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あ てぃーちゃー いん ぱられるわーるど 第2話(ネギま×Fate) 投稿者:phase 投稿日:05/02-22:55 No.433
「しかし、立派な扉だなぁ……」
そう独りごちて、改めて扉の方に目をやる。
『学園長室』のプレートが掲げられたこの扉を開ければ、教師として
の生活が始まる。それは明るい未来か、はたまたその逆か。今はまだわ
からない。
ともかく、こうしていても仕方がない。気を引き締めて扉に手を掛
ける。と、中から話し声が聞こえる。
内容はこんな感じだ。
「しかしですね、学園長。やはりこの件は……」
「高畑先生、ワシはネギ君のことを考えてじゃな……」
「それは……ですがわざわざ外部から招く必要は……」
「…………」
何かあまり歓迎されていない様子だ。
俺、衛宮士郎の教師生活はどうにも前途多難っぽい―――
第二話 『騒動の火種はいろんな所から』
「し、失礼しま~す……」
どうにか声を出して扉を開けた俺を二対の視線が捉える。老人の方
は好意的な、青年の方は険悪な視線だ。
……正直、居心地が悪い。
「おお、待っとったぞ士郎君」
「君が新しい魔法先生なのかい?」
二人がそれぞれ声を掛けてくる。……まあそれはいいのだが。
「あの……魔法先生って?」
そう、この人は確かに『魔法』と口にした。ならばこの人は魔法使い
?
いやまて、ここは平行世界だ。それなら魔術=魔法という可能性も―
――
「何じゃ、ゼルレッチからは何も聞いておらんのか?」
老人――おそらくは学園長だろう――の声で思考の海から引き戻さ
れる。
「ええ、『麻帆良学園で教師をやれ』ということ以外はほとんど……
」
俺が答えると、学園長は溜め息を一つついて説明を始めてくれた。
――それは、正直理解の範疇を超えていた。
たとえば、この世界では魔法、魔術が区別されていない。俺の言う魔
法使いには、『立派な魔法使い(マギステル・マギ)』が当たるらしい
。まあ、神秘の秘匿という点は同じだったが。
他にも、幻想種の在り方などを聞いたがここでは省こう。
次に聞いたのは仕事内容の詳細だった。麻帆良学園中等部で教師をや
っている魔法使い見習い、ネギ・スプリングフィールドの補佐、及び教
師として当該クラスの副担任を任せる、とのことである。ちなみに滞在
期間は四年。当然異議を申し立てたが無視された。くそう。
後は報酬の話。これは回想を見てもらおうと思う。
「ところで学園長。報酬の話なんですが……」
「ん? それは勿論、相応の額を用意させてもさうが……士郎君、案
外マメじゃのう」
「ああいや、俺の師匠が……」
そこで思い出される在りし日の騒動。
――せいぎのみかたであることを優先して、金にならない仕事ばかり
を持ってくる俺。
――五回目あたりで遂に切れた遠坂。
――乱れ飛ぶガンド。
――振るわれるアゾット。
かつての光景を余すことなく幻視した俺の身体はいつしかガタガタと
震えていた。
「し、士郎君?」
「はっ…………あ、何でもないです。とにかくその辺はよろしくお願
いします」
「う、うむ(聞かない方が良さそうじゃのう……)」
以上である。
さて、説明を受け終わったわけだが、そこで自分に向けられる視線
に気付いた。見ると、さっき反対していた人がすごい険しい目で睨んで
いた。
「学園長。僕はまだ彼を認めた訳ではありません」
険しいままの目でそう言い放つ。ここまで反対するのは、理由あって
の事なのだろうかと
思い、聞いてみる事にした。
「あの、何故そこまで反対するんですか?」
すると、あっさり答えが帰って来た。
「僕は生徒達の安全を考えているだけだよ」
……帰っては来たが納得出来ない。そもそも何故、初対面の人間をそ
こまで警戒するのか。
その問いに対して、彼はこう答えた。
「君は『あの』ゼルレッチ翁の直系の弟子なのだろう?だったらやは
り危険だよ。君はゼルレッチ翁がこちらで何と呼ばれているか知ってい
るかい?『他人の尻拭いはするのにそれ以上の厄介事を残して去ってい
く爺さん』だ!そんな奴の知り合いをそうおいそれと迎え入れるわけに
はいかないだろう」
……すごい。溜まっていた鬱憤を全て吐き出すような演説だった。
俺が反論しようとする直前、静観していた学園長が口を開いた。
「……士郎君や、自己紹介をしてくれんかの?」
それは余りにも場にそぐわない言葉だったが、そういえばまだ自己紹
介をしていない。何か思惑があるのかもしれないし、ここは素直に従う
ことにした。
「えっと、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの依頼で参りま
した、衛宮士郎です。宜しくお願いします」
告げたのは、依頼主と自身の名のみ。
簡潔極まりない自己紹介だ。しかし、それを聞いた彼は面白いように
顔色を変えて学園長に詰め寄った。ちなみに小声で。
「………学園長……まさか…………彼…………」
「……うむ……つまり………じゃから……」
小声とはいえ、こう静かだと断片的な会話くらい聞こえてくる。
……うん、精神衛生上大変よろしくない。
一分程、その空間に身を置いていると話が終わったらしくヒゲの青年
(仮)がこちらを向き、
「……士郎君、だったね。僕は高畑・T・タカミチだ。さっきはすま
なかったね。ようこそ麻帆良学園へ。歓迎するよ」
と、手のひらを返したように微笑んだ。
……なにを言ったんだ学園長。
気になる所だが、ともあれこれで懸念は無くなった。あとは――
「ありがとうございます。……ところで」
ここで俺は、最後に残った問題を口にした。
「俺、どこに住めばいいんでしょうか?」
「「あ」」
「…………」
「…………」
「…………」
……どうやら今日の宿は自分で探す羽目になりそうだ。
――その後は宿も無事見つかり、至って普通だったので省略する。
そして翌日。
早朝から職員室に呼び出された俺は、そこで初めてネギ君と顔を合わ
せる事となったのだが……
そこにいたのは、スーツを着た子供だった。
そこはかとなくする嫌な予感を抑えつつ、学園長に問いかけてみる
「あの、学園長。もしかしてこの子は……」
「うむ、ネギ先生じゃ。そういえば士郎君には話しておらんかったの
う」
フォフォフォ、と声を上げて笑う学園長。つーかこの学園なんでもあ
りか?
だんだんと現実を見失いかけてきた俺にネギ君が声を掛ける。
「あの、衛宮先生。これからよろしくお願いしますね!」
ネギ君が元気に笑い掛けてくる。うん、いい子だ。
「ああ、こちらこそよろしく。それと、俺の事は士郎でいいよ。同僚
だし」
「あ、はい! じゃあ士郎先生って呼びますね!」
明るく答えるネギ君。ああ、もう開き直ってしまおう。
もう何が来ても驚いてなんかやるものか―――
―――甘かった。
始業式で挨拶をした時に学園長から『あれが君の担当するクラスじ
ゃよ』と指差した方をみれば。
―――何だあれ。
もしかして小中高の合同クラスだったりするんだろうか?
あと何気にロボとかいるし。
……既成概念が崩壊しそうです、俺。
というわけで、崩壊しかけた常識を何とか繋ぎ止めつつ教室前まで
来た。ちなみにネギ君は一緒ではない。曰わく、
『職員室からプリントを取って来ないといけないので、先に行って自
己紹介を済ませておいてください』
だそうだ。ネギ君、意外と適当だな。
まあ、場所は教わったので迷うことはなかったのだが、一人で女子校
の教室に入るのは、さすがに勇気がいる。……さっきの事もあるし。
とはいえ、こうしていても始まらない。思い切って教室のドアを開
け――
ぼふっ。
――頭部に軽い衝撃。次いで視界に広がる白い粉。間違いない、こ
れは――
「黒板消しトラップだ……」
思わず呟く。こういったトラップは万国共通なのだろうか?
まあ、このくらいは可愛いイタズラだ。気を取り直して一歩踏み出
――
びたん!
……こけた。どうやら足元に紐が張ってあったらしい。
さらにバケツと玩具の矢が襲い掛かる。
そして(一部の生徒から)沸き起こる歓声。
……これはさすがにやりすぎではなかろうか? とは思うのだが、
どう対処していいかわからない。なので、
「えー、みんなおはよう。今日から3―Aの副担任になる衛宮士郎だ
。よろしく」
―――とりあえずなかったことにした。
「………………」
みんな目を丸くしているな。ふっ、この程度で参っていたら衛宮家で
は三日と生き延びら
れんのだ――――あれ、涙が出てきた。
そんなこんなで三分後。
ネギ君がやって来て俺への質問タイムと相成った。
「えーと、じゃあ質問がある人は……」
『ハイハイハイハ~イ』
言い終わらないうちにぞろぞろと上がる手、手、手。みんな積極的だ
なぁ。
「じゃあ、ネギ君。指名をお願いできるかな?」
「え、僕ですか?」
「うん、俺はまだみんなの事を知らないからね」
この質問タイムで少しでも仲良くなれたらいいのだが。
「そうですね、じゃあ……朝倉さん、お任せしていいですか?」
ネギ君に呼ばれて、カメラを持った子が立ち上がる。新聞部か何かだ
ろうか?
「さっすがネギ君!わかってるじゃない。事前情報は得られなかった
けど、この麻帆良パパラッチこと朝倉和美が謎の新任教師を丸裸にしち
ゃうよ~!」
…………うん、素晴らしい前口上(?)だ。周りから拍手と歓声が上
がるのも頷ける。
だけど、本人の前で堂々と宣言するのはどうなのさ?
「じゃあ最初の質問は……」
そんな俺の疑問は無視して怒涛の質問が始まった。
「名前は衛宮士郎だったね。じゃあ年齢は?」
「ん。23だ」
ちなみに嘘だ。だって21じゃ教員免許取れないし。
「じゃあ出身」
「九州の方だな」
これも嘘。こっちの世界には冬木市という地名はなかったからな。
「担当教科は?」
「古文だよ」
「んじゃ、趣味とか特技は?」
「んー、料理と物の修理かな。どっちも趣味で特技だな」
「ふむふむ……料理と…修理、と。……変わってるな」
……聞こえてるぞ、朝倉さんとやら。
「さてと、それじゃあ……」
と、朝倉さんの目が怪しく光った。…………気がした。
「先生は恋人とかいるんですか?」
「む……」
―――瞬間、胸に去来する四年前の黄金の別離。その幻想を振り払っ
て何食わぬ顔で答える。
「ああ、前はいたけど、今はいないよ」
「へー……じゃあもう経験済み?」
「…………ノーコメントで」
しんみりした気分が一瞬で吹き飛んでくれた。
その後、身体測定の連絡を受けて慌てた挙げ句、「今すぐ脱いで準備
してください!」などと口走ったネギ君を生徒達からからかわれる前に
救出し、今は廊下で待っている。何か吸血鬼がどうとか聞こえてくる。
七不思議か何かだろうか?
と、そんな事を考えていると、
「先生ーーっ、大変やーーっ! まき絵が……まき絵がーー!」
と言いながら、ええと、確か名前は……和泉さんだっけ? うん、そ
の和泉さんがやけに慌てた様子で走って来た。
聞けば、桜通りでうちの生徒が倒れていたらしい。
急いで保健室に行ってみたがどうやらただ寝てただけらしい。しかし
、
「どうしたネギ君? 難しい顔をして」
「あ……士郎先生。」
ちらり、と佐々木さんの方に視線を向ける。
「……あの子に残っている魔力の残滓か?」
「気付いてたんですか!?」
ネギ君がびっくりした顔でこっちを見ている。……気付いてないと思
っていたんだろうか。いいけどさ。
「で、どうするんだネギ君?」
ネギ君にそう問いかける。どうやらさっきの吸血鬼の話は本当らしい
。
「……とりあえず巡回をしましょう」
少し考えて答えるネギ君。賢明だ。敵の正体がわからない以上、まず
は情報の収集に務めた方がいい。
「よし、じゃあ俺も行こう」
「え? でも……」
「俺の仕事はネギ君の補佐だからな。文句は言わせないよ」
そう言うとネギ君は渋々引き下がってくれた。
気持ちはわかるがこういうタイプは無茶をし過ぎるからな。ついて行
って助けてやらなきゃな。
そして夜。俺の歓迎会の後、ネギ君と巡回をしていると、
「キャアァァァッ!!」
と悲鳴が聞こえてきた。
「悲鳴!?」
「こっちだ、ネギ君!」
俺の声に反応して杖で飛び立ったネギ君に追い付くために、脚を強化
して走り出す。
悲鳴は桜通りの方から聞こえてきた。くそっ、やっぱり吸血鬼なのか
?
ネギ君から遅れること約一分。桜通りに着いた俺が見たものは、地
面に倒れた宮崎さん、近衛さんと、黒いマントを羽織った人影と対峙す
るネギ君だった。
「……10歳にしてこの力。さすがに奴の息子だけはある」
「き、君はウチのクラスの……エ…エヴァンジェリンさん!?」
……何か複雑っぽいな。
などと思いながら見ていると、ネギ君がこっちに気付いた。
「あ、士郎先生!」
「ほう……新任教師、貴様も魔法使いだったのか?」
次いで、エヴァンジェリンさんもこちらを向く。
「邪魔はするなよ、新任教師。私が用があるのはそこのぼーやだけだ
」
ネギ君の方をちらりと見てそう言い放つエヴァンジェリンさん。だが
それではいそうですかと引き下がるわけにはいかない。
俺がエヴァンジェリンさんに近付こうとしたその時、
「あぁっ、このか!? 本屋ちゃんも!」
という叫び声が後ろから聞こえてきた。
その声に反応するようにエヴァンジェリンさんが退き、ネギ君は「倒
れている二人をお願いします」と言い残して走り去ってしまった。
後に残された俺と、さっき叫んだ神楽坂さん。
呆ける事きっかり一分後、神楽坂さんは、
「その二人お願いね!」
と言い残して、俺が何か言う前に凄いスピードで走り去った。
……あれ、身体強化した俺以上のスピード出てるんじゃなかろうか。
まあいい。とにかくこの二人を安全な所に―――
「お嬢様!!」
……ん? あれはウチのクラスの桜咲さんか? 何でこんな所に――
「貴様!! このかお嬢様に何をする!!」
…………えーと、現状認識開始。
・腕の中には気を失った近衛さん。
・傍らにはこれまた気を失い、しかも服がほとんど脱げている宮崎さ
ん。
・目の前には刀を抜き、殺気を漲らせている桜咲さん。
結論………絶対絶命。
…………ゴッド。そんなに俺が嫌いですかコンチクショウ。
続く。
―――――――――――――――――――――――――――――――
―
あとがき
……気付けば5月になっていた。
どうも、phaseと名乗る者です。
今回は難産でした。5回ほど書き直したり三人称を一人称に変えてみ
たり。
ともかく予定より一ヶ月遅れての投稿です。待ってた方、居たらすみ
ませんでした。
こんなんですが、最後まで続けるつもりですのでよろしくお願いしま
す。
……あと感想もください(笑
それでは、phaseでした。
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