人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:04/09-03:34 No.128
side 人修羅
青い空の下、俺は人でにぎわう街の中を歩いている。
さて、学園長に言われて街に出てきたはいいが……
まず、この歩いている街、つまり麻帆良学園都市のことだが、やたら広い、
そして今日は休日なのか、やたら人が多い。
学園都市って事は基本的に暮らしてるのは学園関係者のはずだから……
この人の数を考慮に入れると、凄まじい規模の学園だとわかる。
俺はその雑踏の中を大した苦労もなく歩いている。
何でかって?
それは今の俺の格好に原因がある。
学園長に渡された服、それは……
葬式にでも行くのかって感じの黒のスーツセット。
そしてそれに合わせた黒の革靴。
とどめにサングラス。
つまり…………顔に走る刺青と併せて完璧にヤク○な格好な訳で。
嗚呼……街を行く人の怯えた視線が突き刺さる……
学園長が、
「君にはこの格好が似合うじゃろう」
とかいって渡してくれたはいいけれど、ここまで怯えられるとは……
あの爺さん俺が最初に頭の事で変な事を考えてたのを知ってて、俺に嫌がらせしてるんじゃないのか?
まあ、そんな視線を浴びてはいるが、俺の機嫌はいい
何しろ、本当に久しぶりに、これだけたくさんの人に会えたのだから。
この街に溢れる生命感。
ボルテクス界でも一時期アサクサがマネカタ達によって復興され始めていた時期も中々に活気があったがそれとは次元が違う。
男が、女が、子供が皆様々な表情で道を歩いている。
何か嫌な事でもあったのか、沈んだ顔の少女
これからデートにでも行くのか、ウキウキとした表情の男
どれもマネカタには無かった。
そんなわけで俺の顔がほころぶのも無理はないと思う。
まあ、転んだ子供を助けたら、その子供に泣かれた時は少し凹んだけどな……
そんな事を、思い出して目から塩水がこぼれそうになったとき。
「やめてください!!!」
そんな声が聞こえた。
side ハルナ
ミスったなぁ……
そんな事を考える。
ついさっきまで、夕映と、のどかと、三人で楽しみに計画していた本屋巡りをしていた。
順調に本屋を回り、お気に入りの作家の新刊を買えて上機嫌で本屋をでてきた時だった。
本を抱えていて運動のできなさそうな私たちを見て、カモだと思ったのだろう。
いかにも頭の悪そうな、不良3人組が私たちに絡んできた。
こいつらの中でもリーダーらしい男が、
「ねえねえ、君たち俺たちといいことしない?」
そんなことを口走りながら近寄ってきた。
(夕映はまだ大丈夫そうだけど……のどかはすごい怯えてる、ここは私がなんとかしないと!)
「夕映! のどか連れて逃げなっっ!」
ドカッ!
私はもったいないとは思ったけど、手に持った本を近寄ってきた男の顔におもいっきり投げつける。
「うぎゃっっ」
男がそんな声をあげて後退する。
その隙をついて、夕映がのどかの手を引いて逃げ出していく。
その方向とは逆に私も走り出す。
「このアマっっ! 逃がさねえぞ!!」
そう言って男たちは、私を追ってきた。
(作戦成功! 後は私が逃げ切ればいいんだけど……)
しかし、そうは上手くいってくれなかった。
少し考えれば分かる事だ、私は男から走って逃げ切れるほど運動ができる訳ではないのだから。
だから、私はこうして路地裏で追い詰められている。
さっき本をぶつけた男が近寄ってくる。
「てこずらせやがって、少し痛い目見ないといけないようだなあ」
陳腐な悪役の台詞、けど実際に言われてみると、怖い。
「やめてください!!!」
私の口から漏れる台詞もまた陳腐なものだ。
(小説だったら、こういう場面にかっこいい主人公が助けてくれるんだけどな)
男の振り上げられる手に目を閉じる。
その時だった、
「おい、そこのお前ら」
そんな声が聞こえたのは。
(えっっ? ひょっとしてほんとに助けてくれる人が?)
そう思い、眼を開けて声の主を見る。
その声の主は……
顔面に刺青の入ったヤク○でした。
side 人修羅
「おい、そこのお前ら」
黒い長髪の少女に手を上げようとしている、男たちにそう声をかける。
「ああ? なんだあんたは? ひょっとして一緒に楽しみてぇのか?」
リーダー格らしい男がそう威圧的に言ってくる。
はあ……やっぱりどこの世界にもいるんだな、こういった輩は
昔は勇と一緒によくこんな馬鹿達と喧嘩したもんだ。
「いや……人の恋愛に口出しする気はないが、女の子が嫌がっているようだから、止めに来た」
そんな会話をしている間に、少女に逃げるよう目配せする。
すると、その意味に気づいた少女はこちらに会釈して、慌てて俺の脇を通って逃げ出す。
「あっっ! 待ちやがれ!」
男たちが追おうとするが、俺が道をふさいでいるので追う事ができない。
「てめえ、退きやがれ!!」
そう言って、俺に殴りかかってくる。
うん、殴りかかって来たって事は正当防衛だよな。
俺は殴りかかってきた手を受け止めて、攻撃を開始した……
……
…………
………………
少しやりすぎたかな?
いや、決して上機嫌だったところに水を差されたからではないですよ?
それにしても、まさかデコピン一発であんなにとぶとは……
まあ、あいつらの人間性が軽かったからだろう。
(おっっ、そろそろ学園長に呼ばれている時間だな)
そして俺はその場を後にした。
残された奴らはいつかは道行く人に見つけられることだろう。
風邪くらいは引いてるかもしれんが。
「失礼します」
学園長室には学園長が一人で机に向かって仕事をしていた。
「おおっ、よく来たの藤堂君」
俺に顔を向け笑いながら言ってきた。
「この学園はどうだったかの?」
「いや……もう凄いとしか言いようがありませんね。」
正直に思ったことをそのまま俺は口にだした。
この学園の人の数といい、あの馬鹿でかい樹といいその一言に尽きると思う。
「それはよかった……それで君の今後の事なんじゃが……」
その言葉に俺は思わず息を飲む。
「……先生兼警備員をしてもらうことになった。」
「は? 」
学園長の言葉に俺の思考回路は停止した。
……先生? 誰が? 俺が? どうやって?
「ちょっっ、警備員だけならともかく、先生なんてできませんよ!」
「大丈夫じゃよ、免許は何とかこちらで何とかするし、それにこれを受けてくれたら君に戸籍を作ってあげるし、君に職はできるし、いいことずくめと思うがのぉ」
学園長は黒い笑みを浮かべて言ってくる。
これは……俺に逃げ道なんか用意されていないじゃないか。
「ハア……いいですよ、どうせやるしかないんですからやりますよ。」
俺は諦めの念と共にそう言った。
「おおっ、そうかやってくれるか」
学園長は満面の笑みでそう言ってきた。
逃げ場を無くして置いた分際でよく言うよ。
「それで、理由はなんなんです? ただのボランティアで俺みたいな危険人物を雇おうとしている訳じゃないんでしょう?」
そう、いくらなんでもこんなアクマの体を持つ俺を先生とするには何らかの理由があるに違いない。
「それは……孫の木乃香を護衛してもらいたいんじゃ、木乃香はその血筋のせいか膨大な魔力を持っているんじゃが、その魔力を狙う輩も多い、じゃから……」
辛そうな表情でそう俺に話す学園長。
「そういう事なら任せてください、俺は人を守るって決めたんですから」
俺は強い口調でそう学園長に告げた。
この身体に満ちる力を使えば、護衛なんぞ余裕だ。
「それで……俺は人に教えられるほど、頭が良くないんですけど?」
そう、俺の学校の成績は中の下程度だったんだから人に教えられる訳もない。
「ああ、その事なら大丈夫じゃ……………詰め込むから」
「は? 」
本日二度目の思考停止。
「君には副担任になってもらうんじゃが、始業式が三日後での、流石に三日では無理じゃが一週間で必要な知識を全部頭の中に叩き込んでもらうんじゃ」
学園長は笑顔でそうのたまった。
「む、無理に決まってるじゃないですか」
「大丈夫じゃよ、魔法で催眠術のごとく頭に入れるんじゃから…………ちょっと痛いけど」
言葉に不穏なものを感じ学園長に問い掛けてみる。
「痛いってどのくらいですか?」
学園長は目線をそらしながら
「一週間、頭痛のあまり一睡もできないくらいかの……」
そんなことを言ってきた。
俺はその言葉を聞いた瞬間、
「この事はなかった事に」
ドアに向かって逃げ出した。
「フォッフォッフォッ、高畑君捕らえてくれ」
ドアの向こうからくたびれたスーツを来た男が現れ、俺を捕らえようとする。
(俺の力なら逃げ切れる!!)
そう思い、全力では無いものの人の限界は遥かに超えているであろう力で振り払おうとするが、振り払えない。
「なんでだ、なんで振り払えない」
暴れつつ疑問を口に出す。
「こんな事もあろうかと、強力な対悪魔用結界をこの部屋に発動させておいたんじゃよ。それに高畑君はこの学園内でもかなりの力自慢じゃからの」
「なっっ!! 謀ったな、謀ったな学園長」
どこぞの坊やのような台詞を口にだす。
「それじゃあ、高畑君、藤堂君を調kyもとい教育部屋に案内してやってくれ。」
「すまないね、藤堂君」
「いーーーやーーーだーーー」
引きずられる俺の頭の中には、ドナドナがエンドレスで流れていた。
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