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第50話 心動く一時。悪者コンビと野上姉弟 投稿者:仮面ライダーマンティス 投稿日:07/08-22:46 No.2653
2003年4月11日午後4時・デンライナー食堂車内
「なるほど・・・キミがネギ君のタダのペットではなく、
所謂“使い魔”だというのは分かりました・・・しかし、ペットはあくまでペット、動物嫌いのお客様もいらっしゃる都合上、こうさせていただきます」
ガチャ、
そう言ってカモはオーナーが持ってきた小動物用のペットの籠に入れられていた。
「そんな~」
「ははっ、いい気味だぜスケベカモ!」
「モモちゃんってカモ君が嫌いなんやな~?」
檻に入れられたカモを見て、笑うモモタロス。何故彼がそこまで毛嫌いするかというと・・・
「あん?だってこいつなんかウチのスケベガメと似てるじゃねーか!こーゆう奴はどうも信用できねーんだよ!」
「へへ、そういわねーでくださいよモモの旦那~! おれっちだってネギの兄貴のためならなんだってやるってゆう意気込みがあるんすから! で、今日は旦那方にお話があってきたんすけど・・・」
先日の事件後、カモはネギの目下の問題、エヴァとの戦いとパートナー不在という問題を解決するため、アスナたちとともにデンライナーにやってきたのだ。食堂車内には良太郎とキンタロス、ワカマルスそしてリュウタロスを除き、いつもの面子が揃っている。
「話ってのは他でもありやせん。モモの旦那をはじめ、ここにいるタローズの方々がいっちょネギの兄貴と仮契約してくれねーかとお願いしにきやした!」
「「「「「ええ~~~っ!?」」」」」
カモの提案に当然驚く一同!
詳しい話を聞いていなかったネギも驚いている。
「いや~~、前回のウラの旦那やリュウの坊ちゃんの戦いっぷりには驚かされました! 他にも後3人いるってんだからもうパートナーになってくりれりゃあこれ以上心強い味方はいやせん! どうっすかね?」
「フ~ン。ま、僕の強さに釣られたっていうのは悪くないけど・・・逆に僕らを釣ろうっていうんならそれなりのエサ、用意してるのかな?」
カモの出した突然かつ突拍子のないアイデアに耳を傾けるウラタロス。
「そりゃもちろん! パートナーになってくれりゃパワーアップは間違いなし!おまけに素敵な魔法アイテムもありますぜ!」
「ほう!」
「へ~」
カモのTVショッピング顔負けの宣伝トークになびくモモとウラ
「って、あんたたち勝手に話し進めてるけど、契約するのはあくまで良太郎なんでしょ?」
「そうよ! 大体・・・契約ってアンタ・・・良太郎とネギでその・・・」
と、そんなカモたちに釘を刺すハナとアスナ。昨日の一件で仮契約のプロセスを見たアスナは顔を赤らめていた。
「えっ? 良太郎はあくまで器でこの方達が本体じゃないんですか?」
「逆よ逆! あんなんでも良太郎が身体の主! ってゆーかアンタ、良太郎だけはかわらず呼び捨てなのね・・・」
「ええ~~~っ、そうなんすか・・・じゃあ、良太郎に直接たのんで・・「だからダメだっつの!」ムギャッ!」
イマジンばりの強引さで仮契約を進めるカモを踏むアスナ
「大体、ネギ。倒すっていうのがイマイチ納得いかないのよ! 一応あの二人だってクラスメイトなんだし、話し合いとかで何とかならないの?」
「せやな~、クラスメイト同士であんまり物騒な話はよくないやろし・・」
「甘いな、お二人さん。コイツを見てください!」
そう言ってカモは檻の中で自前のパソコンを広げ、まほネットに接続した画面を見せる。
「昨日調べましたがあの女、600万ドルの懸賞金が掛けられた大悪党ですぜ! 確かに女子供を殺したって記録はねーが、魔法界ではもうなまはげもビックリな奴なんすよ!? もし話合いで解決しようとかして、敵のところにいったらもうアウトですよ!?」
「えっ!?」
カシャーーン!
突如青褪めた顔をしてコーヒーカップをわる刹那
「どないしたんせっちゃん?」
「あっ・・いえ、実は良太郎さん・・・今そのエヴァンジェリンさんのご自宅にむかってるんです・・・・」
「なぬ~~~!?」
「ちょっとどういうこと!?」
「あっ・・いえ、良太郎さんの血を吸ってからずっと具合を悪くして休んでいられたことになんだか負い目を感じてお見舞いに行くと・・・。私も吸血鬼であることは知っていたのですが、まさかそこまですごいとは知らず止めなかったのですが・・・」
「それでワカちゃんたちおらんかったんか・・・でもまあ、ワカちゃんとキンちゃんがおれば大丈夫とちゃう? 大体、エヴァちゃんは良太郎君の顔見ただけで具合悪くなるようやったし・・・」
と、刹那をフォローするこのか、まあ、普通に考えて良太郎をどうにかできる人間は学園内でもそうはいない。
「し、しかし万一罠があったら・・・」
「大丈夫よ刹那さん。罠があろうとなかろうときっといつもどおりボロボロで帰ってくるって!」
このかに続きフォローを入れるアスナ。別に心配してないわけではないのだが、流石に付き合いが長いだけに、良太郎に対し、変な信頼感があったりするのであった。
「ま、まあ、良太郎のことはあとでとして・・どうっすかアスナの姐さん!ぜひ兄貴と・・」
「だからしないっての!」
「せっちゃんもウチがちゃんと魔法使いになったら仮契約してくれる?」
「えっ!?お、おおおお嬢様なにををを・・・!?」
・・・・・
同時刻
<しかし、本当によろしいのでござるか、殿? よりによって敵の見舞いに行くなど・・・>
「エヴァンジェリンさんも茶々丸さんも敵じゃないよ・・・それにやっぱり、ネギ君のことで話をしたほうがいいと思うし」
<せやでワカ。きっとあの娘、一人で苦しんどる! 誰かがそばにいたらな!>
<う、うむ。キンタの意見はともかく、敵に対しても気を使うその心はさすがは我が殿! わかりました。万が一の時はこのワカマルスが命に代えてお守りいたします。>
お見舞い用の花束を手に持ち、学園で教えてもらった住所へと向かう良太郎、歩道橋に差し掛かったところで、ある人物を目撃した。
「あっ!茶々丸さん?」
<ほう、お年寄りをおぶるとはなかなか感心でござるなあ>
道路をはさんで、茶々丸の善行を目撃する良太郎たち、よく見ると茶々丸の周りには他に彼女になついた子供達も何人もいる。
「なんだか・・・人気者だね・・・」
<うむ、とても悪い魔法使いの手下には見えん・・・>
<当然だよ!ロボのお姉ちゃんはみんなの人気者なんだよ?僕、こないだお菓子貰ったし!>
「ええ~~~っ!?」
何気ない初耳情報に驚く良太郎。どうやらリュウタロスもまた、自分の知らないところで勝手に身体を使っているらしい・・・・
引き続き、良太郎は茶々丸から少し離れた位置から歩いて追いかける。別に隠れているわけではないのだが、目の前にいる町の人気者の様子を少し離れたところから見ていたいと思ったのである。
するとそこへ、またしてもささやかなトラブルが起きた! 付近の人々がどぶ川に視線を向けているのである。その視線の先にはダンボールの箱に入った子猫が流されていた!
「・・・・」
その様子を見て、当然のように川に飛び込もうとする茶々丸だが、その行く手を遮る者がいた!
シュウウウン
「・・・野上さん」
「やめとき。女がどぶ川なんかに入るもんやない。こういうんは男の仕事や!」
バサッ
ドボン!
そう言って茶々丸の前に立ちふさがったK良太郎は持っていた花束を茶々丸にわたし、彼女の代わりに川に飛び込んだ!
「ふっ、もう大丈夫やで」
「ニャー」
「「「「「おおーーーー!」」」」」
パチパチパチパチ!
泥まみれになりながら子猫を助けたK良太郎にソレを見ていた人たちからの拍手が送られる。
「ありがとうございます。・・・随分汚れてしまいましたね」
「なあに、やっぱり女には泥より花が似合うってもんや! せやけどこのチビどないしようか?」
上がってきたK良太郎の姿を気遣う茶々丸、しかしむしろK良太郎は拾った子猫の方がきになっていた。
「それでしたこちらへ」
そんなK良太郎を茶々丸は自分の秘密の場所へと案内した。
・・・・・
十分後
「ここです。ここなら大勢仲間もいますし、エサや面倒も私が見ますから」
茶々丸がつれてきたのはかつて彼女とR良太郎が初めて会ったとある教会の裏手であった。
「おおきに・・・“シュウウウン”わあ!子猫が増えてる~!わーい!」
集められたたくさんの子猫たちにはしゃぐR良太郎
「・・・やはり、一つの身体に複数の人格を持つようですね。今の野上さんとは以前・・・」
「うん! 会うのは三回目だよロボのお姉ちゃん! 僕、リュウタロス!」
次々に人格が代わる良太郎の態度を冷静に分析する茶々丸に、R良太郎は良太郎の都合など考えずあっさりばらしてしまう。
ちなみに空白の二回目は桜通りの一件のつい数時間前であり、そのとき貰い物のお菓子を茶々丸から貰ったのだ。
「そうですか・・・これからエサをあげますが、一緒にやりますか?」
「うん♪」
淡々と話す茶々丸に対して人懐っこく答えるR良太郎。茶々丸はそんな彼にいつも自分になついてくれる子供達を重ね合わせた。
・・・・・
更に30分後
「そうですか、やはり多重人格」
「うん・・・茶々丸さんに見せたの以外にあと三人いるんだけどね・・・」
エサを上げたり遊んだりして満足してもらい、なんとかR良太郎から戻れた良太郎は、電王のことなどを除き、話せる限りのことを話した。自分が魔法について知っていること、学園長たちからエヴァの招待を聞いたことなどを
「それで、やっぱりネギ君を襲うのやめるって出来ないかな?」
「・・・申し訳ありません。私にとってマスターは絶対ですので」
なんとか穏便にことを済ませようと茶々丸に相談を持ちかける良太郎。まだ彼女のことはよく知らないが、少なくとも良い人物であり、人の話を聞いてくれるという確信があった。
「そっか・・・やっぱりエヴァンジェリンさんを止めるにはネギ君が戦って勝つしかないのかな?」
「現状、パートナーを持たないネギ先生に勝つ賞賛は限りなくありません。」
「・・・分かった。色々ありがとう。あっ、これお見舞いの花。僕が行ってまた具合悪くしてもあれだし、一応話を聞くことが出来たから」
そう言って花束を茶々丸に渡し、良太郎は少し考え込んだ後、決意を決めたような顔をしていた。
茶々丸はそんな良太郎の表情が気になった。ネギと自分が危険という状況が全く変わってないにもかかわらず、ある種晴れやかな顔をする良太郎の表情が、
「野上さん、一つお聞きしたのですが」
そう言って良太郎を引き止める茶々丸。彼女がクラスメイトに対し、こういったアクションを起こすのは非情に珍しいことだ。
「野上さんは今、ネギ先生以上に危険な状態ともいえます。今回の件、どのように動くつもりですか?」
「このあいだ言ったのと変わらないよ。僕は僕にしか出来ないやり方で、何かしようと思う。多分だけど、それは茶々丸さんの気持ちを傷つけない方法だと思う。」
「私の気持ち?」
「うん、茶々丸さんは絶対にエヴァンジェリンさんを裏切れない。けど、それとは別にネギ君を傷つけたいとも思っていない。だから、僕がやることがうまくいったら、ネギ君も助かって茶々丸さんの心もきっと楽になると思う・・・」
「・・・・・」
そう言ってその場を去った良太郎の後姿を茶々丸はしばし見つめていた。
「野上さん・・・野上良太郎・・・・」
『やっぱ女には花の方が似合うで?』
自分を機械ではなく女性として気遣った。関西弁の男・・・
『僕はリュウタロスだよ♪』
動物を愛する人懐っこい少年・・・
『君の気持ちが楽になる方法・・・・』
そして、決裂した交渉にもへこたれず、あくまで他者のために出来ることをしようと一途に考える少年が、何故か気にせずにはいられない茶々丸であった。
・・・・・
少し時は戻り午後3時50分・ミルクディッパー内
「学園長先生が来てくれるなんて久しぶりですよね~、誰かと待ち合わせですか?」
「いや~、孫がいつもお世話になっておるでの~。何より愛理ちゃんの顔も見たかったしの~」
デレーっとした表情でカウンター席から愛理に熱い視線を送る学園長。何を隠そうこの人も、他の客と同様、愛理信者であったのだ。
(ほほほ・・・・愛理君は本当に美しくなったのう・・・う~む、桜井君には悪いがわしもまだ30年若ければのう)
「なに気持ちの悪い笑みを浮かべているんだジジイ?」
「お待たせしました学園長」
と、そんな学園長のところにエヴァと高畑がやってきた。
「おおっ、来たかエヴァンジェリン!」
「わざわざこんな所に呼びつけた理由はなんだジジイ? 私に釘を刺すだけなら、いつもどおり学園長室に呼びつければいいだろう」
「まあまあ、ここのコーヒーはなかなか絶品じゃぞ? 愛理君、まずは二人にもブレンドをお願いできんか?」
「は~い」
突然呼び出され、ぶすったれた表情のエヴァ。学園長がそんな表情などある種予想通りとあまり気にはせず、愛理がコーヒーを造るのに集中している間、本題に入った。
「さて・・・、今回呼び出した理由については・・・もう、わかっとるじゃろ?」
「フン、貴様らこそわかっているはずだ。ここで釘を刺した程度で私は行動を中止したりせん! それとも力尽くで私を抑えるか?」
そう言って二人を挑発するエヴァ、その幼い顔とは対照的にその表情は、二人がネギの成長のためにあえて今回手を出さないと見抜いた鋭さがあった。
「クク、ぼーやに期待することだ」
「う~む、やはりそうか・・・じゃったらわしも“ある手段”でおぬしをしばし牽制せんといかんのう・・・」
「?? また何か企んでいるなジジイ・・・」
学園長はそんな彼女の態度をさらに見抜いていたかのような態度を取る。老人と見た目10歳くらいの少女、二人の会話は実はこの学園内で一番目と二番目に年をとった者たちの会話とは誰も思っていなかった。
「お待たせしました~」
二人の会話が終わったところに愛理がちょうどいいタイミングでコーヒーを持ってきた。
愛理は、はじめてきたエヴァに興味津々であった。
「その制服ってアスナちゃんと同じ制服・・・もしかして良ちゃんのお友達ですか?」
「良ちゃん・・・?」
「ああ、紹介が遅れたのうエヴァ。コチラは良太郎のお姉さん野上愛理ちゃんじゃ、愛理ちゃん、こいつはこのかたちのクラスメイトで・・まあ、わしの囲碁友達のエヴァじゃ」
「の、野上良太郎の姉だと!?」
良太郎の名前を聞き、エヴァは激しく動揺する。対照的に愛理はアラ~と言った感じで至って落ち着いている。
「随分良太郎君の名を聞いて動揺しているなエヴァ?」
「ど、動揺などしていない! ただ、あの男のせいで私はここ数日ロクでもない目に遭っているから名も聞きたくないと思っただけだ!!」
まるで自分が良太郎に怯えているかのような発言に腹をたてるエヴァ。だが、実際、彼の血を吸ってからのここ数日、身体が鉛のように重く感じるなどの倦怠感におそわれ、良太郎の顔を見ると急激に腹が痛くなり、昼間はずっと保健室通いか早退、挙句、異常ともいえる不運に見舞われ続け、最悪の日々を送っていた。
「・・・昼頃になってようやく奴の血の効果も薄まり、こうして平穏にしていられるが・・・全くとんでもない男だ!」
「あの~、ウチの良太郎がまたなにかやっちゃいましたか?」
事情は分からないがとにかく良太郎が不運から何かしでかしてしまったのではないかと申し訳なさそうにする愛理、そんな悲しげな愛理に表情に見せ中の客の視線が集まっていた。
(うぐ・・・なんだこの女・・・なぜ、たかが喫茶店の店主ごときの一喜一憂がこれほどの男を動かすんだ? てゆーかなんだ、この店の異常さは!?)
ここで初めてエヴァはライブラリーカフェ・“ミルクディッパー”の異常さに気が付いた。
良く見ると大半を占める男性客のほぼ全員がただただ、愛理を見つめ、夢中になっている。その姿はかつてその魔力と幻術、美貌で数々の男を魅了した自分に匹敵するとさえ感じた。
ただ違うのが、本人が全く己の魅力に気が付いていないということであるが・・・
そんな愛理に敵対心だか恐怖を抱いたのか、エヴァはつっかかろうとする。
「フ、フン・・・の、ノーテンキそうで、幸せに浸りきったようなぬるい顔だな?」
「そう? ふふ、毎日お客様もいっぱい来て良太郎もお友達が多いから結構幸せですよ?」
「う・・・、ほ、星なんていう手の届かないものに興味をもつなんて物好きだな?」
「あらそう? 決して辿り着けないのに、見上げればいつもそこにある光って素敵だと思わない?」
しかしこの天然の愛理の前には、600歳を超える老獪ともいえるエヴァのイヤミも通用しない、
「エヴァちゃんは星がキライ? 夜空にあるたくさんの星の中には、きっとあなただけの幸運の星があると覆うんだけどな?」
「・・・・フン、私の幸運の星など、とっくの昔に消えうせたよ・・・」
愛理の言った一言に、悲しみに満ちた人生を振り返るエヴァ、もし自分にもそんなものがあるならそれはきっと10年前のあの日、あの男の死を聞いた日に消えてしまったとしか言いようがないと考えていた。
「大丈夫よ。星の輝きはね、何千光年も離れた場所からずーっと降り注いでいるの。だから、たとえ消えていたとしてもその輝きはこれからもエヴァちゃんのこと照らし続けると思うわよ?」
「消えても照らし続ける輝き・・・」
愛理の言葉に不思議と聞き入ってしまうエヴァ、今、彼女の頭では“幸運の星”というのはナギへと置き換えられていた。死んだといわれて尚、呪いと消えない思いを自分に残し、今尚自分の心に強く輝き続ける存在、それが自分を幸福にするとは思えないと頭では考えつつ、愛理の大丈夫という言葉、不思議と身体が反応してしまう自分がいた。
ズズ・・・
「・・・・うまい」
少し考え込んだ後、初めて愛理のコーヒーを口にし、正直な感想を述べるエヴァ、暖かなその温もりと味は、自分の好きな茶々丸のお茶とならぶほどおいしかったという。
「良かった♪ 何かとご迷惑をおかけすると思うけどこれからも良太郎と仲良くしてあげてね?」
「・・・・ああ」
思わず頷いてしまったエヴァ、彼女の今日までの良太郎の憎悪を考えると、例え姉の前でも怒りを爆発しそうなものだが、やはり愛理の前ではとてもそんな気になれなかった。
(この女・・・少し苦手だ・・・)
一見して世の中のつらい現実が何一つ分かっていないようなノーテンキさを漂わせる愛理は本来、エヴァの最もキライと感じる人間だったが、彼女の言葉には不思議な説得力・・・深い人生観があった。そんな彼女に苦手意識と同時に興味のような感情をしめしてしまうエヴァ、それは、愛理もまた、エヴァと同様、無意識のうちに“消えてしまった星”を求めているからかもしれない・・・
「オホン、さて、愛理ちゃん、実はさっき話した娘とはこの娘のことなんじゃが、どうか例のもの分けてやってくれんかのう?」
エヴァの様子が落ち着くのを見計らって、学園長は愛理にある物を注文した。
「そうだったんですか?じゃあ、もってきますね~」
そういわれ慌てて何かを用意する愛理
「なんだ?」
「いやあ、実はのう、お主の体調が優れんと話したら愛理ちゃんが是非にと進めてくれるものがあったんじゃよ」
不適な笑みを浮かべて話す学園長にエヴァは猛烈にやな予感がした。
「ハイ、特製のネギニンニク入りジンジャエールよ♪」
「なあっ!?」
カウンターに置かれたおぞましいニオイを放つ飲み物に驚くエヴァ!
そこには、愛理が良太郎のために用意した一般的に考えてとにかく元気が出そうなもの、そして、吸血鬼にとってのキライな食べ物ベスト3を集約した悪魔の飲み物があった。
「良ちゃんにも毎日のませてるのよ? たくさん飲んで元気出さないと幸運の星が逃げちゃうわよ?」
「い、いい! 私は遠慮・・・「ダメよ~」」
逃げようとするエヴァを引き止める愛理、そこには温和な外見とは裏腹の彼女独特の強引さがあった。
(ぐぐ・・やっと体調が戻ってきたというのに・・・ハッ!まさか!!)
(フフ、計画通り・・じゃ)
エヴァが気が付いて振り向くとそこには夜○月のような笑みを浮かべる学園長がいた。そう、これが先程学園長がいったある手段であった。
(ジジィーーーー!!!)
「さ、飲んでねエヴァちゃん♪」
気付いたもののとき既に遅し、笑顔を崩さぬまま己に恐怖のジュースを勧める愛理からは逃げられず後ろでは高畑がご愁傷様という顔で見ている。
(うおおおおーーーなんでだーーー!?)
“闇の福音”が男達を魅了する“麻帆良の魔女”に敗北した瞬間であった・・・・
・・・・・・
午後5時30分・エヴァンジェリン自宅
「うう・・、今帰ったぞ茶々丸・・・」
「マスター!どうなさいました?」
フラフラな状態で帰ってきたエヴァに驚く茶々丸、
「くっ・・・!ジジイにいっぱい食わされた・・・週末は動けそうにない・・」
戻りかけた体調がすっかり悪化したエヴァを茶々丸がベッドに運ぶ
「ん? なんだ、その花は?」
「ハイ、野上さんがお見舞いにと」
ベッドの横の花瓶に飾られた花に目を向けたエヴァ、しかしその送り主の名を聞いて、怒りがこみ上げてきた。
「野上だと~~~!?」
姉に手も足も出なかったことへの屈辱感と今の自分の苦しみ、その全てを良太郎のせいと決め付け怒りが込みあがるエヴァ、思わず花瓶を割ろうとするが、そこで、それをなんとなく悲しそうに見ている茶々丸を見て、思いとどまった。
「・・・・フン、物に八つ当たりするほど私もおちていない・・トイレにでも飾っとけ!」
「・・ハイ、マスター」
花が無事だったことに少しだけ安心した顔を見せる茶々丸、その後良太郎の花束は半分は言われたとおりトイレに飾られ、半分は滅多に使わない茶々丸にあてがわれた自室に飾られたという。
・・・・・続く・・・・・
おまけ
【デンマギ情報】
モンキーイマジン・・・2003年の現代にやってきた未来人のエネルギー体がアーノルド・オクレールが思い描く“西遊記の孫悟空”からサルをイメージしてこの世に現出した姿、アーノルドの“このかとの縁談を成功させたい”という望みを叶え、過去へ飛ぶことを目的とする。
一撃で鋼鉄の塊さえ砕く棒を武器に強烈勝つトリッキーな攻撃を得意とし、また、髪の毛で自分の半分程度の能力を持つコピーモンキーを作り出すことが出来、息の合った集団戦も得意としている。
アーノルドの望みをかなえるためこのかをさらったが、それがリュウタロスの怒りにふれ、その圧倒的な力の前に手も足も出ず、ワイルドショットの前に無残に敗北した。
孫悟空のアイデアは複数あったのでここではあえて特定の名前は割愛させていただきます。皆様ありがとうございます。
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