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EPISODE.6「水魔」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:06/25-00:56 No.793

EPISODE.6「水魔」

SIDE:翔馬

俺と彼女―――――――――――“青山鶴子”は人気の無い公園にいた。

もちろん、彼女が街中で奥義をかましてくれやがりましたからね! コンチクショウ。

「で、あなたが今回の相棒の神明流の人ですか?」

幾分か憮然とした声色で訪ねる俺。いくら姉さんで慣れているとはいえ、あんな攻撃を受けてはたまらない。

「そうどす。翔馬はん。ウチが神鳴流の青山鶴子どす」

“青山鶴子”―――――――――――その名前は刹那から聞いていた。

二つ名を“神鳴の剣姫”―――――その華麗にして美しい剣技は、歴代の神鳴流剣士の中でも肩を並べる者が無く、その美しい顔立ちと相まって“剣姫”と呼ばれている。

―――――――――――が、彼女の近しい人間は彼女の事をこう呼ぶ、

“神鳴の剣鬼”――――――と。

その理由を、俺と刹那との会話で想像してみよう。








出発前、麻帆良学園―――――――――――

「よお、刹那」

「翔馬さん、数日仕事でここを離れるそうですね」

刹那は開口一番そう言ってきた。

「ん? 学園長に聞いたのか?」

「はい。本当なら私がついていきたいのですが…」

申し訳なさそうな刹那。まあ、彼女は本来木乃香ちゃんの護衛だ。学園内の仕事ならばともかく、外の仕事で離れる訳にはいかない。

「まあ、それは別にいいさ。…それより、あっちで俺が合流する神鳴流の人についてなにか知らないか?」

「? 神鳴流の剣士が一緒なんですか?」

「ああ。なんでも、相当な美人で腕が立つらしい」

「そうですか…思い当たる方は何人かいますが…」

「あと、何か二つ名とかがあったような…」

「―――――――――――ふ、二つ名を持った人…ですか…」

刹那の顔が引きつる。心あたりがあるのだろうか?

「ま、まさか、その人“神鳴の剣鬼”とか言わないでしょうね!?」

「あー、それだ。“神鳴の剣姫”!! …ん? 今、刹那の発音がおかしくなかったか?」

今の発音だと“剣姫(けんき)”ではなく、“剣鬼(けんき)”って意味に聞こえたような…?

文章にしないと分かりにくいが、刹那の表情と声色でそう聞こえた。

「なんで、刹那…っておい!? 刹那!?」

その事について訪ねようとした俺の目の前で、刹那は―――――――――――

「ゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくだい」

部屋の隅でうずくまりながらそう呟く刹那。

「おしおきはいややぁ…鶴子姉さま、勘弁してぇ…ああ~!! 素子姉さまずるい~!! 一人で逃げないで~!?」

ガクガクブルブル震えながら泣く刹那。

―――――――――――どうやら、刹那のトラウマをクリティカルヒットしたらしい。

「つ、鶴子姉さま!? 何で崖の上につれてくるん!? 何か50メートルくらい…え? 訓練?…ま、まさかここから突き落としたりとかはしない―――――――――――や、やっぱり~~~!? い、いやや!! こんなトコから落ちたら死んでしまうやん!? って、鶴子姉さま何で剣を構えてるの!? た、助けて~~~!? このちゃ~ん!!!!!!」

それから数分トラウマってから、刹那は現世に戻ってきた。

「はっ! 私は何を…?」

―――――――――――どうやら、あまりの恐怖に先ほどの記憶を封印したらしい。

「あー、それでその鶴子って人のことなんだけど…」

聞くのが怖い気もしたが、聞かない訳にもいかん。

「ツルコサマハトテモオウツクシク、ソノケンギハマルデカミノヨウデス。ジンカクモスバラシイジンカクシャデス。マサニゲンダイニヨミガエッタメガミノヨウナカタデス」

いや、無表情で片言で言われても信じられんぞ?

「あー、刹那?」

「ツルコサマハトテモオウツクシク、ソノケンギハマルデカミノヨウデス。ジンカクモスバラシイジンカクシャデス。マサニゲンダイニヨミガエッタメガミノヨウナカタデス」

同じ事を繰り返す刹那。

そんな刹那の様子を見て、こう思った。

(ああ…鶴子さんってそんな人なんだ…)

まるで…つか、まるっきり洗脳された風な刹那の様子に、一抹の不安を抱える俺。

その後、何とか刹那を正気に戻して話を聞いた。

いわく―――――――――――

「鬼です。悪魔です。あの人に比べれば魔神なんて目じゃありません」

とか―――――――――――

「サドです。もうよろこんで人を修行という名の拷問にかけてくれやがりました。一回さすがに怒って素子姉さま―――鶴子ねえさまの妹さんです―――と闇討ちしましたが見事に返り討ちにあって、さらなる修行という拷問にかけられました。…その時の事は記憶にありません」

とか―――――――――――

「私が知る限りでは最高レベルの剣士で、一剣士としては尊敬していますが…人間としてはダメです。最悪です」

など、これから合う俺にとっては不安を与える発言が続いた。

そんな評価を妹弟子にされた人が、今俺の前にいる―――――――――――




「なら、俺から自己紹介しよう。名前はもう知っているらしいけど、改めて…俺は“源翔馬”麻帆良学園の高校生で16歳。そして―――――――――――“オルフェノク”、だ」

試すようにそう言う。

神鳴流は“魔”を断つ技を振るう剣士―――――――――――“オルフェノク”を敵視しているのかもしれない。

だが、そんな俺の考えにかまわず―――――――――――

「そうどすか。ならウチも改めて――――神鳴流の“青山鶴子”どす。翔馬はん、よろしゅう。鶴子でかまいませんえ?」

あっさりスルーされた。

「―――――――――――」

言葉を失う俺。学園長が組ませた以上、俺がオルフェノクと知っていきなり襲い掛かるような人ではないとは思っていたが、これは予想外だ。

そんな俺の様子に気付いたように―――――――――――

「くす。そんなにウチが翔馬はんがオルフェノクと知っても驚かないのか、不思議どすか?」

「ああ…もしかして学園長から聞いていたのか?」

「確かに聞いてはいましたが、例え聞いていなくてもウチの態度は変わりまへん―――――――――――オルフェノクも人でしょう? 肝心なのは中身…心だと思うんや」

そんな事を言う彼女。

「それに…一般人には無い能力を持つというのなら、ウチら神鳴流も魔法使いも変わりはないでしょう?」

そう言って笑う彼女は、その二つ名に相応しい美しさだった。




「まあ、それよりウチの自己紹介を―――――――――――」

一瞬彼女に見惚れた俺にかまわず、自己紹介を続ける。

「さっきも言ったように、“青山鶴子”どす。年齢は永遠のじゅ~ななさいどすえ♪」

ザ・ワー○ド!!! その時、時が止まったっっっ!!!!

D,DI○!? DI○がいるのか!?

あまり伏字の意味が無いような気がするが、それほど俺は動揺していた。

「ぶっちゃけ、ありえな~い!!」

こんな事を口走ってしまうくらいには。

アンタ、どこの杉○碧だ。オイ。

そんな俺のツッコミに、

「うう…そこまで言わんでも…ちょっとしたお茶目やないの…」

座り込んでいじける鶴子さん。―――――――――――いかん。少し萌えた。

「コホン!! まあ、とにかく―――――――――――」

気を取り直して仕切りなおす鶴子さん。

「ここで起こっている事件―――――――――――神隠しについて説明しまひょ―――――――――――」

そう言って、鶴子さんはここで起きている事件について語り始めた。

事件は二ヶ月前から発生し、今まで十数人の行方不明者が出ている事。

行方不明の人達は、遺体などがまったく見つかっておらず、服などの遺留品と“灰”だけが見つかっているという事。

そして――――――二週間ほど前に学園長が派遣した魔法使いと神鳴流の剣士が3日前に消息を絶った事。そして、2日前に派遣されていた魔法使いが転移魔法で帰ってきた事――そして、たった一言…『ミ、ミズチ…』と言い残して“灰化”したこと。

「ミズチ?」

死んだ魔法使いのダイイングメッセージを聞いた俺は、鶴子さんに質問する。

確か、ミズチとは…

「ええ…これがなにを指すのか…水魔である蛟(ミズチ)を指すのか、それとも―――――――――――」

「そんな能力を持ったオルフェノクだと?」

「はい。―――――ウチはオルフェノク自体が悪いとは思っていまへん。実際、ウチの知り合いにもオルフェノクになってしまった剣士などがおりますから。が、その力におぼれて殺人を繰り返すようならば―――――――――――」

そう、そんな奴を放ってはおけない…!!

「確かに…別に正義の味方ぶる訳じゃないけど――――」

そこで、一旦言葉を切り、

「そういった奴らから何も知らない人達を守る為に、俺みたいな奴が必要なんだよなぁ…」

そう俺は呟いた。




そして、俺たちは犯人探しをするために次の日から捜索を開始するのだが…。

その夜、旅館の一室にて――――

「しょうまはん、聞いてますのん? ウチのはなし」

タチの悪い酔っ払いの相手をするハメになってしまった…。

「うう、しょうまはん、実は妹の素子はんが今度婚約しまして…」

「はあ、それはおめでとうございます」

生返事をする俺。素子って刹那の話に出てたこの人の妹か。

「確かに素子はんの婚約はめでたい事どす。けど…けど! ウチがまだ独身なのに妹が先に婚約するなんて…!!」

ガシャン!!

手に持ったグラスをテーブルに叩きつけるように置く。

「しかも、相手の浦島はんは頼りへんところもあるけどいい人そうどしたし…」

「ならいいじゃないですか」

妹の婚約者がいい人なら喜べよ。

「それはいいんどす。けど…けど! 妹が姉より先に結婚するなんておかしいどす!」

「いや…それは…」

「姉より先に妹が結婚するなんて…ふふふ、これはもう結婚式に乱入して邪魔するしか!!」

にやりと笑いながら、妹の結婚を邪魔しようとする鶴子さん。

――――目がマジだよオイ。

「いや、さすがにそれは――――」

顔を引きつらせながらも止める俺。素子さんとか浦島さんに面識はないが、さすがに人の幸せを邪魔するのは止めなければ。

「でも、でも!! ウチ、このままじゃいかず後家に…!! そんなのいややぁぁぁぁ!!!!!!!!」

絶叫する鶴子さん。机に泣き崩れる。

「いや、鶴子さんならきっといい人がすぐに見つかりますって!! 鶴子さん美人だし!!」

姉さんの教育の成果か、こんな時は女性は慰めるように叩き込まれている。

「――――ほんまに?」

涙で目を潤ませながら言う鶴子さん。――――少し萌えた。

「ええ!! 大丈夫ですよ!! 鶴子さん!! なんなら俺が貰いたいくらいですよ!! はははははは!!!」

俺はいつものごとく、軽口を叩きながら言い放つ。――――だが、今回に限ってはそんな事を言うべきではなかった。

ニヤリ

一瞬、鶴子さんの口元がそんな風にゆがんだように見えた。

「なら、翔馬はんがウチを貰ってください♪」

――――いかん、幻聴が。

「あー、何か今変な言葉が聞こえたような気がするんですが…」

どうか俺の聞き間違えであってほしい…!!!

「だから、翔馬はんがウチと結婚してくれまへんか?」

その言葉をハッキリと聞いた瞬間、俺の頭の中にどこかで聞いたような警告が。

ニゲロニゲロドアヲアケロ~♪

次の瞬間、俺はものごっついスピードで部屋から逃げ出そうとした。

だが――――

ガシィィィッッ!!!

一瞬で俺の前に回りこんでいた鶴子さんが俺を捕まえた。

「ちょっ!! 離してくださいよ!?」

「翔馬はんがウンというまで離しまへんで~」

「いや、俺今、16歳ですから!!」

結婚できる年齢じゃねーよ。

「なら、素子はん達と同じ婚約と言う事で」

「まあ、それなら――――はっ!? 違うって!!」

あやうく、OKするところだった。

その後、鶴子さんを宥めすかして何とか誤魔化した。

――――結果としては、何とか逃げられたとだけ報告しよう。






SIDE:鶴子

うー、昨日はちょっと飲みすぎましたなぁ…

次の日から、翔馬はんと旅館を出て捜査を始めた。

昨日あんな事を言ってしまうとは…いきなり今日始めて会った男性に結婚を迫るなんて…。酔った勢いとはいえ…お酒は怖いどすなぁ。――――まあ、確信犯だったのどすが。

“源翔馬”――――今回、近衛近右衛門――――学園長から依頼された事は、この辺りで起こっているオルフェノクが起こしているといわれている事件の解決。そして、源翔馬の実力の調査。

こうゆう場合、調査するのはその人物の性格などが主である。特に、突然力を手に入れた彼のようなタイプは。

だが、依頼主――――近衛近右衛門は、

『ん? 翔馬の性格調査? ――――確かに、翔馬は突然力―それも並外れて強い―を手に入れたが、アヤツは力に溺れて一般人に害を為すようなことはせぬよ。まだ、5年程の付き合いじゃが、それくらいにはワシは翔馬を信頼しておる』

との事だ。

だから、あのぬらりひょん――――ゲフンゲフン!! 学園長に信用されている彼に興味を持った。

そして、まあ色々あって夜に素子はんの婚約の話をした。

正直、ウチの後を付いて来ていた素子はんが婚約するなんて少し寂しい面もあったが、それ以上に嬉しかった。

お相手の浦島はんも、人のよさそうなお人どしたから余計に。

――――だが、その後、恐ろしい事に気付いた。

それは――――ウチがいかず後家になってしまうという事に!!

正直、今までこれはという人とは出会う事は無かった。

まあ、こんな仕事を続けている以上出会いも限られてくる。

同じ神鳴流の人間には恐れ、敬われているし、他の組織の人間からは“剣鬼”と呼ばれ恐れられている。

そんなウチが、まともな恋愛ができるでしょうか? いや、できない(反語表現)。

――――まあ、言い寄ってくる人間も居た事はいたのだが…そろいも揃って弱すぎた。

いや、身体能力ではなく、心が。

せめて、浦島はんくらいのやさしさというか…そんなモノを持った人がいれば良かったのだが。

そして、今翔馬はんと出会った。

学園長から聞かされていたデータでは、かなり変な性格とは聞いていたが、話してみれば結構話が合う。

難点を言えば、年が離れている事だという事だけ。

え? オルフェノクなのは良いのか?

ほほほほほ、別に構いはしませんわ。

愛があれば全ては無問題(モウマンタイ)どす。

そして、酔ったフリをして結婚を迫ってみたら…。

結構慌ててくれました。

ほほほほ、可愛いところもありますなぁ。

まあ、ウチの結婚相手の第1候補として考えときますか。――――他に候補はいないんどすが。


話は戻って、それから数日の調査の末に、犯人が潜伏しているとおぼしき湖に到着した。


「この辺どすか?」

ウチが翔馬はんのバイクから降りる。

ここまで、翔馬はんのバイクの後ろに乗せてもらった。

「多分…」

翔馬はんもバイクから降りる。

「この湖を中心に事件が起こっている」

「そうどすか…なら、この辺を調査――――」

その時、ウチは何かがこちらを伺う視線を感じた。――――それも複数の。

「? 鶴子さん?」

翔馬はんはまだ気付かない。――――まあ、話を聞く限りまだ一ヶ月くらいの素人同然らしいから仕方無いんどすが。

「翔馬はん…犯人を捜す必要は無いみたいどす」

ウチは刀――――素子に婚約祝いに渡した愛刀“止水”の代わりの刀、“蒼雷”を抜き放つ。

「――――!!」

翔馬はんも敵が来たと感づいたようで、戦う準備を始める。

バイクに付けられたツールボックスから、黒と金で意匠されたベルトと剣――――そして携帯電話を準備する。

――――あれが、変身道具なんやろか?

学園長から、彼はオルフェノクとしての力だけではなく、“仮面ライダー”としての力を持つとは聞いてはいたんやけど…。



“仮面ライダー”

それはもちろんかの有名な特撮番組なのだが――――実は都市伝説の一つでもある。

それは、“仮面をかぶった戦士が、闇に潜む怪人を倒している――――”というモノだ。

その伝説は根強く残り、実は特撮のライダーは実在の話を元にしているのではないか――――?

などという話が残っているくらいである。




そして、ウチが気配を感じたモノが現れる。湖の周りの森の中、そして湖の中からも現れたのは、灰色を基調としたヘビを模した怪人――――オルフェノクである。

だが――――

「同じオルフェノク体がこんなに!?」

普通、同じ個体のオルフェノクが居ることはありえへん。

しかし――――

敵ならば…倒すのみどす。

「翔馬はん!! 詮索は後!! やりますえ!!」

ウチは、蒼雷を構えて翔馬はんに叫ぶ。ウチの見込んだお人なら――――

「――――はい!!」

動揺を消して、敵を睨みつける翔馬はん。――――それでこそ、や。

内心、翔馬はんの点数を上げながら気を練り上げる。

そして――――

「“神鳴流 奥義――――斬魔剣”!!!!!」

ウチの一撃が迫りくるオルフェノクの群れに放たれる。

そして、その一撃で直撃した3体のオルフェノクが灰化して崩れ落ちた。

――――?

いくらなんでも脆すぎる。斬魔剣の一撃程度で…?

そんな事を考えたウチの耳に、翔馬はんの声が――――

「“変身”!!!!」

振り返ったウチの目に映ったのは、仮面をかぶった黒騎士――――“仮面ライダー”がそこには居た。



それから、翔馬はんは腰の剣を抜き放ちながらオルフェノクの群れに突っ込む。

近くにいた、一匹を袈裟がけに切る。

すると、そのオルフェノクはすぐさま灰化した。

「――――? 鶴子さん!! こいつら、普通のオルフェノクじゃない!!」

確かに、普通のオルフェノクでは考えられない弱さどすな。

そんな事を考えながら戦う。

ウチは神鳴流の技を使って、翔馬はんはその手に持った剣とパンチで戦う。

翔馬はんの戦い方を見て、ウチはその戦いかたの問題点に気付いた。

――――無駄が多い。

動き自体は、戦い始めて一ヶ月とは思えないレベルにある。――――まあ、まだ一般人クラスだが。

肝心なのは――――

翔馬はんの全身からは、強力な気に似た力が駆け巡っている。

それも信じられないほどの強大な力が。

しかし、その力にまだ振り回されている。

その強力な力を使いこなせていない。

確かに、彼の力は強力どすが、このままではいずれ暴走するかさらなる強敵に敗北してしまう。

折角、気に入った旦那候補を見つけたのに、死なれてはたまらない。

そこでウチは、少しアドバイスをしてみる事にした。

「翔馬はん!! 攻撃する時にイメージするんや!!」

「ええ!? そんな急に言われても…!!」

「そや!! ウチみたいに技の名前を叫びながら攻撃するんや!! 翔馬はんが、仮面ライダーなら、ライダーパンチとか言いながら攻撃すればイメージし易いんやないか!?」

「――――わかりました!! やってみます!!」

そして、翔馬はんは近くに居たオルフェノクに向かって――――

「“ライダーパンチ”!!!!」

そう叫んだ翔馬はんが拳を振り上げる。

次の瞬間、気を感知するウチの感覚が、翔馬はんの右拳にもの凄いエネルギーが集まるのを感じた。

――――!? な、なんて凄まじいエネルギーや…!!

その拳をくらったオルフェノクは、先ほどまでの様に打ち倒されるのではなく、湖の方へ数十メートルほど吹っ飛んでいった。

「コイツは…!!」

信じられないように自分の拳を見つめる翔馬はん。

それからは、コツを掴んだらしい翔馬はんが、あっというまに全てのオルフェノクを倒してしまった。




SIDE:翔馬

鶴子さんの助言で、コツを掴んだ俺はすぐさまオルフェノクに試してみた。


「凄まじいな…」

オーガの力を再認識した俺は、この力に溺れないように自分を戒めながら鶴子さんの下に戻った。

その時――――

「!?」

嫌な予感が俺を包む。

次の瞬間、湖の方から一筋の弾丸のようなものがこちらに撃ち出された。

狙いは――――鶴子さん!!

俺は、すぐさま鶴子さんを庇おうと向かうがその速度は遅い。

間に合わない――――!?

鶴子さんもそれを防御しようと気の障壁を張ろうとするが――――

不意打ちに近い、弾丸の速度で迫り来るモノを避けられない――――!!!

その瞬間、俺の頭の中は鶴子さんを救う事だけを考えていた。

もっと速く――――!!

その意志にオーガが応えてくれた。

足元にフォトンブラッドが集中し、莫大な運動エネルギーを開放した。

そして――――

バシュッッッ!!

俺は、鶴子さんの前でその物体――――水でできた弾丸を腕で弾いていた、



「まさか…瞬動術を!?」

後で鶴子さんが驚きの声を上げた。

瞬動術――――?

今の縮地もどきみたいな奴の事だろうか?

――――いや、今はそれどころじゃない。

湖の方――――今しがた鶴子さんを狙った水で出来た弾丸を撃ちだした方に視線を向ける。

すると――――

湖の中から、先ほどと同じオルフェノク――――いや、先ほどの奴よりも若干違う――――例えれば、シャア○クと量産型ザ○くらいの。

――――が、現れた。


そいつは、ちょうど岸ギリギリのところで止まる。その姿は、先ほどの奴らのようにヘビを模した姿をしている。

――――コイツが“ミズチ”か

ダイイングメッセージはコイツの事を指していたのか…。

奴からは目を離さずに構える。何時さっきのような攻撃がくるかわからないからな。

そして、ソイツの影から一人の男の姿が現れる。

『ちっ…外したか』

“幽鬼体”――――オルフェノク体が話すときに現れる人間の時の姿をした影。

その幽鬼体の男がコッチに向かって言い放つ。

『また、俺の邪魔をする奴らがきたか…へっ、返り討ちにしてやるよ!!』

「お前が、この辺りで起こっている事件の犯人か。――――何で、こんな事をしている?」

『ああ? 俺は選ばれた存在なんだよ!! その俺が下等な奴らを殺して、何が悪い!? はははははは!!!!!!』

――――なるほど、力を急に手に入れて暴走したクチか…。

『それに、俺の分身を作る糧となったんだ。光栄に思ってもらわねぇとなぁ!!』

そうか…コイツの固有能力は自分の分身を生み出すこと…さっきの奴はその分身体というわけか。

そして――――殺された人たちは、ただ殺されたんじゃなくそれを生み出すためのエサにされたってことかよ…!!

なら――――遠慮はいらねぇな!!!!

「ふざけんな!! テメエはただの人殺しだ!!」

ただ、オルフェノクの力をコントロールできずに暴走した奴ならば、何とか説得しようと思っていたが、こんな奴なら遠慮はしない!!!

「あの世で、お前が殺した人達に謝ってこい!!!!」

そう言って、俺はソイツに向かってオーガストランザーを構えて走り出した。

『ちっ!!』

奴の幽鬼体が消え、戦闘態勢をとる。

俺が奴に向かって走り出すその後から――――

「“神鳴流 奥義――――斬空閃”!!!」

鶴子さんが、援護の攻撃を放った。

真空刃が奴――――ミズチオルフェノクに向かう。

ミズチオルフェノクは、何とか真空刃をかわす。

そこに、俺が突っ込んでいくが――――

バシュバシュッッ!!!

その手から放たれた水の弾丸が、俺に向かって放たれた。

「チッ…!!」

動きを止めて、オーガストランザーを盾にしてそれを防ぐ。

水の弾丸――――おそらくそれは、体内の水を体の内部で高圧縮して撃ちだすモノ。

まさに水鉄砲だが、舐めてはいけない。高圧縮された水は、時には厚い鉄板をも貫くのだから。

奴は、絶え間なく水を指から撃ち出してくる。

それを防ぎながら、この状況の打開策を考える。

鶴子さんの援護は期待できない。

この弾丸の雨では、流れ弾で怪我をしかねない。

だから俺は、鶴子さんに下がるように言った。

「鶴子さん!! 下がって!!」

「――――わかりましたわ」

そう言って、鶴子さんは後ろに下がる。


さて、どうするか…幸いにもオーガの装甲はあの程度では傷ひとつつけられなかった。

いくら俺に当てても、傷一つ付かないのに奴が慌てる気配を感じる。

――――だが、奴が俺を恐れて逃げる可能性がある。

あんなタイプ程、自分より強いモノを敵にした時に臆病なものだ。

ここでアイツを逃がして、犠牲者を増やす訳にはいかない…!!

アイツは――――ここで倒す!!

そう決心した俺は、渾身の力で唯一の武器であるオーガストランザーを投げつける。

ゴウッッ!!!

もの凄い音をたててミズチに迫る剣。

だが、ミズチはギリギリのところでそれをかわした。

しかし、今の攻撃は本命じゃない――――!!

俺はミズチの動きが一瞬、止まった時、奴に向かって突っ込んだ。

――――さっきの感覚を思い出せ――――!!!!!!

バシュッッ!!!

先ほど鶴子さんを庇った時のように俺は一瞬で10メートル程の距離を詰め、奴に向かってキックをくらわせた!!

ガシッッ!!

しかし、そのキックはミズチの両腕で防がれてしまった。

奴がニヤリと笑う声が聞こえたような気がした。

このキックが本命だと思ったのだろうが――――甘い!!

俺はそのままの体勢で、ベルトに装着されたオーガフォンを開き、ENTERキーを押す!!

すると――――

≪Exceed-charge≫

そんな機械音声が鳴り響き、瞬時に奴に押し当てている足に向かって黄金のフォトンブラッドのエネルギーが伝わっていく。

そして――――

バシュッッッッ!!!!!!!

俺の足から発生した黄金のフォトンブラッドで構成された、円錐状のエネルギーが奴を10メートル程吹き飛ばし、その動きを完全に止めた。

それに向かって俺は走り出す。

そして、ジャンプ!!

――――イメージしろ!! あの“仮面ライダー”のような必殺のキックを…!!

俺は空中で一回転して、黄金の円錐――――ミズチオルフェノクに向かって渾身の力を籠めたキック――――!!!!!!

「“ゼロ――――スマァァァッッッシュッッッ”!!!!!!!!」

俺がそう叫びながら黄金の円錐に接触した瞬間――――ソレはドリルの様に回転して、奴を抉る!!

『――――――――!?』

奴――――ミズチオルフェノクは、断末魔を上げることすら出来ない!!

そして――――

奴の後ろに、俺が現れた瞬間、奴の体の空間に俺――――オーガを示す記号であるΩ(オメガ)が浮かび上がった。

そして、ミズチオルフェノクは青い炎を体中から吹き上げながら灰化していった…。




コレが、この周辺を恐怖に陥れたミズチオルフェノクの最期だった…。


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MAGISTER MAGI&MASK’D RIDER 000 EPISODE.7「子供」

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