決戦に向かう電王!
・・・・・続く・・・・・
おまけ
【そのころVIP席】
「ねえフィリア?どうして良太郎と一緒にいるときは10歳の姿で、戦う時やあいつら(モモタロスやネギ)いじめる時は大人になるの?」
「決まってるじゃない。大人の姿で良に抱きついたらダメージがでちゃうでしょ? それに愛理さんも構ってくれないし・・・」
「なるほどな~、で、サディスティックなことをするときに大人になる理由は?」
「それも簡単。子供のままじゃ、何かされてもイタズラって感じがするでしょ? ・・・フフ、やっぱりやるからにはこっちの悪意がたっぷり伝わる方法で、たっぷりいじめたいじゃない・・・フフ」
((ガタガタガタガタ))
フィリアの不適な笑みに、リンディンとウィルは恐怖から身体をガタガタと震わせた。
謎の二重人格&姿のサディスティック少女―フィリア・ナターシャ。彼女の本当の年齢は、まだ秘密・・・
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