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人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:04/23-21:20 No.381

side 人修羅

カモがやって来てから数日が経過した。

この数日間の間にも、様々な事件が起き俺を悩ませてくれた。

このままの生活をあと一年間続けなくてはならないと思うと、気が滅入る。

まずカモがやって来た翌日、カモが宮崎を騙しそれに気づいたピクシーがジオでカモを黒焦げにした。

白オコジョから黒オコジョへとジョブチェンジを果たしたカモは、その後実は下着を盗んで追っ手から逃れるために麻帆良へと来た事を

神楽坂に知られて、鉄拳制裁を食らって肉片となっていた。

……明日は我が身だ、普段の態度に気をつけようと心に固く誓った。

他には、俺がロリコンだと言う噂が恐らく神楽坂経由で広がった。

それが原因で俺の事を見る目の恐怖のニュアンスが変わって、ヤクザへの恐怖+変質者への恐怖となり、クラス内での俺の立場はますます

酷い事になってきた……と思いきや、それを聞いて俺が必死でその事を否定しようとしていたらその様子が面白かったのか、クラスの中が笑いに包まれ、一気に俺はクラスに溶け込む事ができた。

……神楽坂には感謝するべきなのだろうか?

それから、ネギ君と神楽坂が我がクラスのミラクルロボット絡繰を襲っているのを慌てて止めたり(その後ネギ君とカモには生徒に手を上げるとは何事だ、ときつくお説教しといた)

エヴァンジェリンが吸血鬼のくせに風邪引いたので、俺が嫌がるネギ君の代わりにお見舞に行った……行ったら寝てたので、体調が良くなるように『ディアラハン』をかけておいた。

まぁ、大体主だったところはこんな所だ。

細かいところでは、桜咲の修行に付き合ったり……俺がやってる訳じゃないか。長瀬と龍宮に振り回されたり、相坂に癒されたりしている。

それと、毎朝古に挑戦されているが今のところ逃げ切っている……毎日動きが良くなっているので、下手をしたらそのうち捕まるかもしれない。

そんな騒がしい数日が過ぎて今日、俺は学園長に呼び出された。








「おお、藤堂君! 来てくれたかね」

放課後に呼び出された場所は、いつもの学園長室ではなく青空の下の世界樹広場。

俺は一人でピクシーには俺の代わりに見回りをして貰っている。

そこに立つ学園長の傍らにはナイスミドルな高畑先生が立っている。

その時点で俺はなんとなくだが、何故呼び出されたのか予想できた。

「それで、何の用ですか学園長、俺は見回りがあるので手早く済ませてもらえますか?」

「うむ。今日呼び出したのは、良く考えたらワシは君の実力を知らない事に昨日気づいて、この機会に知っておこうとおもっての。それにしても君は一体何をしたんじゃ? 魔法先生に君の相手を頼んだら高畑君以外は、微妙な笑顔で断っていったんじゃが……」

それは俺が火星とかと通信しちゃったりする人に思われているからですよ。

嗚呼、俺の一般人への道は遥かに遠いなぁ。

そんな感じで内心嘆きつつ、表面上は何でもないように装う。

「それで俺はこのナイスミドっじゃなくて高畑先生と試合をしろと?」

「その通りじゃ」

このジジイは俺に嫌がらせをしたいのか?

はっきり言って俺にはそうとしか思えない。

「それじゃあ、藤堂先生戦おうか」

このナイスミドルは戦闘する気満々ですよ。

もう俺は諦めちゃってるので、別に戦っても良いんだがその前に確認したい事が……

「学園長。周囲の損害の責任は全部学園長持ちで良いんですよね?」

俺はもうあの始末書の山には会いたくないぞ?

「その事なら大丈夫じゃ。この場には位相をずらす結界が人払いの結界と同時に張ってあって、いくら暴れても結界を解いたら結界の張られる前の状態になるんじゃよ。

この世界樹広場は昔から決闘が行われていての、この位相ずらしの結界用の魔方陣があらかじめ地下に書かれているじゃ……昔は一人の女を巡って男二人の殴り合いの決闘が良く行われたもんじゃった。」

そんな生々しい話はどうでもいいが、どうやら気兼ねなく戦っていいらしい。

それでも平穏に暮らすためには、適当に戦って負けた方が良いかな?

「心配事も無くなりましたから、それじゃあお手柔らかにお願いします」

学園長が雰囲気を察して少し離れたところに移動する。

俺と高畑先生は8メートルほど離れて向かい合って立った。

「それじゃあ学園長。試合開始の合図お願いします。」

空気が引き締まる。

「それでは……始め!!」

俺の構えは、ボルテクス界でいつもとっていた、少し左足を前に出しただけの構え

一方高畑先生は両手をポケットに入れたままだ。

「それが君の構えかい? 随分と変わった構えだね。」

「お互い戦闘してるって構えじゃないですね。」

高畑先生と軽口を交わしてはいるが、その実仕掛けるタイミングをお互いに計っている。

「それじゃ……行くよっっ!!」

高畑先生の言葉と共にその腕が一瞬ブレる。

そして俺の顔に距離を越えて迫る衝撃波

「んなっっ!?」

驚きの中でも戦いで鍛えられた本能がその衝撃波を拳で叩き落す。

あの攻撃は……ひょっとして居合拳?

感心したように高畑先生が声をあげる

「良い反応してるね……」

「居合拳とは珍しいモノを……喜んでください高畑先生。今俺の中で貴方の称号が『ナイスミドル』から『ミスターアンチェイン(偽)』にランクアップしましたよ。ちなみに『ミスターアンチェイン(真)』になるにはヘリコプターと互角に綱引きしたり、至近距離で撃たれたショットガンを筋肉で受けとめる事等が要求されます」

ちなみに俺は試した事はないが多分可能です。

「アハハ……それはどうも……お礼にもっと珍しいモノを見せてあげるよ」

そう言って高畑先生は両手をポケットから抜く。

この時に襲い掛かっても良いような気もするが、『珍しいモノ』を見たいのでそんな事はしない。

「右手に気……左手に魔力……」

広げられた両腕に異なる力が集合する。

そして、その手が閉じられた時。

今までに感じられた力とは桁違いの力が高畑先生の身体から溢れ出した。

「咸卦法って言ってね……習得するのは中々大変だったよ」

俺は人の身で此処までの力を鍛え上げた高畑先生に素直に感心した。

人間が此処までの力を持つためには、既に人の身体では無くなった俺には分からないが並大抵の事では無かっただろう。

……そんな相手には礼儀を尽くさなくちゃな

「高畑先生……俺はさっきまで平穏に暮らすためには負けても良いか、なんて考えていました……けど考えを改めました」

両手で頬を叩いて気合を入れる。

「『人修羅』藤堂カズト。これからは本気で戦わせてもらいます」

高畑先生は俺の言葉に笑みを浮かべた。

「有り難う藤堂君……それじゃあ改めて……フッッ!!」

ポケットにある腕が振るわれ、再び拳圧が俺めがけて襲い掛かるがその大きさは先程のものと段違い。

横に飛び、転がる事により俺はその拳圧から逃れる。

そしてその拳を放った主を確認しようと顔を向けるが……居ない!?

地面には俺のものでない影が一つ――――上か!!

一瞬の思考で視線を上に向けると構えは変わらず、手をポケットに入れたままの姿で高畑先生がそこに居た。

そして放たれる居合拳

――こりゃあ当たるか

そんなノンビリとした思考の中俺は拳圧に飲み込まれた。





side 高畑

――――決まったか?

僕の本気で放った居合拳は完全に無防備な筈の彼の身体に叩き込まれた。

地面には僕の攻撃のせいで地面に小規模なクレーターが出来て、砂煙に包まれ彼の姿は確認できないが恐らく倒れているはずだ。

傍らで見守る学園長からは彼はとある不幸によりただの高校生から人の心を持った悪魔と変えられてしまったとだけ教えられた。

僕は実を言うと彼と戦ってみたい、とここ最近思っていた。

彼の隙の無い立ち居振舞、僅かに漏れ出る魔力の質、どれをとっても只者ではない。

ただの高校生が高スペックの身体を得ただけでは、ああは成らない。

学園長の口からは語られなかったが、恐らく彼はあの身体となった後に修羅場を幾つも乗り越えてきたのだろう……そう思っていたが……

「……僕の買いかぶりだったのかな?」

そう呟き気絶しているであろう彼を治療の出来る魔法使いの所へ連れて行く為に、クレーターへと一歩を踏み出した時

「こいつは中々の威力で……」

そんな声が砂煙の中からあがった。

「っっ!?」

驚愕している僕の姿が見えているのかは定かではないが、そのまま彼は続けて独り言を呟いた。

「高畑先生は凄いな……あの実力ならボルテクス界でも運が良ければ生き抜くだけなら出来たかもな。それにしても……あーあ服がボロボロ。また怒られるな」

次第に砂煙が晴れてくる。

砂煙の中から次第にはっきりとその姿が確認できる様になる。

彼はその身に纏っていた何時もの黒スーツはボロボロとは成っているが、全くダメージを負った風も無く佇んでいた。

そして先ほどまでの彼とは圧倒的に違う所が一点

それは彼の刺青――顔面だけかと思っていたが、破れたスーツの合間からも見えるとこを見ると全身に入っているらしい――それが先ほど僕と対峙していた時にはただの青白い色だったものが今は自ら発光し光り輝いている。

そして感じる威圧感は、先ほどの数倍はあろう。

砂煙が完全に晴れ、今気付いたかのように彼が声をあげる

「どうしましたか、高畑先生? 俺はまだまだ戦闘続行可能、試合はこれからが本番ですよ?」

その物言いに僕は笑みを浮かべた。

……こう来なくちゃね

「そうだね……僕もそう思っていた所だよ」

「それじゃあお互い試合再開といきましょうか!!」

彼がまるで殴ってくれといわんばかりに真正面から突っ込んで来る

僕の戦闘スタイルは速い居合拳で牽制し細かいダメージを与え距離を離したところで、ダメージで足が止まった相手を豪殺居合拳で仕留める、というものだ。

何時ものように、速い居合拳で彼の動きを止めようと両手で次々と放つが――――当たらない!?

彼は僕に向かって凄まじい勢いで接近しながら、避けれるものは最小限の動きで回避し、避けきれないものはその腕で弾いている。

時間にすればほんの数秒にも満たないであろう一瞬で、僕と彼との距離は0となった。

彼がその身を沈め、アッパーを放ってくる。

――――間に合うか!?

何とかガードに成功するが……

「がはっっ!!」

ガードしてもなおその衝撃は僕の身体を数メートル吹き飛ばした。

ビリビリと腕が痺れるが何とか受身に成功し、彼の姿を確認すると彼はそのままの位置に立っていた。

「へぇ……ガードされたか」

藤堂君は顔に幾分の驚きを浮かべている。

あの数を捌ききり、居合拳の弱点である近距離に滑り込んでくるとは……何たる速度。

このまま受けに回ればこちらが不利か!

今度はこちらから仕掛けようと思い、魔力も気も一層高めた瞬間

彼の呼吸のリズムが変わる

――――カウンターか?

一瞬躊躇するが僕は身体の頑丈さにかけてはちょっとした自信があるのでそのまま先ほどを上回る居合拳を放とうと試みる……が

「■■■■■■ーーーッッッ!!」

それより一瞬早く彼が叫び声を挙げる

ぐらりと視界が揺れる。

地面がまるで地震のように揺れている感覚。

さっきの叫び声は……三半規管を揺さぶる攻撃か!!

迫ってくる彼から距離を取ろうにも、脚が言う事を聞かない。

「くっっ!!」

僕はさっきの二の舞にならない様に避けきれないところまで引きつけて豪殺居合拳を放った。

だが、それは彼のシナリオの上の事だったようだ。

彼は拳を振りかぶり、僕の放った拳圧に向かいその拳を放ち僕の放った拳圧を打ち消し、そのままの拳は吸い込まれるように僕の顔面に……当たる寸前でピタリと止まった。







side 人修羅

ふう……勝ったか。

まさか高畑先生がここまで強いとは思っていなかった……と言うよりも人がこれほどの強さを得る事が出来る事が予想外だった。

居合拳……速度は速いが威力は速い物と、連射は不可で威力の高い物とのコンボ。

俺が速い物を叩き落せる速度を持っていたし、高い威力の物を受けても大したダメージも受けない体だったから勝てたけど。

戦闘技術としてはかなり有効なものだと思う。

「勝負……有りの様じゃな」

俺はその学園長の言葉に今まで突きつけていた拳を引く

「……完敗だよ。ここまで力の差を見せられちゃあ……僕にはどうしようもないよ」

先ほど放った『雄叫び』の効果が未だ抜け切れていないのか、高畑先生は地面に座り込むとそう言ってきた。

「いえ……多分学園長から聞いてるでしょうけど、俺は人じゃなくてアクマですからね。貴方は今まで出会った人の中では、最上位の強さを持ってますから自信を持ってください」

「いやいや、人の中でも僕よりも強い人だって世の中にはいくらでも居るからね……僕もこれからもうちょっと修行しようかな?」

ソレハマジデスカ?

それが本当なら、人間の可能性は無限大って事ですね。

「いやはや……聞いてはいたがまさか此処まで非常識な強さとはのう」

今まで安全な場所で立っていた学園長がいつのまにか近くに移動していた。

「誰が非常識ですか、誰が。俺は平穏を愛し、最近のスローガンは『目指せ一般人』の男ですよ?」

「その割には森一つ焼失させたり、道路を破壊したりと色々と騒がしい様じゃが?」

その事は不可抗力なのですよ……ちょっと調子に乗ったりはしていた気もするが。

「それはそうと……藤堂君。エヴァンジェリンの事なんじゃが……」

「あのヘタレょぅι゛ょがどうしましたか?」

自分は吸血鬼とか声も高らかに宣言した分際で、持病に花粉症を持ち、風邪を引いて学校を休む。

この事でエヴァンジェリンに対する俺の評価は一気に『ヘタレ』に傾いた。

「ヘタレ……あやつは今は魔力を失ってはいるが真祖の吸血鬼なんじゃが、それをヘタレ扱いかね……まあ良い。

そのエヴァンジェリンじゃが、明日の晩に学園が一斉に停電する事は知っておるな? あやつの魔力はこの麻帆良の電力を利用した結界で封じている。

つまり、エヴァンジェリンは明日の晩に一時的じゃが、力を取り戻す。それに乗じてネギ君を襲い、完全に力を取り戻そうとするじゃろう。君にはそれを防いで欲しいんじゃが……」

はぁ……あのヘタレが力を取り戻してネギ君を襲っても失敗しそうな気がするけどねぇ

どうやらネギ君もカモと色々とエヴァンジェリンの事を嗅ぎまわっていたようだし、成長の為に基本的にはネギ君に任せて、俺はサポートに回りますか。

「ネギ君が色々と考えているようですから、俺は基本的にサポートに回って、いざという時だけ手を出すってことで良いですね?」

「それで大丈夫なのかね? いくら君でも力を取り戻したエヴァンジェリンと茶々丸君の二人を相手にしては無事ではいられないと思うんじゃが……」

学園長の心配も最もだと思う……ただしそれは心配する相手がただの人間だった場合。

「大丈夫ですよ」

体の向きを変え、何も無い空間の方を向く

調子を見るためにも、スキルを試してみるか。

「いくら真祖とはいえたかが吸血鬼。俺がいままでに相手にしてきたやつらのことを考えれば、どうって事ないですよ。」

右手の指を鉤状に曲げ、地面に向け一閃。

――――アイアンクロウ――――

俺の振るった指の延長上に地割れと見紛う様な深さと幅の五本の線が地面に刻まれる。

「「なっっ!?」」

俺は呆然としている二人を残してその場をゆっくりと歩んで去った。

人修羅先生! 人修羅先生! 十五話

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