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第10話「士郎と女子寮の少女たち」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:04/27-22:18 No.410

第10話「士郎と女子寮の少女たち」

次の日、エヴァンジェリンの家を出た士郎は、学園長の元に出向いた。

「学園長、衛宮士郎です」

そうノックする士郎に、中から学園長の声が。

「おお、衛宮君、まっとったぞい」

その言葉に入室する士郎。

「うむ。昨日は疲れたじゃろう? こっちにきてそうそうエヴァンジェリンと戦ったんじゃからのう」

フォッフォッフォッフォッと笑う学園長に、

「いえ、エヴァの家にいった後のほうが疲れましたよ…」

そう苦笑する士郎。

「ほう? そうかね? …まあいい。今日からはこちらに住んで貰いたいんじゃがな?」

そう言った学園長は一枚の紙を士郎に渡す。

「そうですか。わかりました」

そう言ってその紙を見た士郎は――――

「ん?」

ゴシゴシと目をこする。

「んん?」

再び目をこする。

「すみません、学園長。急に幻覚が」

そう言って目元を揉みながら上を向く士郎。

その紙には――――

『衛宮士郎を女子寮管理人に任命する。 近衛近右衛門』

と書かれていた。

「あー、女子寮の管理人とか書かれていますけど、何かの間違いですよね?」

そうであってほしいと思う士郎の願いも空しく、

「いや、それであっとるぞい?」

学園長の言葉が叩きのめした。

絶句する士郎。そして魂が数秒間逝っている間に話は進む。

「では、そーゆーことで」

そんな言葉を聞いた士郎が反論する。

「いや、ちょっと!? いくらなんでも男の俺が女子寮の管理人はマズイでしょ!?」

そう叫ぶ士郎。ただでさえ、あちらの世界では自宅が『女子寮・衛宮荘』とかご近所並びに学園の生徒に言われていた。そんな環境の女の中で男一人が住む苦労はそれはもう身にしみている。一歩間違えればデッドエンド。即タイガー道場逝きは当たり前な生活をしていた。――――まあ、あの家に住んでいた女性陣が特殊だったこともあるのだが。

「別にいいじゃろ。君の事は信用しとるし」

「いや、信用云々の問題じゃないでしょう!?」

そう言う士郎に、

「ふむ…どうしても嫌かね?」

その言葉に、

「ええ。いくらなんでもコレは無茶ですよ」

そう返すが――――

学園長はニヤリと口元を上げ、机の上に腕を乗せ口元で手を組む…どこぞの秘密機関の司令のようなポーズで、

「決定事項じゃ。君も今はワシの下で働く事になっとるんじゃから、従ってもらうぞい?」

とても楽しそうにそう言った。

それを聞いて、逃げられないと悟った士郎は学園長に向けてこう言い放った。

「――――了解した。地獄へ墜ちろ、学園長」








それから一週間。始めは戸惑いがあった女子寮の皆だったが、この状況に早く適応して士郎が管理人という生活にも慣れていた。

そしてとある日曜日の朝――――管理人室

「いや、お前ら。なんでここに居る?」

士郎の目の前には、自分の生徒たちがいた。

「それはもちろん、衛宮殿の朝ごはんを食べにきたナリよ?」

そう言ったのは長身の少女『長瀬楓』。

「そーそー。早く朝ごはんちょーだいー」

「あわわ。お、おねえちゃん!!」

そう言ったのは楓のルームメートの双子。『鳴滝風香』『鳴滝史迦』。風香がツインテールで、史迦がシニヨンだ。

士郎は数日前、この三人にご飯をご馳走した時からなんのかんの言われながらも、ご飯をたかられている。

「いや、長瀬さんや鳴滝姉妹はもう諦めてるけど…なんで君がここにいるのかな? 龍宮さん?」

そう言った士郎の視線の先には褐色の肌の少女――――『龍宮真名』がいた。

「ああ、衛宮先生。楓から誘われてね。それに以前刹那から衛宮先生の料理はとても美味いと聞いていたんで、興味があったんだ」

そう言った真名を苦笑しながら、

「まあ、少しくらい人数が増えるくらいはかまわんが…」

士郎はそう呟いた。

そこに新たな訪問者が。

ガチャ!!

ドアを開けて管理人室に入ってきたのは――――

「士郎さん。おはようございます」

「士郎さんーおはようさんー」

「士郎さん! おはようございます!」

「あー、おはよー」

桜咲刹那。近衛木乃香。ネギ・スプリングフィールド。神楽坂明日菜。の4人であった。

「…いや、なんでさ?」

なぜ彼女ら4人がこんな朝早くから来たのかわからない士郎。いや、本当はわかっているのだが、理解したくない。

「ウチ、久しぶりに士郎さんのご飯が食べたくなってな~。それでせっちゃんと明日菜とネギ君も誘ってきたんえ」

そう笑顔で言う木乃香。彼女に罪はない。

「まあ…もうこの人数だし、構わないけどね。…少し手伝ってもらえないかな? 木乃香ちゃん」

「うん、ええよ~。…でも、士郎さんと料理するの、ホントに久しぶりやな~。ウチの腕も結構上達したえ。お師匠様」

そう言って士郎の予備のエプロンをつける木乃香。士郎と京都の屋敷で暮らしていた時、木乃香に料理を教えていたのは士郎である。

「そうだな。…それじゃ、作ろうか? 近衛くん」

その士郎の言葉に、

「わかりましたえ~、衛宮チーフ!!」

敬礼して返す木乃香。



士郎と木乃香が料理を作っている間、他の人間は食卓でだべっていた。

「龍宮。なんでここに居る?」

「楓に誘われてね。それに以前お前が衛宮先生の料理は最高だ、とか言ってたじゃないか。それでそれが本当なのか確かめにね」

刹那の質問にそう答える真名。

一方、

「なんでアンタ達がここにいんのよ?」

明日菜が楓と双子にそう質問した。

「実は3日前の朝、散歩してたらちょうど衛宮殿と偶然合ったのでゴザルよ。それでせっかくだから…という事で朝ごはんをご馳走になったのでゴザルが…」

「衛宮せんせーのご飯、ほんっとうにおいしかった~。アレはそこいら辺のお店より美味しいよっ!!」

そう言う楓と風香に、

「そうですね~。特にあの炊き込みご飯は絶品でした~」

その味を思い出したのかうっとりする史迦。

「へえ…そんなに美味しいんだ。そりゃ楽しみねー」

その言葉に朝ごはんを期待する明日菜。

「え、えーっと。ホントにいいんでしょうか…?」

士郎に迷惑じゃないかと心配するネギ。

その言葉に明日菜が、

「ガキが変な遠慮するんじゃないわよ。ご馳走になっときなさい!!」

そう言った。この一週間のネギとの同居で少しは仲良くなったようだ。

そこに、

「そうだぞ、ネギ君。遠慮しなくていいよ。…でも、それは俺の台詞だ。神楽坂」

そう言いながら作った朝食を運んでくる士郎。




その後、士郎と木乃香の作った料理を貪り食うケダモノたち。その姿はかつて士郎が餌付けしていた虎と獅子を思い起こさせる。

「うむ、やっぱり美味しいでゴザルなぁ~」

「ホントだよね~」

「美味しいです~」

そういいながら食べる散歩部の三人。

「うん。これは美味い。刹那に聞いていたが、これほどとは…」

「そうだろう? 龍宮。…しかしさすがは士郎さんですね。私達があちらにいた時よりさらに腕を上げています」

そう言うのは麻帆良中学武道四天王の二人(残りは楓と古菲)。

「いや、ほんまに美味しいわ~。ウチも結構上手くなったと思ったんやけどな~。まだまだ師匠にはかなわんわ~」

「うっわ~…マジでコレ美味いわ。つか店に出せるんじゃない?」

「はい。僕、あまり和食って食べたこと無いんですけど、コレ美味しいです!」

そう言いながら食べる明日菜とネギに、

「まあ、士郎さんは京都の料亭から何軒か誘いが来るほどの料理人やからな~」

その木乃香の言葉に、場が一瞬静まりかえり、

「「「「「え…ええっっーーーーーーー!?」」」」」

次の瞬間には驚きの声が響き渡る。

「うーむ。確かにこれだけの味を出せるとなると、それも納得でゴザルなぁ」

「うんうん! 納得だよねー!」

「あわわ~、スゴイですー!!」

素直に驚く楓と鳴滝姉妹。

他の人もその士郎の味に納得する。

そんな和気藹々とした雰囲気のなか朝食は終わった。


食後のお茶を飲みながら、仲良く話していると、明日菜が士郎に訪ねた。

「そーいえば、士郎って今日はどうするの?」

「ん? 何がだ? 神楽坂」

「…さっきから思ってたけど、明日菜でいいわよ。ネギも明日菜って呼んでるし、私も士郎って呼んでるしね」

「そっか…わかった。じゃ、明日菜って呼ぶよ」

「それでいーわよ。…それで、本題に戻るけど今日は日曜日でしょ? これからネギを私と木乃香と桜咲さんとで麻帆良を案内するんだけど、木乃香と桜咲さんが士郎もどうかって…」

「そうだな…じゃあ、一緒に…」

そう答えようとした士郎に、

「ちょっと待ってくれ、衛宮先生。実は学園長が呼んでいるんだ」

そう真名が言った。

「え? 俺を?」

「ああ。 後、私と楓もね」

その言葉に、

「龍宮さんと長瀬さんが?」

「ああ…多分『仕事』の話で何かあるんだろう」

その真名の言葉には含みがあった。

「『仕事』…ね」

その真名の言葉に含まれた意味を悟る士郎。わざわざそう言うからには、教師としての仕事ではなく、裏の仕事と言う意味だろう。そして――――

(長瀬さんや龍宮さんが一緒ってことは、彼女達もこちら側という訳か)

「そうか…そういう訳だから、明日菜たちはネギ君を案内してやってくれ。俺は用が出来たみたいだから」





そして他のみんなと別れ、真名と楓と共に学園長室へむかう途中――――

「やっぱり、龍宮さんや長瀬さんも――――」

士郎の言葉を遮り、

「ちょっと待ってくれないか。衛宮先生」

そう真名が言った。

「私達はこれから一緒に仕事をするんだから、名前でよんでもらえないかな?」

それに楓も、

「そうでゴザルな、衛宮先生。拙者達も名前でよんで下され」

そう言った。

「あ、ああ。それなら、真名と楓でいいか?」

「ああ、それで構わない」

「イイでゴザルよ~」

士郎の言葉にそう答える二人。そして士郎も、

「じゃあ、俺も士郎で構わないよ」

そう二人に告げる。

「なら、私は士郎さんで」

そう真名が言い、

「ならば拙者は士郎殿と呼ぶでゴザル」

楓もそう答える。

「うん。わかったよ。…それで、話は元に戻るんだけど真名や楓もこっち側の人間なんだよな?」

その質問に、

「ああ。私も楓も学園長の依頼で色々仕事をしているんだ」

真名がそう答えると、

「まあ、拙者は修行のためでゴザルが」

楓もそう答える。

その二人の言葉に、

「なるほどね…じゃあ、今度も裏の仕事か」

そんな士郎に、真名から質問が。

「それで、士郎さん。貴方はどんな能力を? 一緒に戦う以上、そっちの戦闘力は知っておきたいな。刹那からは貴方が剣の達人と聞いているが、神鳴流の剣士なのかい?」

「そうでゴザルな。ぜひ聞きたいでゴザル」

楓もそう言った。

「達人って…俺はそんなモノじゃないよ。才能でいったら、刹那ちゃんにはかなわないよ」

そう、衛宮士郎の真価は剣術には無い。士郎の剣は才の無いモノが振るう剣。ただただ、鍛錬を重ねて作り上げられてきた技。鉄と汗と血に塗れて鍛え上げた業。そして才あるモノを越え、ついにはその極み――――スキル“心眼(真)”――――を手に入れるほどの努力の末に磨き上げられたモノである。

“心眼(真)”……才あるモノ――――かつての相棒である騎士王や青山鶴子、素子姉妹、そして桜咲刹那のような“剣士”が持つスキル“直感”とは真逆のスキル。幾多もの戦闘経験により培われた洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を見出す“戦闘理論”である。逆転のチャンスが1%でもあるのならそのチャンスを引き寄せる事ができるスキル――――このスキルこそが衛宮士郎の真価。天才剣士である彼女らと渡り合える理由である。

「まあ、俺は神鳴流剣士じゃない。とりあえず、いろんな剣を呼び出して戦うのが俺の戦闘スタイルだよ」

「ふむ…剣を呼び出す…中々面白い能力らしいね。士郎さん」

そう言う真名と、

「それは是非見てみたいでゴザルな♪」

楓の二人。

「まあ、仕事で見せることになると思うよ…さあ、学園長室に着いた。入って仕事の内容を聞こうか」

そう言って三人は学園長室へと入っていった。

第10話了

士郎とネギの麻帆良騒動記 第11話「剣と銃と忍の協奏曲(前編)」

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