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第55話 天使の囁き。憎しみが心を満たす時 投稿者:仮面ライダーマンティス 投稿日:07/22-23:06 No.2728  

2003年4月13日午後8時・学園都市外れにある橋

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル・・・」

パアアア・・・

杖を片手に呪文を唱えるネギ、既に日が沈み暗くなった橋の上で魔法光が灯る。

「ふう、ここはこれで、念のためもう2,3箇所にも同じものを・・・」

ぶつぶつとそう言いながら移動の準備を進めるネギをペンギン着ぐるみのウラタロスと象着ぐるみのキンタロスが眺めている。

「ふ~ん、捕縛用の罠?」

「はい、あんまり考えたくはないんですけど、結局戦うことに鳴った時のために・・・僕が都市の外に逃げることしか考えてないように見せかけて油断させたところを・・・って思ったんです」

「なるほどねえ~、なかなか頭いいじゃないネギ君」

相手の考えを分析した上で作を作り出すという10歳とは思えない頭を使った作戦に寒心するウラタロス、考え方として自分に近いところがあるのもそうだが、何より自分以外のタローズでこのように策を弄するタイプの仲間が今までいなかったので妙にうれしく感じたのだ。

「いえそんな・・・それよりお願いがあるんですけど・・・もし今度の満月の夜に僕がエヴァンジェリンさんと戦うことになってもその・・手出しは無用でお願いします・・・なんとなくなんですけど、あの人には僕が勝たなきゃいけない気がするんです・・・・」

噂に名高い『闇の福音』と戦うこと、その恐怖を飲み込んだ強い意志のこもった瞳でウラタロスたちにお願いをするネギ、経緯はどうあれ憧れの父サウザントマスターが封印をしたエヴァンジェリンの夢を見て改めてその事実を確認したネギは心からそう思った。
自分と戦って決着をつけなければエヴァは納得しないだろうし、自分もまたこの先、父を追うことなどできないと感じたのである。

「ふ~ん。なんかちょっと戦う時の良太郎に似てきたかもよネギ君?ま・先輩あたりはガタガタうるさそうだけど僕は『他人の釣竿にはちょっかい出さない主義』だから安心していいよ」
「うん!それでこそ男やネギ!!ドーンとぶつかってあの娘がかかえとるもんをとっぱらってこい!俺らはしっかり見守ってるからない!」

そんな少したくましくなったネギの考えを汲み取り、手を出さない誓いを告げるウラタロスたちであった。

・・・・・

同時刻・食堂車内

「あん?戦う時のコツだあ?」

夕食も終わり、明日に備えて寝るだけの時間なのだが、なぜかアスナはパジャマのままデンライナーに入りモモタロスを尋ねてやってきたのだ。

「うん、ほら、このままだとエヴァちゃんたち来月の満月の時とかにまたネギを襲うかもしれないでしょ?・・・・一応、パートナーになった手前やるからには足をひっぱりたくないの、今度から良太郎と一緒に刹那さんから剣道習うことにしたんだけどそれでもあと3週間しかないし・・・」

「ハハ~ン、なるほど、それで一番強くてカッコイイ俺の闘い方を参考にしたいってわけだな?」

一応頼みごとをするというだけたって今までモモタロスに見せたことがないような殊勝な態度で頼みごとをするアスナにコーヒーを飲みながらデカイ態度をとるモモタロス、夕方頼りにされなかったこともあり、凄くうれしそうにしているが・・・

「ううん。アンタってホラ、あんまり専門的なことは分からないけどやたらと無駄に動き回ってガキみたいに馬鹿丸出しのかっこつけの戦い方をするくせにいつも強いじゃない? どうやったら私みたいな素人でもそんなことができるんなだろうって考えたの、なんかコツとかないの?」

ガクッ!

大分変わった期待のされ方であるといえる。
馬鹿丸出しといわれたモモタロスは一気に怒り出した。

「誰がバカだくまパン女!オメーに言われたくないんだよ!大体なあ、コツもクソもいつもいってんだろ!俺が最高にカッコよくて強いのはいつも最初っから最後までクライマックスだからだ!カメみてーにせこいマネもしねーしムッツリみてーにお行儀よくもねえ、やりたいように徹底的にやるのが本当の戦いってもんなんだよ!!」

「う~ん、やりたいようにねえ・・・」

なんとなく予想はしていたが、やはりイマイチぴんとこない答えに悩むアスナ、それでも彼女がわざわざモモタロスを尋ねたのはなんとなく性格というか、全体的な雰囲気や自分でもよくわからない自身の戦闘スタイルがモモタロスに似ているからと無意識に感じているからであった。

「ま・ネギがどうしてもっていわなきゃ俺も良太郎もちょっかいださねーんだ。しっかりやれよな?」

「あれ?てっきりアンタのことだから首つっこむかと思ったけど意外ね?」

「あん?・・・まあ、アレだ、お前らも俺の子分だからな。何だかわけわかんねえこうもりチビ女ぐらいにおくれをとんじゃねえってんだよ。良太郎も『二人ならきっと大丈夫』とかいってたしなあ」

アスナから顔を逸らすモモタロス、心配しているのを悟られないようにとしていた。

「誰が子分よ・・・でもまあ、やるだけやったげるわよ!クラスメイトと居候の問題だしね」

「おうよ、とにかく徹底的にクライマックスで決めろよな!」

そう言ってお互いにガッツポーズをとる二人、お互いに子供なのに頑張るネギを心配し、出来る限り協力するのに根が素直じゃないところなど本当にそっくりである。
ネギとアスナ、それぞれが自分のやるべきことを自覚して約三週間後にくる次の満月にそなえようとするのだった。
本当の危機がもう目の前に迫っているとも知らずに・・・

・・・・・

2003年4月14日午前8時30分・3-A教室

「起立ーーーっ、礼!」

(ふぁああ~~、ちょっと遅くまでやりすぎたかな?ダメダメ!今日もしっかり先生としてがんばんないと!)

そう思い眠たげな眼をこすってあくびをかみ殺し教室に入るネギを朝の挨拶で迎え入れる生徒達、ネギはその中でここ一週間ずっと空席だった机に人が座っていたことに驚いた

「エヴァンジェリンさんどうして!?」

「・・・フン、昨日は世話になったからな、授業くらいはでてやろうと思っただけだ。」

「あ、ありがとうございます!わ~うれしいな~」

昨日は追い出されるようにかえって、正直ますます怒らせたかと考えていた分、まさか授業にきてくれるなどとはと大喜びするネギ、よほどうれしかったのかその後も上機嫌で授業を進めるのであった。

(へー、何があったか知らないけどなんか大丈夫そうじゃない)
(う~ん、あのエヴァンジェリンがそう簡単に改心するとは思えねーんだけどな~)

戦いは避けられるものと楽観視しするアスナとは逆に何か裏があるのではと悲観視するカモ

(フン・・・今夜どうなるとも知らず呑気なぼーやだな・・・)

「あの・・・具合は大丈夫?」

自分が授業にきたくらいでやたらとハイテンションになる楽観的なネギに呆れるエヴァンジェリンに話しかける良太郎、彼を見てエヴァンジェリンはさらに不機嫌になった。

「フン!貴様の所為で最悪の一週間だったよ。全くあそこまで私をコケにした男は貴様が三人目だ・・・」

「えーと・・・ごめん」

露骨に自分のことを嫌っているとわかり、つい謝ってしまう良太郎

(フン、血を吸ったのは私だというのに謝るなんてやはり妙な奴だな・・・かと思えば先週といい・・・こいつ本当に何者だ?)

凶暴そうに見えたと思ったら天然バカ力だったり、今みたいに妙におひとよしだったりと未だに良太郎と人物をつかめないエヴァ。唯キライといってもどのようにキライなのか自分でもよくわからなくなっている様子であった。

・・・・・・

午後3時30分・中等部校舎屋上

「・・・うむ、では間違いないのだな?」

「ハイ、やはりマスターはサウザントマスターによって掛けられた『登校の呪い』とは別に大量の電力消費によって学園を包み込んだいわば学園結界によってその力が押さえ込まれているようです」

人気のない屋上で、先程こっそり忍び込んだパソコンルームで調べた学園に関する情報をエヴァに報告する茶々丸。彼女の話を聞き、エヴァは思わず笑みをこぼしていた。

「フッ、10年以上気付けなかった・・・いや、ジジイが意図的に伝えなかったのだろうな・・・だがそれが逆にチャンスでもある。ぼーやもまさか満月までまだ3週間以上もあるこの時期に襲われるとはおもわんだろうし、さすがにパートナーもまだいまい。加えて助けを呼びにくい停電という状況・・・いけるな・・・フハハハハッハ!」

あらゆる要素から勝利を確信し高笑いををするエヴァ、この時点ではネギがパートナーを既にもっていることにも気付いていなかったのもあり、その勝利はゆるぎないものだと思っていたが、

ツルッ!

「あっ、マスター」

ビターン!

「ヘブゥ!」

そんな彼女にもたった実は一つだけ不安要素があった・・・
そう、それは何の前振りもなく突然なぜか中等部の屋上に落ちていたバナナの皮に転ぶような、ありえないかつ理不尽な・・・

「やはりまだ良太郎さんの血の影響が残っているようですね」

「っくぅ~!このわけのわからない呪い(?)を断ち切るためにも一刻も早く完全な復活を果たし、私をこんな目に合わせた野上良太郎を八つ裂きにせねば!私がこの一週間味わった苦しみを全て倍にしてかえしてくれる~!!」

顔から鼻血を流しながら復讐に燃えるエヴァであった。

・・・・・

同時刻・中等部校舎内購買部

「あいたた・・・・なんであそこにバナナの皮が・・・?」

「あいかわらずすごいですね・・・何故か階段の前にあったバナナの皮に滑って階段から落ちて、おまけにたまたま階段の掃除のために置かれたバケツにつっこむなんて・・・」

先程『倍の苦しみを与える』と言われていた良太郎だったが、既に彼女の感知しないところで当たり前のように酷い目に遭っていた。やはりちょっと血を吸っただけのエヴァより本家の運のなさは桁違い(?)といえる。

「ホンマに良太郎はすごいなあ~、コラそれこそイマジンでもでーひん限り、今夜は部屋でおとなしゅうしとったほうがええんとちゃう?」

「今夜?・・・・ああ、年に二回あるって言う学園都市全体の一斉メンテナンスでしたっけ」

そう言ってネギは今朝の職員会議のことを思い出していた。
今夜は生徒達は午後8時以降は全員外出禁止、先生は各々停電が終了する午前0時まで見回りをするという決まりである。たったいま良太郎たちが帰るため通りかかった購買部でも“停電SALE!”の名目でろうそくなどが安売りされている。

「そういえばそうだったね。姉さんも今日は店は夕方前には閉めるっていってたっけ。」

「ならアンタはもう部屋でおとなしくしてた方がいいんじゃない?誰も外に出ないんならイマジンだってでてこないでしょ?」

「そうだね。たまにはのんびりできるといいなあ」

そう言って呑気に構える良太郎たち、まさかこの数時間後、予想もしない大変なことになるとは誰も思っていなかったのであった。

・・・・・

午後7時59分

ジジ・・

『ーーーこちらは放送部です・・・これより学園内は停電となります。学園生徒の皆さんは極力外出を控えるようにしてください。』

ザザ・・

ノイズまじりの放送が学園内に響き渡るころにはもう誰も外に顔を出しておらず、学園都市はかつてない静けさに包まれていた。

フッ、

そして午後8時、予報どおり一斉に電力が消え、暗闇が都市を包んだ。
真っ暗になった町では、不気味な色の空が印象的だった・・・

・・・・・

アスナ・このかの部屋

「じゃ、私は先に寝るから、お休みこのか、刹那さんもゆっくりしてってね・・・それと良太郎、ウラが外に出ないようにちゃんと完全に締め出してから寝るのよ?」

「うん、今日は停電が終わるまでせっちゃんとおしゃべりしよってはなしやったしな~」

「は、はい・・・」

うれしそうにするこのかの微笑をみて顔を赤くする刹那、アスナは一足早く休み、ネギも見回りでいないという二人きりの状況がうれしいような、はずかしいようなといった複雑な心境を作り上げていた。

「じゃあ、僕も邪魔しちゃ悪いから部屋に戻るね」

そんな刹那の心境をよんだのか、アスナたちの部屋をでようとした良太郎、その時、

ゾクッ!

「ひゃっ!」

突然首筋のほうから得体の知れない悪寒が走った良太郎、思わず声を出してしまった。

「どないしたん良太郎君?」

「わかんない・・・でも今、何かに呼び寄せられたような・・・そんな気持ちになって、そしたら首筋から寒気が・・・」

「呼び寄せられる?・・・まさか!良太郎さんちょっと」

ソレを聞いて何かに気付いたらしい刹那は慌てて良太郎の首筋を見る。するとそこには一週間前には消えていたエヴァに噛まれた後が浮かび上がっている。

「聞いたことがあります・・・。吸血鬼に噛まれた人間は半吸血鬼化して、操り人形になると・・・」

「えっ?でも今までそんなの一度も・・・」

「きっとエヴァンジェリンさんの魔力が封印されていたのが原因でしょう。おそらく良太郎さんの場合、吸われた血の量が少なかったから操られなかった・・・」

TRRRR・・・・♪

驚く一同、その時、既に眠っていたアスナの携帯に呼び出しが掛かった。

「・・・もしもし?・・・ネギ?えっ!?ウソ!!エヴァンジェリンが!?」

「「「!!!」」」

そこに聞こえたエヴァという名に振り向く三人

「えっ・・・うん分かった・・・何言ってんのよあたりまえでしょ?・・・うん分かった。橋で待ち合わせね?」

ピッ、

「どうかしたのアスナちゃん?」

アスナが携帯を着ると同時に内容を聞きたいと近づく三人、アスナも聞いただけで事態がよく飲み込めていないなりにことの事情を話した。

「うん・・・良く分からないんだけどエヴァンジェリンが元に戻っちゃって今、呼び出された大浴場にむかってるんだって・・・」

「やはり・・・・それでネギ先生はなんて?」

「うん・・昨日決めたんだけどもし万が一こういうことになったらあらかじめ集合する場所を決めたから、ネギがそこにひきつけるまでにむかっちゃう!」

そう言ってアスナは急いで制服に着替えをすませ(無論良太郎はこの時慌てて目を瞑った)、契約のカードを手に外に出ようとした。

「僕も行くよ! 手は出さないつもりだけど万が一寮の人たちが巻き込まれた時のためにも!」

「私もご一緒します!」
「ウチも!」

そう言って一斉に仕度を済ませ大浴場へと向かう良太郎たちと別方向から橋へと向かうアスナ、当分は何事もなく済むと思ったエヴァとの決戦が今はじまろうとしていた!

・・・・・・

数分後・女子寮内大浴場

「・・・・これは一体・・・!」

教会の神父ラズウェル・シンフォニーは目の前で起こっていた光景に言葉を失っていた。
力を失っていたエヴァはその邪悪な力を解き放ち、あまつさえ何も悪いことをしていない4人の少女を操り人形にし、10歳の少年をいたぶっていた。

・・・・・・

4月13日に時間が戻る

「私の・・・過去?」

突如現れた謎の老紳士の言葉に驚きの色をしめすラズウェル、老紳士=ブローカーはそんな彼の心のうちすら見透かした上で穏やかな笑顔と口調で囁いた。

「そうです・・・ラズウェル・シンフォニー神父、年齢は今年30で神父の傍らNGO団体“天空の導き”に参加、治癒系統の魔法をつかいこなす魔法教師・・・いや神父でもある。大変ご立派な経歴です。その上父親は優れたヴァンパイアハンター・アズマイラ・シンフォニー・・・いやいや進んだ道は違えどなかなか親子そろって大したものです。で、ここからが誰も知らないあなただけの秘め事・・・」

黙々とラズウェルの経歴を語るブローカー、続けて彼の中に眠る記憶の闇を掘り起こそうとする。

「お父上が亡くなられたのは今からちょうど20年前、当時ヨーロッパで城を構えていた闇の福音を見つけ出し、討伐しようと挑むも返り討ちにあわれた・・・」

「・・・・・」

「その後、あなた自身、一度は父の敵を撃ちたいとヴァンパイアハンターを志すも、戦闘向きの資質に恵まれなかったことと、罪を許すというクリスチャンの精神からその黒い感情を内に秘め、今日まで封印してきた・・・ですが本当にそれでよろしいので?」

「な・何を言ってるんですか!?わ、私は・・・」

「ほう・・・では何故就任先に彼女がいるこの地をえらんだのですか?」

全てを見透かしたように言葉巧みにラズウェルの最も答えにくい質問をぶつけてゆくブローカー、心のうちに秘めた醜い本性がさらけ出されそうになる恐怖からラズウェルは強い口調で反発しようとする。

「そ、それは!私自身がもう過去と訣別したから・・・」

「訣別?ハハハッ!これはおかしなことを仰る・・・」

突然笑い出すブローカー、しかししばらく笑った後、冷たさを漂わせた真剣な顔でこう語る。

「人がそう簡単に過去と訣別できるわけがありません。もし仮にアナタがアナタの過去を全て捨てて生きたとしても、それはもはやあなたではない! 極端な言い方をすればただのたんぱく質の塊とすらいえます! アナタがアナタである限り、その胸に秘めた思いは生涯消えることはないでしょう・・・」

「ぐ・・・・」

「その憎しみを取り払う方法は唯一つ・・・おおっと、失礼。結局のところ、選ぶ選ばないはアナタの自由です。ですが念のためこれをお渡ししておきましょう」

そう言って老紳士は持っていた高級そうな鞄から10センチ四方の小さな箱を取り出し、ラズウェルに渡した。

「アナタが心からかなえたい望みが出来た時その箱をあければアナタの望みを何があっても完遂してくれる“天使”が現れるでしょう」

「私は・・・こんなものは使わない。そして得体の知れない力で人の心を惑わすあなたをこのまま黙って帰しはしない!」

そう言って杖を構えようとするラズウェル、正直な話ブローカーの言うとおりこと戦闘に関しては武装解除くらいしか使えないが、それでも、この人の闇に付け込む男を逃がすわけにはいかないと考えたのだ。しかし、ブローカーは構えるどころか逃げる素振りすら見せずに最後にこう告げた。

「ああ、そうそう、明日の夜、停電が起きる時間帯に中等部の女子寮に言ってみるといいですよ? そうすればきっとアナタの本当の心が表れると思います。では」

突然消えるわけでもなく普通に歩いてその場を去ってゆくブローカー、しかしラズウェルはなぜかソレを追いかけることも、渡された箱を手放すことも、学園長にこの出来事を報告することも出来ず彼の言うとおり停電の時間をまっていたのだ・・・・

・・・・・・

(ぐ・・・力を封印され、永きにわたって平穏の中を過ごして尚、求めるのは力だというのか・・・・!)

目の前で起きている光景から、深い絶望を感じ、しばらくその場にひれ伏すラズウェル、あまりにも精神的なショックが大きかったのか、ネギが杖に乗ってその場を去り、茶々丸と共にそれを追いかけたエヴァにも気付かないまま数分が経過し、そこに良太郎たちが駆けつけた。

「今すごい音がしたけど・・・あっ!和泉さんに大河内さん!」

ネギたちが戦っている音が気になりつつ、良太郎たちは大浴場で倒れている亜子とアキラの元へ駆け寄る。

「やはり首筋を噛まれています・・・さっきの音といい、やはりまちがないようですね・・・」

「ひゃあ!あっちには裕奈ちゃんもおるで!?」

大浴場でハダカで倒れているクラスメイトを介抱するこのかと刹那、彼女達もまたこの部屋を眺め絶望しているラズウェルに気付いていない。

「と、とにかく後を追いかけなくちゃ! 刹那さんにこのかちゃん、ここはお願い」

そう言ってあらかじめアスナから聞いておいたネギの目的地へと向かう良太郎だったが、それを止めるものがいた。

シュウウウウン!

<モモタロス?>

「待て良太郎!・・・くんくん、匂うぜ、アッチのほうにあるデカイ魔法の匂いにまぎれそうだったけど・・・あれだ!あそこにいるおっさんからイマジンの匂いがするぜ!」

そう言ってM良太郎が指差した先にいたのは当然ラズウェル神父、ココに来てようやく彼の存在に気付いた良太郎たちだったが、ラズウェルには最早、その場の誰も見えていない。

「フフ・・・、これが答えか神よ・・・・ならば!」

「!! あいつは昨日の!?」
<神父さん・・・>

立ち上がり顔を上げるラズウェルに驚く良太郎たち、しかし驚いたのはラズウェルが板からだけではない。その顔が昨日とあまりにも課かけ離れていたからである。

カパッ!
シュウウウウン!
ザアアアアアアアア!

箱を空けた瞬間、現れた光の球がラズウェルに憑依!
零れ落ちた砂から白く大きい翼を携えた荘厳な漢字を漂わせる天使のようなイマジン・ラファエルイマジンが実体化した。

「待ちかねたぞ我が契約者よ。さあ、すでに分かっていることだが、貴様のその溢れんばかりの望みを告げよ。さらば与えられん・・・」

「・・・私の望みは唯一つ、尊敬する父の命を奪い、今も尚変わることなく悪であり続ける忌まわしき魔女、エヴァンジェリン・A・K・マグダウェルをこの世から消すことだ!!」

胸に秘めた思いすべて吐き出すように叫ぶラズウェル、どんなに均衡を保っていた天秤も羽ひとつ分の重さで傾くように、聖職者と一人の人間としての天秤が今、復讐という名の翼に傾いた瞬間だった!

「了解した。ではまず奴を・・・「おい待てコノヤロー!」!!」

エヴァを追いかけようとするラファエルイマジンを呼び止めるM良太郎、その腹部には既にデンオウベルトが巻かれていた。

「キミは・・・!?」

「よお神父さん、悪いけどあのチビにゃ先客がいるんだ。そこのムッツリガラスもどきのあんたも先に俺と遊んでこうぜ? 変身!」

ピ、

<SWORD FORM>

カシャン
ファアアアン・・・
ガシャン!

「俺、参上!くう~、なんか久々だおい!楽しませてもらうぜ?」

カシャン!
ヴィイイイン!

そう言ってデンガッシャーを組み上げラファエルイマジンに戦いを挑む電王!果たして彼はラズウェルの抱える闇を取り払い、エヴァと彼を救うことができるのか!?

・・・・・続く・・・・・

仮面ライダーDEN-O-MAGI 第56話 大停電の中の決戦!ネギの知恵と勇気

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