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第7話「闇の福音と魔術使い(後編)」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:04/22-02:32 No.359

第7話「闇の福音と魔術使い(後編)」



エヴァが呪文を唱え始める。

「“リク・ラク ラ・ラック ライラック”!!」

始動キーを唱え、

「“氷の精霊17頭 集い来りて 敵を切り裂け 魔法の射手 連弾・氷の17矢”!!」

魔法を放つ。

「―――ちっ…!」

舌打ちをしつつ回避する士郎。その脇を氷の矢が通り過ぎる。その隙を見逃さずに、茶々丸の攻撃が。

シュッシュッ!!!

左右の拳から鋭いパンチが放たれる。

それをフランベルジュで受け止め、防ぐ。

さすがに剣で切り裂くわけにはいかないので、剣の腹で茶々丸を叩こうとする――

が、それを後ろに飛ぶことでかわす茶々丸。

(―――ん?)

いきなり距離をとった茶々丸に疑問が浮かぶ。

(まだ追撃があると思ったが―――)

そう思った士郎の背後から何かが迫る気配が―――

「―――――っ!?」

危険を感じ、振り向きざまにフランベルジュから炎の壁を生み出す。

バシュッ!!

その後ろから迫ってきたモノは、さっきかわしたはずの氷の矢だった。

「―――追尾式の魔法か!!」

そう呟く士郎。なんとか氷の矢は防いだが、無理な使用にフランベルジュが砕けた。


「ふん、よく避けたな。そこらの魔法使いなら今ので決まっていたんだがな…ここからは本気でやってやろう…」

顔を微笑から崩さずにさらに殺気を込めるエヴァ。

「あー、遠慮したいんですが…」

顔を引きつらせながら断ろうとする士郎。彼女達二人の連携は厄介だ。彼女達を傷つけずに戦いを終わらせられるとは、士郎には思えなかった。

「遠慮するな。たっぷりと受け取れ」

いつのまにかエヴァの微笑は、スバラシイ笑顔になっていた。そう、士郎にとってはよく目の当たりにした笑顔――“あくま”の笑顔に。

(うあ。この子も実は“あくま”かよ…)

その表情にかつての友人――“遠坂凛”のことを思い出し、苦い表情になる士郎。

(せっかく鶴子さんから離れられたのに…こんな所にもいやがった…)

同時に京都にいる間、世話になった女性――“青山鶴子”の事も思い出し、落ち込む。もちろん彼女も“あくま”である。

(何で俺の周りの女性は“あくま”が多いんだろうなぁ…)

そんな自分の不幸を実感している士郎に、

「何を落ち込んでいるのかは知らんが、ボケッとしてると大怪我をするぞ?」

そう言ったエヴァが茶々丸と共に士郎の方へ突っ込んでくる。

茶々丸が先行して攻撃。

士郎はそれを再び投影した干将莫耶で受け止める。

茶々丸の拳と干将莫耶の刃が交錯し、金属音を立てる。

幾度をもの交錯が続くが、士郎は茶々丸と戦いながらもエヴァから注意は逸らさない。少しでも注意を逸らすとすぐさま魔法が飛んでくるだろう。

(ち…茶々丸と戦いながらでもこちらから意識を逸らさないとはな…あの若さでこの力量。いったいどんな経験をすれば修得することができる?)

士郎のあまりにも高い戦闘能力に疑問を持つエヴァ。剣に、狙撃に、格闘に…と、何かしらに特化した者ならこの年齢でも多少いるが、士郎の戦闘能力は平均的にかなり高いレベルにある。戦略眼、剣技、危険回避、反射神経…それに加えてあの剣を出す能力。あきらかに実戦なれしている。

そんなエヴァの疑問に、士郎ならこう答えるだろう。…生きるために必要だった、と。以前士郎がいた世界の衛宮家では、あかいあくまがガンドを撃ち、後輩が黒くなって影を使い、虎に竹刀でぶちのめされ、騎士王にエクスカリバーで吹っ飛ばされる。最近では元封印指定狩りに殴られ、毒舌腹黒シスターに聖骸布で縛られる…そんな生活でタイガー道場逝きを防ぐには戦闘能力を高めるしかなかったのだ。
そう、能力を高める事でしか。アングラーとなった紅い弓兵に投影勝負を仕掛け(剣の丘の剣が増えたが、同時に釣竿も刺さってしまった)、槍兵や暗殺者に稽古をしてもらったり、若奥様な魔術師には魔術や魔力の使い方などを習ったり。…まあ、対価として酒や食事(特に槍兵はマーボー以外はとても喜んだ)、若奥様には衛宮士郎の家事技術の指導などを提供したが。
そして、さらに能力を高めざるを得なかった理由が、“遠野志貴”とその関係者との出会いである。彼らと出会ったことで、さらに厄介事に巻き込まれることになった。志貴争奪戦に巻き込まれたり、志貴に会いに来た青の魔法使いに志貴共々『特訓よ~』とかいわれて破壊魔術を連発で撃ち込まれたり、アルクェイドに会いに来た黒の吸血姫に血を狙われたり、それについて来た白騎士にイロイロ狙われるのを防いだり…この話だけで長編が書けそうなくらい色々あった。
悲しいことに、士郎の戦闘能力はそんな悲劇(喜劇?)によって培われたモノである。



話は元に戻る―――――

数分の間、拳と剣の応酬が続いたその後、茶々丸と士郎が離れて距離を取る。士郎の動きが下がった時にほんの少しだが止まる。

エヴァはその隙を見逃さずに魔法を唱える。

「“リク・ラク ラ・ラック ライラック”!!」

始動キーを唱えながら士郎との距離をつめる。

「“氷爆”!!」

エヴァの手から魔法が放たれる。

空気中の水分が集まり、瞬時に大量の氷が発生してそれが士郎の間近で炸裂する。

ドッッッ!!!1

士郎を凍気と爆風が襲う。

「くっっ―――!!」

その爆風に逆らわずに吹き飛ばされる。

地面を転がりながらエヴァたちと距離をとる。

しかし、続けて―――

「“来れ氷精 大気に満ちよ 白夜の国の 凍土と氷河を こおる大地”!!!!」

エヴァの魔法が迫る。

ガキガキガキュッッッ!!!!

大地から鋭い氷柱が何本も飛び出し、士郎に襲いかかる。

絶妙のタイミングで放たれたそれは回避できない―――!!

―――が

「“熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”!!」

膝立ちの体勢の士郎が、七枚の花弁を持つ盾を投影する。

氷柱と花弁がぶつかり合い―――三枚の花弁が砕けたが、全ての氷柱を防いだ。



「…本気で何なんだ? アイツは?」

さすがに士郎のデタラメさにあきれ返るエヴァ。封印状態の時ならともかく、今は満月。魔力も全盛期の5割程度の力しかないが、今の魔法は並の魔法使いが受ければよくて大怪我。悪ければ死ぬほどの力を込めていた。それをどこからともなく出した盾で完全に防がれたのだ。あきれるしかない。

「データに該当アーティファクトありません。未知の武装です」

士郎のロー・アイアスを分析した結果をエヴァに報告する茶々丸。

「ただ、空間転送が行われた時に発生する空間の歪みも検出されません。先程マスターが予測した空間転送による召喚では無いと判断します」

無表情に主に報告する茶々丸。

「なに? ならばアレは何なんだ…?」

茶々丸の報告にまたもや疑問がよぎるエヴァ。自分の知らない出来事に好奇心が否応にも増す。

「マスター。衛宮先生の腕試しにはこの辺で良いのでは? 十分学園の警備を任せられるレベルと判断します」

そんな茶々丸の言葉に、

「まあ、確かに十分だろうが…最後にコレをどうするか試してみるか…」

そう言ってエヴァは20メートルほど離れた士郎に、

「コレを貴様が凌ぐことが出来たら、終わりだ」

そう言って呪文を唱え始める。

「“リク・ラク ラ・ラック ライラック”!!」

魔力が収束され、エヴァに集う。さっきからの魔法とは違う大技を使うようだ。

士郎もそんなエヴァの様子に、気を引き締める。

両手の双剣を投げ捨て、

「――――投影開始(トレースオン)」

手に黒い洋弓を投影し、

「投影重装(トレースフラクタル)」

もう片方に捻れた剣を投影する。

一方エヴァの魔法も完成した。

「“来れ氷精 闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪―――”!!!!」

魔法を放とうとするエヴァの耳に、その言葉が聞こえた―――

「―――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う。)」

その言葉を耳にした瞬間、言いようの無い恐怖が背筋を凍らせ、加減するつもりだった魔法を手加減抜きで放つ。

(アレを撃たせてはいけない―――――!!!)

直感的にそう悟ったエヴァは全力で魔力を開放する。

「“闇の吹雪”―――――!!!!!!!!!」

「“偽・螺旋剣(カラドボルク)”――――!!!!!!!」

エヴァからは闇を纏った猛吹雪が。

士郎からは螺旋を描く剣でできた矢が放たれた。

両者はほぼ中央でぶつかり合い、拮抗する。

―――が、その拮抗は数秒のモノであった。

バシュッッッッ!!!!!

カラドボルクが吹雪を貫き、エヴァに迫る。

「――――ッッ!!」

全力を振り絞ったエヴァにはそれを避ける術は無かった。

「マスター!!!!」

茶々丸がエヴァを助けようと走るが、間に合わない。

その矢は確実にエヴァを殺せる威力を持っている。そんな死が迫り来る中エヴァは、

(ち…この私が…ここで死ぬのか…?)

一瞬、自らの死を幻視するが―――

(…この程度で私が死ぬかっ!! せっかく奴の息子が来たんだ、絶対この忌々しい呪いから自由になってやる――――!!!!)

自分を奮起させ、迫る矢を睨みつける。

しかし、無常にも矢はエヴァの身体を貫いて―――

「―――――“投影解除(トレースオフ)”」

はいなかった。

寸前で士郎は矢を消し、それを魔力に返す。

「―――ふう」

ため息をつきながら士郎はエヴァの様子を見る。

どうやら間に合ったようだ。ギリギリのタイミングだったが。

「助かった…か?」

まだ自分が助かったことが信じられない様子のエヴァ。それほどまでにあの矢は死の気配を纏っていた。

「マスター!! 大丈夫ですか!?」

心配する自らの従者に、

「大丈夫だ、茶々丸」

そう返事をする。

そこに近づいてきた士郎が、

「エヴァンジェリンさん、怪我はないかい?」

と訪ねた。

「ああ、怪我はない。そっちが止めてくれたおかげでな」

「そうか…よかったよ」

一安心する士郎。そこに、

「いやいや、衛宮君。まさか満月時のエヴァンジェリンに勝ってしまうとはのう…」

驚いた様子の学園長の声が。

「しかし、これほどの腕なら仕事を安心して任せられるのう…うむ、合格じゃよ」

「そうですか、ありがとうございます」

そう言って頭を下げる士郎。

「いやいや…君ほどの腕の人間が来てくれて嬉しい限りじゃよ」

フォッフォッフォッフォッ、と笑う学園長。

そこに、タカミチの声が。

「ところで、学園著。今夜の衛宮君の泊まるところはどうするんです?」

「ふむ…実はエヴァンジェリンのところに泊めてもらおうと思ったんじゃが…」

そう言ってエヴァを見る学園長。

「…ふん、まあ、一日くらいは構わん。そいつに色々聞きたいこともあるしな」

そう言うエヴァ。士郎自身や、士郎が出したアーティファクトに興味が湧いたのか快諾するエヴァ。

「そうか、なら――「ちょ、ちょっと待ってください!!!」―――どうしたんじゃね? 衛宮君?」

学園長の言葉を遮る士郎。

「いや、いくらなんでもそりゃマズイでしょ!? 女の子、しかも生徒の家に泊まるわけにはいきませんって!!!」

「しかし、今からではホテルもないしのう…」

そう返す学園長に、

「あー、なら今日は野宿でも―――――」

そう告げようとした士郎にエヴァが、

「私が構わんといってるんだから、いいだろう!?」

「いや、しかし女の子の――――」

なおも断ろうとする士郎に焦れたエヴァは茶々丸に命令する。

「ちっ! 面倒だ。茶々丸!!」

「はい、マスター。衛宮先生、すみません」

そう言った茶々丸の手にはハンマーが――

ドゲシッッッ!!!!

鈍い音を立てて士郎の頭にヒット。

「おぷすっっ!?」

変な悲鳴を上げながら倒れる士郎。その倒れた身体は微妙に痙攣を起こしている。どうやら気絶したらしい。

「ふん…手間をかけさせおって」

そう呟いたエヴァは、

「では、コイツは連れて行くぞ」

そう学園長に告げ、家に戻っていく。

「う、うむ」

突然のことに、若干ビビリながら見送る学園長。

茶々丸は、学園長とタカミチに頭を下げて、士郎を背負いながら主に続く。

そしてその姿は、闇に消えていった。



「いやいや、まさかここまでとはのう…」

広場に残った二人は先程の光景を思い出しながら話し合う。

「はい、衛宮君はかなり強いですよ。完全ではないとはいえ、エヴァンジェリンの魔法に打ち勝つ攻撃ができるんですから。それに、接近戦にも隙がありません」

タカミチの分析に学園長は、

「ふむ…さすがは木乃香が惚れとることだけはあるのう」

「確かに…まあ、少し甘いところもあるかもしれませんが…」

「まあ、そこは彼の優しさなんじゃろう。…コレは本気で木乃香の婿に考えても良いかもしれんのぅ」

そう呟く学園長に、

「良いんですか? どうやら桜咲君も彼を好きみたいですが?」

「フォッフォッフォッフォッ、そこが面白いんじゃ。それにワシの見たところ、彼は女難の相が出ておる。それもかなり酷いのがのぅ。当分、退屈せずにすみそうじゃよ~」

かなりヒドイ事を言う学園長。どうやらこれから士郎で遊ぶ気らしい。かなり楽しそうだ。

「が、学園長…?」

そんな学園長の様子にひくタカミチ。

そして、これから士郎に降りかかるであろう騒動と、それに巻き込まれるであろうネギのことを思ってため息をつくタカミチ。

「衛宮君、そしてネギ君。無力な僕を許してくれ…」

そう呟くタカミチ。学園長を止める気は無さそうだ。

それを余所に、学園長のバ○タン星人のような笑い声が辺りに響き渡っていった。

第7話了

士郎とネギの麻帆良騒動記 第8話「家政夫と料理」

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