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人修羅先生! 一話(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:04/09-03:31 No.125

これはある修羅の物語。コトワリを見つけることができなかった、人から変じたアクマの物語









紅いマガツヒで染められた風景の中一人の男が浮かんでいる、いや正確にはその男は人ではない



その男の身体はアクマ、その証拠として男の体に走る刺青は青白く発光している。



男はただ日常を生きていただけであった。



しかし、新たな世界の創世の為の儀式――――東京受胎



――新たな世界の為既存の世界を壊し、自らの思想『コトワリ』を創世の為の世界『ボルテクス界』のアクマの内に広め、異界の神を『マガツヒ』を大量に使用し呼び出し、そして『カグツチ』にたどり着く事で新たな世界の創世を行う儀式――



その東京受胎に巻き込まれ、男の身体は人からアクマへと変貌した。



男は共に巻き込まれた友を、そしてこの世界へと誘った先生を捜す為にアクマの溢れる世界を旅した。



しかし先生は自らの目の前で消え、友は世界に絶望し、力を求め自らのコトワリを説くために男とは袂を分かった。



男は全てのコトワリを否定しつくし、友を裏切る形での世界の創世を行った……












side 人修羅



……ここはどこだ?俺はあのカグツチと戦ってそれからどうなったんだ?



……ああ、俺はどんな世界も選べなかったんだったな。



あの東京受胎からなんとなく進んできてあいつら…氷川の、千晶の、勇の、コトワリを肯定できず、



かといって否定もできず、ただただ惰性で何のコトワリを得ることもなく迷ったまま戦い続けカグツチ塔まで行き着いてそのままカグツチと戦ってしまった。



その結果がこれか、俺の心のように何のコトワリもない、ただマガツヒがあるだけの混沌とした世界



ごめん、先生俺は新しい世界を選べなかったよ。



これからどうなるなんだろうな。



「もう一度、人に会いたいな……。」



そして俺は目を閉じた。











side 刹那



いつもの学園長の依頼、今日の仕事もそのはずだった。



しかし、いつもと違ったのは相手の魔の数がいつもよりも遥かに多く連携も出来ていた事。



その事に気付かずいつもの相手だと油断した私はあっという間に窮地へと追い込まれた。



今私は深夜の森の中、十数体の魔によって周囲を囲まれている。



いつもの私ならこの程度の相手なら楽に勝てるはず。



しかし、今は状況が違う。



私の身体にはいくつもの傷が刻まれ私の速度は低下し、攻撃されても避ける事は出来ず受け止める事で精一杯。



さらに、今こうしている間にも魔がぞくぞくと私のもとへ集結し始めている。



(こんな事なら龍宮と一緒に依頼を受ければよかったな。)



後悔の念が頭をよぎる。



今、後悔したところでこの状況はどうにもならない。



今重要なのは、生き残る事、私の全力を持ってこの状況を打破すること!



その思考とともに私は再び戦闘を開始する。



「神鳴流奥義……百列桜花斬!!! 」



現状で私の出せる最大の技、いくつもの斬撃によって異形の魔が吹き飛ぶ。



私はこの包囲網を脱出するため、その吹き飛んだ箇所めがけて疾走する。



しかし、私は次の瞬間地面に倒れこんでいた。



足元には黒い色をした蛇形の魔が巻きついている。



闇にまぎれていた事もあり、視認できなかったのだろう。



そんな思考をしたときには、周囲の魔がこれを好機と見た魔が一斉にこちらに襲い掛かってきた。



あるものは牙を、またあるものは爪を、私の身体につきたてようと飛び掛ってくる。



「ごめん……このちゃん。」



口をついて出たのは私が守るべき人への謝罪の言葉。



そして私は死を覚悟した。









side 人修羅



……夢を見ている。



自分で夢だと理解できるのは、これが自分の記憶だとわかっているから。



それは、過去のこと。



勇と馬鹿な事をやって、千晶に呆れられ、先生に怒られる、そんな日常。



場面が変わる



今度は俺の全てが変わった日の記憶。



―――東京受胎―――



あの病院の屋上で、先生が俺に向かってあの日と同じ事を話し掛けている。



俺は夢だと分かっていても、無駄だと分かっていても、先生を止めようと叫ぼうとする。



しかし、俺の叫びは、言葉にならず先生に届かない。



そして



 世 界 が 生 ま れ 変 わ っ た





「うわあああぁぁぁぁ!! 」



けたたましい雄叫びと共に俺は、目を覚ました。



「はぁはぁ……」



悪夢で高まった気分を深呼吸をして落ち着かせる。



そして、落ち着く事によって気づく疑問。



「……ここはどこだ?」



俺の視界の中には木々が立ち並んで森を形成している。



よし、まずは情報を元に一つずつ整理していこう。



まず、俺はあの混沌とした世界で眠りに付いたはずだ。



それで……なんでこんなところにいるんだろう?



そう、こんな空には綺麗な三日月が浮いている森の中に……



……待てよ? 森の中、という点はいいにしても、三日月が浮いているだと?



ということは……



「ここはボルテクス界じゃないっていう事か!?」



つまりそういう事になるしかないだろう。



空にカグツチが無い以上その結論しかありえない。



しかし、確かめるためには情報が足りない。



自分が何故ボルテクス界に居ないのか、



此処がボルテクス界じゃ無いとして此処は何処なのか。



そう思った時だった。近くで戦いの気配がしたのは。



「なんにしても戦ってる相手を見れば、少しは情報が手に入るかな?」



そう独り言をつぶやいて俺は気配のもとに走った。











次第に気配がはっきりしてくる、多くの気配は俺がいつも感じ取っていたもの



すなわち、アクマのものに似ている気配だ。



そして、その気配に囲まれるように、また違った気配を持つものがいる。



そうこうしてるうちに、次第にそいつらを視認できる距離まで近づいていた。






俺の目に飛び込んできた光景は、一人の少女に、幾多の異形が飛び掛っているものだった。



……人間!?



久しぶりに見る人間の姿に驚きを感じるがその思考をカットして、俺は速度を上げる。



間に合うか? 否! 間に合わせる!!



全身の魔力を活性化させる。全身に走る刺青がより強く発光する。



そして俺は一陣の風となり少女に駆け寄り、襲い掛かる異形を殴り飛ばす。



「大丈夫か?」



俺はそう少女に話し掛ける。



すると少女は、あっけに取られたかのような顔をしている。



まあ、普通こんな異形どもに襲い掛かられたらこうなるよな。



ん……?近くに落ちている刀はなんだ?



まあいいか



「ちょっと待っててな、こいつら片付けるから。」



そう話し掛けた後、突然現れた俺を警戒している異形どもに向き直る。



「さあ……かかって来いよ」



この身体はこの少女を守るために修羅となる!












人修羅先生! 人修羅先生! 二話

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