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第4話 予測不可能な2-A 投稿者:夏野竜輝 投稿日:06/27-02:44 No.807
「すいませんでしたっ!!」
「い、いやだから……」
朝食後のルナカリバー邸(管理人室)では、刹那が土下座する勢いでランディウスにワビを入れていた。
その原因は昨日の【江戸前】……寿司屋での一件だ。
「なんたる無礼をしたことかっ、ここは死んでお詫びをぉっ!」
「ちょ、待てぃぃっ、早まるな!」
土下座の姿勢から脇差を抜き放つやいなや、腹の辺りを肌蹴た刹那は突き立てんばかりの勢いでそれを両手で振り上げる。
一体どこに持ってるんだと心中でツッコミを入れつつも、寸でのところで脇差を止めるランディウス。
しかし必死の状況にも関わらず、ランディウスは刹那を視界から外そうと、いや絶対にそれを見ないようにと顔を背けている。
しかもランディウスの顔は真っ赤。
「と、とりあえず肌蹴た服をなんとかしろぉぉぉっ!」
「こ、これは飛んだ失礼をっ!」
掴まれた両腕を勢いのまま抜き、切腹しようと肌蹴ていた服を直す刹那。
やっとのことで収まった状況に息をつくランディウス。
未だに顔が赤面しているのは、あの状況に置かれながらも……キチンと、それはもう脳裏に
強制的に焼きつけられるぐらいバッチリと刹那の服の下を見てしまったからであろう。
雪のような白い穢れを知らない肌とか、慎ましげなサラシに巻かれた胸とか……ゲフンゲフン。
「もういいじゃないか、すんだことだし」
「お前が言うな、お前がっ!」
吉○もかくやの勢いで、真名の一言に突っ込む刹那。
それはともかく、礼儀を重んじる刹那が、あのような暴挙に出た理由……それは。
まったり茶を飲んでいるブラックガンマンのオーラに当てられたからである。
刹那の仕事の関係上、一緒にいることの多い刹那と真名。
本来控えめな性格なはずの刹那であるが、真名がランディウスに飯をタカるにあたって、だんだんとそれに歯止めが利かなくなっていった。
ランディウスの人の良さと押しの弱さに、真名の強引な押しが突き通されるのを目の当たりにし、
(自分も受け入れられるのではないか……少しぐらい我儘を言っても良いのではないか?)
そう自然に考えられるようになった。
そして、自分のお願いを聞いてもらえるようになった昨今……『龍宮が良いのなら、自分も……』とエスカレートしていったのである。
元々自分というものを抑えることで冷静さを保ってきた刹那。
しかし、彼女も年齢相応に人に甘えたいということを、自分を曝け出したいと考えてしまうのも無理はない。
経験を経て自分自身を作ることに慣れている年齢ならともかく、年相応なら両親に甘えていたい年頃だろう。
特に両親を知らない、甘えることのできなかった刹那にとっては。
寿司屋でご馳走になり、自室に帰ってみると、よくよく考えてみればとんでもないことをしてしまった自分に気付く。
並行世界から突然この世界にやってきたランディウス。
彼の性格のよさに甘えて、自分はどれだけ我儘し放題だったのだろうと気づく。
特に、
(あのお寿司屋さん、かなり値段が高かったような気が……)
ご馳走になった寿司の金額を計算してみれば、己の所業の結末に嫌でも気付いてしまう。
刹那は己の行為を恥じ、こうして頭を下げているのだが。
一方の真名は勝手知ったる何とやらで、これっぽっちも悪びれていない。
その態度が刹那の怒りを呼び起こすのは時間の問題だったが、そこは神鳴流の剣士――――並外れた精神力で耐え切った。
結局この件は話し合いで解決することが出来た……大使としての能力が、ここでまた役立ったのだ。
虚しさを感じるのは気のせいだろうか?
解決にあたって決定されたことは、下記の通りである。
1.これまでランディウスから拠出して得たものは当人達のものとする。
2.今後、食事に来る時は材料費を出す(学園長からの任務完遂による報酬から)
3.学園都市内の料亭等でランディウスを見つけても、本人が同意しない限りタカらないこと。
後に、この3か条はルナカリバー邸に出入りする者全員に適用されることになる。
「同意を得られなければ、ね」
決定事項を前に、不敵に嗤う真名がいたとかいないとか……
第4話 予測不可能な2-A
ランディウスはタカミチと共に、教育実習生を迎えに向かっていた。
副担任初日ということもあり、近右衛門からスーツを渡されたが……違和感に関してはスルーしてほしい。
「高畑先生、俺は詳しいこと聞いてないんですが」
「口で説明するより実際に見てもらった方が、より分かっていただけますよ。ランディウス先生?」
【百聞は一見にしかず】という言葉が示す通り、いくら聞いたところでそれは一面的なものにすぎないのだから。
「それよりランディウス先生。僕達は裏でも同士なんだから、タカミチでいいと言っているでしょう」
「なら俺も呼び捨てにして下さい」
「ははは、分かったよランディウス」
苦笑しつつ応じるタカミチ。
その空気は、かつての戦友達と同じものに似ていることを感じる。
ちなみに、女子寮でもさん付けを止めさせられた。半ば強制的に。
ならばとランディウスも同じ事を要求したが中々応じてもらえず、やっと名前にさん付けまでもっていったとか。
「ん? 何か騒がしいな……」
「言われてみれば……アレは?」
ランディウスの視線の先では、女子中学生が子供に絡んでいた。
カツアゲでもしてるのかと思いつつ、止めに入る。
「おい、そこで何を……って、神楽坂じゃないか」
「えっ、あ、ランディウスさん!? それに高畑先生!」
2人に気付いた神楽坂明日菜は子供を放した。
心なしか明日菜達はランディウスのスーツ姿を生暖かく見ているようだ。
「神楽坂、事情が事情だからといってカツア「違うわよ!」……そうなのか?」
「違うえー」
明日菜のルームメイトである近衛木乃香もカツアゲ疑惑をあっさりと否定した。
明日菜と木乃香、共に嘘をついている節には見えず、それ以前に彼女達自身が、カツアゲ……いわば恐喝まがいのことをしているような雰囲気にも見えない。
「なら何をやってるんだ? 子供に絡むなんて」
「そ、それは……」
当然の流れとばかりに明日菜がその子供に絡んだ理由を聞くランディウス。
よほど答えづらい質問だったのだろう、明日菜は口篭ったまま理由を話そうとしない。
ここで助け舟だろう、タカミチの説明が入った。
それによると、この子供こそが教育実習生なのだそうだ。名はネギ=スプリングフィールド、年は10で英語の担当。同時に2-Aの担任に就任ときた。
「へぇ、そうか。分かった」
「何あっさり納得してるのよ!」
とっとと引き下がったランディウスにツッコミを入れる明日菜。
だがランディウスにしてみれば、10歳で職に就くのは何ら珍しいことではない。
元の世界では10歳に満たない子供が戦場に出るのは日常茶飯事だったのだ。
とはいえ、この世界の日本では労働基準法違反だろうと言われるが。
「俺はランディウス=ルナカリバーン。女子寮管理人兼警備員で、今日から2-Aの副担任も兼ねることになっている。よろしくな、ネギ君」
「は、はい、こちらこそよろしくお願いします! ランディウスさん!」
互いに自己紹介を終える。
「で、さっきは何を揉めてたんだ?」
「それはやね……」
どうやら、ネギが初対面にも関わらず明日菜に失恋の相が出ていると言ったことが原因のようだった。
しかも、ドギツいとまで。
「ネギ君……君は初対面の女の子を傷付けることを平気で言えと教育されたのか?」
「そ、そんな! 僕は占いの話が出ていたから……」
「だからと言って、軽々しく口にするものじゃないな。占いとか恋は女の子にとって大切なものだぞ?」
「…………」
「君は親切で教えたかもしれないが、それが他人に伝わるとは限らない……言葉というものは、それひとつで本人が意図しない事態を引き起こすんだ」
ネギを正面から見た。
ランディウスの言葉を実直に受け止めているらしく、見つめ返すネギの瞳は真剣そのもの。
明日菜達も流れ出したその厳粛な雰囲気に口を挟むことすらできない。
「もう少し、言動には注意しろ。子供だからといって、やっていいことと悪いことの区別をつけないわけにはいかないからな」
ここで少し間を置いて、明日菜の方に向く。
無論ネギを叱っただけでは、この場は収まらないだろう。
フォローも兼ねてと、ランディウスは丁寧に明日菜に切り出した。
「彼も些か無神経だったようだが、ここは水に流してくれないか? 初日からこれじゃ、気分が重いだろ?」
「わ、分かったわよ……ランディウスさんにそこまで言われたんじゃ、しょうがないわね」
ホッと一息吐くランディウスと高畑……しかし!
この場で収まったはずの話は意外な展開を向かえる。
この事は別とばかりに明日菜は捲し立てる。
「分かった、そのことはもういいわよ。けど! こいつが担任になるのは認められないわ!
大体あたしはガキが嫌いなのよ! こいつみたいに無神経でチビでマメでミジンコで……!!」
まるで、マシンガンのような勢いでネギを罵倒する明日菜。
だんだんとその罵倒に、俯きがちになるネギ。
そこに、明日菜の片方の下げ髪がネギの鼻をくすぐった……
「は、は……はくちんっ!」
ズバァッ!!
誰もが絶句した。
ネギがクシャミをした瞬間、明日菜の着衣が吹き飛んでしまったのを直視して、どうして平静でいられよう?
現にランディウスとタカミチも呆然としていた。
(オイオイ、どうなってるんだよ?)
明日菜が悲鳴を上げる中、ランディウスの脳裏に前途多難の4文字が浮かんだのは言うまでもない。
学園長室で挨拶を終えて、一同は教室へと移動した(ネギの居住地で騒いだが)。
途中、ネギが黒板消しを受け、ロープに躓いて水入りバケツが直撃、吸盤付の矢が命中して教卓に突撃してしまったが。
無論大爆笑となったところは、2-Aクオリティと言えよう。
騒ぐ生徒達だったが、ネギの指導教員の源しずながパンパンと手を叩くと静まり返った。
「ええと、あ…あの……ボク……ボク……」
教卓に立つものの、緊張で二の句を紡げないネギ。
が、意を決して一同を見る。
「今日から、この学校でまほ……英語を教えることになりました、ネギ=スプリングフィールドです。
3学期の間だけですけど、よろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をするネギに続いて、ランディウスが挨拶に入る。
「そして、本日より2-Aの副担任に就任したランディウス=ルナカリバーンだ。
女子寮の管理人と警備員も兼務することになるが、よろしくな」
2人の挨拶が終わると、水を打ったように静まる教室。
だが、それはほんの一瞬の間だけだった。
一同はすぐさまネギに殺到し、質問攻めにし始める。
(俺はもう洗礼を受けたからな……頑張れよ、ネギ君)
詰め寄る生徒にもみくちゃにされるネギ。
それを横目で見送りながら、ランディウスは見知った顔に軽く手を振った。
応える者は4人。いずれも裏の関係者である。
(……俺って、裏関係しか知人いないのか? ちょっと寂しいなぁ~)
女子寮の管理人をしているとはいえ、ランディウスは基本的に不干渉主義者である。
余程のことがない限り当人達のやりたいようにやらせておくため、一般の生徒と触れ合う機会が皆無なのだ。
が、学園都市に侵入してくる不埒者を粛正する過程で、チームを組む時があり、おのずと裏の関係者と知り合いになる――――
こんなことがあり、未だ一般の生徒と親しくできないでいたりする。
(ま、今日から副担任も兼務するんだし……)
と、ここでネギが黒板消しのトラップを一瞬魔法で止めてしまったことを明日菜が尋問し、それを委員長の雪広あやかが止めに入って騒ぎとなった。
普通なら他の生徒も止めるのだろうが……止めるどころか積極的に煽っていた。それも明日菜を。
2-Aというクラスの実態を目の当たりにしたような気がするランディウスであったが、
ことが公になる(主に魔法のこと)とマズイことになるので、ここは場を収めることにする。
一応年上でもあったせいか、何とか収まったのは幸いだが。
早速ネギが授業を始め、ランディウスは教室の片隅で椅子に座って見ていた。
一同の注目は目下ネギにあり、その視線を直で受ける当人は緊張し……なかなか進行しない。
まだ初日だから無理ないなとランディウスが心中で苦笑している時、何やら明日菜が消しゴムの切れっ端を飛ばしてネギの頭に命中させた。
黒板消しの件を未だ不審に思っている彼女はネギにボロを出させ、一気に排除しようと企んでいたりする。
のだが……飛ばせど飛ばせど、切れっ端はネギの頭にドカスカ命中するばかり。
(何やってるんだよ明日菜……授業妨害か?)
そろそろランディウスが止めに入ろうと腰を上げかける。
すると、あやかがネギに事の次第をチクり――――ある事ない事を耳打ちしたため、また喧嘩になってしまった。
時は無情で、ネギがオロオロしているうちに終了のチャイムが鳴った。
結果、ネギは全然授業を進められなかったとさ。
授業が終わった後、ランディウスはネギに声をかけていた。
「何事も最初は緊張するものだ。そう気を落とすことはないよ」
「は、はい……」
ネギを励ますものの、やはり気にしているらしい。
俯いたままのその顔には落胆の表情がありありと出ていた。
「今回の失敗を糧に、次でうまくいくよう考える方が建設的だろ?」
「……そう、ですね。そうですよね」
元の世界の戦いで落ち込んでしまったとき、幾度も自分を立ち直らせてくれたその言葉。
かつての自分の思いが少しでも伝わってくれたのか、ネギの表情に明るさが戻る。
「さっきのこと、もう少し考えてみます! 次はうまく出来るように!」
「その意気だ。だからといって、無理しすぎないように」
「はい!」
ネギと別れた後、ランディウスは学園長室に出頭していた。
ひとまずは、副担任初日のネギの動向の報告のためだ、
「ランディウス君、まずはご苦労じゃったな」
「いえ」
「で、ネギ君の授業ぶりはどうかな?」
「それがですね――――」
先程のことを説明された近右衛門は苦笑する他なかった。
悪いわけではないのだが、基本的に問題児が揃いに揃っている2-Aで、子供が担任を行えば……結果ははなから想像がつくというものであろう。
「初日ですから仕方ないでしょう……2-Aはあのテンションですから」
「それが、あの子達というものじゃよ」
2-Aは麻帆良学園の中でもかなり有名なようだ。
同時に、裏に関わる者や特殊能力を持つ者もいる。
「まさかとは思いますが、あの生徒達は意図的に集められたのですか?」
「さて、どうかな? その辺りはあまり突っ込まんでくれ」
軽くかわされてしまったが、そこはあまり大きな問題となるところではない。
まぁいいかと質問を打ち切り、追求を止める。
「じゃ、これで失礼します」
「頑張るんじゃな」
退室すると、ネギを捜し始める。
自分が裏の関係者であることを言う暇がなかったので、説明しておくためだ。
そんな時、真名と鉢合わせとなった。
「おや、ランディウスさんじゃないか」
「真名か……っと、ちょうどいい。ネギ君を見なかったか?」
どうも真名からさん付けで呼ばれると、何かお願いを強制されるような気がするランディウス。背筋に汗が感じられるのは気のせいではないだろう。
もはやパブロフの犬状態になっているランディウス。
幾許かランディウスが警戒していることを気づいているのだろう、軽くフッと微笑んだ真名はそのまま素直に答えを返してきた。
「ネギ先生? あの子なら中央広場にいたよ」
「そうか、ありがとう、真名」
ネギの場所が分かった。
すぐさま真名に背を向けて歩き始めたランディウスに、ついでとばかりに真名が続けた。
「ついでに。教室でネギ先生の歓迎会の準備をしてるから、こっちに来るよう伝えてくれないか?」
「了解だ」
答えを返すと同時に、ランディウスは真名から教わったネギの居場所に急行する。
そこでようやくネギを見つけるのだが……何故か明日菜に連行されていた。
(もしかして、明日菜は騒動の発端を担ってるのか?)
何やらランディウスは誤解しつつある。
そんな彼を放置して、超能力者がどーたら現行犯がどーたら……事態は悪化の様相を呈していた。
このままでは何かよくないことが起こりそうなので、さっさと仲介すべく足を運ぶ。
「何をやってるんだ? そこら中に聞こえてるぞ」
「ラ、ランディウスさん!? そ、そのこれは、あの……!」
「やばっ!」
2人が慌てる。
「魔法のことでモメてるのなら、気にするな。俺も裏だから」
「え、ええ!?」
「……すごく説得力あるわね」
ネギは大いに驚くが、明日菜は激しく納得していた。
その様子に、ランディウスはちょっと傷付いた――――普段の格好が起因しているのは明白なのだ。
他の少女達がどう思っているのか、かなり気になるところである。
「まぁそれは置いといてだ。ネギ君、魔法を知られた場合はどうする?」
「普通なら記憶操作の魔法を使うんですが……」
「何か問題が?」
「は、はい。副作用でパーになるかもしれないんです」
その言葉に固まるランディウスと明日菜。
「パ、パーってこれか?」
ランディウスは人差指を頭に向けて、クルクル回して手を開いた。
所謂クルクルパーというやつだ。
「それで間違いありません……」
(どんな魔法だよ。というか、何でそんな副作用があるんだ?)
「ちょ、待ちなさいよ!? そんなのお断りに決まってるじゃない!」
それはそうだ。パーになれば色々と不都合なことが起こるし、元に戻ってもロクなことにならない。
「仕方ないな。神楽坂、すまないがこの事は黙っててくれないか? パーになるよりはマシだと思うが」
「分かった……分かったわよ、もう……」
この事を黙っていればパーを回避できる――――明日菜の選択はごく自然なものだった。
一応の解決と判断してその話は終わりにし、ランディウスは歓迎会のことを持ち出す。
「そういうわけで、教室に戻るぞ」
見れば、明日菜も買出しに行っていたらしく買い物袋を提げていた。
早速教室に戻っていく3人。
そして、歓迎会では――――ちょっとした騒動があった。
強いて言うなら、のどかがネギに図書券を渡したり、あやかがネギの銅像をプレゼントしたり、といったところだ。
また、ランディウスはタカミチやしずなと今後のことについて話していたので被害を受けなかった。
むしろ真剣に話しているよう見せかけることに必死だったので、被害が皆無だったのだろう……何気に情けない。
その後は惚れ薬で女生徒に追い回されたり、風呂嫌いのネギを巡って涼風で騒動が起きたりと、実に変化に富んでいる。
なのに副担任という立場のランディウスは悉くスルーしていた。
前者は明日菜に飲まされたネギに対して有効だし、後者は朝意外で近づくことは滅多にないということで。
誰しも火中の栗を好き好んで拾うはずないということである。それに見合う何かを得られない限り。
そんな中、ネギは明日菜の事情を知った後に彼女の助けになろうと奮闘するのだが、空回りに終わっていた。
年端もいかない子供なためか、とかく明日菜が取る行動全てで助けようとするため――――結果として、明日菜の足を引っ張るだけに終わっているのが現状だ。
そこへしずなとランディウスが、居残り授業の話を持ってきた。
前担任のタカミチは成績の悪い生徒に対し、放課後に特別授業(所謂居残り)を行なっていたようで、そのリストがネギに回ってきたのである。
当然だがリストには明日菜の名もある。
(これこそアスナさんの役に立つチャンスかも!)
名誉挽回とばかりに意気込むネギは居残り授業を引き受けた。
尚、ランディウスは例によって教室の片隅で見学している。
「――――というわけで、2-Aのバカ五人衆が揃ったわけですが……」
……自分達で言うかと思われるかもしれない。が、彼女達は自認しているのだ――――明日菜意外は。
構成員を紹介しよう。筆頭のバカブラック・綾瀬夕映、バカレッド・神楽坂明日菜、バカイエロー・古韮、バカピンク・佐々木まき絵、バカブルー・長瀬楓。
色の前にバカが付くあたり、何かが間違っているとしか思えないが。
「念の為に言っておくが」
突如口を開いたランディウスに一同が注目する。
「麻帆良学園がエスカレーター式だからといって油断しないことだ」
「どういうことアルか?」
「今まではエスカレーター式で安心だったかもしれないが、毎年の受験者の中には狭き門を突破するツワモノもいるぞ?」
「つまり……」
「その子達より成績が悪いと、進級できないばかりか退学ということも有り得る」
「そ、それは……穏やかな話ではござらんな」
「ああ。まぁ退学という事例は今までないようだが、やっておいて損はない……そんなわけで、君達には頑張ってほしい」
バカ五人衆に緊張が走った。
「俺からの話は以上だ」
こうして、居残り授業が始まった。
ラングリッサー風に表記すると――――
勝利条件 6点以上取る
敗北条件 6点以下を取る
といったところだろう。
ちなみに、一抜けは1回目で9点取得の夕映だった。本人曰く「……勉強キライなんです」とのこと。
ぶっちゃけ、やればできる方なので真面目にやれば上位もあっさり取ってしまうんじゃないかと思われる。
続いて抜けたのは、ネギのポイント解説+2回目で勝利条件を達成した古韮、楓、まき絵の3人。古と楓は8点、まき絵は6点である。
古韮は日本語の勉強で精一杯らしい。今後はさらなる予習復習が望まれる――――誰か助力者がいれば大分違ってくるだろう。
ギリギリだったまき絵は、勉強と部活の両立が課題となってくる。
そして、明日菜は…………9連敗を喫していた。
どれだけネギが懇切丁寧に解説しようと、5点以下しか取れない。
ついに夕日が沈み掛け、カラスが鳴く時間になっても連敗記録を更新中だ。
あろうことか、タカミチに現場を目撃されて――――逃亡してしまった。
慌ててネギが追いかけていくのを見送ったランディウスは、教室内の片付けを手早く終わらせる。
(……彼女を教えられるのはネギ君が適任だろう)
しかしその予想に反して(?)か、明日菜はその夜も連敗記録を更新したとか。
こうしては多少のトラブルがあったものの、概ね丸く収まった。
だが――――バカ五人衆はこの後、命懸けの行動に出ることを余儀なくされる。
もっとも、それは無駄ではなく2-A全体に良い影響を及ぼすものであるのだが。
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