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その6『踊るバカレンジャー線~学年最下位を回避せよ!!~(参』 投稿者:M・Tミゲ 投稿日:10/28-08:49 No.1507  

先ず最初に、足を崩れ落ちる岩盤へと着ける。

これが全ての基盤となる。

次に着けた足の裏にチャクラを集中、チャクラ修行の基本である『木登りの業』の要領でその岩盤に吸着。

体を縮め、足をまげてその過程にて力を込め溜める。

目を開き、暗闇を知覚し、視界に修め、対象を確認し、それへと狙いを定める。

足指の関節の下を押し踏み。


集中するチャクラの量を一気に増やし、同時に踏み出す!!



魔法先生ネギま

~麻帆良忍風帖だってばよ!!~

その6、踊るバカレンジャー線~学年最下位を回避せよ!!~(参)



過剰なチャクラににより、その岩盤が砕け散り四方へと弾き飛ぶ。
その反動によりその身を矢の如く、閃光の疾駆を成すナルト。

(まずは…………一人目ぇっ!!!!)

定めた狙いに真っ直ぐ跳び、勢いを利用し一気に掠め取る!

「!?……え、あ、うずまき先生。」

「喋るな夕映、舌かむってばよ?」

空中で掴まれ驚き声を上げる夕映に、ナルトは笑顔を見せ告げてくる。
お世辞にも美形とは言えないまでも、並の上程度には整ってはいるナルトの顔、その顔で子供のように無邪気な笑顔を至近距離もろに見てしまった夕映。
流石に夕映でも、感情云々に以前に溜まらずに赤面して視線を逸らしてしまう。

(次は……下かっ!!)

そんな夕映の様子に全く気付かずに、ナルトは再び狙いを定め、今度は近場の壁へと足を吸着させる

疾駆。

壁を蹴り、垂直に降下する。

「ほい! 二人目っと。」

「!?……ナルト先生でござるか?」

「ほいほい。楓も舌噛むから喋るなよ……今からちょ~っと無茶すっからよ。」

此方もいきなり掴まれ驚く楓に、軽い口調で返すナルト。
余裕そうに思われる口調だが、じつは今の彼に余裕は全く持って無い。

二人の人間を抱え込み壁に吸着、更に跳び上がり他の者達を暗き空中で捕まえようと言うのだ。

現時点でのナルトの実力を持ってすれば、間違い無く高確率で可能。
しかしソレは、体にかかる負担は馬鹿にならない。

それでも彼は、諦めずに跳ねる。
弾くためのチャクラの量を更に増やし、より速く、より遠くへと、さらなる加速をつけて。

「おらぁぁぁぁぁ!! 秘技! まき絵に古菲の二人同時キャッチだってばよ!!!」

気合の一声共に、事は成された。
…………どの辺が秘技なのか少々疑問な所である。

「わわっ!?」 「あいやっ!?」

二人を抱えて上方に駆け跳び、さらに二人を一辺に掴まえる。
更にバランスを空中で整え、更に壁へと足を吸引。

無茶な動作の連発に、ナルトの体が、その筋が、骨格が、チャクラの経絡系が、軋むような悲鳴を上げる。

(っく! 思った以上に負担がでかいな………けど、まだまだだってばよ!!)

軋み痛む関節を気合で無視し、切れそうになる筋をチャクラ循環で必死に強化し、途切れそうになる集中力を根性で押し留める。
更に加速、疾駆、跳躍。

「五人目……このかぁ! しっかり捕まれぇ!!」

両手が塞がっているので、肩ですくい上げるが如く担ぐ。

「ひゃ!?」

溺れる者は藁をも掴む、木乃香は自分をすくい上げたナルトの首に必死になって抱き掴む。

(後は明日菜とネギ……クソッ遠い!)

暗闇の中で、正確に二人の位置を見つけ出すナルト。
刹那、ナルトは自分の遥か下に重なるように落ちる二人に目掛け、一気に壁を駆け降り出す。

(……ヤベェ、このペースじゃ間に合わねぇって!!)

全力で駆けるナルト、しかし既にその身には女子生徒とは言え五人を抱えている。
そこは流石に鍛えれた体躯を持つナルト、抱えているだけであれば何の問題も無いだろう。
しかし今彼がやっている事は、抱えながらチャクラを使い細かなコントロールを行いながら全力で走ると言う荒行。
それはいかにナルトとは言え、明らかなオーバーワーク。
当然ながら思うようなスピードは出せない。

いや、それどころか無茶な動き続けてき代償、その速度が徐々に落ちつつある。

(ちっ! 体が思ったほど動かねぇ!?)


一気に息を吸い込み、目を閉じる。


(でも……そんでもな…………)


一拍の間を置き……


「でも、ぜってぇぇぇぇ諦めてなんてやらねぇってばよぉ!!」


咆哮の如き叫びと同時に瞳が見開かれる!


その瞬間、淡い蒼色だった瞳は禍々しき赤色へと変じ、その眼球に獣目の如き線が入る。
頬の三本のヒゲのような痣はより深みを増し、頬顎あたりまで広がり侵す。
体内を循環していたチャクラが、その質を大きく変質、変換される。
その変化は、例えるなら青から赤、白から黒…。

その変化がもたらし効果は、まさに絶大だった。
赤い『ソレ』がナルトの体から溢れ出た瞬間、今までの比にならぬほど加速がなされる。

先までの疾駆が『矢』だとするならば、この加速は当に『弾丸』。

「ひゃ~~~~~! !ナルト先生! いきなりスピード上げないで~~!!」←(普通に速さと、降下に対して悲鳴)

「おー! おおおー! 速い!速いアルな~♪」←(案外、快適らしい)

「古菲さん、まき絵さん。お願いですから、耳元で叫ばないで下さい……」←(ナルトの動きに少々、酔い気味)

「ナルト先生って、修行するとこんな事まで出来るようになるんやな~…ひゃっ!。」←(必死にその首に捕まりながら)

「(これは……この溢れ出ているこの禍々しい程に強大な気配は……『気』、でござるか? ナルト先生は一体……。)」←(考えに没頭中)

各々が勝手な事を言ったり(考えたり)してる間も、ナルトは走り抜ける。
失速する事なく加速し続け、そしてついに。

「とったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

少年庇う少女を掴む。

「へっ!?」

「わぁっ!?」

両手が塞がった状態なので、その口で二人の服の裾を噛み捉える。

(よっしゃ! このまま一気に……)

後は全員を抱え、この壁を駆け上るだけ。



しかし、世の中そう何でもかんでも上手くいく筈も無し。



(………あれ?)

足元に妙な違和感を感じ、ナルトは首を傾げる。

(何で足が踏み出せないんだぁ?)

踏み出し駆け上がろうとするも、どうにも上手く踏み込めない。
それに先程から、妙な浮遊感を感じる。


「……」


ゆくりと下を向くナルト。

そこに見えるのは、迫る地面、何時の間に辺りも明るく開けた場所に出ている。
ネギと明日菜を拾い上げる為に、壁から思いっきり踏み出した故に壁から大きく離れてしまった訳で。
当然というか、まぁ約束と言うか、重力と言う星の基本法則に乗っ取り。


落ちる。


「やっぱりそう言うオチかってばよぉぉぉぉぉ~~~~!!」

合掌





―図書館島最深部―

滝が流れ落ち、辺りに光が立ち込め、穏やかな空気のこの地。
そこの砂丘に、重なり合うように倒れている少女達+α。

「ん~……」

「うーん……」

「あれ……ここは?」

流れる滝の音と、打つ寄せられる小波の音にネギ達は目を覚ます。

「そ、そうだ。僕達、英単語のトラップを間違えてゴーレムに落とされて、ナルト先生が救い上げようとしてくれたけど、そえでも結局落ちちゃって……。」

意識を取り戻したネギが、なんとか頭を回転させて状況を整理しようと呟く。
他のもの達も、順々に気が付き現状把握しようと勤めている。

「説明的な台詞ありがとよネギ……んで頼むから、早くどいてくれ……。」

そんなネギ達の下から、微妙に情けない声が響く。
その声に、視線が一斉に下を向く。

「頼むから退いてくれって~、ぶっちゃけ流石に重いんだってばよ~~。」

見ると其処には、自分達全員の下敷きになり潰されているナルトの姿があった。

「…………うわわわわっ! すっスミマセン、ナルト先生!!!」

「今すぐ、退きまーーーすっ!!!!!」

それを知覚したバカレンジャー+2は、大慌てでナルトの上から飛び退く。
因みに全員が全員、ナルトの上に重なり合うように乗っかっていたため飛び退くにも一騒動あり、腹の上で暴れらるナルトが苦しそうに何度も呻き声を上げたがソレは割愛しておこう。


閑話休題


「ふぃーー……苦しかった~。」

重圧と苦悶(笑)から開放されたナルトは、その手を目一杯広げて背伸びをする。
首をコキコキと左右に慣らし、腰を捻り軽く体を解す。

「流石にアレだけの事した上に、七人分の体重支えのは堪えるって……。」

「んー……でも、うち等どうしてナルト先生の上に乗ってたんやろ?」

「えーと、確かトラップで落とされてその後、空中でナルト先生の拾われて……」

「私とネギが拾われてその後、結局落ちちゃってここに………………って、ここは何所なの~~~~~!?」

状況を推理しながら何気なく回りを見回した明日菜が、悲鳴にもにた叫び声を上げる。
辺りの様子、それは別の意味で常識を脱した物である。

彼女達は落ちて来た、つまりはこの場は地下という事になる。

にも関わらず、そこは暖かい明かりに照らし出され、透き通った水が流れ溜まり、木々さえ静かに生い茂ってる、奥の方には少々朽ち果て気味だが、それ故に辺りに同化した古風な洋風建築物が立ち、あたかも静かな森の一角と言うようなその場の雰囲気に一役買っている。
ただ、其処の彼方此方に乱雑と置かれ、埋もれている本棚が辺りの雰囲気を少々異端の物へと演出している。

「こっ……ここは、幻の『地底図書室』!!?」

その辺りの様子を見た夕映が、彼女には珍しく興奮した様子で声を上げる。

「『地底図書室』っ~?」

「何やそれ、夕映?」

「地底なのに暖かい光に満ちて数々の貴重品にあふれた、本好きの楽園と言う幻の図書館……」

「へ―――、図書館にしては広いけど」

その瞳を煌かせ、嬉しそうに震える夕映。
他の者達も、感心した様子で興味深そうに辺りを見回す。

「ただし、この図書室を見て、生きて帰った者はいないとか……」

「えーーーーっ!!」

行き成り声のトーンを変え、その目を怪しく光らせながら夕映はそんな事を告げる。
それ程怪しくかと言うと、そりゃもう『キュピーン』とか言う効果音が聞こえて来そうなほど怪しく……。

「じゃ、何で夕映が知ってるアルか?」

古菲がもっともな突っ込みを入れる。
第一生きて帰った者がいない以上、そこまで正確な『幻の××』の噂は流れようが無い。

あれやこれやと、現状を話し合うバカレンジャー+αの面々。
んで結局言い合っているうちに、ネギの「諦めないで帰れることを信じて、この場で期末の勉強でもしよう」との発言に落ち着く事となる。


(地下なのに何で明るいんだ? やっぱコレも魔法って奴か?……魔法ってやっぱり凄ぇな~。)

そんな中、辺りを見回しながら独り感慨に耽るナルト。
彼の中では、こちら世界での超常的は全て『魔法』で片付くようだ。





「……ナルト先生、少しいいでござるか?」

皆が食料を探しに走っていく中、楓はあたりを興味深そうに見回してるナルトの声をかける。

「ん?なんだってばよ、楓?…………言っとくけど、俺に勉強なんて聞かれても、全く持って分からないねぇぞ。」

額に僅かに汗を浮かべながら、怪訝顔でナルトは応える。
勉強の事を聞かれたら、何時でも逃げれる様か僅かに逃げ腰気味ではあるが。

……良いのだろうか、教師ナルトよ。

「いや、勉強の事では無くて…………どうしても聞いておきたい事があるでござるよ。」

「……ん?」

真剣な目で見つめて楓に、ナルトは体勢を逃げ腰から戻す。

「何故あの時あんな無茶をしてまで、拙者たちを助けようとしたのでござるか?」

唐突に、なんの脈絡も前振りも無しの、楓からのナルトへと問いかけ。

「いや、なんでって……そりゃお前。」

「ナルト先生であれば、態々危険を冒して穴に跳び込みあんな無茶苦茶動きで空中キャッチ等せずとも、他に安全な方法はいくらでも思いついた筈でござろう?」

「いや、それは」

「思いつかなかった、と言ういい訳は通らないでござるよ。」

普段は、閉じているのか開いているのか殆ど分からない糸目の楓。
しかし今その目は、『はぐらかす事は許さぬ』とばかりに鋭く、そして強くナルト見据えている。
すこしの動揺も見逃さぬ、僅かな変化も見落とさぬ、普段ののほほんした彼女からは、とても想像でき無い強固な意思が篭った目線。

僅かばかりの間を置き、彼女は次の言葉を繋げる。


「……ナルト先生は、『忍』でござろう?」


唐突に投げかけられる、異質と言えるほどに奇妙な問いかけ。

この言葉は、彼女にとっては賭け。
もし隠そうとしていたのであれば、動揺はせずともその表情や声色に、何らかの動きを見せる筈。
そう思いながら油断無くナルトを観察し、言葉を待つ。


しかし、彼から返ってきた言葉、反応はあらゆる意味で楓の期待を裏切るものだった。


「そういう楓も『忍』なんだろ? ずっとこっちを観察、っていうか監視してたもんな~。」

「っ!!!!!」

余りに唐突に発せられた言葉に、逆に楓の方が動揺してしまう。
普段の彼女であれば、「なんの事でござるか~ニンニン♪」っと軽く受け流すことができるが、今回ばかりは状況が悪い。

楓自身、探りを入れれば自分の事も少なからず『ばれる』とは思ってはいたが、まさか既に見抜かれているとは思いも寄らなかった。

(気付かれていたのでござるかっ!?)

自分の正体、それとなく向けていた注意。
不意打ちで、その事を告げらてしまい一瞬とは言え大きく動揺してしまった。

「いや、あんなにあからさま、注意向けられてたんじゃなぁ……あれで気が付くなって方が無茶だってばよ。」

困った様に苦笑を浮べながら、ナルトは。(余談でではあるがその時のナルトの顔は、知る人が見れば自分の教え子達の喧嘩やいい訳に困るナルトの父親や、その彼の教え子であるナルトの教師に良く似ていた。)
彼からして見れば、彼女等ぐらいの監視を見抜く事は容易い事。

最も、一般人であれば例え四六時中見られていても気付けない程の物なのだが。

「それに、普段からあんな風に振舞ってちゃー、どんな奴でも忍者だって分かっちまうってばよ……」

確かに楓は、普段か自分の正体を隠しているのか隠してないの、分からない様な振る舞いをする時がある。

「ま、それはいいとして。確かに俺は忍、忍者だってばよ。」

「……随分とあっさりとばらすでござるな~。」

なんだか、かえって呆れてしまう楓。

今にして思えば、目の前の男も隠す気があったかすら疑わしい行為ばかりだった。(汗)

「まぁ、それほど隠してもしょうがないし……んで、なんで俺があんな無茶な行動を取って、助けたかだっけか?」

「そうでござる。仮にも忍の……それも相当な実力を持っているであろうナルト先生であれば、何も飛び込まなくてもそのスピードで救援者を呼びに行くなり、その他の手段を考じるなり出来た筈。なのに何故、全員を拾い上げるなどと言う無茶、無謀に近い真似をしたのでござるか?」

彼女には、不思議で仕方ない。
『忍』は常に冷静であれその心乱すこと無かれ、如何なる場合に置いても最善の手を推量し模索し行動せよ、そう楓は教えられてきた。
忍の基本は、どこの里も大して変わらない筈。

故に彼女には、ナルトの余りに短絡的で単純な行動が、不思議で仕方なかった。

「それにナルト先生は、結局落ちてしまった時も“自分の体を下にしてクッションに成ろう”とまでしたでござる。何故そこまでしたのでござるか?」

あの高さなら、怪我くらいはしても死にはすまい、後遺症が出るほど大怪我もしかり。
下が砂地や湖ならば、なおの事である

全員を空中で捕まえる等と言う離れ業をやってのけたナルトだ、実力は相当の物と見て良い筈。

ならば、それを判断出来ないはずが無い。

先にも述べたが、忍とは里は違えどぞの有り方はほぼ同じ。
ならば何故、彼があそこまで無謀な行為を及んだのか。
楓には分からない、故に問いかける。

しかしナルトの口から出た言葉は、再び彼女を唖然とさせる物だった。

「仲間だからだてばよ。」

殆ど間を入れずごく自然に、そして静かに発せられた言葉
何所か優しく笑みを浮けべ、ナルトはさも当然と言うように言葉を発する。

「お前達は、俺の生徒って言う『仲間』だかんな。確かに他に手はあったかも知れない、けど『仲間』がピンチとあっちゃ形振り構ってらんねぇって。」

「『仲間』だから……でござるか」

確かにあのクラスの者達は楓にとっても仲間で、もし彼等に危険が迫った時は自分もすぐさまに駆けつけるだろう。

しかしナルトの言うそれは、どこか自分とは違う意味合いのように楓には感じられた。

「そ、仲間。楓も忍者なら分かるだろうが、忍び里には掟って物があって、その掟を破る忍はクズ扱いさるってばよ。」

頷く楓。
確かに楓の里、甲賀にも掟ある。
今では忍びに成ろうと言うも者が少なくなったせいか、大分緩やかな物に変わっている。
それでも遥か以前は厳しい掟があり、破ったものは例外なく罰せられ侮蔑された。
時には、その命をもって償わされる事もあったと言う。
忍びの里ではその掟は絶対、たとえ里長であろうと例外は許されないほどに。

そんな楓を優し見据えながら、ナルトは正に教師と言う風に厳しい言葉で告げる。

「掟を破る忍はクズ。でもな、仲間を大切にしない忍……いや大切にしない『奴』はもっとクズだ。」

「!!」

その言葉は楓の頭を、思考を、心を、強く激しく揺さぶった。
その言葉を聞いて、その言葉を言うナルトの雰囲気を見て、楓は一つのある大きな印象をナルトに感じた。

(ナルト先生の……いやナルト殿のこの雰囲気は、里の長老達にそっくりでござるな。)

彼の言葉には重みがある、ただ修行を積んで成った忍では決して持てない異様な重みが。

『経験』、それがナルトと楓の『仲間』という言葉の差。
楓は14歳で甲賀の中忍、才ある忍であろう……しかし、それでも彼女は争いの少ない世代の少女だ。
対してナルトは今でこそその力は強大ではあるが、嘗てはご存知の通り『万年ドベ』の異名を取った……しかしそれでも、いやそれ故にギリギリの状況を経験し、20歳近くで今まで潜って来た修羅場は数知れず、人を殺めた経験を持ち仲間を大切な人を失った経験を持つ……。
世界観の違いもあるが、ナルトは『この世界』では珍しい『戦場、殺し合いと言う地獄』を抜け生き延びた“忍”なのだ
正に、楓の里の長老達を同じ。
そこが絶対的な差となって、ナルトと楓の言葉に表る。

「つーか………あの時はぶっちゃけ、『何が何でも助ける!』って事で頭がいっぱいで、何も考えず飛び込んじまったんだってばよ。」

情けない暴露話でも、今の彼女にはどこか重い教訓の様に聞こえる。

(勝てない……でござるな。言葉だけで、ここまで大きな差を見せ付けられるとは、全く大した御仁でござるな。)

彼女には未だそんな経験が無いから、ナルトの言葉の重さの意味合いが何であるかはよく理解らない。
しかし、おぼろげではあるがその重さ差が何所から来るものなのかは、今の彼女でも何となく理解る気がした

「ナルト殿」

「ん?(殿?)」

「ここから抜け出し、テストが終わった後に拙者達と戦って欲しいのでござるが……いいでござるか?」

何所かスッキリした顔、今の彼女にはナルトに対する疑い無い。
寧ろその言葉の重さ、同じ忍としての在り方に、少しずつ敬意すら抱きかけている。
ならば、『疑惑』としてでは無く、純粋にその力を見てみたいが為に申し込む。

「あー、一つ確認するってばよ。戦うんだよな?―――命かけて、殺しあう訳じゃないんだな?」

「当たり前でござる。でも武器は本物を使い、当然本気を出してのものではござるが。」

「んなら良ぞ。存分来い! いっちょ揉んでやるってばよ!!」

快活に笑いながらナルトは、あっさりとそれを受ける。

「あいあい♪ では一つ、胸を借りるつもりで行くでござる。」


戦いの秒読み、ただ今をもって開始。





そんな会話の後も時は進み。
日曜日の朝、つまりテストまであと一日。

「あーびっくりした……困るなぁ、僕、先生なのに。」

先程、誤ってまき絵、楓、古菲の水浴びを覗いてしまったネギ。
からかわれた為か、はたまた慌てて逃げて来たためか僅かに頬を上気させながらぼやく。

と、ぶつくさぼやいているネギの背後から、水に飛び込むような音が聞こえた。

「……ん?」

また誰か水浴びをしているのか、そう思いネギは少々気になり身を屈め、枝の影から覗き見るように様子を伺う。

「あれ? えーと……」

水浴びをしていたその者を見て、ネギは呆けてしまった。
と言っても何も見惚れた訳では無く、ただその人物が一目で誰か判らなかった為に考え込んでしまっただけあるが。

「……ん、お?」

そこでその人物が、自らを見て何やらポカンとしているネギに気がつく。

「……んな所で、何してんだネギ?」

金色の長めの髪、藍色の瞳、細目だが引き締まった体の持ち主。
独特のしゃべり方するその者に、ネギは一人だけ心当たりがあった。

「え?…………ナルト先生……ですか?」

「おう。俺以外の、誰に見えるんだってばよ。」

上着だけ脱ぎ、後ろで一つ束ねてあった髪を解いた状態のナルト。
普段、割と厚手の服を好んで着ており、その上後ろ髪を束ねているので今の状態では誰だか分からなくなるのも無理は無い。
(……色気の無い落ちで、申し訳ない。)

「だ、誰かと思っちゃいましたよ~、何時もと余りに様子が違うから。」

冷汗混じりで、何とか自己フォローしようとするネギ。
ここで止めとけばそれなりフォローには成ってるが、一言多いのがまぁ子供って言う者。

「何時もと違って、何所かやっぱり『大人』って感じの雰囲気でしたから。」

ネギは、誤って狐の尻尾を踏んだ……。

「ほぉ、んじゃ何かネギ――――俺は普段、大人っぽくない、つまり子供っぽいって言いたいのかぁ~?」

遠回しに、そう言っているようなものであろう。

「あっ、イッイエ、ソンナ事ハ~……。」

片言、言葉の区切り方も微妙に間違いながら、冷汗だらだらネギ。
そのな態度では、肯定してるようなものだ。

そんなネギをジト目で睨みつつ、ナルトは不気味な笑みを浮べている

「ネギ~、なんで俺からそんな離れようとしてるんだってばよ~?…………ほれほれ、もっと近こう寄りやぁ。」

手招きなどしているナルト、背後に見えるはニタリと笑う狐さん。

その姿は、普段が普段だけに非常に珍しい光景ではあるのだが―――――――――――――正直、進んで見たいとは思えない程、異形な光景。(誤字にあらず)

「あ、あああ、アイっ I don't understand Japanese.」

ネギもその異様な怖さに、必死の英語による弁解。
通じるか如何は置いといて、ここに来て『私は日本語を理解できません』のいい訳は無理があろうよ。

「コイコイ……コイコイ……。」

ネギのいい訳の意味を知ってか知らずか、かナルトはその手でネギを招きながら距離を詰めていく。
手招きナルト(狐)……縁起悪そうだ。

そんな風に、ナルトがネギにジリジリと詰め寄っていると。

「キャーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!」

「「!!!!?」」

二人の耳に、悲鳴が響き届く。

「ネギ、行くぞ!!」

「は、はい!!」

先程までの軽い(?)ノリを一瞬の内に引き締め、叫び声のした方へと駆け出す二人。
ナルトが先を行き、それにネギが続く。

「あっ!!!」

「お。」

そこに有るのは一体の巨体が、悲鳴の元となる少女を掴み上げている姿。

「誰か助けてーー!! ネギく~ん! アスナ~! ナルトせんせ~!」

掴まれた少女、まき絵が涙目で助けを求める。

「あ、アレは動く石像(ゴーレム)!! 一緒に落ちたんだ!」

「ほ~、あの傀儡石像、『ごーれむ』って言うのか~…………結構、カッコいいな。」

驚くネギに、そのネギの言葉に感心するナルト。

「って、うずまき先生!! 感心してないで、まきちゃんを助け下さいよ! 助け求めてるんだから!!」

明日菜が、余りにも緊張感の無いナルトに向かって叫ぶ。
ネギは兎も角として、ナルトの台詞はこの場合余りに緊張感が無い。

「おう!」

その明日菜のツッコミに、景気良く応じるナルト。
まぁ彼であれば、目の前のゴーレム程度然したる敵にもなるまい。

最近とっても忘れられがちだが、ナルトは木の葉隠れの里の『火影候補』、しかも実力的には既にそのレベルに十分達していると皆に判断されたほどだ。

火影とは、曰く仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の理を知り、千以上の術を使いこなせし初めて名乗れる木の葉忍者の頂点立つ者。
忍五大国最強と謳われる木の葉隠れの里、そこ頂点、単一の忍としては文字通り“最強”。
ソレに資格十分と認められたのが今のナルトであり、今のナルトの実力。

「んじゃ。」

『フォ!?』

そのナルトが、相手を見据えビシッとその指を突きつける。
張り詰める空気、ナルトから何時もと違った真面目な雰囲気が流れ出る。
その気配にネギや明日菜達は息を呑み、ゴーレムにも冷汗が浮かぶ。

木の葉火影候補、『九尾の花婿』うずまきナルト、麻帆良の地にていよいよその真の実力のベールが……



「GO、ネギ。」



「「「「「……へ?」」」」」

……脱がされなった。(爆)

「……えっええーー!! ぼ、僕がですか!?」

行き成りの御指名に、戸惑いの叫びを上げるネギ。
『っつーか、さっきまでの雰囲気は何だったんだ!?』 と、聞きたくなるような思いも寄らない台詞に回りも唖然。

「そうだネギ。さぁ、行くんだネギ! 行って俺に見せてくれってばよ!! ネギのまほ「「わわわっわわっわーわーーー!!!」」ってやつを!!」

調子に乗ってNGワードを言いそうにナルトの声を、必死に掻き消すネギと明日菜。
……やっぱり忘れてる?

(ほっ…)

そんな中、ゴーレムは誰にも気付かれない様に胸を撫で下ろし、安堵の息を付く。
その安堵が、NGワードに対してかそれともナルトと戦わずに済んだ事に対してかは、その操者の名誉の為に伏せておく。

『フォフォフォフォ ここからは出られんぞ、もう観念するのじゃ。……迷宮は歩いて帰ると、三日はかかるしの~』

「三日!?」

「それではテストに間に合わないアル!!!」

テストまでは後一日を切っている、全然余裕にブッチギリで間に合わない。

「ん~……でも何とかなるんじゃねぇ?」

こんな状況下に置いても、お気楽な台詞のナルト。
そうである、彼がちょっと無茶をして全員を抱えて壁をぶち抜き、駆け上がれば……

「ネギの、まほ「「わーーーわーーーーーぁぁぁぁぁ!!!!」」を使えばぁ……ってさっきからネギもアスナも何だってばよ?」

誰かこの男を止めてくれ……。
無理とは分かっているが気絶ざぜてくれ、 それが無理なら口をテープとかで塞いでくれ……しや本気(マジ)そうした方が良いと思われる。

「と、とにかく! みんなで逃げなら出口を探すのよっ!!! 絶対、明日の期末テストまでにここを抜け出してやる!!」

明日菜が再び気を取り直し、全員に呼びかける。
よく意味の分からない周りは、取り合えずその建設的な意見に首を縦に振る。

『フォフォフォフォ、無駄じゃよ出口はない。』

それを嘲笑うかの如くゆっくりと、その巨体で近づき迫って来るゴーレム。

「ん……? あ!!」

その時、『アボガドマキアート』なる謎のジュースを飲みながら状況を見守っていた夕映が、行き成りある一点を指差しながら叫ぶ。

「みんな! あのゴーレムの首元を見るです!!!」

夕映が指差す先にある物、それは一冊の書物。

「あっ!!」

「あれは! メル……何とかの魔法の書!!!」

指差した先にある書物、それは明日菜達バカレンジャーがわざわざこんな場所(図書館島)やって来た理由の本だった。

(そ、そうか、あの時…魔法の本とゴーレムも、僕達と一緒にここに落ちて来たんだ。)

ネギもその本を見て、大体の事情を推察する。

「本をいただきます!! まき絵さん! 古菲さん! 楓さん!」

「「OK~バカリーダー!!」」

夕映の指示に、古菲と楓がノリ良く応える。

まず先的必勝と言わんばかりに、古菲が勢い良く飛び出す。

「中国武術研究会部長の力!! 見るアルよーー!!」

踏み出す足に力を込め、腰に重心を置いての体重移動。

「ハイィッ!!!」

繰り出すは見事に流れに乗った胞拳。
愚鈍なゴーレムにその拳を避わす術無し、吸い込まれるように命中するソレは轟音と共に石造りの足を砕き罅を入れる。

『フォ…!?』

巨体を支える足を強撃され、その意外にも大きな衝撃によりゴーレムはそのバランスを崩す。

「アイ~…ヤッ!!!!」

続けざまに跳躍! 繰り出される蹴りが、まき絵を掴んでいる腕を正確に打ち抜いた。

「キャッ!」

蹴り抜かれた腕はあっさりと力を失い、それに伴い当然とまき絵はその身を宙へと投げ出される。

「よ」

『フォッ!?』

それを何時の間にか跳んでいた楓が、これ以上は無いと言うほど絶妙なタイミングにて掻っ攫う。
見事なまでに息の合った連携、そこにさらにオマケとばかりに。

「やっ!」

『あっ……』

『パシッ!』と、まき絵のリボンが魔法の書を掴み取る。
訓練無しとは思えない、鮮やかな手並みだ。

「やるなぁ……」

ナルトもそのコンビネーションに、感心する。

「キャーー! 魔法の本、取っちゃったよーっ!!」

楓に抱えられたまき絵が、歓喜の声を上げる。

「ス、スゴイ……。」

「バカレンジャー。本当に体力だけは凄いです。」

本は取ったまき絵も取り返した、後はする事なしとばかりに一目散に逃げだす御一行。

『ま…待つのじゃ~~~~!!』

慌てて追いかけて来るゴーレム、しかしその巨体の為にか動きが遅く中々に追いつけない。

「よしっ! 目的の本は取ったから、ズラかった方がいいわね!」

「あのゴーレムの慌てよう!! 何所かに地上への近道があると見ました!!!」

んでまぁ走り回り、逃げ回り、夕映の予想通り、滝の裏に隠された非常口を発見する。
ご丁寧に、非常口のマークが付いていたいりする。

「うっ……!? 何これ!?」

「扉に問題が付いてる!!?」

ようやく扉を見つけたは良いが、どうにもその扉は書かれた問題を解かないと開かないように成っているらしく、力ではビクともしない。
頭を悩ますバカレンジャー、その後ろからはゴーレムの魔の手が迫る。

『観念して捕まるんじゃ!!』

その巨体を、滝に覗き込ませるようにし手を伸ばしてくる。

「あらよっと。」

その手が生徒を掴もうとした瞬間、 ナルトの手よりクナイ(苦無)が無造作に投擲された。

『あたっ!』

狙い見事にゴーレムの頭部に直撃したそれは、その小さな刃から想像も出来ない意外に大きな衝撃を生み、ゴーレムの動きを止めその巨体を僅かに後退させる。

「ちった~活躍しとかいと、先生として立場がないってばよ……。」

誰に言うでもなく、何となく呟くナルト。
と言うか問題を解こうとしない時点で……いや、言わぬが華か。

と、まぁそうこうしてる内に、本を持った古菲があっさりと問題に答える。

「お、開いた開いた。」

大急ぎで中へと駆け込むネギ達、その後にナルトが鼻歌交じりに続いたて行く。

『こ、コレーッ! 待つのじゃ!!!』





「あ、コレ分かるよー! 答えは『look or』!!」

まき絵の回答に、螺旋階段の途中途中にある石壁が開かれていく。

「『問いの10、大化の改新で重要な役割を果たし藤原氏の祖となった人物は』!!」

「あ、任せて! 『中臣鎌足ね!!』」

続いて明日菜が、問題に答え石壁が開かれる。

非常口の先にあったのは、異様なまでに長い地上へと続く螺旋階段。
さらに途中、途中には問題の書かれた壁があり、それに回答しないと先へと進めない仕掛け。

しかし、先にも見てい頂いたとおり、ネギや木乃香は兎も角としてバカレンジャーさえあっさりと問題に解答していく。

「アスナとマキエまで答えられるなんて、この魔法の本。本物アル!!」

「「わ、悪かったわねー!!!」」

二人の涙目のツッコミ。
否定出来る要素が無いのが、痛々しい。

とまぁ、本の力が本物かどうかはさて置き、順調に階段を上っていく。

しかしまぁ、予想外のアクシデントは起こるもの。

「あうっ!!!!!」

「夕映ちゃん!!」

気の根に躓き、夕映が転んでしまう。
彼女には珍しい、しかし人間だれでもしてしまう凡ミス。

「こんな所に木の根が……あ…足くじきました」

「だ、大丈夫!?」

「さ、先に行って下さいネギ先生……この本があれば最下位脱出が…」

本だけ持って、自分を置いて先に行くように言う夕映。
その心使いに、少々目に涙。

「だ、駄目ですよ! 夕映さん!!」

しかし、そんな夕映の申し出をネギが承諾する筈も無し。
当然反対、抱えてでも連れて行こうとその手を夕映へと伸ばす。


ヒョイッ


「え?」

「アッ……」

しかし、その手が届く前に夕映は持ち抱えられる。

「んじゃ、俺が夕映を抱えて行くってばよ。」

ニッシッシッシッと笑いながら、夕映を所謂お姫様抱っこで抱えるナルト。
因みに何時の間に、服を着て髪を結んでいる。

「んじゃ、続けてレッツゴー!」

ナルトが、楽しそうに階段を上りだす。

その腕の中で、夕映が居心地悪そうに顔を伏せ丸くなる。
抱えられているナルトの広く暖かい胸元。
思春期の少女である彼女では、異性を思いっきり意識してしまう為に顔が僅かに上気してしている。

まぁそんな様子を苦笑を浮べつつ、他の者達も急ぎ後に続いた。


そして問題を解き、階段を上っていくナルト達。
そして対、その終着が見える。

「ああっ! みんな、見て下さい!!」

ネギが叫び指差す、その先にあるのは『1F 直通 (作業用) 』と書かれたエレベーター。

「みんな急いで乗って!!」

「コレで地上に、帰れるよー!」

急ぎ、慌てて乗り込む。
しかしまぁ、何度も言っているが現実そうそう甘くない。

【――重量OVERデス】

無情に鳴り響く機械声音、全員の表情が固まる。

「ど、どうするのよーー!!!」

「地底図書での二日、飲み食いしすぎたアルかー!!」

「スペース余ってるのに~、根性なしのエレベーターやなー。」

『フォフォフォ、追い詰めたぞよーー。覚悟するのじゃー。』

とうとう、追いついて来たゴーレム。
絶対絶命に近い、この状況。

「しかたない。みんな! 持ってる物とか服とかすて「明日菜、ほらよっと。」ってわわわ!!!!」

行き成りナルトが、未だ抱えていた夕映を明日菜方へと放る。

「う、うずまき先生!!! 何するんですか……って、なんで外に出てるのよ。」

文句を言おうと、明日菜が怒鳴り視線を向けた先。
そこには、エレベーターの外に出たナルト姿があった。

「要は重くて動かねぇんだろ? 俺一人降りれば軽くなる、そうすればそのみょうちくりんな箱も動くってばよ。」

何事も無いかのように、笑いながら言うナルト。

「なっ!!!それじゃ、ナルト先生が……」

「な~に、気にすんなってばよ。俺はこういう事には慣れてんだ。んじゃ、また後でな~。」

軽くなり閉っていくエレベータの扉、それに笑顔で手を振りつつナルトは言う。

「ちょ、ナルトせんせぃ」

無情にも扉は閉りきる。


ガチャン、と音を立て…………。


「…………」

「………………」

ゆっくりと上昇するエレベーター、その中を沈黙が支配する。

「……まぁ、ナルト殿の事でござる。きっと大丈夫でござるよ、明日にもなればまたヒョッコリで何事も無かったかのように出てくるでござるよ。」

唯一ナルトの正体、その実力の断片を知っている楓が、明るく言う。

「そうアル! ナルト先生は只者じゃないアルから、きっと大丈夫だと思うアルよ。」

それに続くように、古菲も皆を慰めるように言う。

「そっか……そうだよね! なんてったて『あの』ナルト先生だもんね!! 体育の授業で行き成り、格闘技とか教えようとす先生だもん。きっと大丈夫だよね。」

「そうやなー。修行で水上とか、壁とか歩ける様になる位や、きっと何とかなってるんちゃうかなー。」

まき絵、木乃香がそれにつられ、すこし笑顔で続く。

「そうです。なって言ったって、うずまき先生です。無茶苦茶が服を着て、スッキプ交じりに歩いている様なあの先生が簡単にやられるとは考えられないです。」

夕映も、俯きから顔を上げ勤めて明るく言う。

「……まぁ、そうよね。あのうずまき先生だもんね。きっと大丈夫か。」

「そうですね。まぁ、ナルト先生なら。」

明日菜そして最後にネギも顔を上げ、僅かに笑う。

すこし中の空気が明るくなる。

その間にもエレベーターは進み、そしてようやく地上へと上り着く。

「あ……。」

喜び、飛び出す皆。
そんな中、夕映がある一つの事に気が付く。

「夕映? どうしたん?」

その様子に木乃香が、問いかける。
そして爆弾発言が、夕映の口から出てくる。

「魔法の本……ナルト先生が持ったままでした。」


「「「「「「…………何ィ~~~~~~っ!!!」」」」」」

……オチ付き? 合掌?





一方、残されたナルトは、その瞳にゴーレムを写し悠然と佇む。

「……」

『……』

ゴーレムの方も、その視線を正面から受け止めその巨体をかまえる。

「…………仕掛けて来ないのか? 近衛のじっちゃん?」

先に開口したのはナルト、悠然と立ちながらゴーレムに問いかける。

『フォフォフォフォ。気付いておったか、流石じゃな。』

ゴーレムも、それに答えるように笑い応じる。

「ん~、まぁ近衛のじーちゃんの気配が微妙にしたしな。そんなんじゃ俺は騙せなってばよ。」

『そうか。』

「そうだってばよ……んで、仕掛けて来ないのかってば?」

『何故、そう思うんじゃ? 生徒達もしっかり逃げ、本のほうもちゃんとナルト君が持っておるのじゃ。理由は無いはずじゃが?』

何所か惚けたように言うゴーレム、否それを操る近衛老。

「よっく言うってばよ。あの中で、俺“だけ”に殺気出してたくせに。どうせじいちゃん、やる気だったんだろ?」

呆れた様に言うナルト。
生徒達やネギに向けるのとは別の視線、ほんの僅かばかり殺気の篭ったソレをゴーレム(近右衛門)はナルトに向けていた。

『本当に流石じゃの~。』

嬉そうに言う近右衛門――――――――――――――――声は兎も角、その気配は全く笑っていないが。

「理由は、腕試しってとこか?」

『まぁ、そんな所じゃ…………ではナルト君。』

ゆっくりと巨体をずらし、その手に持ったハンマーを構える。


『……その力、少々見せて貰えんかな?』


瞬間、ゴーレムの身から凄まじい魔力、そして殺気があふれ出す。

「やれやれ、やる気十分ってか?……しゃーねぇなっ。」

その豪風の如き魔力の圧力を、ナルトは平然と受け流しつつ如何にも気乗りしない返事を返す。

そして……

『フォ?』

特に構えるでも無く、ナルトはその右手の手のひらを半握りにして、ゴーレムの方へと突き出す。

(何をする気かのぉ……忍者と言うくらいじゃから、忍術と言うも物を見せてくれると思ったんじゃが。)

ナルトのその行動に、疑問を覚える近右衛門。


……彼には想像出来まい、今のナルトの行動がある一つの忍術に繋がる事が。


「行くぞ? 近衛のじっちゃん。」

その刹那。

『ッ!!!!!!?』

ナルトの掌に小さな回転が生まれ、それが辺りのを揺るがすほどどんどんと膨れ、そして見る見るうちに圧縮されて行く。

縦に、横に、左右斜め上から下、三次元のあらゆる方向から回転は加わり、轟音を伴い圧縮されて行く。

『こ、コレは途轍もなく不味い気がするのぉ!!!!!』

慌ててハンマーを振りかぶり、『ソレ』が放たれる前に潰そうと試みるゴーレム。

「無駄だってばよ。」

そんなゴーレムにナルトは、一切の感情の篭っていない声で告げる。

「それは、余りに遅い。」

冷たく、恐ろしく、そして無感情に発せられる言葉。
是もまた普段の彼からは想像も付かない姿、しかし是は先のそれと比べても余りに異質にして異様……。

殺気すら含んでいないのに、その存在の圧力が近右衛門に圧し掛かる。

(ワシ……誤ったかも。)

そんな事を考えつつ、それでもそのハンマーを振り降ろす。
そんな行為は無駄だと知りつつ、体の感じた恐怖が自然と攻撃を繰り出す。

「んじゃ。」

ナルトの掌のソレは、何時の間に圧縮され尽くし、一つの玉と成っていた。

ソレをナルトは、ただ何となくそうするように緩慢に、それでいて知覚できぬ程の動きで。

ゴーレムへと押し付ける



ソレハ、人為的に作られし集中された台風。


ソレハ、ひたすらの回転ひたすらの圧縮からの究極。


ソレハ、外より穿たれ内すら崩せし確約の破壊者。


ソレハ、一人の天才が弛まぬ努力より産まれ出でた異端の忍術。


ソレハ、ソレハ、防御無視する絶対攻撃それの一つの形なり。


ソレハ、ソレハ、ソレハ、絆がり(つながり)よりの一つの系譜よ。


忍術

「―螺旋丸―」

放たれ言葉が物語る、崩壊を呼びし力(チャクラ)の弾丸!!




轟ッ!




ソレハ、緩慢動作に放たれて。





ゴーレムが巨体を粉壊し、辺り一面諸共に。






問答無用と吹き飛ばす……。





TRY NEXT NEGI MAGI THE TEST OF DESTINY…………




後書き(作者の謝罪(言い訳))

お久しぶりです。
長らく更新せず、今更ひょこりと更新になりますいい加減な作者M・Tミゲです……。

先ずは一切の音沙汰無いような状態で長らく更新を止めてしまった事、深くお詫び申し上げます。
理由といたしましては、この作品を続けてよいものか非常に迷っておりました。

私自身は、書きたいと言う思いが強い作品ではあるのです。
その思いに、技術が付いて来ていない事は重々承知の上で、なおも続けたいと思っております。
『簡潔していない作品のクロス』+『純粋なクロスでは無く、自己解釈込みの未来設定によるクロス』『主人公が原作とは離れた存在』など二次創作として、否定される要素が多く含まれている事も承知の上での続けたいと言うの思いです。

勝手な言い分ですが私自身としては、キャラ設定は異なった物でもその中で出来るだけ原作設定を使い生かし、文章を創っていきたいと考えております。
なるべく互いの作品のキャラを生かし、どちらかが一方の作品が蔑ろにされる事が無い様に私の中では心がけおります。
あくまで私の主観からですので、実際には周りの方にはどの様に写っているかは不安な面が多くありますが。

しかし現実問題としてこの作品により、不快にな思いをされている方もいらっしゃると思います。

「NARUTO」にしても「ネギま」にしても、新しい設定が数多く出てきて、私の中でも大きくこれからの作品の流れ、書こうと思っているストーリーを改変せざるをえない事も存在します。
しか大まかな流れや当初からやろうと思っていた事柄、どうしても変えたくないストーリーと設定に関しては、そのままで書いて行きたいと考えております。

ただでさえ無茶な設定となっているのですが、後々にさらに無茶な設定、特にナルトの『忍術』に関しては原作から大きく離れかねない物、異なってきてしまう物が出てきてしまう恐れがあります。(未だ、ナルトの方で忍術の設定が完全に出ていないので、なんとも言えませんが……)
具体的にあげると、ナルト自身の使える『性質変化』による忍術の数(得意なものは原作と『風』と、もう一つ(未だに不明)同じと言う形では行くつもりで、それ以外は“使えるだけ”とか“威力が今一”の様に調整するつもりではありますが……)等の事柄です。

その様な事で、続けていく中で更に不快にさせてしまう様な設定が出てきてしまう可能性があり、その事で悩んでおりました。

私如き技量で、読んで頂けてる方全ての理想や期待に適った作品を書けるとは思っておりません。
人はそれぞれ独自の主観と感覚を持っているので、好いて頂けるか方がいれば、嫌悪感や苛立ちを感じる方も当然いらっしゃると思っております。
けどそんな中でも、出来るだけ多くの人に呼んでもらえ楽しんでもらえる作品にしていきたい、そんな思いで私自身は文章を書いております。

呼んでいただける方に「楽しんでもらえる」作品であり、私自身が書いていて「楽しい」と思える作品である事が、二次創作の大切なので一つの理想なのでは、と私自身は考えております。(あくまで、私個人の意見ではありますが…)

書き手自身が、書きたく無い作品では意味が無いのではと思っております。
皆さんの意見や、感想、指摘を受け、その上で直すべき所は直し、どうしても譲れない部分は譲るべきでは無いと言うのが、私の中の一つの結論です。
当然と、書き手の完全な独り善がりにならないように、(言い方は非常に悪いですが)書き手自身の妥協という物も必要ですが……。

長々とした乱文となってしまいましたが、結論と致しましては、この作品を続けて行きたいとの思っていると言う事です。

今後も更新は、ゆっくりとしたペースとなってしまう可能性が大きい上に、原作通りの設定とは言えない物も出てくるかも知れませんが、呼んで頂ける方に楽しんで頂ければ私のとしては真に幸いです。
楽しんで頂ている方、期待して頂いている方、怒りや憤りをを感じている方、納得頂ける内容は無いと思われている方、いろいろな方々がいらっしゃるとは思いますが、読み手が楽しめて書き手も楽しい作品となる様、よりいっそう精進して行きたいと思います。
今後とも、よろしくお願い致します。

麻帆良忍風帖だってばよ!! その7 『一つの結果・嵐(?)の前兆(テスト編、終話』

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