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第8話 バカレンジャーの無謀な挑戦(脱出編)-障害を排除せよ!- 投稿者:夏野竜輝 投稿日:08/09-19:33 No.1074

「何をしている」

不意にかけられた声に、のどかとパルは飛び上がらんばかりに驚く。
振り返ると、そこにいるのはランディウスだった。

「俺が何を言いたいか、分かっているな? 寮を抜け出した理由、キリキリ吐いてもらうぞ」
「そ、それは……」

言いよどむものの、ここで沈黙すると疑念を持たれるだろう。
そう考えたパルは、一連の動きを包み隠さず話した。

「……そうか。追い込まれた末の行動に打って出た、か」
「せ、先生、このことは内緒に……」

無駄と思いつつ、のどかはランディウスに嘆願した。
このままではネギのクビどころか、クラスの解散は確実となってしまうのだから。

「宮崎、早乙女。君達は敢えてバカレンジャーを手助けしようとしたわけだな?」
「……は、はい!」
「麗しき友情、ね――――フッ」

しっかり返事してきたのどか。
ランディウスは思わず笑みを浮かべてしまう。

「いいだろう、君達が友人のために無許可で行動したことを不問に処す」
「え……じゃあ!」
「ああ。引き続き連絡を取り合って、バカレンジャーをサポートしてくれ」

目に見えて表情が明るくなった2人に頷き、ランディウスは図書館島の裏手へと歩を進め始めた。

「先生? どこに行くんですか?」
「この先に図書館探検部しか知らない入口があるようだからな…………バカレンジャーを物理的にサポートするのさ」
「本当ですか!?」
「ああ。彼女達はネギ君の生徒であると同時に俺の生徒でもあるからね……できる限りのことはすると約束しよう」
「「ありがとうございます!!」」

礼を言う2人に右手を上げて応え、去った。



これが1時間くらい前だ。
それからも定期的に連絡を取っていたのだが――――

「皆ーッ! どうしたの―――――――っ!?
「へ、返事して下さーい!」

突如雑音ばかりになり、切れてしまった。
これはバカレンジャーに何かあったことを意味する。
最後の方で聞こえたのは、ハズレとか何かを破壊するような音だった……

「あーわわわ! どーしよどーしよ!」
「誰かに連絡を……ってこんな時間じゃ皆寝てるし……!」

どうしようもなく焦る2人を放置して、無情にも時は過ぎていく。





第8話 バカレンジャーの無謀な挑戦(脱出編)-障害を排除せよ!-





翌朝、図書館島最深部。
盛大に落下したバカレンジャー+は、そのまま寝ていた――――神経が図太いのだろうか?

「この様子じゃ、まだ起きそうにないな……今のうちに探索しておくか」

近右衛門から渡されたマップに照らし合わせつつ、ランディウスは探索を始めた。

「どこかの川みたく水が流れ、砂浜には波が打ち寄せる。これだけで海かと勘違いしそうだ」

壁が光っていたり……天上を覆うほどの樹木があり、その隙間から射す光は幻想的に見える。
どうやら、僅かに開いている穴から落っこちてきたらしい。

「木が茂ってるわ、屋敷があるわ、コロシアムがあるわ、橋が外灯付きで設置されてるわ、休憩所があるわ――――本当に図書館か?」

不思議なことに、施設は手入れが行き届いていた。チリ一つ落ちていないのだ。
誰が掃除しているのか激しく気になる。
それに、地下にも関わらず季節的に春の陽気と言っていいほど暖かいのは何故か?

「それに、この本棚の群れは何なんだ? 適当に投げ入れたとしか思えん」

岩の上にあったり、湖に浸かっていたりと随分雑な扱いとしか思えない。
どういうわけか、本は全く傷んでいないし濡れてもいなかった。

「あちこちに感じる魔力の影響か」
「その通りです」

声が聞こえた方に向くと、フードを被った青年がいた。
全体的にゆったりしている雰囲気があるが、ランディウスはかなりの実力者だと判断する。戦場で培ったカンが告げているのだ。

「誰だ? というより……実体じゃないな?」
「ええ。故あってこの姿で失礼します」
「ふーん……まぁいいか。俺はランディウス=ルナカリバー。麻帆良学園中等部2-Aの副担任、女子寮管理人、警備員をやっている」
「私はアルビレオ=イマ。赤き翼(アラルブラ)の元メンバーで、今はここ図書館島を住処にしています」

互いに自己紹介をする。

「しかし驚きましたね。私が実体でないことを一目で看破したのは、貴方が始めてですよ」
「なに、心臓の鼓動と魔力の流れが微妙に違っていたのを感じただけさ」

エヴァ一家とガチンコ勝負をするようになって、ランディウスの感覚は二戦役時に戻りつつある。
巧妙な虚像を編んでいても、そのカンを誤魔化すことはできなかったということだ。

「なるほど、幾多の戦場を駆け抜けているようですね――――本当なら、ゆっくり話したいのですが」
「すまないが、今は探索中だからな」
「分かっています。時間があれば、またお会いしましょう」
「ああ」

アルビレオが消えると、ランディウスは探索を再開した。

「トイレ、キッチン、食材、調理具。洗面具まで……ここで暮らせると言われても反論できないな」

うまい具合に全教科のテキストまである。
ここまでくると、誰かが意図的に用意したとしか思えないのは気のせいか。

「ここは滝か。裏には……よし、非常口がある」

ここで考えてみてほしい。普通はドアや非常口といったものはドアノブがついているのだが……この非常口には見当たらない。
不自然なことこのうえない、というのが諸氏の認識と思う。
が、ドアノブの代わりと思われるものがある。それは――――

『問1.英語問題 【read(リード)】の過去分詞の発音は?』

思わず膝を折ってしまうランディウス。
最後の最後まで勉強だという誰かさんの意気込みが伝わってくるかのようだ。

「この先は螺旋階段で、やっぱり問題がある――――一番上には地上への直通エレベーターか」

作業用と書かれているところに何かの意図を感じるが放置しておく。
とりあえず探索が終わったころで、バカレンジャー+の元に引き返した。

引き返した頃には、バカレンジャー+も目を覚ましていた。
周りを見て仰天したのは言うまでもない。

「……ここは幻の【地底図書室】!?」
「何だそれは?」

ランディウスは驚く夕映に聞いた。

「地底なのに暖かい光に満ちて――――数々の貴重品に溢れた、本好きにとってはまさにアルカディアと言うべき幻の図書館です!」
「そ、そうなのか」
「ただし、この図書室を見て……生きて帰った者はいないとか」

怪しげなオーラを放ち目が光る夕映に、一同はドン引き状態。

(じゃあ、何で綾瀬が知ってるんだ?)

心中でツッコミを入れるが、決して口には出さない。

「とにかく脱出困難であることは確かです」
(天井があんなに高いしな)
「ど、どうするアルか? それでは明後日の期末テストまでに帰れないアルよ!」
「それどころか私達、このまま帰れないとか!? あの石像みたいのも、また出るかもだし!」
「み、皆さん落ち着いて……」

目も当てられない混乱ぶりに、ネギはオロオロするばかりだった。
と、ここで明日菜が左肩を負傷していることに気付く。
得意ではないが治癒魔法をかけようとするネギだったが、魔法を封印していることを思い出し愕然となった。

「どうした……ん? 怪我をしたのか」
「いや、大丈夫。何でもないよ」
「そうもいかないだろう……見せてみろ」

しぶしぶながら怪我の様子を見せる明日菜。

「ふむ……酷くはないが、治療しておいた方がいいな。じっとしててくれ」

ランディウスの手が緑色の光を帯びる。

「ヒール1――――」

光が明日菜を覆ったかと思うと、肩の傷が全快した。
比較的に軽傷だったので、早く治せたようだ。

「ランディウスさん、治癒魔法を使えるんですか?」
「ああ。これは覚えて損などないし、行使する機会が多いからな」
(凄いなぁ……)

ネギは素直に感心した。

「明日菜。肩の調子はどうだ?」
「もう全然平気よ。ありがとう、ランディウスさん」
「それは良かった」

他の者に気取られず明日菜の怪我は完治したが、彼女達がテンパってるのは変わらない。
下手すると収拾がつかなくなりかねない――――

(……さて、どうしたものか……)

ランディウスは1人冷静に思考を巡らす。
このままいけば、ネギが彼女達を励ますことは間違いないだろう。

しかし、考えてみよう。
教師という立場上、今の事態を何とか盛り上げようとするのは当たり前のことだ。
それでは、彼にとっての試験としては弱い。
この先、どこまで辛い現状に立たされるか、それはわからない。
ならば、ネギの試験のためにも、もっと状況を辛いものにしなくてはなるまい。

(―――せっかく責任を取ってくれるというのだ、せいぜい有効に使わなくては……)

考えているのはネギのため。
されど、ランディウスの背中からは黒いオーラ。
悪役を演じるには、これ以上に無いシチュエーションだ!

「さてと……諸君には悪い知らせがある……」

多少の魔力を帯びたランディウスの声が朗々と辺りに響き渡る。
テンパリの極みを迎えていた一同は、一瞬その声に正気を取り戻し、ランディスの方へと向き直った。

俯きがちに黒いオーラを放つランディウス。
まるで何か悪いものでも乗り移ったかのようなランディウスの姿に、一同の背筋に寒気が走った。
区切られたランディウスの声。
その悪い話というものの続きが気になるものの、放たれる黒いオーラに声を出すことすらできない。


……ゴクリ。


一同の誰もが固唾を呑んで見守る中、ゆっくりとランディウスが言葉を続ける。

「これは……学園長から直々に伺った話だが、今回の期末テストで最下位を脱出できなかった場合……」

え? という言葉にならない疑問が一同の中に沸き起こる。
HRの時のランディウスの話では、最下位を脱出できなかったネギの退職と退学が示唆された。
が、あくまでも可能性の話だったはずだ。
どう考えても、あれはモチベーションの上がらないクラスに対し、ランディウスが考えた激なはず。

しかし、今度は学園長直々に申し渡されたもの。
例えそれがランディウスの優しい嘘だとしても、学園長から申し渡されたという事実が、いやでもその信憑性を高めている。

もし、最下位脱出できなかったら?

もったいぶるかのようにランディウスはその重い口を開かない。
退学か? それともネギのクビか?
いずれにしても悪い話に違いない。
だけれど、HRのランディウスの激以上に恐いものである可能性が一同の中に激しく警鐘を鳴らす。
全員の目がランディウスの口に注目する。
その注目を知ってか、ランディウスの唇端が僅かにつりあがる。

「……お前ら全員、幼稚園からやり直しだぁぁぁぁぁっ!」

ガーンといわんばかりに全員の口が塞がらない。
14、5にもなった、いい年した自分達が幼稚園児と戯れる――――管理人室で示唆された小学生からやり直しよりキツイものがあるのは言うまでもない。
デカイなりの自分達がお手て繋いで遊戯して……そんな幼稚園の光景をまざまざと脳裏に浮かべる中、一同の中でいち早く正気に戻った夕映が批判の声を上げた。

「そ、そんなの国家権力の横暴です。到底承服できないです!」

いや、国家権力じゃないんだが……という突っ込みは、ランディウスには無い。
それこそ、そんな状況を楽しむかのようにニヤリとしたワラい顔で夕映に告げる。

「くっくっくっ……恐かろう、恐ろしかろう……例え多大な知識の鎧で身を守ろうとも、心の中までは守れないのだぁ!」

「くっ……!」

心底悔しそうに唇を噛む夕映。
他の面子はもはや現実逃避一歩直前の状態。
そんなバカレンジャー一同を、ランディウスはさも楽しそうに眺め渡し、

「さぁ、どうする? 諦めて幼稚園児から出直してくるか?」

親の敵のようにランディウスを睨みつける夕映。
その直視を挑戦的な目で不敵に笑うランディウス。
誰もが迎える現実に諦めかけた中、暗雲を切り払うかのような声が上がった。

「皆さん、元気を出して下さい! 根拠はないけど、きっとすぐ帰れますよ! 諦めないで、期末に向けて勉強しておきましょう!」

激を飛ばしたのは、ランディウスの目論見どおりネギであった。
魔法を使えないことに不甲斐なさを感じたネギは、せめて元気付けられればと檄を飛ばす。
そのネギの激に我に返るバカレンジャー一同。

「プッ……アハハハ、この状況で勉強アルカー!?」
「ハ、ハイ! きっとすぐに出られますから!」
「何かネギ君、楽観的で頼りになるトコあるな―――」

一同の笑いを誘うものの、ネギの試みを成功していた。
さっきまで暗くなっていたムードが明るくなっているのだから。

「そうだ。今は駄目かもしれない。だが、まだテストは始まっていない。
今からやれば多少の結果は期待できる――――建設的だ」

ランディウスも感心した。
何もしないより、まず行動してみることは非常に大切なことである。

「それと、君達が気絶している間に周囲を探索しておいた。この国の言葉に【腹が減っては戦はできぬ】とあることだし、まずは腹ごしらえといこうか」
「お――――☆」
「賛成――――」

夕映、木乃香を除く者達が駆けていく。

「ネギ君。俺は彼女達についてるから、君は勉強の準備をしてくれないかな?」
「は、はい、お願いします」
「それと……彼女達にこれを渡してやれ」

そう言ってランディウスが渡したのは、馬と星のロゴ入りペンダントだった。
お世辞を言えるほどまともではなく、ダサくて恥ずかしい一品である。

「これはメサイヤンペンダントというマジックアイテムだ。身につけて物事に取り組むと2倍の効果を得ることができるが、1日半で消滅するから」
「えっ、そんなに便利なんですか?」
「ああ……『期末テスト必勝のお守りだ』とでも言っておけばいいだろう」
「はいっ……こんなマジックアイテム、始めて見ました」
(元の世界の武器を作り変えたやつだからな。誰も知らないさ)

メサイヤンペンダントはメサイヤンソードを作り変えたものだ。
2倍の効果を得られる特性に注目したランディウスが、日数制限をかけて試験的に精製したマジックアイテムである。
ちなみに、日数制限をかけたおかげで大量生産に成功している。

(ウケは悪いと思うが、ネギ君の手腕に期待させてもらうか)

その時、朝日と共に解ける封印の1つが消えた。
図書館島に入って1日が経過したということだ。
この日は土曜で、あと2日――――

尚、バカレンジャーは直接言い渡された『最下位脱出できなかったら小学生からやり直し』が『幼稚園からやり直し』に改鋳されていることに誰も言及しない。
忘れているのか、スルーしているのか……定かではない。

余談であるが、2-Aはネギ達が行方不明になったことを知らされ、大混乱に陥っていたとか……










ネギ達が勉学に励んでいる頃、ランディウスは辺りをブラブラしていた。
基本的に雑用を引き受け、それ以外はあちこちを探索しているというわけだ――――担当教科がないことが起因しているのだが。

「そうだ、たまには読書に勤しむとするか……最近ロクに暇がないし」

誰のせいとは言わないが、ランディウスの自由時間は大抵潰されている。
このへんでゆっくりするのも大事だろうと思い、近くの本棚から適当に1冊取った。

「どれどれ……【スカハサの書】か。なるほど……って、何!?」

ランディウスは目を擦ってみるが、手に取った本は【スカハサの書】に相違ない。

「ちょっと待て、なんでエルサリアの書物がここに!? しかもこれは希少性が高いのに!?」

元の世界で2000年前、今や伝説とも言われるエルスリード王国の時代に存在したという伝承の書物がある――――
これはランディウスを驚愕させるのに充分すぎた。

その他にも【秘伝書】、【白魔術の書】、【黒魔術の書】などが陳列している。
帝国大統領や帝国議会議長あたりが聞いたら卒倒ものなのは確実だ。というか帝国大統領の場合は強奪しかねない。

「……何で【血の盟約】が……」

ギザロフ戦役末期、研究所での戦いの時に戦友が手に入れた盟約書まである。
非道な実験の対象にされ殺された者達の霊魂達に託されたそれは、ギザロフ討伐のうえで大きな役割を果たしたのは記憶に新しい。

「これはギザロフを倒した時に消えたはずだが……」

そう、ギザロフを倒した時に霊魂達の無念が晴れて浄化されたのだ。
現にランディウス達はその現場を目撃している。

「……どうやら、あの霊魂達の気配はないようだな……これもエルサリアのか?」

考えても仕方ないので、別の本棚に目を移してみた。

「もっとマシなのは……」

【老いて尚現役 作:アーロン】
【異世界へ跳ばされた魔法使いの結末】
【光輝勢力の問題点 協:レイガルド帝国】
【彼は今日も流浪の旅路へ! 作:リアナ】
【シスコン気味の傭兵、その真意 作:エルウィン】
【部下を粗末にする輩は許すまじ ~バルガス将軍の語らい~】
【レイガルド帝国初代皇帝ベルンハルトの功績 作:エグベルト】
【楽屋裏のグチ1 カルザス王女のカスタムスーツは大人気! 『姫、そろそろ我慢の限界ですよ?』】
【楽屋裏のグチ2 あそこまで過保護になる元海賊はロリコンか? 『ジェシカ様をお守りして何が悪い!』】
【ダークハーフに対する差別】
【騒乱の影に暗躍するヴェルゼリア】
【坊ちゃんから近衛騎士団総帥への道】
【有り得ない年齢 ~年齢詐称疑惑のお歴々~】
【部下は仲間だ! ~ボルツ将軍は部下と共に~】
【アルテミュラー陛下の優雅な休日 作:エマーリンク】
【ご用心、俺の前では情報など筒抜けさ 作:シルバーウルフ】
【軍神ルナの兵法書 ~兵法の神髄は暗記でなく応用にあり~】
【剣を握らせれば右に出る者なし! エルスリードにその人ありと謳われるギルバートの生涯】
【記憶せよ、二戦役の意味を】
【外宇宙文明に関する可能性】
【カルザス革命 ~民と共に理想を~】
【魔物の衰退 ~歴史を鑑みた検証~】
【女性の口説き方指南書 作:リッキー】
【ウィラー閣下のお気楽な午後 作:セレナ】
【青き月の消滅による影響 -第三次中間報告-】
【古代魔法文明の遺跡調査 -第九次中間報告-】
【ランフォード閣下の多忙な日々 作:エミリエル】
【人間とクリムゾン、共存への展望 作:レインフォルス】
【部下なくして軍は成立せず ~バルク将軍は軍人の鑑~】
【まるで家族状態のカコンシス首脳部 作:ロットシュタイン】
【人間界と魔界の相違点 『人間っておもしろいね』  監:リスティル】
【乱愚律さ~ すべては○○のために 作:不明】

色々とツッコミを入れたくなる本ばかりだった――――よくよく見ると門外不出の報告書から出版予定の書物まである。
全く時空が異なる元の世界から、どうすればこれだけの本を持ってこれるのだろうか?
むしろ並行世界を自由に渡り歩く術があるとしか思えない。

「いや、気のせいだ……突っ込むとよくないことが起きる。そうに決まってる……特に最後のは」

無理矢理自分を納得させ、無難な本を手に取った。
【麻帆良学園都市の歴史】と題しているこの本は、まだ良心的なのかもしれない。

「せめて学園都市のことは把握しておかないとな」

暇な時間をフル活用し、ランディウスは麻帆良学園の成り立ちから大戦のことなど、裏社会で必要な知識を吸収することに勤しんだ。










その翌日。テストまで後1日という時にバカレンジャー+は何をやっているかというと……

「ではこの問題を……佐々木さん」
「35でーす」
「正解です」

勉強していた。都合よく置かれている全教科のテキストを用いて。
その隣では、ランディウスが【大戦の経過】を読んでいる――――題名には認識阻害の魔法をかけたのは言うまでもない。

「黒板、チョーク、机代わりの木箱、未使用ノート……ここまでくると不思議だよねー」
「いたれりつくせりアルね」

ここで深く疑わないのも2-Aクオリティなのかもしれない。
まぁ疑えばキリがないので、それでいいのだが。

「―――本に囲まれて暖かくて、ホント楽園やなー☆」
「一生ここにいてもいいです」

長椅子にもたれかかり、のんびり読書に耽る木乃香と夕映。2人の隣には本棚をテーブル代わりにしてジュースが置かれている。
当然、勉強しろと突っ込まれるが。

「ではワタシ達も少し休憩にするアルか」

古韮が楓と話していた時、ふとまき絵が人目を忍びつつどこかに行くのが見えた。
これまた都合よく置かれていたタオルを片手に。

「お、マキエ。どこ行くアルか?」
「えへへ、ちょっとね」

このやりとりでまき絵が何を言いたいのか悟る古韮。どうやらまき絵と同じ事を気にしていたらしい。
彼女達も身だしなみに気を遣う少女ということだ。

「あ、わかた。いいネ、付き合うアルよ―――」
「拙者も同行するでござる」
「待て」

その時、ランディウスから制止がかかる。

「水浴びをするなら、これを持っていくといい」

石鹸、シャンプー、リンス――――必要と思わせれるもの一式を3人に手渡した。
例によって、これも都合よく置かれていたものである。

「2日も風呂に入ってないと堪えるからな。ゆっくりしてくるといい」
「さっすがランディウスさん、分っかる~」
「かたじけない」

3人を見送ると、ランディウスも2日分の垢を落とすべく適当な場所を探し始めた。



軽く流した後、何度目かの読書に没頭しているランディウス。
元の世界では大使なのに軍や古代魔法文明遺跡調査隊を率いて世界中を奔走し、それ以外では各国を歴訪して交渉に当たったりと大忙しだった。

この世界に跳ばされてからは女子寮管理人・警備員・2-A副担任を兼務する日々。
フリーな日には国内法・国際法・機器の使い方・政治情勢・経済の動向などの勉強に明け暮れる。
最近はエヴァ一家との手合わせを強制的にやらされつつある。

一体どこに休息の二文字があるのだろうか。
いや、ありはしない……むしろ元の世界以上に大変だろう。

「休息がこれほどありがたいとは思わなかったな。できるだけ満喫しておこう」

だが世の中とは得てして無情である。
何故か? 人がやろうとすることを嘲笑うかのように、チャチャを入れてくるからだ。

「キャ―――――――ッ!!」
「この声は佐々木……全く、何が起こったんだ?」

せっかくの読書タイムへ水を差されたことにカチンときつつも、現場に急行する。
この時、ランディウスは近右衛門がゴーレムで突撃してきたんじゃないかと予想していた。
そう易々と帰れるはずはないし、何より近右衛門がゴーレムをあのまま放置しておくはずないのだから。

「何の騒ぎ……だ……?」

案の定、ゴーレムがまき絵をワシ掴みにして一同を襲撃しているのだが――――如何せん、一同の格好が際どすぎた。
楓、古韮、夕映、木乃香は体にタオルを巻いているし、まき絵は掴まれていなければスッピン。
明日菜に至ってはブラウス1枚だけである。

この状況でランディウスが即座に回れ右をしたのは当然の帰結としか言えない。

ええぃ、間の悪いところに……君達は着替えて来い!」

有無を言わさないその声に、ネギを除く一同は自分達の格好を思い出し一目散に走り去った。

「ら、ランディウスさん!?」
「ネギ君。とにもかくにも、ズラかるぞ」

翌日にテストを控えている以上、そろそろ帰らなければ遅刻……下手をすると欠席という事態になりかねない。
今から動けば、充分間に合う――――そう見越しての言動だ。

〔フォフォフォ、無駄じゃよ。出口はない〕
「既に見つけましたよ?」
〔フォ~~!?〕

近右衛門から渡された見取図が役立った結果であるのは明白だった。
ゴーレムはみっともないほど動揺している――――哀れ近右衛門、これは自爆以外の何者でもない。

そんなところに、着替えて荷物回収ずみの一同が戻ってきた。

「ん……あ!! 皆、あのゴーレムの首の所を見るです!」

ゴーレムを観察していた夕映が、メルキセデクの書を発見した。どうやら、ゴーレム共々落ちてきたらしい。
それを夕映が見逃すはずはなく……

「本を頂きます! まき絵さん、クーフェさん、楓さん!」
「「「OK、バカリーダー!」」」

その意図を察した古韮が動き、右拳でゴーレムの左脚に突きを放った。まともに喰らったゴーレムは、たまらずよろめいた。
ただの一撃で左脚を粉砕しかける威力は凄まじいの一言につきる。
さらに右手を蹴り上げ、まき絵が宙に投げ出されたところを楓が抱きかかえ、その状態でまき絵がリボンを巧みに操ってメルキセデクの書を奪取した。
リボンをどこに持っていたのかは、気にしてはいけない。

「キャ――――☆ 魔法の本、取ったよーっ!」
「バカレンジャー、ホントに体力だけはスゴイです!」

何か違うんじゃないかとツッコミを入れたくなるネギとランディウス。

「まぁいい。非常口への道は把握しているから、俺について来い」
「ひ、非常口!? 何でランディウスさんが……」
「空いている時間を利用した結果だ」

ランディウスが先頭を走り、バカレンジャー+を誘導していく。
その間、ランディウスは後ろを振り返らなかった。バカレンジャー+の中で唯一着替えていなかったまき絵が走りながら着替えているからだ。

(学園長、完全に遊んでるな……俺達より少し遅く走ってる)

ゴーレムは結構速いものの、同速度かそれより少し遅いくらいのスピードで追跡してきている。
本気でないのが見え見えだが、それはそれでありがたいことだ。
そんなことを考えている間に、滝の裏の出口に辿り着いた。

「ここだ」
「やった……えっ、何コレ!?」
「扉に問題がついてる!?」

問題に正解しなければ先に進めないシステムだと思われることをランディウスが説明した。

「そんなコト、いきなり言われても分かんないわよ!」
「分からなくてもやるしかないぞ。ゴーレムは俺が足止めしておくから、そのうちに何とかしてくれ」

感覚をリンクさせて遠距離操作するタイプのものは、ダメージが術者にフィードバックでそれなりにいってしまう。
この事はランディウスも承知済みだが――――

「ムムッ!? いや……ワタシ、コレ分かるアルよ!」

メルキセデクの書を担いでいる古韮が言う。

「答えは【red(レッド)】アルね!」

古韮の答えが正解だったためか、扉が開いた。
バカレンジャー+が駆け込んだのを確認したランディウスはゴーレムを足払いで倒し、さっさと扉の奥へと走っていった。

「うわっ、何コレ!?」
「螺旋階段!?」
「コレ、上まで登るん!?」

見上げるだけで立ち眩みしそうなほど、果てしない螺旋階段を登れなければならないようだ。

「驚いてる暇はないが……来たか!」

予想通りの状況に溜息を吐きつつ、壁をブチ破ってきたゴーレムに向き直るランディウス。
非常口はゴーレムが通れる広さではなかったので、無理矢理来たらしい。

「ゴーレムの相手は俺に任せて、君達は先に行け!」
「そ、そんな!?」
「期末テストを控えている君達が遅れては元も子もない……なに、多少の時間は稼いで見せよう」
「……分かったでござる。ランディウス殿も無理はしないでくだされ」

バカレンジャー+が走り去った後、ランディウスが立ち塞がるかのように構えを取った。

「さて学園長。しばらく俺に付き合ってもらいますよ?」
〔せ、せめて剣かハンマーを……〕
「俺も無手ですから、文句言わないで下さい」
〔仕方ないのぉ……ではいくぞぃ!〕
(あまり衝撃が大きいと、足場に影響が出るな……)

ゴーレムの攻撃を避けていなし、少しずつ後退していくことにした。
要は自分がゴーレムの相手をしている間にバカレンジャー+が頂上に辿り着けばいいだけのことなのだ。
それに、ある程度まで登ったところでゴーレムを蹴り落とすことも視野に入れていたりする。



ランディウスとゴーレムが戦っている頃、バカレンジャー+は順調に進んでいた。
メルキセデクの書を持つと、問題の回答が瞬時に分かる――――これはかなり楽であろう。
解いていく毎に問題は複雑になっていくが、それも意味を成さない。
よって、問題となるのはバカレンジャー+の体力と予期せぬトラブルの2つとなる。
前者はほぼ問題ないが、後者は……

「あうっ!」

夕映が偶然にも突き出ている木の根で足を挫いてしまった。まさに予期せぬトラブルだ。
ネギが背負おうと頑張るが、悲しいかな10歳児……あっさり倒れてしまった。

「どうした?」

そんなバカレンジャー+に、ゴーレムと距離を置いたランディウスが声をかけた。

「実は夕映ちゃんが足を挫いてしまって……」
「それはいけないな……少し待ってくれ」

迫りつつあったゴーレムの方へと走っていき……躊躇なく足場から蹴り出した

〔フォ~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?〕

ちょうどゴーレムが見えなくなったあたりで、一際派手な音が響いてくる……最下層へと落ちていったゴーレムから発生したものだ。
バカレンジャー+は一連の行動に唖然となっている。

「さ、これで当面は安心ということで……綾瀬」
「は、はい」
「俺の背に負ぶされ」
「「「「「「「え、ええ~~~~~っ!?」」」」」」」

何の戸惑いもなく言い切ったランディウスに大声を上げるバカレンジャー+。
その勢いに、ランディウスは些か引き気味だ。

「ど、どうした? 綾瀬は足を挫いてるんだろう……なら、俺が背負っても不思議はないと思うが?」
「それは……そうですが……」
「?」
「……分かりました。お願いするです」

ランディウスに背負われる夕映。
バカレンジャー+は再び歩を進め始めた。

(何だか……とても大きい、です)

問題を解きつつ進んでいくうちに、夕映の携帯電話の電波が入った。それは暗に地上が近いことを示している。
一同にそれを伝えると、その表情が少し明るいものになった。

「ああっ! 皆さん、見て下さいっ!!」

ネギが指した先には、地上への直通エレベーターがある。
作業用と表記されているあたり、何らかの作業をする者が利用していると思われる――――一体何をするのだろうか?

「皆急いで! 乗って乗ってーっ!」
「キャ―――! 早く早く☆」

一同が駆け込み、ランディウスが夕映をエレベーターの中に降ろすが……

『――――重量OVERデス』

お約束と言えばそれまでだが、無情な機械音声とブザーが響いた。
当然バカレンジャー+は大混乱に陥ってしまう。

「地底図書室で2日間、飲み食いしすぎたアルかー!?」
「まき絵さん、今何キロです?」
「わ、私は痩せてるよっ! それを言うならアスナとか長瀬さんの方が~~!」
「あああ、勉強ばっかりしてたから……!」
「スペース余ってるやん。根性なしのエレベーターやなー」

まるで2日間の反省会のようだ……若干1名、関係ない事を言っているが。

「仕方ないな。俺が残るから、君達は先に行け」
「そんな! ランディウスさんを1人残していくなんて……!」
「ゴーレムの足止め役は外せないだろ? 心配するな、これくらいの事は散々クリアしてきた身だ」
「一体今まで何をしてきたんですか!」

そんなこんなで揉めるが背を向けていたランディウスが顔をバカレンジャー+の方へ向け、フッと笑った。

「――――信じろ」

言い終えると、再び前を向く。
その背中が物語っていた――――必ず君達に合流する――――と。

「……皆さん、ランディウスさんを信じましょう」
「夕映ちゃん?」
「ランディウスさんは絶対に生還する、そう確信するです」

根拠などない。もしかしたら、それは錯覚なのかもしれない。
それでも夕映は信じたかった。自分を背負って走ってくれた、あの雄々しい背中を――――ランディウスという、1人の人間を。

他の面々も何か感じるところがあったらしく、夕映に賛同の意を示した。

ようやく纏まった後、明日菜がある事を言った。
彼女が片足を出すだけでブザーが止まる……つまり、少し軽くすると動く可能性がある事を。
そのため、ネギ以外のバカレンジャー+は荷物や服を捨てた。もう形振り構ってられないようだ。

(やる事が豪快というか捨て身というか……まぁいい。後で回収しておくか)

心中で考えるランディウスを放置して、捨てれる物を全て捨てるが……ブザーは止まない。

〔フォフォフォ、追い詰めたぞよ―――!〕
「させん。貴様の相手は俺だからな」

ランディウスとゴーレムが小競り合いを始める。
ここまでくると回避に徹することは不可能なので、ゴーレムを破壊する勢いで攻撃を加えた。

「ネギ君、彼女達をしっかり引率しろよ? 君は2-Aの担任だからな!」

ランディウスを援護しようと飛び出しかけたネギを牽制する。
そしてゴーレムを殴り飛ばし、ネギに念話を飛ばした。

(エレベーターにスペースがありながら重量オーバーというのはおかしくないか?)
(へ? ランディウスさん、念話ができるんですか!?)
(まぁな。それは置いといて、どう思う?)
(は、はい。確かにおかしいですね……)
(そうか……これは俺の推測だが、そのエレベーターはメルキセデクの書に反応する構造になってるんじゃないかな?)
(ええっ!? じゃあ、これを持ち出すことができないじゃないですか!)
(ああ。これほど貴重な魔法書を、こんな簡単に持ち出せる方がどうかしてると思う)
(そんな……)

最高の魔法書を持ち出すなど、普通なら至難の業だ。
よって、この仕掛けは当然であるし――――まだ簡単なものである。

(こう言ってはなんだが、これでいいのかもしれないぞ。魔法書などに頼らず、自分達の実力でクリアするのが今後のためにもなる)
(どういうことですか?)
(期末テストを魔法書で乗り切ってしまうと、次のテストもこれに依存してしまう……結果として自分で行動しなくなる可能性を否定できない)

道具に頼るのではなく、自らの力で道を切り開く――――それがランディウスの言いたいことである。
常に不利な立場にありながら、それをバネに進んできた彼ならではの持論だ。
先のドッジボールで手を貸さなかったのも、一同に自ら行動することを促すためだったのだから。

この事を明日菜に説明すると、渋々ながらも同意を得ることができた。
後は機を見てメルキセデクの書を投げつけるだけとなる。

〔お主にわしを止められるかな?〕
「やってみるさ!」

ランディウスとゴーレムが互いを牽制し合う。
一瞬でも隙を見せれば、即攻撃されるのは明白――――緊張した空気が辺りに満ちた。

(これでも、ランディウス君の力の一端にすぎんのじゃろうな)
(さすが学園長、【能ある鷹は爪を隠す】を地でいっている)

互いの実力を測ろうとするものの、それは達成できない。
今の近右衛門は遠隔操作のゴーレムであるために隠蔽が容易であり、ランディウスは元の世界で実力を隠す術を身につけているのだから。

「……じれったいわね……」
「明日菜?」

ポツリと呟いた明日菜がメルキセデクの書を振り被った。

「え!? 何を……!」
「こーすんのよ!」

力の限り投げられたそれは、ランディウスとゴーレムの間に落ちていく。

「「!!」」

双方が動くと同時にエレベーターはようやく起動した。
メルキセデクの書を挟んで拳と拳がぶつかり合う中、その音を聞き取ったランディウスはホッとする。
瞬間的に拳へ力を込め、弾き合う形で後退していく。

「さて……このくらいでいいでしょう、学園長?」
〔ふむ、そうじゃな〕

言い終わると同時に、2人してその場に座り込んだ。

「今回は見事に一杯食わされましたね」
〔どういうことじゃ?〕
「これを見て、そんなこと言えますか?」

互いの拳にもさしたる変化を見せないメルキセデクの書。
しかしその中は、どこまで真っ白なページばかりだった。

「この世界で最高と言われるものが、雑に放置されている時点でおかしいと思ってましたが……」
〔ほほぅ〕
「それに、コレから発せられる魔力は学園長の細工でしょう? ネギ君が本物と信じるように、何らかの影響も与えたようですね」
〔そこまで看過されるとは、見事という他ないのぉ……じゃが、それだとあの子達が問題を解いた理由が説明できんぞい?〕
「ちょっとした小道具を使っただけです。彼女達が荷物等を捨てた時に、ちょうど消滅しましたが」

うまい具合に消滅したので、何気に安心していたりする。

「それはそうと……」

何故かランディウスの語気が強くなった。

「散々バカレンジャー+を危険の目に遭わせたわけですから、それなりの制裁は受けてもらいますよ?」
〔な、何故に!? というか、わしは無罪じゃよ!〕
「ははは、貴方に反論の余地はありません。ネギ君達も待ってることですし……逝け!!」

およそ容赦の二文字とは無縁の回し蹴りをブチ込まれ、ゴーレムは最下層へとヒモなしバンジーをすることになってしまった。
何気にランディウスはストレスを溜めていたらしく、ゴーレムの悲鳴が聞こえなくなると無駄に爽やかな笑顔になる。

「む、エレベーターが戻ってきたか……では行こう」

こうしてランディウスも脱出に成功した。
地上に着くと、図書館島の裏手入口の近くだった。

「なんだ、目と鼻の先だったのか……」
「ランディウスさん!」
「信じてました……無事で何よりです」

ランディウスの無事を喜ぶバカレンジャー+。
が、当の本人は彼女達から即座に視線を逸らした。

「君達の荷物等は回収してきたから、早く着替えてくれ」

サンタクロースが背負うような白い袋を置き、明後日の方へと向く。
自分達の格好に気付いたバカレンジャー+は赤面しつつ着替え始めた。



「……ありがとう……です」

ポツリと呟かれた、その一言。
明後日の方向を向くランディウスの背中に向けて放たれた、その一言。
それにランディウスが気づくことはないだろう。
既にいつもの明るさを取り戻したバカレンジャー達がやいのやいのと騒いでいるのだから。

ポツリと呟かれたその一言。
感謝の気持ちを精一杯に込められた、その一言。
少女が見つめる、その大きな背中。
眼を閉じれば、今でも彼の背中に追われ、その暖かみを感じていた瞬間を思い出せる。
向かい合って言えない、その一言。
素直でない少女が、素直に出した感謝のコトバ。

あえて、誰が言ったのかは……想像にお任せするとしよう。



こうして、一同は図書館島での摩訶不思議な冒険を終えるのであった。

期末テスト開始まで、あと15時間……最後の追い込みが始まる。

魔法先生ネギま! ~副担任は大使~ 第9話 バカレンジャーの無謀な挑戦(完結編)-最後に笑うのは誰?-

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