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人修羅先生!(×真女神転生3) 投稿者:ナポリ 投稿日:05/16-17:10 No.531

side 人修羅

空が青い。

青空は良い。見ているだけで心が少しだけでも軽くなるような気がする。

このまま空へと逃げてしまいたいが、それは許されない事だ。

「……はぁぁぁぁぁ」

意図せずして溜息が漏れる。

ここのところ溜息ばっかりのような気がする。

それだけ不幸が続いていると考えると沈んでいた気持ちが更に奈落の底まで落ち込む。

「あーー。マジで逃げたい」

何から逃げるのかと言うと、学園長からの呼び出しからである。

今朝の職員会議での口ぶりから昨日の事を聞き出したいんだろうが……それだけなら良い。

「何を言っている? 早くジジイの所へ行くぞ」

俺の横を歩く金髪のちみっこ。

俺と同様に呼び出されたエヴァンジェリンはどうやら俺の事を学園長の所で聞き出すつもりのようで

「もう……いや」

なんて俺が呟いても状況は全くもって変わらない。

重い足をエヴァンジェリンに引きずられるようにして学園長室の前にたどり着く。

「ジジイ、入るぞ」

コイツは礼儀というものを知らんのか?

ノックの一つも無くエヴァンジェリンは重厚なドアを勢い良く押し開けてズカズカと中に入っていく。

「おお、来たてくれたか二人とも」

だが学園長は別段気にした風も無い……ひょっとしていつもの事と諦めているのかもしれない。

「早速で悪いんじゃが、もう分かっているとは思うが昨日あった事を話してくれるかの?」

「じゃあ俺から話しますが……」

俺は昨日あった出来事を学園長に詳細に話し始めた。

自分の居なかったり、分からなかった事は横からエヴァンジェリンが口を出して補足してくれた。

「ほうほう……昨日にそんなことがあったとはのう……誤魔化すのが大変じゃったよ」

「申し訳御座いません!!」

俺はその場に土下座した。

プライドなんざどうでもいい。これ以上給料減棒とかされたら家の地母神様に何をされたか分かったもんじゃない。

「とっ藤堂君。そこまでしなくても……今回はこちらから依頼した事じゃから経費はこちら持ちじゃ」

「ホントですか!?」

ガバリと上げた俺の顔はさぞかし嬉しそうな顔をしている事だろう。

「そこまで金を払うのがいやかのう……まあいい。今日の用件はこれだけじゃもう返っても良いぞい」

「ちょっと待て。私が聞きたいことがある」

「なんじゃエヴァンジェリン?」

今まで俺の土下座を冷めた目で見ていたエヴァンジェリンが声を発した。

用件は……どう考えても俺の事だろう。

「率直に聞く。コイツは……藤堂カズトは何者だ?」

エヴァンジェリンの鋭い視線が俺を貫く。

室内が重々しいプレッシャーで満たされる。

「それは……ワシの一存で話しても良いものではない。藤堂君……ワシから話してもいいかの?」

「いや……自分の事ですから。俺が話しますよ」

「いいのかね? 軽軽しく話しても良い話題ではないじゃろうに」

「コイツには何となく話しても良いような気がしましてね……多分似てるんですよ俺とコイツは」

「……確かにの」

「何を貴様らだけで納得している!! 早く話せ!!」

激昂するエヴァンジェリンを落ち着かせてゆっくりと俺は語り始めた。



「始めにお前は俺が何者か聞きたがっていたな?」

「ああ、かの魔神フォルネウスを使役しあれほどの威力のブレスを吐く。そんな存在は長い事裏の世界に居るが今まで聞いた事も無いからな」

「くく……ホントはな、フォルネウスだけじゃなくてデカラビアもオセもフラロウスも知り合いだがな」

俺の言葉にエヴァンジェリンは驚きに目を見開いた。

「なっっ!? まさか貴様はソロモン王とでもいうのか?」

「俺には生憎動物と話すような能力はないし、何より王って柄じゃない」

俺が会話できるのはバケモノだけだ。

「ならば貴様は何者だというのだ!?」

俺が何者か。

今まで散々悩んできた。

ヒトかアクマか。

自分の存在は余りにも中途半端。

故に在りのままを語ろう。

「俺はヒトの心にアクマの身体を持った者――――人修羅だ」

「人……修羅?」

「昔は人だったんだが色々とあってアクマの身体にされちまってな。ま、簡単に言えば半端者だ」

「悪魔だと……ならば貴様の爵位は何だ? 貴様が言うとおりの者達と関わりがあるのならば相当な高位の筈だが」

爵位って……何?

学園長に目配せする。

「あーー。いいかの? エヴァンジェリンよ藤堂君は複雑な事情があっての、信じ難いとは思うが異世界から渡って来たんじゃ、だから爵位なんてものは無いんじゃ」

「異世界……その渡って来た事情とやらを聞き出したいところだが……そこは無理そうだな」

雰囲気だけで其処まで読み取ったらしい。

「すまんな」

「いや良い……人には誰でも知られたくない過去ぐらい在るものだ。長く生きているのなら尚更な。私はそれを聞き出そうとするほど阿呆じゃない」

こいつ……思ってたよりも

「お前……良い奴だな」

「んなっ!? わ……私は悪の魔法使いだぞ? それを良い奴だと? 貴様の目は狂ってるんじゃないのか?」

褒められ慣れていないのか大慌てのエヴァンジェリン。

何だかその姿は酷く可愛らしいものの様に思えた。

「くくく……」

「ジジイ!! 何を笑っている!!」

「いやの。お前がそんな姿を見せるとはのぅ……」

「こんの……くたばれぇーー!!」

「ごぼぁっ!!」

エヴァンジェリンの蹴りは美しい軌道を描いて、学園長を壁へと叩きつけた。











「ゴホン……それで藤堂。貴様何か望む事は在るか?」

一暴れして落ち着いたエヴァンジェリンは唐突に俺にそう言ってきた。

……学園長は壁に張り付いたままピクリとも動かないんだがあれは大丈夫なのか?

「望む事って?」

「貴様には昨日不本意にも助けられてしまったからな。何かで借りを返しておかんとどうにも納得できない」

ああ。そういう事。

律儀にも借りを返そうなんてホントこいつは良い奴だな。

何で悪の魔法使いなんて名乗ってるんだか。

それなら……

「今度の休日に買い物行くからそれに付き合ってくれないか?」

「はあ?」

「いやな。家を貸して貰ったは良いが、家具も服も足りないんだよ。買いに行きたいが麻帆良の街の何処に何亜ガあるか知らないし、それに戦闘の度に脱ぐ訳にも行かないからどっか裏の店で戦闘用の服も手に入れたいんだよ。お前ならそういう店も分かるだろう」

其処まで話してようやくエヴァンジェリンは納得したようだ。

「なるほど。そうか……いいだろう。今度の休日にはこの私が貴様の買い物に付き合ってやろう。ありがたく思え……それじゃあ、そろそろ帰るとするか。じゃあな藤堂。また明日教室で会おう」

エヴァンジェリンが来た時と同様勢い良くドアを開け放ち廊下へと出て行く。

「俺も……帰ろうか」

部屋を出て行く際に学園長の眼が助けを求めているような気もしたが見なかったことにした。












日にちが経つのは早いもので、古から逃げ回り桜咲の修行を見守り、相坂の笑顔にささくれだった心を癒している内に気が付けば週末になっていた。

…………で

こうして待ち合わせ場所にて約束通りの9時半に待っているのですが。

周囲の人々が俺を中心に半径2メートル以内に誰一人として近づいてこない。

理由は何時ものように俺の格好……ではなく。

最近流れている俺に関する噂が原因だろう。

いわく、『ロリコン魔人』『謎の武術の達人』『悪の秘密組織を単身で壊滅させた』『森一つを焦土にした』

こんな噂を流されてしまった以上俺はもうこの街では恐れられ続けるだろう。

「アハハハハ」

もはや現実逃避で笑うしかない。

「おい貴様。何を気持ち悪い笑みを浮かべている」

妄想の世界から帰還し顔を上げれば其処にはゴスロリとでもいうのか、装飾過度の衣装を着たエヴァンジェリンが立っていた……しかも恐ろしく似合っている。

俺は素直に褒める事にした。

「おはようエヴァンジェリン。可愛い服を着てるじゃないか。似合ってるぞその服」

エヴァンジェリンにはその容貌からか、ついつい気を抜くとかなり幼い子供に対するような対応をしがちになる。

そう。

だから俺が手を伸ばして頭を撫でてしまうのも仕方が無い訳で

「貴様……私を何だと思っている!!」

エヴァンジェリンの右のアッパーが俺の顎に炸裂。

強制的に見せられた空は俺を笑うかのように青かった。







「顎が……まだ痛い」

「アレは貴様が悪い、私は謝らんぞ」

買い物もあらかた片付けカフェにての会話である。

俺の両脇には大量の服の入った紙袋。

全てが俺の物というのではなく、3分の2はエヴァンジェリンの物だ。

家具類は家に送ってもらう事になっている。

衣服も家具もエヴァンジェリンが見立ててくれたのだが。

「なぁ……何で俺の服、黒ばっかりなんだ?」

エヴァンジェリンの俺にと選んだものは暗色系統の物ばかりだった。

「貴様の顔でピンクでも着ようとでもいうのか? 自分の顔を鏡で見て来い。貴様には黒以外は絶望的なまでに似合わん」

歯に衣を着せないエヴァンジェリンの物言いにちょっとだけ傷ついた。

そこまで言わなくても良いじゃないか

この話題は俺が一方的に傷つけられるだけの様な気がするので話題を変えよう。

「それで……俺の戦闘用のはどうするんだ?」

「ああ、それなら私の知っている店に頼んでおいた。値は張るが腕の良い店だ。場所は教えておく連絡があったら教えるから後日取りに行け」

アンタ俺の好みとか完全無視ですか。

このやるせない思い……やけ食いしてやる。

「ふむ……そういえば気になる事がある」

このパスタ中々いい味をしている。

「ん?」

「貴様は私が貴様に似ていると言ったな」

そういえば学園長の所で言ったね。

「アレはどういう意味だ?」

「別に……初めて会った時からなんとなく感じていたんだけど、お前と戦ってはっきりと似ているって感じたんだが……エヴァンジェリンはそういうの感じなかったのか?」

説明しろって言われても説明し難い感覚だ。

「貴様もか……何故だか私もそんな感覚がしていた。今まで味わった事の無い変な感覚だ」

くっとエヴァンジェリンが忍び笑いを漏らす。

何故だか俺にはその笑顔が魅力的に見えて……

「エヴァンジェリン……「エヴァだ」へ?」

「エヴァで良いと言っている。私の名は長いからな略した方が楽だろう」

「了解だ『エヴァ』」

「ふん、他意は無いからな。勘違いするなよ」

隠しちゃいるが、耳が赤いぞエヴァよ。

全くコイツは悪の魔法使いだとか言ってるくせに変な所で可愛らしいな。

笑っちゃいけないとは思うが、堪え切れなくて口の端がピクピク動いてしまう。

「何だその顔は……不愉快だ、もう私は帰るぞ」

エヴァが椅子から立ち上がる。

「くく……じゃあなエヴァ」

「…………」

いかにも不機嫌ですと言った顔でその場を立ち去るエヴァ……耳は赤いままだけど。

去り行くエヴァの背中が見えなくなってから気が付いた。

「ここの会計は……それにこの荷物はどうすればいいんだよ?」

俺はその場で途方にくれた。













あとがき

どうもナポリです。
更新が遅くて大変申し訳ないです。
忙しいんですよマジで、何しろGWに休みが一日も無いくらいですよ?
誰か私に時間をプリーズ。嗚呼、ザ・ワールドが欲しい……
そんな訳でこれからも更新が遅くなるとは思いますが見捨てないでやってください。

さて今回はエヴァンジェリンがメインです。
どっちも人から理不尽な理由で人外になってしまったので相性は良さそうな気がしてこんなの書いちゃいました。
次回は……番外の壊れギャグでも書こうかな?

感想も批評もいつでも受け付けております。
それでは

人修羅先生! 人修羅先生! 十八話

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