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EPISODE.14「見合」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:07/18-00:45 No.937
EPISODE.14「見合」
SIDE:木乃香
いい加減、おじいちゃんもお見合い趣味やめてくれんかなぁ…。
ウチはそう思いながら、着物姿で走る。
「木乃香お嬢様~~~!!!」
後から、おじいちゃんの部下の黒服の人達が迫ってくる。
…ホントにしつこいわ~。
追手から逃げるうちに、ウチは公園の高台に追い込まれてもーた。
「ふう…さ、お嬢様。お見合いの時間が迫っています。会場に向かいませんと」
うー、そのお見合いが嫌なんやけどなぁ。
逃げたいが、周りを囲まれては逃げれらへんしなぁ~。
「では、お嬢様――――」
ウチも諦めて付いていこうとしたときに、その声は聞こえた。
「待てぃっっ!!」
「…!! だ、誰だっ!?」
突然聞こえてきた声に、辺りを探す黒服さんたち。
――――いや、あの街灯の上にいる人ちゃうん?
ノリがええな~。
「…あ、あれだっ!!」
そこでやっと気付いたのか、街灯の上に立つ人物を指差す。
「貴様っ!! 何者だっ!?」
その黒服さんたちの言葉に――――
「貴様らに名乗る名など無い!!!」
そんな事を言ったのは――――
「あ~、翔馬さんや~」
ウチは街灯の上に立つ翔馬さんに呼びかけた。
ズルッ!!
ゴカッ!!
あれ? 翔馬さんが街灯から転げ落ちてもーた。
なんでやろ?
街灯から落ちた翔馬さんは、ヒクヒクと痙攣しながら地面に血をぶちまけた。
「お。おい、アイツ…死んだんじゃ…?」
黒服さんの人達がそう呟くけど、翔馬さんなら――――
「あー、死ぬかと思った」
いきなり起き上がってそう言った。
「「「い、生き返った~~~!?」」」
いややなぁ、翔馬さんがあんなんで死ぬわけないやん?
「えっと、木乃香ちゃん?」
「? どうしたん? 翔馬さん」
「俺がカッコつけて『貴様らに~』とか言ってるのに俺の名前を言っちゃだめじゃないか~?」
あ。そーいえばそーやなぁ。
「あー、ゴメンなぁ~、翔馬さん。ウチ、つい言ってもーた」
「いや、まあ、そこが木乃香ちゃんの持ち味だから別に良いんだけどね…」
頭をかきながら、ウチの方に歩み寄る翔馬さん。
「で、コレは一体何なんだ? 怪しい黒服のヒトたちに木乃香ちゃんが絡まれているみたいだから割って入ったけど」
そこで、ウチは事情を翔馬さんに説明した。
「――――なるほど。また、あのじじいの悪趣味に巻き込まれたのか…」
翔馬さんが同情の目でウチを見る。
「まだ、木乃香ちゃんには早すぎると思うんだけどねぇ…」
「そうやろ? でも、おじいちゃんがしつこいんや…」
「いいかげん、あのじじいには一辺ガツンと言ってやらなけりゃならんな…」
顔をしかめながら言う翔馬さん。
「でも、おじいちゃんには色々世話になっとるしなぁ~」
あまり断り続けるわけにもいかんし。
「――――木乃香ちゃん」
翔馬さんが、真剣な表情でウチに問いかける。
「君はお見合いするのが嫌なんだろ?」
――――それは――――
「自分に嘘をつくのはいけないぜ?――――自分さえ我慢すればいいと思っているのなら、それは間違いだ。――――それはただ、自分を――――自分の意思を殺す事に他なら無い」
「でも、ウチさえ我慢すれば――――」
そう、ウチがちょっと我慢すればいいんちゃうの?
そんなウチの言葉を遮り――――
「なんで、木乃香ちゃんが自分の意思を殺してまであのじじいの趣味に付き合う必要がるんだ?――――そんな必要はないだろ?」
「でも――――」
「木乃香ちゃん。嫌なことは嫌だとはっきり言わないと、誰にも伝わらないよ?――――だから、あのじじいにはっきり自分の意思を伝えるんだ。――――『お見合いなんてさせやがって、くたばれじじい』ってね?」
――――は?
「ちょ、翔馬さん!? ウチはそこまで思ってへんで!?」
なんでいきなりそんな話になるん!?
「しょ、翔馬さん、途中まで少しいい感じの話やったのに、なんでオチをつけるん…?」
「いや~、ちょっとシリアスぶったら急にボケたくなってね~」
ははは、と笑う翔馬さん。
「あはははは、でも、翔馬さんらしいなぁ…うん、そうやな。ウチ、おじいちゃんにはっきり言うわ。もうお見合いはせーへんって」
うん、そうやな。ウチの意思をはっきり伝えんといかんとね。
「そうと決まったら早速じじいんとこに行こうか?」
「――――うん!!」
ウチがそう返事をすると、翔馬さんはいきなりウチを抱え上げて、俗に言う『お姫様だっこ』をした。
「しょ、翔馬さん!?」
「それじゃ、いこうか!!」
翔馬さんはそう言って、ウチを抱え上げたまま黒服さんたちの囲みを突破し、もの凄いスピードで走り去る。
「お、お嬢様!?」
「お。追え~~~!!!」
当然、黒服さんたちが追いかけてくる。
そこで翔馬さんは、
「木乃香ちゃん、内ポケットに丸いヤツが入ってるから、取ってくれないか?」
ウチは翔馬さんの上着の内ポケットを探り、
「コレのことなん? 翔馬さん?」
黒くて丸い物体を取り出す。――――その表面には、『超』の字が。
「それを後ろに向かって投げてみて?」
言われたとおりにそれを投げてみると――――
バシュッッ!!
その黒い物は破裂して、中に入っていたモノ――――トリモチが追ってきていた黒服さんたちの動きを止めた。
「な、なんだこれは~~~!?」
「う、動けない~~!?」
「なんで、トリモチが!?」
黒服さんたちがトリモチに引っかかっている間に、ウチらはその場を離れた。
「うーむ。さすが超一味特製。すばらしい効き目だなぁ」
感心したような翔馬さん。
「そうやな~。――――でも、おじいちゃんお見合い諦めてくれるやろか?」
おじいちゃんのお見合い趣味にかける意気込みは凄いものがあるからな~。
「大丈夫だよ。木乃香ちゃんが真剣にお願いすれば、あのじじい――――学園長も解かってくれるさ」
ウチを抱えながら走る翔馬さんがそう言った。
「そうやとええんやけど…」
「それに――――もし、聞き分けないようなら俺が学園長を説得するよ」
「え? でも、それやと翔馬さんが――――」
翔馬さんが色々と面倒な事になるんちゃうん?
おじいちゃんは一応、ここの偉いさんやし。
そんなウチの言葉を遮り――――
「ははは、この程度で職権乱用するほど学園長もボケちゃいないさ」
うーん、そう…やな。いくらおじいちゃんでも翔馬さんとは何だかんだ言って仲がええし。
「うん、なら翔馬さんにお願いするわ」
ウチがそう言うと、
「任せてくれ。学園長は必ず説得してみせるよ――――物理的に」
――――今、ウチはトンデモ無い事を頼んでしまったんやないんやないかなぁ…?
SIDE:翔馬
それから、俺と木乃香ちゃんは学園長室に向かいじじいを説得し始めた。
最初は木乃香ちゃんのお願いを聞いて迷ったが、じじいのお見合い趣味が孫のお願いをほんの少し勝ったらしく、木乃香ちゃんを上手く宥めてお見合いをさせようとする。
――――さすがに年の功。こう言った交渉事は慣れてるな…。
だが、ここで引くわけにはいかない。
「――――学園長。木乃香ちゃんが嫌だといってるんですから、お見合いはやめたらいかがですか?」
じじいと木乃香ちゃんの話し合いに割り込む俺。
――――このままだと木乃香ちゃん、丸め込まれそうだしな。
「うーむ。木乃香の気持ちもわからないでは無いんじゃが、『近衛家』としてはそうも言っておれんしのぉ…」
確かに古くから続く家柄には色々としがらみとかあるんだろうが、それを木乃香ちゃんに押し付ける理由にはならない。
木乃香ちゃんはもっと自由に生きてもいいんじゃないか?
そんな事を思いながら、俺はじじいを説得する。
「学園長。このままだと俺は表面上はつらい決断を下さなければならないんですが…」
「――――表面上とゆー所が気になるんじゃが…?」
じじいの言葉をスルーして、
「ええ。具体的には――――『月夜の晩ばかりと思うなよ』的な事を」
「それはもしかして闇討ちの予告じゃないんかの!?」
しかし、脅し宥めすかしてもじじいは首を縦には振らない。
――――強情だな、じじい。
仕方が無い。ここは俺も切り札――――ジョーカーを切るしかないか…。
「仕方が無い…コレだけは使いたくなかったが――――」
マジでコレを使いたくは無かった。――――あまりも強力すぎるカードだからだ。具体的には某『遊○王OCG』の『ラーの翼○竜』のような。もしくは『封印されしエクゾ○ィア』とか。
「姉さんにチクってお仕置きを――――」
「ごめんなさいそれだけはどうかご勘弁をぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!」
「お、おじいちゃん!? なんでいきなり土下座しとるん!?」
俺の言葉に土下座するじじい。
その姿には関東魔法協会理事としての威厳など欠片を無かった。
普通ならそこで俺は追い討ちをかける所だが――――
「解かりますよ…学園長。同じお仕置きを受けた者同士…本来ならこんな死刑判決のような脅しは使いたくなかったんですが、今回は木乃香ちゃんのためですからね…」
優しく笑ってじじいの手を取る俺。
「おお…翔馬よ。そこまで木乃香のためを思って…」
「ええ…木乃香ちゃんのためですからね…」
優しい笑顔の俺と、感涙の涙を流すじじいに、
「えーと、そのお仕置きってなんなん? もしかしてしずな先生が…?」
その木乃香ちゃんの言葉に、俺とじじいはピタッと動きを止め。
「ハハハ、イヤダナァコノカチャン。ネエサンガソンナコトヲスルワケナイジャナイカ。ハハハ」
「ソウジャゾ? コノカ。シズナクンハトッテモヤサシイリッパナジョセイジャヨ?」
「なんで、棒読みで片言なん…?」
「いや、それより!! 学園長もこれ以上お見合を無理にはしないみたいだし!! よかったね!! 木乃香ちゃん!!」
誤魔化そうとする俺。――――こんな事を木乃香ちゃんに話したと姉さんにばれたらあのつらいお仕置きが待っている。
そ、それだけはっ!! それだけは絶対避けねばっ!!
「そ、そうじゃ!! 木乃香!! もう、無理にお見合などさせんから!! だから今の話は忘れてくれんかの!?」
じじいも俺と同じ思いなのか必死に誤魔化そうとする。
「何か、必死やな…? まあ、ウチはお見合が無くなるんのならそれでええけど」
それから木乃香ちゃんは着替えるために部屋に戻る事になった。
「それじゃあ、翔馬さん。今日は本当にありがとうな♪」
「いやいや、木乃香ちゃんのためなら例え火の中、水の中さ。ははは」
軽口を叩く俺に、
「本当にお見合が無くなってよかったわ~」
嫌なお見合をもうしなくてすんで嬉しそうな木乃香ちゃん。
――――木乃香ちゃんが笑ってくれるのならそれでいいさ。
そして、木乃香ちゃんは部屋を出る時に――――
「あ、でも、翔馬さんとならウチお見合してもええで♪」
「――――は?」
「それじゃあな~」
そう、爆弾発言を残して学園長室を出て行った木乃香ちゃんを、俺は唖然として見送るしか無かった。
「フォッフォッフォッ、翔馬よ。今度木乃香とぜひお見合を――――」
「少しは懲りろ、ヌラリヒョンアン○ッド!!」
俺の鋭い蹴りが、じじいの顔面に突き刺さった。
「あたたた…翔馬よ、老人虐待と言う言葉を知っとるか!?」
「知らんな」
じじいの言葉を断ち切り、話しを変える。
「それで、俺に用って一体なんだ?」
俺も木乃香ちゃんと部屋を出ようとしたら、じじいに呼び止められたのだ。
「ふむ…実は――――」
じじいが話し始めたその時、ドアをノックする音が。
「学園長。桜咲です」
――――? 刹那?
「おお、入ってきてくれんかの。刹那君」
そのじじいの言葉を受けて入ってきたのはやはり刹那だった。
「――――翔馬さん?」
部屋の中に俺がいたことに少し驚く刹那。
「じじい。俺と刹那に何かあるのか?」
「フォッフォッフォッ、実は二人にこれから来るお客と会ってもらおうとおもってのぉ…」
――――? 客? 誰だ?
俺と刹那に共通する人物なんて――――んっ!?
「ま、まさか――――鶴子さんか…?」
違ってくれ!! 頼むから!!
心辺りを言ってみると――――
「ん。そうじゃが?」
大当たりだよオイ。
「あの人、ちょっと苦手なんだけどなぁ…」
俺のペースに持ち込みにくいし。
そんな事を思う俺。
そして、この中で最も鶴子さんと付き合いの長い刹那は――――
数十秒間まったく動かなくなったが、突然ものすごい爽やかな笑顔で、
「じゃ、私は用事がありますから♪」
そう言って、シュタッと手を上げて足早に部屋を立ち去ろうとする。
「いや、刹那君――――」
じじいの言葉を聞こえないかのように無視してドアを開けようとする刹那だったが――――
刹那がノブに手を掛けようとした次の瞬間――――
ギギギィィ、と音をたててドアが開いた。
ドアが開いた先には――――
「あら、刹那はん、お久しゅう」
――――笑顔の鶴子さんがいた…。
「――――――――!?」
刹那は息を呑み、その動きを止めた。
「――――刹那?」
またもや動きを止めた刹那に、俺は近づく。
そして刹那の様子を見ると――――
「完全に失神してるよ…」
あまりの恐怖に脳がフリーズしたようだ。
そんな刹那の様子を見た鶴子さんは――――
「あらあら、刹那はんったら…あまりの嬉しさに感極まって失神してもうたみたいやなぁ?」
頬に手を当ててそう嘆息した。
(――――絶対違うって。これはあまりの恐怖にトラウマが蘇って失神したんだよ!!)
そう大声でツッコミを入れる事ができないチキンな俺を許してくれ…刹那。
――――ぶっちゃけ、これ以上俺もトラウマを増やしたくない。
姉さんの分で俺の許容量は一杯一杯だ…。
――――To be contenued
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