第五話 まるでラブコメのような展開 投稿者:モフ・ハイマニューバ 投稿日:05/13-22:06 No.508
魔法―人間の力ではなしえない不思議なことを行う術。
魔術。妖術
第五話 まるでラブコメのような展開
<side 沖田>
そう言うと学園長は、魔法のこと、この学園のこと、善い魔法使いと悪い魔法使いがいること、
他にもこの世界について語り始めた。
最初のうちはまるで聞いていなかった沖田もその真剣な表情と
今現在の自分の状況を考え、納得した。異世界なんだし楽しいほうがいいと。
「と言うわけなのじゃ。沖田君引き受けてくれんかね?」
それを聞いた沖田は少し考えると、言った。
「いやでィ」
<side 学園長>
「え、うそ、普通こういう流れなら引き受けてくれるもんでしょ?」
「そういう考えだからそんな頭になるんですぜ」
「いや、わし生まれたときからこの頭だから。
そんなことより、いったいなんでかね?」
そうたずねると、沖田は
「こちとら命かけるのにただ働きはごめんでさァ。
いまどきそんな考えでやっていけるほど世の中甘くないんですぜ
それに、俺の上司は近藤さんだけでさァ。それ以外誰も上司とは思いやせん」
と答えた。その答えに学園長は
「…誰もただ働きとは言ってないじゃろが」
と言い、具体的な給料の額を提示する。
「そのほかにも住居は用意しよう。この程度でどうにかなるとは思わんがこちらで出来るのはこれぐら…」
「何か御用があれば何なりとお申し付けくださいませ」
「「「軽っ!!」」」
学園長やエヴァ、タカミチは声をそろえて驚く。
「さっきまでと言っていたことが違うじゃないか!!」
「嬢ちゃんはまだ若いからわからないかもしれないがこれが大人の事情って奴でさァ」
「君の上司の、近藤さん、だったか。その人のことはいいのかい?」
「近藤さんならきっとわかってくれまさァ。
…土方の野郎はなんかいうかも知れねェがな」
「まあ、いいんじゃけどね。引き受けてくれるならなんだって。
とりあえず細かい書類とかは、こちらで用意しておくから。今日はもう休んでくれてかまわないぞ。
案内は……エヴァに任せるとしよう。エヴァ、頼んだぞ」
とエヴァに言う。
「何で私が!!」
「この地図の場所じゃからな。後は任せたぞ」
と学園長が言うとしぶしぶ引き受けた。
<side エヴァ>
学園長室を出るとエヴァが茶々丸に言った。
「茶々丸は先に帰っていろ」
「マスター、しかし……」
「いいから先に帰っていろ。私もこいつを連れて行ったらすぐに戻る」
「…わかりました。お気をつけてください、マスター」
そう言うと茶々丸は帰っていく。そしてエヴァたちも目的地に向かって歩き出した。
「………」「………」
周りは静寂で満ちている。月の位置から時間はもう夜中の三時を回っていることがわかる。
「おい、何か話せ」とエヴァが言うと「何か」と沖田が答える。
一触即発の雰囲気だが、争いの内容は子供そのものだ。
しばらくするとエヴァがもう一度地図を見てニヤリと笑う。
「何を笑ってるんでさァ嬢ちゃん、気持ち悪い」
「貴様はほんっっっとーにむかつくな。それに嬢ちゃんというのはやめろ、私のほうが年上だぞ」
「じゃあ、なんて呼びゃあいいんでさァ?」
「エヴァ様と呼べ」
「お断りでィ」
「じゃあ、エヴァと呼べばいいだろ」
「俺ァ、自分が『仲間だと認めたやつ』と『敵』と『いい女』しか名前で呼ばないんでさァ」
「…せめてその「ちゃん」はやめろ。自分が小娘になった気分になる」
「じゃあ、吸血鬼のキュウさんで」
「絞め殺すぞ」
「じゃなかったら、ヴァンパイアだから…」
「バーさんじゃないか!!却下だ却下!!だいたい種族で呼ぶな!!」
「めんどくせェ、てめぇで考えな」
「おまえ、本気で殺すぞ? …じゃあ『姫』と呼べ」
「『姫』ェェ?」
「そう呼ばれていたときもあったんだ。嫌なら名前で呼べ。それ以外は許さん」
こう言えば嫌でも名前で呼ぶだろう。そう考えてエヴァは言った。
だが…
「わかりやした。で、姫?目的地はまだですかィ?」
「なっ!!」
沖田はあっさり了承すると別の話しをしようとする。
名前を呼ばせたかったエヴァとしては予想外で戸惑ってしまう。
しかし、ここでそう言えば自分が負けたような気がするので言えない。
仕方がなくエヴァはそう呼ばれるのであった。
「? どうしたんですかィ、姫?あ、ちなみに俺のことはなんと呼んでくれてもかまいやせんぜ」
<side 沖田>
「……もうすぐだ。……ほれ、あの建物だ」
エヴァはそう言うと指を寮のような場所に指す。
「ほれっていうとなんか年寄りくさいですぜ」
「だまれ」
そんな軽口を言いながら二人は玄関についた。
「なぁ、姫」
「何だ総悟?」
「ここに『女子寮』って書いてあるんですが」
「それはそうだろう。ここは『女子寮』なのだからな」
「俺はここに住むんですかィ?」
「そうなるな」
「マジでか」
「マジだ」
エヴァはそう言うと寮の中に入っていく。
沖田は少し呆然とすると後を追いかけるように中に入っていくのであった。
その後、部屋に着くと案内してくれたエヴァへの挨拶もそこそこに眠りについた。
こうして沖田の長いようで短い一日は終わるのであった。
あとがき
どうも、モフ・ハイマニューバです。
やっと冒頭部分が終わりました。本当はもっと早く切り上げたかったのですが…
自分の文章構成能力のなさが悔やまれます。
そんなことはさておき、物語は三ヵ月後まで飛びます。なぜかは皆さんわかりますよね。
それでは、また今度