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第45話 新学期突入!噂の吸血鬼と鼻血男? 投稿者:仮面ライダーマンティス 投稿日:06/29-16:28 No.2612
2003年4月7日午後8時・食堂車内
新学期をいよいよ明日に控えたこの時間、アスナはタローズたちを集め注意を呼びかけた。
「いいアンタたち、春休みは多少の(?)暴走は目をつむってきたけど、明日から学校がはじまっちゃうんだからイマジンと戦う時以外絶~~~対っ出てくるんじゃないわよ・・・って人の話を聞け~~~!」
「ナオミちゃ~ん」
「見て見て~、すごいでしょこのかお姉ちゃん?」
「ぐごー!」
正体をばらさないようにと必死なアスナの話に耳を傾けるのは例によって生真面目なワカマルスのみ・・・
ナオミをナンパするウラタロス。覚えたての手品をこのかに見せるリュウタロス。例によって座ったまま眠り続けるキンタロス・・・
「へっ、言われなくたってガキのお勉強の時なんざ出ていかねーっつーの!」
知恵の輪をいじるモモタロスも話だけは聞いていたが顔をアスナに向けていない。
「アンタね~、誰の所為で良太郎がウチのクラスに来たと思ってんのよ? 説得力って知ってる?」
「うぐ・・・そ、ソレを言うなら亀の方が問題じゃねーか」
「僕? 僕は大丈夫だよ。先輩と違って簡単にはボロださないし、ソレよりワカちゃんの方が問題なんじゃないの?」
アスナに責められバツは悪くなったモモタロスはウラタロスに話をふり、そのウラタロスはやんわりと話の方向をワカマルスに向けた。
「たわけたことを申すなウラタロス!拙者は断じて殿の学業の邪魔をしたりはせん」
「いやいや~、本人がその気でも仕方がないことがあるしね~、そう言えばワカちゃんは知ってる?良太郎が通うのって女子校だよ?」
「なっ!?ママママッマママ・・マジでござるか!!!???」
ウラタロスから放たれた衝撃的な言葉にかつてないほど動揺するワカマルス。
彼が良太郎に憑依したのはちょうど春休みの初日。以降、住んでいるところが女子寮であることも紆余曲折の果て女子校に通うことも聞いていなかったのだ。
「大変だな、おい? 憑いてなくても良太郎の目を通して女がわんさかいるところに通うなんざ」
「鼻血ブー♪ 鳥さんの必殺技なんだよね?」
青褪めた表情のワカマルスをからかうモモタロスとリュウタロス。
要は彼らの中で誰か一人出てきても良太郎に多大な迷惑がかかるという事実は変わらないのである。
「とにかく、授業中やクラスメイトがいるところでは、とり憑くのは絶対禁止! それと“この二人”には気をつけてね。バレたら多分、3時間後には学園中に知れ渡るから」
そう言ってアスナはネギがいつも使っている出席簿を広げ、ハルナと和美の写真をさした。
“特ダネ”と“ネタ”を追いかけるこの二人は電王になる以前から良太郎が巻き起こす珍事件などから彼に興味津々だし、無論、電王についてもそうであり、何より非情に勘が鋭い上、頭の回転も速い。
「む? このメガネの娘はたしか以前商店街で見かけたでござるな」
「へ~、二人とも中学生にしてはなかなか・・・顔も可愛いしぜひお近づきになりたいな」
「ダメって言ってんでしょスケベガメ!」
ペシッ!
「いてっ!」
全く説明を聞いていないウラタロスに対し、出席簿の角でたたくアスナ。なんというかもう、不安でいっぱいである・・・
「しっかりアスナちゃん! 私もこっちで極力コイツラを見張ってるから学校のほうではアスナちゃんがお願いね!」
「ハナさん・・・」
あまりにも人の話を聞かないタローズにめげそうになるアスナを励ますハナ。そんな彼女に勇気を貰ったアスナは硬い握手を交わす。
ガシッ!
「そうですよね! 肝心の良太郎も頼りにならないし、私達がしっかりしないとですよね!」
「そうよ! 二人で力をあわせましょ!」
イマジンさえも容赦なく殴り飛ばす恐るべきパワー系ダブルヒロイン。果たして彼らはタローズの暴走を止められるのか?
・・・・・
数時間後・深夜の桜通り
チュウウウ~~~~
満月と桜の花びらが舞うどこか神秘的な夜、一人の少女の血を吸い取る音が静かに響く
「ふう、こんなもんか・・・悪く思うなよ、佐々木まき絵」
黒いマントに身を包む小学生ぐらい背丈の金髪の少女。それは今しがた血を吸った少女、佐々木まき絵のクラスメイトにして吸血鬼、かつて最強無敵の悪の魔法使いと呼ばれたエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルである。
「魔力の回復具合はいかがでしょうか、マスター」
そんな彼女の傍に静かに付き従うのは彼女の従者茶々丸である。
「ん、ボチボチだな。それなりに血も吸ったし、満月の前後何日かの状態なら半人前以下のぼーやに遅れを取ることはまずない・・・まあもっとも、血を吸う相手がより魔力の充実した魔法生徒か教師ならより確実なんだがな・・・」
「その件ですが、今回の計画で学園長先生が止めるという可能性はあるのでしょうか?」
エヴァの計画の是非を心配する茶々丸。現在“ある呪い”によって極端に力をセーブされている彼女にとって、いかに従者がいるとはいえ、魔法先生の妨害があっては計画の成功は難しい。特に学園長や高畑クラスの使い手が動けばまず勝ち目はないだろう・・・
しかし、今回は彼女にとって些か運が向いていた。
「フフフ、心配するな。じじいどもは最近現れたイマジンだかヒマジンだかいう化物との戦いに気を取られている。計画の実行日までに派手に暴れなければまず気付くまい」
「昨日の結婚式場の爆発もイマジンによるものらしいとメンテ中にハカセが言ってました。彼らと接触した場合の戦闘能力は相当かとおもわれます。それに協力者の“電王”と呼ばれる謎の戦士も・・・」
「フ、興味がわかんさ。この年まで生きてれば今更未知の敵だ謎の戦士だと言われても驚く気になれん。まあ、私はそいつらが派手に暴れている間にさっさと計画を完遂させてい自由を手に入れるだけだがな・・ハハハ、待っていろネギ・スプリングフィールド!」
高笑いをするエヴァンジェリン、その光景を彼女達に悟られない距離からフィリアは見つめていた。
「ハハッ、相変わらずだな~お前の“未来”のマスターは・・」
「どうするのフィリア?今回の件もどうせ良パパも関わっちゃうっていうか巻き込まれそうだけど?」
「・・・・・・今回は静観しようと思う。あの人は無意味に人を傷つけはしないだろうし、ターゲットはあくまであの人だから・・・私の知ったこっちゃない・・・」
(この冷たさはさすがに師匠譲りだな・・・)
・・・・・
4月8日火曜日午前5時・女子寮から少しはなれた広場
「ハッ!ハッ!」
重りをつけた竹刀を一心不乱に振り続ける刹那がそこにいた。
アスナが新聞配達をし、このかやネギはまだ眠っているこの時間、毎朝この場所で一人剣の稽古にせいを出すのが彼女の昔からの日課である。
そして、特にここ最近はその稽古の時間も内容も大幅にアップし、気合が入っている。
(今の私にはイマジンと渡り合うだけの力はない。だがせめて、良太郎さんが戦いに集中できるようにお嬢様やアスナさんを守れるだけの力をつけなければ・・・)
そう思いより一層気合をいれる刹那。
主に取り組むのは彼女とイマジンとの間にある一番の差“パワー”を初めとした身体能力の差である。そのため刹那がもっとも取り組んでいるのは筋力トレーニングで基礎的な腕力の強化とともにより気を効率的に使うための体力強化である。
ズルズルズル・・・・・
そんなハードな修行に取り組んでいる刹那の耳にズルズルとタイヤを引っ張る音が聞こえた。振り返るとそこには
「良太郎さん?」
「ハァ・・・ハァ・・・あっ、おはよう刹那さん・・・」
タイヤを三つほど引っ張り、フラフラしながら走っている良太郎がいた。刹那が持っていた竹刀を置き、そばに駆け寄ってくると良太郎もひとまず足を止め休憩に入った。
「もしかして以前言っていた身体を鍛えるための特訓ですか?」
「うん。リュウタロスも憑いて5人になっちゃったし、このままじゃダメかなって・・・」
近場のベンチで座り込み、刹那が買ってきたお茶を飲みながら一息つく良太郎、彼の話によればナイトイマジン戦のすぐあとから密かに始めていたらしい。
とりあえずまずは基礎体力をつけようと毎朝走り込んでいたらしいのだが、そんな良太郎に刹那はふと申し訳なさを感じた。
「あの・・、今更なんですが、すみません良太郎さん・・・」
「? どうして刹那さんがあやまるの?」
「い、いえ、あなたのことを守ると言っておいて結局いつもあまり力に慣れませんし・・・やはりワカマルスの件も、私に責任がありますし・・・」
うつむいて謝る刹那。良太郎の手によってこのかとの和解、アスナと友人になれたことやワカマルスの救済など数えられない恩恵を受けているのに対し、自分が良太郎にしてあげられることの少なさがイヤになっていた。
「そんなことないよ・・・ワカマルスはちょっと鼻血が多いけど5人の中じゃ一番良い子だし・・・この間だって刹那さんがあのサルのイマジンの分身をやっつけてくれたし・・・僕からしたら刹那さんってすごく頼りになってかっこいいよ?」
そんな彼女に良太郎は逆に礼をいう。
イマジンの力を借りて戦う彼にしてみれば背も小さい同い年の女の子が自らの修行で力をつけ、大事な人を守るために戦う彼女は尊敬できるし、いつもの凛とした態度や優しさには憧れすらあったのだ。
「い、いえ・・・私なんてまだまだ未熟で・・」
自分が尊敬している人物から逆にかっこいいと言われ、顔を真っ赤にする刹那。
彼ら二人は互いに互いのことを尊敬し合える良き友人同士なのだ。
「ねえ刹那さん? もし良かったら少し剣道教えてくれないかな?」
「えっ? 私がですか!?」
「うん・・・ダメかな?」
「い、いえ・・・確かに剣道は心身の鍛錬には向いていますが、私なんかでいいんですか?」
「うん、刹那さんに教わりたいんだ。」
(・・あっ、いや他意はないんだろうが・・・)
良太郎の言う特に深い意味のない言動一つ一つに刹那は動揺してしまう。その様子に気付かない良太郎は、さすが愛理の弟だけある。
「わ、分かりました。それでは私の予備の竹刀をお貸ししますから、まずは構えから・・・」
そうして良太郎は通常のランニングに加え、毎朝刹那との剣の稽古を始めることになる。刹那にしてみても戦闘以外で良太郎の力になれることができてうれしいのだが・・・
数分後
「も・・・もお、ダメ・・・」
「ええっ!?あ、あの・・まだ準備運動がてらの素振り200本ですけど?」
地面にへたり込む良太郎に呆れる刹那。
そう、心はどんなに強くても彼が世界一貧弱なヒーローであることにはかわらない。気持ちだけでなんでも切り抜けられるほど世の中は甘くないのだ・・・
「と、とりあえず・・・少しずつ頑張っていきましょう・・・」
良太郎を励ます刹那であったが内心では『このペースでいくと斬岩剣を覚えるには50年はかかりそうだな』と思ったりした。
少し後の話だが、刹那に弟子入りした良太郎は後から弟子入りした二番弟子の少女に僅か一日で追い抜かれたという・・・
・・・・・
数時間後
短いようで長かった?春休みは終わり新学期が始まった!
『次は麻帆良学園中央~』
電車の中でアナウンスが響き渡る。
「いや~いよいよ新学期やな~。これから一年よろしゅうな、せっちゃん」
「はい、まさかお嬢様とこうして一緒に登校できるとは・・・こちらこそよろしくお願いします。」
このかと刹那は二人、満員電車の中で笑いあう。春休み以前は距離をおいて生活していた二人にはとてもうれしい変化である。
そして、その変化のきっかけを作り、自身もココ最近凄まじい変化に見舞われた良太郎はというと・・・
「なんか・・・全然休んだ気がしないような・・・」
早朝の鍛錬を差し引いても良太郎の身体はいつものようにフラフラであった。春休みの思い出をふと振り返るとイマジンとの戦い、店の手伝い、いつもの不運と心休まる日など一日もなかった。彼の休みは休みではなかったのだ。
「もお、新学期なんだからしっかりしなさいよね良太郎! ほら、もう着くわよ?」
プシュウウウ・・・
学園鉄道はもっとも多くの生徒が降りる麻帆良中央駅に到着。一斉に生徒が降りて走り出す。
ガッ!
「あっ!」
バタン!
そんな中足を詰まずかせて転ぶ良太郎! もう一度言おう、ここで降りる生徒達は一斉に走り出す。当選倒れた者の結末は・・・
バタバタバタバタ!
「ぎゃあああ~~~~~!」
「「「良太郎さん(君)!?」」」
「ってなにソッコーで酷い目にあってんのよ!?」
多くの生徒達に踏まれ絶叫する良太郎。生徒達が走り去るとそこには、ボロゾウキンのように成り果てた良太郎の姿が。
新学期ということもあり、新しい私服(制服がないため)を着ていたがすでに中身ともどもボロボロにされ、身体中の足跡が残っていた。
「なんでこうなるの?・・ガクッ」
そう言って朝っぱらから気絶する良太郎、まだ始業式すら始まっていないというのに彼の不運は相変わらず朝っぱらからクライマックスだった。
「ちょっと良太郎!? こんなところで気絶してる場合じゃないわよ? 遅刻よ遅刻!」
気絶した良太郎を必死に起こそうとするアスナ、そこへ
「あっ、おっはよう!アスナ! ってうわ~朝からまた悲惨だね~良太郎っちは・・・」
人がいなくなった駅のホームでアスナたちを見かけたハルナたち図書館探検部の三人が現れた。
「おはようございますネギ先生」
「おはようございます宮崎さん。今日からまた頑張りましょう」
「はい―――」
前髪で隠れた彼女の顔は真っ赤に染まる。のどかに言わせれば実にラッキーな朝であるが、他の二人、夕映とハルナの興味は逆に朝から実にアンラッキーな男に向けられた。
「それにしても新学期早々から・・・」
「ホントよね~。ねぇ、ギネスとかに申請したら良太郎っち一番になれんじゃないの?」
「なんの記録よ? それより、ほら! 起きなさいって!」
ぐったりとなった良太郎を揺らし必死に起こそうとするアスナ
シュウウウン・・・・
「あっ!目ぇ覚ました!」
ようやく目を覚ました良太郎と思いきや。
「全く・・・良太郎にも困ったものだよね~」
(ってウラタロス~~~!)
立ち上がりパンパンと服についたほこりをはたくU良太郎、彼の視線にははじめてみる図書館三人組、特にのどかが写った。
「へえ、キミ可愛いね? こんな風に前髪で顔隠すなんてもったいないよ?」
「えっ?えっ!?」
そう言って何処から出したのか分からないカチューシャでのどかの顔を出すU良太郎、その行動に動揺するのどか、今の良太郎は彼女が最も苦手とするタイプのチャライ男性そのものである。その行動を見た夕映とハルナは唖然とした。
「あっ、もちろん君達も可愛いよ? どう、授業なんてサボって僕に釣られて「釣るなーーー!!!」バシッ!ゲフッ!」
お決まりの決め台詞を言おうとしたU良太郎の後頭部を思い切りはたくアスナ。なぜかウラタロスが一撃で良太郎の身体を離れた。
シュウウン・・・・
「ったくあのスケベ亀! また抜け駆けしやがって!」
「って今度はモモタロスさん!?」
「あや~」
安心するのは早かった。
「全く・・・俺だって乗り気じゃねーが久々に外に出るのも悪くねーし、あの双子のチビどもにも会ってやるか~」
昨日は興味がないと言っていたわりに久しぶりの外での自由に満更でもなさそうなM良太郎、退屈しのぎといったところである。
「つーわけで俺、参じょ・・「即、退場!」“ドカッ!”ハギャ!?」
シュウウウウン・・・・
本日二度目、先程より強力なアスナパンチがヒット!モモタロスも会えなく退場
「ア、アスナさん?なんだ良太郎さんの様子がさっきからおかしくないですか?」
「あ、アハハハハ!そ、そう?きっと打ち所が悪かったのよ!ホラァ、早く起きなさいってば良太郎!」
ピソピシピシピシ!
これ以上見られてはマズイ、そう感じたアスナは連続ビンタで必死に良太郎を起こそうとする。しかし彼は目覚めない。
・・・・・
そのころ食堂車では・・・
バキッ!
「「ゲフゥ!」」
強烈なキックが炸裂し吹き飛ばされるモモタロスとウラタロス、待っていたのは鬼より怖いハナだった。
「人がちょっとトイレにいってる間にアンタたちは~!」
「ま、待てハナクソ女!俺は良太郎のためを思って・・・」
「そ、そうだよハナさん、あのままじゃ良太郎も遅刻しちゃうし・・・」
「アンタたちがさっき言ったことは全部聞こえてたわよ?」
ゲシゲシゲシゲシ!
「「ギャアア~~~!」」
まるで虫を潰す画の如く二人を踏みつけるハナ、モモとウラの身体には良太郎同様、無数の足跡がついた。
「まあ、確かに大変そうね。ちょっと心配だけど・・・ワカマルス、頼める?」
「了解でござるハナ殿!」
シュウウウ・・・
・・・・・
シュウウン・・・
「ムン!」
ビンタされ続ける中、赤い瞳になって目を覚ますW良太郎。
「ゲッ、今度はアンタ・・・?」
他の二人よりはマシだと思いつつやはり嫌な顔をするアスナ、なぜなら鼻血とは別に彼のござる言葉も充分まずいからだが・・・
「オホン! もう大丈夫だよアスナちゃん。皆も心配掛けてゴメンね」
「え・・?」
至って普通の標準語で話すW良太郎に驚くアスナ。そんな彼女にW良太郎は誰にも聞こえないほど小さな声で言った。
「大丈夫でござるよ。拙者、実はサムライに憧れてわざとこういった喋り方をしていただけでござるから・・・実際は普通にしゃべれるんだよね」
(って、アンタキャラ作りしてたの!?)
アスナは真面目一徹なだけかと思ったワカマルスの意外な茶目っ気に驚く。
「ねえ、アスナ?今日の良太郎君って・・・」
「えっ? なななに?(やばっ!やっぱり気付いた!?)」
喋り方は大丈夫とはいえ、急に髪型などが変わったことがマズイかとぎくりとする。
「なんかカッコ良くない?」
ガクッ!
気付かれてないことに安心し力が抜けるアスナ。彼女にしてみれば虜太郎もW良太郎もハッキリ言って異性として特に意識したことがないのでハルナの発言は意外だったのだ。
そして、W良太郎はそんなハルナを見て真正面からこういった。
「お久しぶりです、えーと・・ハルナ・・ちゃん? この間はありがとうございました。」
「えっ?ま、まあ確かに久しぶりっていえばそうだけど?こないだって??」
W良太郎の言っていることの意味は分からなかったがきりっとひきしまった顔と、神秘的な赤い瞳で見つめられたハルナは少し顔が赤くなった。
W良太郎が言うこの間とはピジョンイマジン戦の時のことである。あの時落ち込む自分を最初に励ましてくれた彼女に対していつかお礼を言いたいとワカマルスは思っていたのである。
「クス・・・いや、なんでもないよ。 さ、それより早く行かないと皆遅刻だよ?」
伝わらなくても御礼が言え、満足したワカマルスはそう言って学校へと走り出す。ちなみにこの時の彼の走力は無論セーブしていたとはいえ、他のものを軽くぶっちぎっていたりした。(100メートル12秒台)
・・・・・
一時間後・3-A教室前廊下
始業式等を無事に済ませ、なんとか正体がばれずに済んだW良太郎であったが(そのルックスに何人かの女子が見とれていたが)ここで彼にとって最大の試練が訪れていた。
それはそう・・・身体測定であった!
「あ、あの・・大丈夫ですか、ワカマルスさん?」
「ダ・・ダダダイジョウブデゴザルルルル・・・」
ダラダラダラダラ・・・・
まだ肌寒い4月だというのに滝のように汗を流し、熟れたトマトのように顔を真っ赤にするW良太郎。鼻血爆発寸前といったところである。
タダでさえほとんど男性のいない女子校にいるという事実に加え、自分が今もたれかかっている薄い壁一枚のむこうに30人もの下着姿の女子がいるという事実。
そして、壁の向こうから聞こえてくる胸が最近大きくなったとかスタイルがどうだとかいう女子校特有のオープンな会話はワカマルスには刺激が強すぎる。
(お、落ち着け拙者・・・こ、ここで鼻血を吹けば殿のクラスでの心象は最悪・・一年通して“鼻血ブースケ”とかいわれかねん。なんとか耐えねば・・・逃げちゃダメだ・・逃げちゃダメだ・・・)
W良太郎は必死に己と戦い続けた。なまじ人間より耳が良いため余計鮮明に聞こえる女子の会話に耳を塞ぎ、精神を落ち着かせようとしたその時、廊下を走る一人の体操着の少女、和泉亜子が3ーAに向かって走ってきた。
「先生大変ーーー!まき絵が・・まき絵がーーー!」
「「「「「何!?まき絵がどうかしたの!?」」」」」
亜子の声を聞き、一斉にドアを開け、下着姿で顔を出すアスナたち
ブチッ!
「ひぎゃああああああ~~~~!!」
プシュウウウウウ~~~!
その様をもろに見てしまったW良太郎!
過去最高記録の鼻血を噴出し、まるで惨殺事件現場のように廊下を真っ赤に染め倒れた!
「きゃあああ~~~! 良太郎君が死んだーーー!?」
「ほ、保健室っていうか救急車!? いや霊柩車ーーー!!」
・・・・・・
数分後・保健室
「な~んだ大したことないじゃん」
心配で保健室まで見に来たネギやアスナたちであったがまき絵の無事を知り、一安心する。寧ろ無事じゃないのはまき絵の隣のベッドに担ぎこまれた良太郎だった。
「う~ん・・・う~ん・・・」
大量の出血で顔色を真っ白にした良太郎。既にワカマルスは分離したが相変わらず気絶しっぱなしであった。
(あれ?)
そんな二人を見ながらふとネギはまき絵から微かに魔力を感じるのであった。
・・・・・
放課後・食堂車
「全く・・・あんたらの所為で初日から大変だったじゃない!」
結局いまだ目を覚まさない良太郎を残し、今日の騒動に関わったモモタロスとウラタロス、それにワカマルスに文句を言いに来たアスナたち、ちなみにモモとウラには微塵の反省も見当たらない。
「あれ、そういえばワカちゃんは?」
「あん? むっつりなら医務室で生死の境を彷徨ってるぜ。ったく、あのバカのせいでまた良太郎の奴貧血じゃねーか! あっ、いないっていえばネギはどーしたんだ?」
モモタロスはふと今日は良太郎だけでなくネギが来ていないことにも気が付く。
「ああ、ネギだったら今日は用事があるって」
「なんや、吸血鬼の話を気にしとった様子やったな~?」
「・・・・・」
「ん? どないしたんせっちゃん?」
「あっ、いえ、なんでも・・・(いや、まさかあの人が動き出すなんて・・・)」
吸血鬼の正体をこの中で唯一知る刹那はまさかとは思いつつ、少しネギを心配した。
・・・・・・
それから30分後の午後7時
「ふう・・・半日ぐらい寝ちゃったな・・・電車から降りた後から記憶がないけど・・・」
ようやく目を覚ました良太郎は寮に戻ろうとふらつく足取りで桜通りを歩く。
サアアアア・・・
「えっ?」
そこで良太郎は誰もいないはずの桜通りで自分以外の妙な気配を感じるそして、振り返るとその先には・・・!
「フフ、32番 野上良太郎・・・・、貧血気味のところ悪いが少しだけ血をいただこうか?」
バサアア!
「わあっ!」
ガプッ!
そう言って吸血鬼は良太郎に飛び掛り、彼の首筋に噛み付いた!
チュウウウウウ・・・
「ひゃ・ひゃああ~~~」
タダでさえ貧血なのにこの上さらに血を吸われる良太郎!
果たして彼の運命は!?
・・・・・続く・・・・・
おまけ
【3-Aの違和感】
良太郎が目を覚ます直前の食堂車
「でも吸血鬼か~、アスナはいると思う?」
「う~ん、ついこないだまでは信じてなかったんだけどな~。魔法使いやタイムマシンがあるんだからいたっておかしくないかも・・・そういえばモモ、アンタはまきちゃんから変なにおいとか感じなかった?もしかしたらイマジンかもよ?」
「あん?・・・いや、つーかどーも、あのクラスの中は変なニオイが多すぎてわかんねーんだよ」
「変なにおい?」
「なんかこう・・・イマジンくささとかとは違う、人間以外のニオイっつーのか? そんなんがいっぱいあってよくわからねえ。そういや初めてチャンバラ女に会った時も違和感感じたな?」
「えっ?」
モモタロスの一言に動揺する刹那、まさか自分の最大の秘密を知られてしまうのでは!?
そう思った瞬間
パシッ!
「あいてっ!」
「あんまり女子の匂いを嗅ぐものではござらんぞモモ」
モモタロスの頭を軽く引っぱたいたのは死の淵より無事静観したワカマルスであった。
「あっ、ワカちゃん具合はもうええの?」
「うむ、今日はすまなかったでござる」
「ま、まあ、私達にも責任の一旦はあるしね・・・」
アスナたちに今日のことを謝ったワカマルスはそのまま刹那の向かいの席に座り小さな声で言った。
「心配ござらんよ刹那殿、モモも悪気があるわけではござらんし・・・」
「!! お前、気が付いていたのか?」
「ふふ、拙者は刹那殿の意識のから願いを聞いたのでござるよ? 悪いが全て承知でござる。が、なあに、誰にも言わないでござるし、深いことは聞かないでござる・・・ただ、これだけは、例えお主の正体を知っても、お主への態度を変えるような者はこの食堂車にはござらん・・・無論ここにいないネギ殿や殿も・・・」
「・・・ああ、ありがとうワカマルス・・・」
それは誰にもいえない秘密、例え変わらぬ思いがあっても、その翼を見られれば別れなければならない悲しい掟。
唯一それを見ずに真実に気付いたのは自らがイメージした、“自分自身を象った”友。
その彼に感謝しつつ、深く秘密をしまいこむ刹那であった。
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