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人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:04/23-21:18 No.379

side 人修羅

「見っ回り見っ回りーー」

見回り中の俺の右肩にお決まりのように乗ったピクシーが分けのわからん歌を歌う。

流石に妖精なだけはあり、非常に上手く癒されるのだが、如何せん歌詞が最悪だ。

「本当にお前が出会ったっていうその侵入者のオコジョ妖精とやらは放って置いて大丈夫なんだな?」

「んーーーー。全然強い力は感じなかったし、ジオ打ちまくって脅したら泣いて『オレッチはネギの兄貴に会いに来ただけなんですーーーっっ!!』って叫んでたから別に害も無さそうじゃない?」

……その光景を想像したらそのオコジョに哀れみを感じた。

泣いて逃げ回るオコジョに嬉々として落雷を落としまくるピクシー

なんか既視感を感じるな……

それにしても、ネギ君に会いに来た妖精……か

後でネギ君の家が何処に在るか聞いて、行ってみるか。

そのオコジョを警備員として見逃すって訳にもいかんしな

そんな事を考えながら俺はピクシーと共に既に日も沈み始めた校外を見回り始めた。








「あっっ!! 藤堂先生!!」

そんな声を挙げたのは長刀を手に持って俺の見回りが終わるのを待っていた桜咲

今日は桜咲に修行をつける日なのだが……

その場には招かれざる客が二人

「なんでお前等まで一緒に居る……」

俺は呆れるあまり思わず右手で顔を覆って溜息を漏らしてしまった。

「まあ細かい事は気にするな」

「そうでござるよ、あんまり気にし過ぎると胃潰瘍になるでござるよ。」

そんな事を言いやがるのは長瀬と龍宮の、本当にお前等中学生か? と疑いたくなるコンビ

そもそも俺の胃は人ならもう既に回復が困難なぐらいのダメージを受けている。

「いやぁ……本当は刹那殿がこんな時間に何処に行くのか不思議に思って尾行してきただけでござる。」

この忍者はそのスキルを無駄使いしてないかい?

「やあ、妖精さん。昨日は世話になったね」

「身体は大丈夫? 私の魔法で毒は完全に抜け切ってるはずだけど?」

「ばっちりだよ。かえって昨日より体調が良いくらいさ」

龍宮はいつの間にやら俺の肩から離れたピクシーと親しげに話している。

「それじゃあ、今から桜咲の修行があるからお前等二人は今帰れ、すぐ帰れ、ほら帰れ」

俺の勘はこれ以上こいつ等と関わるとろくな事にならんと告げている

今日俺があの始末書を書かなければいけなくなったのも元はと言えばこいつ等のせいだ!

「へえ……刹那に修行か……ちょっと見学させてもらおうかな?」

俺の訴えを完全に無視し、微笑と共にそう口に出すのは龍宮。

「それじゃあ拙者も!」

長瀬までもそれに乗っかってくる

「もう……好きにしろ……桜咲もいいよな?」

「え? あ、はい!」

こいつ等には何を言っても無駄だと俺はこの時学習した。

「それじゃあ……出て来い『パワー』!」

片手を挙げて今回もパワーを召喚

「……今回は随分と軽い感じで召喚ですね」

「真面目にやるのがなんか馬鹿らしくなってな……本来はこんな掛け声もいらないんだけど気分の問題だよ」

そんな会話を交わしている間に光が集まりパワーが現れる。

「今日もまた修行ですか?」

爽やかな笑みを顔に浮かべ語りかけてくるパワー

俺の召喚を始めて見る龍宮と長瀬は驚愕に目を見開いている。

ふっ……いい気味だ!

「ああ、今日も頼む」

桜咲とパワーは少し離れたところに移動し、お互いに向き合い一礼してから鍛錬という名の戦いを始めた。

俺はその姿を未だに呆けている二人の近くに座り込んで眺める事にした。

「藤堂先生……私の勘違いかな? あなたが今あの天使らしき人を召喚していたような……」

「ああ……その通りあいつは天使だけど? おおっっ!! 今あんな長い刀で居合したよ。……じゃあやっぱりこの間のアレは居合だったか」

あんなにかっこいいと俺も刀を使ってみたくなるな……多分俺の爪の方がそこら辺の刀よりも切れ味も使い勝手も良いような気もするが

「「はあっっ!?」」

俺は次の瞬間二人に胸倉つかまれて揺すられていました。

「どうなっているんでござる? 何で天使が?」

「藤堂先生は事の重大さが分かってるのか!?」

「ま……待て……手を離してくれないと……うぇ…ちょっと気持ち悪い……」

ガクガクと揺らされている俺の視界の端には岩に腰かけ、こちらを見てケラケラと笑うピクシーの姿が映る。

―――助けろ

―――嫌よ

―――何で

―――面白くないから

0.5秒の間にピクシーとの間で行われたアイコンタクト

激戦を潜り抜ける事により身に付けたコンビプレーをこんな情けない場面で使う事になってしまった。

……さっきの長瀬を注意できないな俺って

「アイツは……俺の仲魔ですぅ…………分かったら放してくれ……」

そう言ったらやっと俺を解放してくれたが、二人の目は事情を説明しろという無言の意思に満ち溢れている。

はっきりいって恐ろしい。

なにしろそのプレッシャーときたら魔王も裸足で逃げ出しそうなほどだ……アバドンとモトには脚が在るかは不明だし、ロキはもとから裸足だが。

「えっとですね……昔に出会ったとき色々話し合った結果あの天使さんはですね、俺に力を貸してくれることになったんですよ」

嘘は言って無い、しかしこれ以上突っ込んだ事を聞かれたら黙秘権を使うしかない。

「へぇ。本来なら何処に行ったら天使に会えるのか聞きたいところだけど……昨日の事もあるし聞かないでおくよ」

……俺は感謝するべきなのだろうか?

そんな間に桜咲とパワーとの戦いは佳境に入っていた。

桜咲とパワーとの力量の差は明白

桜咲の攻撃はパワーの持つ槍と盾によってことごとく逸らされ、一瞬でも隙が出来ればパワーが打ち込む。

しかし、パワーの攻撃は未だに一度も桜咲には当たっていない、何故ならパワーはぎりぎり彼女が避けきれる速度で打ち込んでいるから。

俺は殺すか殺されるかで腕を磨いてきたので、こういった細かい手加減が出来ないのも、桜咲に直接教えない理由だ。

桜咲の身体に外傷は無くともその身体は攻守にわたる限界ギリギリの力の行使でその身体には疲労が溜まってきている。

先ほどまでは半々で打ちつ打たれつしていたのが疲労による動きの速度低下によりあっという間に桜咲の防戦一方となる。

―――そして

「……参りました」

桜咲の首に突きつけられた槍がその言葉と共に引かれる。

「前回から学習されたようですね。動きが格段に良くなっていますよ」

パワーは終わったと同時に疲労のために座り込んでしまった桜咲に優しい言葉をかける

「いやーー。桜咲も中々やるな、俺驚いたよ」

俺も立ち上がって桜咲に近寄り声をかける。

「いえっっ! 私なんかまだまだです。お嬢様を守るためにはもっともっと強くならないと……」

俺はその言葉に一抹の不安を感じて傍の長瀬にこっそりと尋ねる。

「なあ……桜咲は昔からこんなんか?」

ああいった手合いは精神的に崩れると脆いところがあると思う。

それに力を求めすぎるのも良くない。

力を求めて行き着く先は…………俺の友と同じ先。

「……そうでござるよ。もう少し肩の力を抜けば良いと思うでござるが……」

ふむ……こういった事は俺が口出しするよりもクラスメイトから言った方が案外上手くいくもの

だから俺は桜咲にはそれ以上は何も言わなかった。

「ところで主殿は鍛錬なさっているのですか?」

唐突なパワーの言葉

「いや……何回か戦闘はこなしたけど小物処理ばっかりだったな……」

そういえばこの世界に来てから全力で戦闘してないな……ほかの事では色々と全力は出してるけどな

……逃亡の時とか、今朝みたいな時とかに

「カズト、戦闘の勘鈍ってるんじゃない?」

パタパタと飛ぶピクシーがそう言ってくる

「そうかな……?」

自分では鈍った気は無いのだが……

「戦闘をなさっていなかったなら恐らくは鈍っているでしょうね……」

む……何か紳士口調で言われるとムカツクな

大体基本的に俺は寝る前のイメージトレーニングを怠ってない

パワーーを納得させるためには……

全身をリラックスさせて、誰にも悟られないぐらいの自然さで一歩目を踏み出す。

その一歩があれば十分。

「これでも俺は鈍ってるか?」

俺はパワーの懐に潜りこみ首筋に爪を突きつける。

恐らくこの中で俺の姿を捉えることができたのはピクシーぐらいのものだろう。

その証拠に生徒3人組はさっきまで俺が居た所を見ている。

「いえ……やはり主殿はお強いですね……」

両手を挙げて降参するパワー

俺はすっと手を引いた……

「はぁっっ!!」

瞬間不意をついてパワーが槍を振り下ろしてくるが―――

―――キン

その槍は振り下ろされる事は無く、俺の拳によって天高く弾け飛んでいった。

「どうやら鈍っているというのは私の杞憂だったようですね……」

クルクルと宙を舞い槍はパワーの背後に突き刺さった。

ふと気づいてみると桜咲が例のししょービームを送ってきているし、他の二人は何か当然の事のようにこちらを見つめていた。

「この馬鹿弟子がーーーーっっ!!」

と、桜咲に叫んでみたくなったがすんでのところで俺の理性が食い止めた。

「あーーっと今日はこれで終わりだ。お前等さっさと帰って寝ろ。俺はこれからちょいと用がある」

俺はこの変な空気に耐え切れそうに無く、そんな言葉を口に出した。

「それじゃあ、主殿。私は帰ります」

そう言ってパワーは消えていった。

「それじゃあ、私達は帰るとするか……」

龍宮がクルリと振り向きその場を去ろうとし、それに長瀬も続く

今まで座っていた桜咲は慌ててこちらに向かって一礼し、前の二人に追いつこうと駆け出した。

ピクシーが俺の頭の上に跳んでくる。

その時俺はある事を思い出した、漫画ならば電球が出るくらいに唐突にだ。

「ちょっと待った3人とも!!」

振り返る3人

「ネギ君が何処に住んでるか知ってるか?」

そう! 俺はネギ君の家に行ってオコジョ妖精とやらを尋問しなければならないのだ。

3人は顔を見合わせて二言三言言葉をかわした後。

長瀬と龍宮はなにやら黒い笑みを、桜咲は困ったような表情をそれぞれの顔に浮かべた。

「それなら拙者たちが案内するでござるよ」

その長瀬の優しげな言葉と表情のギャップにいささかの不安を感じたが他に方法も無いので、俺はピクシーをポケットに入れて案内を任せる事にした。






その道中

「なあ桜咲?」

「はい? なんですか?」

「パワーに俺の事について何か言われたか?」

「えっと……ありとあらゆる武術を究めて世界征服を狙う組織を単身で滅ぼした偉大な英雄だと……」

それは一体何処のライダーだ?……あの似非紳士は何をトチ狂ったんだか

今度一発ぶん殴っておこう……

何か長瀬と龍宮も信用したのか驚いた顔してるよ……あれか? 俺に変身でもしろと言うのか?

ある意味俺は常に変身してるとも言えなくは無いが。

「その情報は全くの嘘なので信用しないように……」

俺は溜息を漏らしてまた道を歩き始めた。

人修羅先生! 人修羅先生! 十三話

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