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人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:04/12-20:45 No.292

side 人修羅

「ハァ~」

歩いていて自然にため息が漏れる。

それ程までに今日は『濃い』1日だった。

朝の俺の心をえぐりまくったホームルームに始まり、あのクラスには散々振り回された。

俺が授業中に黒板に向かったら俺の首に生えている角に突っ込んでくるし……

いや、角の生えた教師なんていないから当たり前だとは思うがな。

けどね、苦し紛れにそれをアクセサリーですって言ったらそれを信じるんですよ!?

「へー、変わったアクセサリーですね。」

なんて、普通言わないだろう?

まあ、何の理由か分からないけど、ロボットが普通にクラスメートとして認識されているクラスだからなぁ……

そんな理由で俺は非常に疲れているのだが不幸な事に本日はまだイベントが残っていて俺に休息を許してくれない。

そして、その残っているイベントの初めが今日授業が終わってから桜咲に

「藤堂先生……今日の6時に森の入り口に来て頂けませんか?」

と呼び出されたイベントだ。






そして、俺は森の入り口に立っている、時刻は5時、辺りは夕暮れの赤に染まっている。

この赤色はボルテクス界に溢れていた血の赤とは違い、温かみがある。

俺がこうして早く来たのには理由がある。

それはこの世界に来てまだ試したことの無いことを試みてみようとしているからだ。

そのためには人目が邪魔となる、だから俺は夕暮れ時の森ならちょうどよいと思ったのだ。

「さて……始めるか」

これから試みるのは召喚。

俺を認めてくれた仲魔を呼び出すのだが……正直成功するかは全く不明

なにしろ世界が違うのだから。

それでも少しの希望を胸に召喚を開始する。

呼び出す仲魔は、初めての仲魔。

一番付き合いが長く苦楽を共にしてきた仲魔

「来てくれ…………」

近くに魔法陣が描かれる、中から光が溢れだし夕暮れの少し暗くなった森を照らしだす。

その光が収まった時魔法陣があったはずの場所には……

赤色の綺麗な髪に可愛らしい顔、しかしその背中にあるのは昆虫のような羽根、そしてその体は人の手のひらに乗るようなサイズ。

その名はピクシー

森の妖精として世界的に有名な存在である。

そのピクシーが俺の顔を見て喜色満面で飛んでくる。

「カズト~~久しぶり!!」

そう言って、俺の顔に抱きついてくる。

ええい、暑苦しい!

「ああ、久しぶりだなピクシー」

俺の顔に張り付いたピクシーを剥がしながら、そう答える。

「むーー、何で最近私を呼ばなかったの?」

剥がされた事が不満なのかそれとも、呼ばなかったのが不満なのか。

とにかく頬を膨れさせているピクシー。

「いや、カグツチ塔の中とかは敵が強くてだなぁ……」

そう言ってやると、膨れ顔のままのピクシーは

「ふーんだ!どうせスカアハとかパールヴァティとかの方が私よりも綺麗だとか思ってるんだから私を召喚しなかったんでしょ? この女好きのどスケベ!!」

そんな事をおっしゃってくれやがりました。

「いや、決してそんな訳では……」

そんな俺の主張も

「……パールヴァティに言い寄られて鼻の下伸ばしてたくせに」

そんな一言で見事に砕け散りましたよ。

(ハァ……)

今日で何回目になるか分からないため息を漏らす。

ため息をする度に幸せが逃げるというが、それは大間違いだと思う。

なぜなら、人は不幸だからこそため息を吐くのだから

さて、こういう時は素直に……

「あのなぁ、確かにパールヴァティやスカアハばかりを最近は召喚していたかもれないけどな、俺はお前を大切な仲魔なんだって思ってるんだぞ、
だから機嫌を直してお前の可愛い笑顔を見せてくれよ。」

そう言ってやって、笑いかける。

「えへへ、じゃあ今回は許してあげる。」

そう言って、今度は笑顔で俺の肩に座った。

それから、俺はここが異世界だということや俺が教師をしている事などを話してやった。

(俺が教師をやってると言ったら大笑いされた)

それからさらに、他の仲魔を召喚しようと色々と試した結果、ある事が判明した。

それは、この世界に来た事によって、召喚に使われる穴(俺は『門』と呼んでいる)

その『門』が小さくなっているのだ。

この小さくなった、というのは物理的に小さくなったわけでは無く、霊的に小さくなっている。

つまり、簡単に言うなら高位の仲魔が召喚出来なくなっているという事だ。

一緒に戦場で戦った仲魔に会えないと思うと悲しく感じる。

だが、全ての仲魔を召喚出来なくなったわけでは無いし

これから、何かのきっかけで召喚出来るようになる可能性もある、と自分を無理やり納得させた。








そんなこんなで、ピクシーと久方ぶりの雑談をしているうちにもう6時、桜咲と約束した時間になっていた。

辺りを見回して見ると遠くからこちらに向かって走って来る竹刀袋を持った桜咲の姿が確認できた。

「おう、こっちだ」

手を振って自分の位置を示してやると、更にスピードを上げてこちらに駆けてくる。

「すっすいません、剣道部に顔を出していたら遅れてしまいました。」

「いや、ただ俺が早く来ただけだからそんな謝る事じゃないぞ。」

まだ息の荒い桜咲にそう言ってやる。

「ねえ、カズトこの子誰?」

俺の肩に座ったままのピクシーがそう問いかけて来る。

「俺の担当しているクラスの生徒の桜咲刹那だ」

そう答えたら

「へー……本当に教師やってるんだ……」

なんて事を驚き顔で言いやがった。

「あのなぁ、俺だって「あの……藤堂先生?」……何だ?」

俺達の会話で居心地の悪そうな顔をしている桜咲。

「その……肩に居るのは?」

桜咲は得体の知れないものを見る目で俺の肩に居るピクシーを指差している。

「コイツは俺の仲魔のピクシー。多少うるさいがまあそこは我慢してやってくれ。」

「誰がうるさいって言うのよ? 」

誰がってお前だ、お前

「……仲魔? 使い魔とは違うんですか?」

使い魔の正確な事は分からないが言葉の表現からは何か一方的な感じがする。

「んーー使い魔っていうのがよく判らんがコイツは俺に使われているわけじゃなくて、俺は力を貸してもらってるだけだ。」

「そうそう、カズトって私がいないと全然駄目なんだから」

クスクス笑いながら、俺の威厳を下げるような嘘をつくピクシー。

クッ、コイツ楽しんでやがる。

嘘をついた罰として俺はピクシーの頬を軽く左右に引っ張ってやる。

うむ……柔らかい。

「ふぁふぃふんほほぉ」

「誰がお前がいなきゃ駄目なんだよ、誰が」

そんな俺達の漫才を桜咲は今度は驚いた顔で見つめている。

「どうした?」

ピクシーの頬を引っ張ったまま顔だけ向けて問いかける。

「いえ……ピクシーの存在は知っていましたが人には懐いたりしないと聞いていたので……」

ピクシーの頬を引っ張っていた手を離して、改めて桜咲の方を向く。

その際、ピクシーが俺に体当たりしてくるのは無視する。

「で、俺に何の用があって呼び出したんだ? まさか、愛の告白をしに来たわけじゃないだろう?」

「こっ告白なんてしませんよ!!」

真っ赤な顔で、桜咲が食って掛かる。

なかなかにからかいがいがあるなコイツ。

「冗談はともかく……本題はなんだ?」

その俺の言葉で桜咲の雰囲気が一気に引き締まる。

俺の方はピクシーが体当たりに飽きたのか頭の上で寝ているので全然引き締まって無いが……

「あのですね…………私を強くして下さい!!」

「は?」

ナニヲイッテルノカナ?

「この間、私は藤堂先生に危ない所を助けてもらいました……それじゃ駄目なんです!もっと……もっと強くならないと木乃香お嬢様を守れないんです!!」

決意のこもった声。

……そうか、この子は爺さんの言ってた近衛の護衛か。

そして、近衛を守る為に力が必要なわけか

「ねえカズト、どうするの?」

頭の上からの声

俺の返事は決まっている、この奪うしかできなかった力が守る為に役立つのなら

返事は一つ

「……ああ、引き受けよう。」

「あっ有難うございます!!」

ものすごい勢いで頭を下げてくる。

むぅ……クラス内の雰囲気ではわからなかったがひょっとして根は熱血系か?

それにしても、何を教えればいいのだろう?

それを確かめる為にも、一回手合わせしてみるか。

「桜咲……俺はお前の実力を知らん。だから、お前の修行方針を決める為にも一丁かかって来い……ピクシーは傍で見ているように」

「えっっ!? あっ……はいっ!!」

桜咲は威勢のいい返事をすると、自らの持つ竹刀袋から鞘に入った一本の長刀――あの長さは野太刀って言うのかな?――を取り出した。

俺の頭上のピクシーはパタパタと離れてゆく。

「あの……私はこの『夕凪』を使うんですけど。先生は素手で良いんですか?」

「ああ。俺の基本的な構えは素手だ……」

桜咲は俺の身を心配してくれているのだろうが、はっきり言ってそんな物はいっさい無用。

俺はスルトの持つ炎の魔剣に切り裂かれても何とか生きている事が出来たのだ。

俺の身体は下手な刃物は通さない程の硬度を備えている。

それより第一当たらなければ、どうと言う事は無い。

「余計な心配は無用。俺にお前の全力を見せてみろ」

素手の俺に対しての迷いが幾分見える桜咲を吹っ切らせる為にそう告げる。

「そこまで言うのなら……行きます!!」

――――瞬

俺が身を屈めたすぐ上を銀線が疾走る。

ひょっとして居合だったりするのかな?

そんな俺の思考を許さない様に桜咲は高速連撃を放ってくる。

切り、払い、薙ぎ、突く。

その攻撃には迷いが見られず、素晴らしいものだとは思うが……如何せん正直すぎる。

攻撃にフェイントの混じる割合が低すぎ、全てが必殺とでも言わんばかりだ。

この戦法は、巨大で耐久力の高く動きが遅めの奴には非常に有効だろう。

恐らく桜咲の属する流派がそういったものを相手にする事を前提に編み出したものだろう。

だが、俺は別段巨大でも、動きが遅いわけでもない。

そんな単純で更に俺にとっては頼りの筈の速度も遅い攻撃

ゆえに俺は簡単に避ける事が出来る。

ヒョイヒョイと身体を数センチから数十センチ動かすだけで己の剣を避けられている事に焦れてきたのか次第に剣が雑にそして大振りとなっていく。

「ハァッッ!!」

気合と共に大上段からの振り下ろし。

それは

「……雑」

刀が振り下ろされる途中。桜咲の手の中の柄を上に蹴りぬく。

俺の蹴りは幾多の神、魔王、邪神を屠ってきた。

つまり桜咲の握力は俺の蹴りの威力に耐え切れる事は無く、当然のごとく刀は上方に飛ぶ。

「はい、終わり」

右手の人差し指を無防備となった桜咲のデコにつけて終了を宣言する。

「結構時間掛かったねーー」

傍で見ていたピクシーはそう言ってくる。

「まあ、桜咲の実力を見るんだからあんまり速いのも問題だろ。」

そんな風にピクシーと雑談を交わす。

「此処まで実力差があるともう負けても悔しさがほとんど無いですね……」

呆れているのか諦めているのか何なのか良く分からない表情で桜咲が言う

さて、これから桜咲に対してはどうすべきか。

ふむ……直接桜咲に教えても今の桜咲の剣技のレベルは、俺の一部のスキルを使う為だけに覚えた剣技のレベルは遥かに超えてるからなぁ

……そうだ!

俺は目を閉じて召喚の為に精神を集中させる。

呼び出す仲魔は『神の力』の名を持つ天使――

「来いっっ! パワー!! 」

鎧を着込み、槍を持った天使がこの場に召喚される。

「天使『パワー』ここに召喚された……主殿、何の用ですか?」

パワーに事情を説明してやる。

「ほう……この少女に私が武を教えれば良いのですね?」

「ああ、そういうことだ……それじゃ桜咲、俺は武器の扱いは駄目だからコイツに習ってくれ」

ふと、時計を見ると既に結構な時間が経過していた。

「ああ、俺はもう校内の見回りに行かなくちゃならないから、後はパワーに任せる。」

「了解した、主殿」

その言葉を聞いて俺は足を学校に向ける。

「……待って下さい藤堂先生!!」

それまで呆けていた桜咲が慌てて俺に声をかけてくる。

「今度は何だ?」

「……まさか、天使を召喚するとは…………藤堂先生、アナタは本当に何者ですか? アナタの居た異世界というのはどんな所だったんですか?」

――最もな疑問だな。

「俺の居た世界については言いたく無いな、代わりに俺の事だが……」

校舎の方向に歩き出しながら答えてやる。

「―――ただの副担任だ―――」

人修羅先生! 人修羅先生! 七話

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