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第12話「剣と銃と忍の協奏曲(後編)」 投稿者:偽・弓兵 投稿日:05/21-22:34 No.578

第12話「剣と銃と忍の協奏曲(後編)」



「いくぞ…鵺!! 妖気の貯蔵は万端か――――!!」

鋭い――――鷹のような目で鵺を睨みつける士郎は、そう言って突撃していく。

「――――投影開始(トレースオン)」

「――――憑依経験、共感終了」

「――――工程完了(ロールアウト)。全投影待機(バレットクリア)」

「―――停止解凍(フリーズアウト)、全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)………!!!」

そう呪文を唱えた士郎の周りに27の剣群が現れた。名剣、魔剣、聖剣、名槍…どれもが一級品の武器たち。素人がみてもわかる程の業物ばかりである。

「いけっ……!!!」

士郎がその右腕を振り下ろすと同時に、その剣群たちは高速で鵺に射出されていく。

その一つでも直撃すればいくら鵺が古より伝えられる魔獣でもひとたまりもない。高速で射出される剣弾を全てかわす術は鵺には無い――――ここが遮蔽物の無い場所ならば。

鵺はその剣弾を木の影に隠れて防ごうとする。ここは森の中…盾となる木はいくらでもある。

後ろから見た真名と楓も士郎が攻撃方法を間違えたと思った。

――――が、

「投影操作(トレースコントロール)!!」

そう叫ぶ士郎は右手を横に振るう。

すると、鵺の前の木に突き刺さろうとした5つの剣弾がまるで生き物のような動きで木を回避して、鵺に迫る。

――――!?

鵺の声無き驚きが聞こえるかの様だ。

襲い掛かる5つの剣弾…。――――が、しかし鵺はその驚異的な身体能力で咄嗟に上へ飛び上がる。

ガガガガガッッ!!

間一髪でかわされた剣弾は地面に突き刺さる。

しかし、士郎は必殺のはずの攻撃をかわされたにも関わらず冷静だった。

なぜなら――――

「行けっっ!!」

士郎が今度は左手を振り下ろす。それに合わせて飛んだ鵺の頭上から5本の剣弾が降ってくる。

先程の鵺に向かった27の内、地面に突き刺さった5本以外の22本の内の5本が鵺に降り注ぐ。

生き物のような動きを見せた5本以外は鵺を通り過ぎ、森の闇に消え去ったはずなのだが――――?



「――――ん?」

その光景を見ていた真名が疑問の声を上げる。

「? どうしたでゴザルか? 真名殿?」

そんな真名に楓が声をかける。

「いや…士郎さんの両手から何か糸のようなものが――――?」

真名の魔眼は士郎の両手から伸びる糸のようなものを捉えた。

「糸――――? 拙者には何も見えないでゴザルが?」

「ああ…かなり見えにくいな。私の目でもやっと見える位だ。普通の術者では視認できないだろう…魔力で編まれた糸か。どうやらアレであの剣を操っているらしいな」

先程の攻撃をそう分析する真名。

「ほう…魔力の糸で、でゴザルか…あの動きはまるでガ○バレルのようでゴザルなぁ?」

「いや、見えないからどちらかと言えばドラグー○…って楓、なんで知ってる?」

楓の疑問に逆に問い返す真名。

「いや、毎週風香や史迦が見ていたでゴザルから、付き合いで…」

そう笑顔で返す楓。

「って、真名殿も知っているではござらんか?」

「私もまあ、ハカセや超の付き合いで…」

二人ともどうやら自由とか正義なMSが活躍するアニメを見ていたらしい。

双子は純粋にアニメ好きだからだろうが、ハカセや超が見ていたのは何故だろうか?まさかアニメの武器やロボットを参考に何か作るつもりなのだろうか――――?

「…いや、いくら何でも」

「――――いや、あいつらならやりかねん」

同じ事を考えた二人。楓は否定するが、よく仕事を依頼されたりして彼女達のメチャクチャさを知っている真名はそれを笑い飛ばせない。

「そのうち茶々丸フリー○ムとか、茶々丸プロヴィ○ンスとか作りかねん」

「いや、今ならイン○ルスかデス○ィニーでござろう」

「私はどちらかと言えば前のバ○ターとかの方が好きなんだが」

「まあ、拙者もブ○ッツが好きでござったなぁ…」

必死に戦う士郎を余所にほのぼのとMS談義をする楓と真名。





後の様子を知るよしもない士郎は、魔力で編まれた糸を使い剣弾を自在に操る。

変幻自在に動き回る剣弾は、それこそガンバ○ルやド○グーンのような動きで鵺に襲い掛かる。

空中に飛んだ鵺の上から襲いかかる剣弾。さらに地面に突き刺さった剣が浮かび上がり、鵺へと打ち込まれる。

上下の二方向からの攻撃。空中の鵺に回避することはできない――――

その時、辺りに鵺の咆哮がまたもや響き渡った。

ウヲォォォォォォォンンン!!

今度の衝撃波は一方に向かうのではなく、周囲に放たれていた。

迫る10の剣弾はその衝撃に弾かれた。

(ちっっ……!!)

内心舌打ちをする士郎。この打ち出された剣弾をコントロールする技はまだ不完全だ。コントロールできるのは作り出されたうちの10本のみ。しかも今のように強い力で弾かれたら魔力の糸が切れてしまい、コントロールできなくなる。

――――が、士郎は次の手も考えていた。今の攻撃をかわすには、相応の代償がいる…ならばそこにできた隙を突こう…と。現に着地した鵺は自らの衝撃波を浴び。全身傷だらけだ。そしてなによりもその口から血を吐き出している。――――どうやら無理な衝撃波の使用の性で喉がいかれたらしい。

士郎は手に黒き洋弓、そしてもう一方には鏑矢を投影する。

伝説によればかつての英雄は鏑矢で動きを止め、鵺を退治したそうだ。

士郎はその伝説の通りに、鏑矢を打ち込む――――!!

ヒュオオオオォォォォン!!

大きな音をたてて鏑矢は鵺の額に命中する。

――――!!!!!

もはや叫ぶことが出来ない鵺は、ただ口を開けて声にならない叫びを放つ。

その動きが止まったのを見た士郎はすかさず鵺に向かって突っ込む。

瞬動術を使い、一瞬でその距離を詰めた士郎は、鵺の眼前で大きくジャンプした。

そして右手を振り上げた士郎。その手に現れるは、かつて一人の少女を王へと導いた選王の黄金剣。かの大英雄を幾度も殺した聖剣。その姿は穢れ無き輝きを放つ――――!!

その黄金に光る美しい剣の名は――――

「“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”!!!」

真名を開放された黄金の剣は光を纏いながら鵺を切り裂いていく。

バシュゥゥゥ!!

剣の光は鵺を飲み込んでいき、鵺の体を消滅させていく。

士郎が着地し、その剣を振り下ろした時にはすでに鵺は完全に消滅していた。




「いや、凄まじいでござるなぁ…」

「まったくだ…アレほどの威力の攻撃、知っている限りでは学園長か高畑先生位しか出せないぞ? あとは、話に聞いたネギ先生の父親である『サウザンドマスター』やその仲間…「悠久の風」の「紅き翼(アラルブラ)」のメンバーくらいか?」

士郎の実力の上限が計れない真名。解かるのは今の自分や楓、そして刹那も遥かに越えた力の持ち主だと言う事。

「ほう、ウワサに聞くネギ坊主の父親でござるか…そちらの世界はまだ疎い拙者にもその名は聞いていたでござるが――――」

真名の言葉に士郎の実力を改めて確認する楓。

「甲賀の里の上忍数人…いや、里の長が加わっても良くて互角…でござろうか?」

自分の身近な実力者と比べる楓。

そんな二人に、士郎が歩み寄ってくる。

「二人とも大丈夫か?」

その手にはすでに黄金に輝く剣は無い。

「士郎さん、今の剣はいったい…? 剣を呼び出す能力とは聞いていたけど、あれほどのレベルの剣や槍を持っているとなると、さすがに疑問に思うんだが」

その真名の疑問に、

「まあ、それは帰り道で話すよ。これからも一緒に仕事をすることもあるだろうしね…」

そう返す士郎。

「――――解かったよ。じゃあ、後で聞かせてもらうよ?」

そう言って真名は傍らに置いておいたライフル等を拾い上げ、立ち上がった。

「ああ…、真名のほうはほとんどかすり傷ばかりだけど、楓の方は少し酷いな」

「いや、拙者は大丈夫でござるよ――――」

そう言って立ち上がろうとした楓だったが、足から力が抜け、バランスを崩して倒れそうになる。

「おっと――――」

そして士郎が楓を抱きとめる。

「ほら、大丈夫じゃないだろ?」

士郎は楓を抱きとめたままそう言った。

「しししししし、士郎殿~~~~~~!?」

士郎に抱きしめられた体勢で顔を真っ赤にする楓。

「それじゃ、楓は俺が連れて行くから」

そう言った士郎は、楓の足を抱えて抱き上げる。まあ、ぶっちゃけ俗に言う「お姫様抱っこ」で。

「%&$L&D=S!%~$%FJ!?」

もはや言葉にならない叫びを上げる楓。

「――――い、いや、だだだ大丈夫でござるよっ!! せせ拙者一人で歩けるでござるっ!!」

顔を真っ赤にしたまま何とか言葉を吐き出す楓。

が、このスキル『朴念仁A+』を持つ士郎に通じるわけが無かった。

「なんでさ? 楓はさっきから血を流してたろ? 少し貧血気味みたいだし…」

「そ、それはそうでござるが…そ、そうでござる!! 士郎さんもさっき大怪我を負ったではござらんか!! 拙者よりも重傷でござろうっ!?」

「あー、俺は切り札を使って傷を治したから、心配するな。今は楓の方が心配だ」

楓の疑問にそう答える士郎。彼は楓をお姫様抱っこしたまま歩き始める。その歩みはしっかりしており、先程大怪我を負ったとは信じられない。

「~~~~~~~~」

折角思いついた言い訳を速攻で潰され、言葉が無い楓。

そして歩き始めた士郎の様子を見て、楓は士郎を説得する事を諦めた。

(ま、まあ、拙者もさすがに血を流しすぎたでござるし…し、しかたないでござる…な?)

心の内でそう考える楓。さすがにこの格好は恥ずかしいが、彼女も忍者であろうと心は乙女。男性にお姫様抱っこされる事について恥ずかしさもあるが、何処と無く嬉しさもある。――――特に少し好意を持った男性ならば尚更に。

その顔はいまだ真っ赤ではあったが、口元に微笑が浮かぶ。

――――が、ここで楓に後の方から殺気が。

「!?」

すぐさま顔色を変えて後を振り向く楓。まだ鵺以外に敵がいたのか――――

そう思った楓が見たのは士郎の後ろから着いてくる真名であった。

「ま、真名、…殿?」

顔を引きつらせながら真名に今の殺気の事を聞こうとする楓。

それに、

「ん? どうしたんだい? 楓?」

にっこりと、普段の真名ならば絶対しない満面の笑みを返した。――――が、もちろんその目は絶対零度の冷たさをたたえている。

「いやっ!? な、なんでもござらんYO!?」

真名の目にビビッた楓は何故か語尾がラップ口調になった。

(ま、まさか、真名殿は士郎殿に…?)

その目を見た楓はそう推測した。

(な、何でござろう…真名殿が士郎殿を好きでも拙者には関係が…では、この胸の痛みは一体何でござろうか…?)

自分の気持ちに戸惑う楓。

一方、真名のほうは――――

(やれやれ…まさか私がこんな気持ちになるとはね…我ながら信じられないが――――まあ、恋愛は理屈じゃ無いと言うしね。…うん、こんな気持ちも悪くは無いな)

自分の気持ちを自覚し始めていた。



一方、その原因である士郎と言えば…。

(明日の朝飯はどうするかなぁ~?)

などと考えていた。

第12話了

士郎とネギの麻帆良騒動記 第13話「養父の求めし理想郷(笑)」

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