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第6話 バカレンジャーの無謀な挑戦(始動編)-ギャンブラーな連中- 投稿者:夏野竜輝 投稿日:07/07-04:28 No.894

「そうか。なかなかうまくやっとるのか、ネギ君は」
「はい、学園長先生。生徒とも打ち解けていますし、授業内容も頑張っていますわ」

とても10歳とは思えません、と続けるしずな。
ここは学園長室――――しずなとランディウスが近況を報告しているようだ。

「この分なら指導教員の私としても、一応合格点を出してもいいと思っていますが……」
「なるほど……ランディウス君はどうかの?」
「俺もしずな先生に同感ですが、多少振り回されている感があるのを留意しておくべきと考えます」

2人とも、概ね無問題と判断していた。

「フォッフォッ、結構結構。4月からは正式な教員として採用できそうじゃな。
ご苦労じゃった、しずな君、ランディウス君…………どこじゃ?」

握手しようとする近右衛門の視界は真っ暗になった。

「……上ですわ、学・園・長」

身長の関係からか、しずなの胸に顔をうずめる格好なっている――――瞬間、部屋の温度が低下した。

「まぁ事故と言えばそれまで……ですけど、制裁は必要でしょう?」

あくまでも口調は丁寧。されど込められた感情はマグマのごとく。
傍らでそれを見ていたランディウスが問いかけたのは、己が所業の行く末を知って青くなる近右衛門……ではなく、


「ええ。同感ですね、ランディウス先生♪」

笑顔のままに右足を一歩引いて近右衛門を胸から引き離し、握り締めた拳を大きく振り被るしずな。
近右衛門に向けられた拳の先は小刻みに震えているところを見ると、そこに込められている力はまさに渾身の一言!

「ま、待て……話せばわかっ「問答無用、ですわ♪」!?」


爽やかな笑顔と共に決定付けられたのは近右衛門への断罪の結審。
先程までの拳の震えが収まっているところを見ると、既に狙いはロックオン。
最後通牒とばかりに、貼り付けた笑顔のままにしずなは囁く。

「そのセクハラ……己が痛みを持って償いなさい!」

その怒りは一瞬。短い切り裂き音と共に霞消えるようにして、しずなの拳が振り下ろされた。
そこに一切の躊躇や迷いはなく、ただ打ち抜くことだけを目的にしたシンプルな力が近右衛門に到達。
問答無用とばかりに顔面の中心を打ち抜いたそれは、老人とはいえ1人の人間を浮き上がらせ、なおかつ、己の力のベクトルへと近右衛門を引き摺り回す。

「ぬぉっほぉぉぉぉぉっ……ふがっ!」

近右衛門が吹き飛んだ先には、いつの間にかランディウスが待ち構えている。
吹き飛んでくる近右衛門の背に向け左手を開いて、そっと押し留める。
地獄行きの寸前で差し伸べられた蜘蛛の糸、慈悲深い笑顔を湛えたランディウスに、近右衛門は己のタスケを求めて、痛みの中からやっとの声を出す。

「ラ、ランディウス君……た、タスケ……」
「それでは……いい旅を♪」

好青年らしい笑顔を浮かべたランディウス。
その笑顔が答えた先は、どこまでも遠い遥か彼方への旅立ち。きっとその視線が見つめていたのは、三途の川の一歩手前。
近右衛門がその笑顔の意味に気付いたのは一瞬。
吹き飛ぶのを抑えた左手に右手が添えられる。その隙間、僅か一寸足らず!

「川渡しの六文銭、受け取れやぁっ!」


裂帛の篭った気合とともに、ランディウスの右足がズシンと地面を力強く踏み込む。
と、同時に左手に添えられていた右手が重ね合わさる。
一瞬の衝撃。

「ギャフンッ!!」

それは景気のいい音と共に、背中に激痛を伴って体内を暴れ回る。

「は、はうぁぁぁぁぁっ!」

それはジワジワと体中を這い回るムカデのよう。ゆっくりゆっくりと血流に沿って痛みが走っていく。
その時間たるやほんの数秒のことではあったが、衝撃が荒れ狂ったままの近右衛門にとって、それは数時間の長さにも感じられたという。
近右衛門の背中にランディウスの手形が赤く刻まれているのは間違いない。

「今、ここに……」
「悪は滅びた……」

のた打ち回る近右衛門を他所に窓の外を眺めながら、一仕事を終えたようなとてもイイ笑顔を浮かべて決める2人。
しばらく地べたをのた打ち回っていた近右衛門だが、ようやく痛みが治まったのか、何とか自力で立ち上がった。
ヨロヨロと、とても頼りなく。

「は、話を戻そう……ネギ君には、もう1つ課題をクリアしてもらうかの。才能ある立派な魔法使い(マギステル・マギ)の候補生として」

そう言い、ランディウスの方へ向く。

「この件はランディウス君も連帯責任じゃから、よろしく頼むぞい?」
「構いませんが、あまりムチャはしないで下さいよ」

この時、ランディウスは近右衛門の出す課題が大騒動に発展するなど夢にも思っていなかった。
が、恐らく動くだろう子達の行動を援護してほしいと要請され、その内容を聞いた後……引き気味になる。





第6話 バカレンジャーの無謀な挑戦(始動編)-ギャンブラーな連中-





最近、中等部の空気はピリピリしている。
原因は刻一刻と近づきつつある期末テストである。
学生諸君の本分は勉強であるため、成績が決定付けられる期末テスト前ともなれば、このように一触即発の状態になるのだ。
この話をお読みの諸氏は何度も経験されたことだろう。

だが、このような状況にあってお気楽なのが2-Aである。
エスカレーター式ということが安心感となって、長らく学年最下位という汚名を頂戴しているのは言うまでもない。
むしろ、『へぇ~、そうなんだ~』ともお気楽な調子に言わんばかりである。
しかし、彼女達は単なるおバカな集団というわけではない。
普通であれば自分達の成績の悪さと他のクラスとを比較してしまい、無能な教師が担任についていれば嫌でも激を飛ばして尻を叩いていただろう。
『他のクラスは優秀なのに、お前らは一体何なんだ!』……と。
ついていた担任が良かったのだろう。でなければ、この2-Aというクラスは愚連隊の集まりと化していたはず。
良くも悪くも、このクラスがいい意味で真っ直ぐ育ったのは、個々の良いところを伸ばしたその担任の功績といっても違わないだろう。

……余談になるが、学年トップとなったクラスには花のようなトロフィーが贈呈される。

「ネギ先生」

教室に向かっていたネギのところに掛けられた声。
振り向けば、そこにしずなとランディウスがやって来た。

「学園長がこれを……」

しずながネギに一通の手紙を差し出す。
近右衛門から預かってきたその書状――――ただならぬ気配を感じ取ったネギは神妙な面持ちで受け取った。
果たして、その中身は……ネギは少しばかりの緊張と共に、ゆっくりと二つ折りにされたそれを開いた。
開いてすぐネギの目に飛び込んできたのは、これでもかと言わんばかりに大きく書かれた縦書きの表題。

ネギ教育実習生 最終課題

「えっ!? 僕への最終課題!?」
「俺も聞いてないからなぁ……何なんだ?」

驚きのあまり、ネギは冷静さを欠いてしまった。
ネギの先生としての研修は残り僅かな期間を残すのみ。
試験などもないまま、そのまま先生になれるとは思ってはいなかったものの、最終課題と銘打たれたその言葉の重みに、ネギは驚愕せざるをえない。
というか、表題を見た途端に、その内容まで眼を通さない内に驚くところがネギのネギたる所以とも言えよう。
つまり、ネギの年齢相応の反応である。
ちなみにランディウスは最終課題が何かまでは知らされていない。

「あわわわわわわ、ランディウスさん! どうしましょう!? 悪のドラゴン退治だったり、魔法全部習得だったら…………!!」
(前者だったら、まぁ何とかなるな……俺がこの世界の魔法を把握してない以上、後者なら大変なことになりそうだ)

幻想種が闊歩する世界に生きていたランディウスにしてみると、今更ドラゴンを相手にしてところで、どうということはない。
むしろ、この世界にそいつが存在するかどうかさえ微妙なところだが、近右衛門の性格を考慮すると充分有り得るだけに乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

「とりあえず内容を見たらどうだ?」
「そ、そうですね……」

書状には、こう書かれていた。


『ねぎ君へ
  次の期末試験で、
  二-Aが最下位脱出できたら
  正式な先生にしてあげる。

    麻帆良学園学園長 近衛近右衛門』


無駄に達筆なうえに、印鑑付きで。
学校が発行した正式な書状であるにも関わらず、どこかプリティーさが漂っている気がしたのは、近右衛門のお茶目さ爆発――――といえよう。

「「「……」」」

3人に沈黙が訪れる。
その内に秘められた反応は、それぞれによって異なる。

単純に成績を上げるなら勉強すればいいだけじゃないかと考えるネギ。

2-Aというクラスの成績を良く知っているがために、やや青くなるしずな。

そして、2-Aというクラスの面子を想像すると、嫌でもその成績に予想がついてしまうランディウス。


「な、なーんだ、簡単そうじゃないですか―――!」
「そ、そう?」
「……おいおい、これって下手なやつより難しいんじゃないか?」

楽観的に再び授業へと向かうネギ。
後に残されたのは呆然と佇むしずなとランディウス。

「だ、大丈夫ですよ……ね」
「……ね、ネギ君は自信があるみたいだけど……」

自身なさげに、ランディウスに問いかけるしずな。
答えるランディウスの言葉は半ばで途切れる。
この課題遂行の困難さに、絶望的なものを感じずにはいられず、ランディウスは授業へと向かったネギを重い足取りで追いかけるのであった。



教室は相変わらず騒がしい。
女性が3人集まれば姦しいとはよく言ったものだが、このクラスはおそらく2人でもうるさいだろう。
途切れることの無いお喋りに、ネギはどう切り出してよいやら――――タイミングを見失ってしまっていた。
……よって、助け舟とばかりにランディウスが手を叩いた。

「注目!」

一同が教壇のネギに注目。
静まった一同を見回して、ネギは言葉を続けた。

「今日のHRは大・勉強大会にしたいと思います! 次の期末テストは、もうすぐそこまで迫ってきています!
あのっそのっ、実はうちのクラスが最下位脱出できないと大変なことになるので~~!(主に僕が!)
皆さん、頑張って猛勉強していきましょ~~~~~!」

ネギの微妙な焦り具合をスルーして、ランディウスが耳打ちする。

「この間の成績一覧表を見て、現状把握をしよう」
は、はい……じゃあ皆さん、しばらく自習にします!」

早速ざわつき始める一同を尻目に、ネギとランディウスは作戦会議に入った。

2年生737人中で見ると、2-Aのテスト平均順位はバラつきが激しい。
上中下と何人かが固まっているのだが、やはり一番固まっているのは中あたりである。
上位に7人いる他は、ドベ寸前にバカレンジャーという感じだ。

「やはり、この5人をどうするかだな」
「かなり厳しいかもしれません……」
「真ん中あたりは何とかなるかもしれないが」
「そうですね」

2人が議論している傍らで、2-A陣は英単語野球拳なるものをやっていた。
つまるところ、出題に答えられなかったら脱がされるというわけだ……危機感ゼロと言う他ない。
当然だが脱がされているのはバカレンジャーが主だ。あられもない姿になるまで……

尚、ランディウスはそれに気付いていたが何も言わなかった。というか、見向きもしていなかった。
地雷を踏む気などないし、2-Aの雰囲気というものを大体理解したのでツッコミを入れるだけ無駄だと判断した次第である。
余計な突っ込みなど藪蛇以外の何者でもない。
それに、自分を監視するかのように眺めている1人の生徒の視線を感じていたためでもある。

一方、ネギは本気で絶望を感じていた。
この能天気な状況に、故郷へ強制帰国・ダメ先生・ダメ魔法使いという言葉がループする。

「そ、そうだ。3日間だけ、とても頭が良くなる禁断の魔法があったんだ」
「……禁断? どんなリスクなんだ?」
「えへへー、1か月ほどパーになります♪」
「却下」

壊れた笑顔で答えるネギに、ランディウスは即座に、問答無用に切り捨てる。
そして、そのままネギを廊下へと連行した。

「ネギ君。君は少し魔法に頼りすぎではないのかな? ドッジの時もそうだったが、カッとなると魔法を行使するクセがあるようだ。
秘匿すべき魔法をポンポン使っていては、いずれ露見してしまうぞ?」

ランディウスの指摘にシュンとなる。

「で……でも、このまま最下位(ビリ)だったら……僕、先生になれないし立派な魔法使い(マギステル・マギ)にも……」

溜息を吐くと、ランディウスは教室から明日菜を呼んだ。
先程の英単語野球拳から逃げるタイミングを計っていたのだろう。
呼ばれると同時に明日菜はすぐさま廊下に出てきた。

「何?」
「神楽坂。ネギ君にアレを見せてやってくれ」
「ああ……ちょっと待ってて」

教室に戻ると、明日菜は1冊のノートを持ってきた。
それは徹底的に使い古されており、既にボロボロ。
所々破れかけてたりするのは、単純なミスをしたときの八つ当たりの後だろう。
それでも最後のページまで書き抜いており、後ろのページになればなるほど丸の数が増えている。

「あっ!? まあまあできてる!」

以前連敗した時より確実に上がっているテストが挟まれていた――――密かに勉強していたようだ。

「私だって、あれからちょっとは頑張ったのよ! 全くもー、本当の魔法は勇気だとか自分で言っておいて……」

呆れ気味に言いながら、教室に戻っていく。
そして、言い忘れたといわんばかりに教室の扉から顔だけを覗かせ、自分の気持ちをストレートに明日菜は言い放った。

「マギ……何とかを目指してるのか知らないけどさ。そんな風に中途半端な気持ちで先生やってる奴が担任なんて、教えられる生徒だって迷惑だと思うよ!」

今の自分自身を明日菜に否定されるネギ。
決してネギ自身を否定したわけではない明日菜の言葉。
慌てふためいていた自分自身が、はっきりと波の無い湖のような落ち着きを取り戻させてくれる。
そして、ランディウスは締めとばかりに明日菜の言葉を自分なりに補正し、短くネギに断言する。

「身も蓋もないが、そうだな。まずはネギ君自身の気持ちを整理しておくべきだ」

去り際の2人の言葉は、ネギの胸に深く突き刺さった。
自分のことで強く言われたのは、ここに来て初めて。順風満帆に行き過ぎたのかもしれない。
何かの方法に頼るのではなく、自分自身のあり方を否定された。
では、どうすればいい?
明日菜もランディウスも、その問いに対する答えを与えてはくれなかった。

何をすればいい、のではなく、ただネギはどうあるべきかを考えろと……

緊張で張っていた肩の力。
混乱と共にゴチャゴチャになっていた頭の中。
自分自身を否定されたことで、その全てが白紙に戻された気がするネギ。

「僕は……どうあるべきか…」

1人残った廊下で、ネギは自分自身の課題について、思考をめぐらせ始めた。



教室に戻ったランディウスは英単語野球拳を強制終了させ、全員を席に着かせる。

「諸君。さっきネギ先生が言っていた大変なこと、というのは3つある」

一同に緊張が走った。
1つではなく、大変なことは3つ。しかも肝心の内容についてはネギが言った時も明かされていない。
ランディウスが二の句を紡がないものだから、息をするのも苦しくなっていく。

「1つは、2-Aが最下位だった場合はネギ君がクビになる」
「「「「「え、え~~~~~~~~~~~っ!?」」」」」

ネギかクビになる……この事実に震撼する。特にあやかが。

「2つ目は、最下位のクラスが解散される」
「「「「「嘘―――――っ!?」」」」」
「諸君はクラス替えなしでエスカレーター式だと思っているようだが、万年最下位の現状に学園長が本気で怒っていてな」
「うっ、学園長が……?」
「また、毎年の受験者の中には狭き門を突破するツワモノもいる。下手をすれば、その子達の入学・編入と同時に諸君の中から退学になる子が出るぞ」
「そんなっ、聞いてないよ~~~~~~~~~~っ!!」
「今まで退学者が出たという事例はないが、これからもそうだとは言い切れないし」

今度は一同に言いようのない動揺が走った。
入学と同時に約束されていたはずの自分達の進路。
大小問わず、このクラスの全員がそれを疑っていなかっただろう。このクラスのまま高校まで一直線、と。
悪くても義務教育だから何とかなるとの甘い考え。クラスの解散や退学の可能性は考えてなかったようだ。
もっとも、退学のことで驚かなかった者は約5名いたとかいなかったとか。

「3つ目は、それに該当する者達を後で呼ぶ。本人達だけに通達せよとのことだからな」
「…………」
「そんなわけで、諸君にはこの期末テストを頑張ってもらいたい――――以上だ。今日はこれで終わりにする」

のどかが号令をかけて一同が挨拶すると、ランディウスは教室から出て行った。
直後、あやかが普段は真面目にやってない者も含めて全員にハッパをかけていたそうな……



夜、バカレンジャーは管理人室に呼ばれた。
早速来ると、そこには寛いでいる真名と刹那の姿がある――――当然質問が飛ぶものの、2人は個人的な話をするために来たと言う。

「さて、君達を呼んだのは他でもない。大変なことの3つ目を伝えるためだ」

そう言い、真名と刹那に目配せをする。
頷いた2人は席を外した。

「実はな、特に悪かった子は留年「「「「「えっ!?」」」」」」……どころか、小学生からやり直しという」
「ちょ、ちょっと待ってよ―――ッ!」
「そんなの嘘よ―――っ!」
「残念ながら本当のことだ」

明日菜とまき絵が絶叫するが、無情にもランディウスは言い切った。
義務教育なはずの中学校教育。いくら成績が悪くても、留年だけはないだろう。
今日のHRでランディウスが示唆した退学の可能性。それが今、可能性ではなく決定としてランディウスの口から断言された。
それも中2なはずの自分達が小学生からやり直すという。
言い放たれたバカレンジャーは、突きつけられた事態に返す言葉がない。
といっても、約2名ほどは事態の深刻さを分かっていない気がするのは何故だろう。

「以上、君達は特に頑張ってほしい」

解散とばかりにランディウスがその場を締めると、半分はすごすごと、もう半分は何やら騒がしげにその場を後にする。

バカレンジャーが退室した後、タイミングを見越してか刹那と真名の2人が戻ってきた。

「3つの大変なことは本当なのかい?」
「いや、嘘だ。学園長からプレッシャーをかけるように頼まれてな、ああ言った」
「それにしては、随分大袈裟だったように思いますが?」
「実際はネギ君が先生としてやっていけるかどうかを見るためなんだよ」

なるほどと頷く。

「まぁこの件で生じるリスクは全部あの学園長に負ってもらうけど。元々は学園長の指令だし……俺も連帯責任だから、このくらいはね」

2人は何の戸惑いもなく同意した。
一瞬とはいえ、先程のランディウスが告げた決定に2人も驚愕してしまったのだから、無理もないが。

「それに、この後はもっとシャレにならないことになるんだ」
「と、いうと?」
「バカレンジャーはネギ君を連れて、図書館島に行くはずだ。あそこに【メルキセデクの書】という魔導書があるからな」

聞き慣れない単語に?マークを浮かべる。

「この世界では魔法書と言うとか――――どうも最高ランクのものらしくて、頭を良くするなど朝飯前だそうだ」
「そんなに貴重な物なら、並大抵のことで手に入らないと思うよ?」
「その通りだ。この魔導書に関連することが立派な魔法使い(マギステル・マギ)としてのテストらしい」
「つまり、2つのテストを同時にこなすことになるのですか?」

ランディウスは黙って首肯した。

「俺はその援護に回る……期末テスト直前まで帰れないことも有り得るな」

何故かその声は微妙に疲れ気味だったという。

このことは他言しないようにと伝えて2人を帰した後、ランディウスは図書館島に行くための準備を始める。
とはいえ――――現時点で判明している図書館島の詳細は既に貰っているので、ちょっとした物を用意するだけで終わった。



一方、バカレンジャーは涼風でとんでもないバクチに打って出ることを決定した。

魔法先生ネギま! ~副担任は大使~ 第7話 バカレンジャーの無謀な挑戦(冒険編)-全ては最下位脱出のために!-

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