麻帆良の月 第3話 自分 投稿者:蘭 投稿日:04/29-17:44 No.421
【???】
「ふう、やっとここまで来たわね」
光を目指して歩き、もう三十分は歩いただろうか。ようやく森を抜け出せた。
町の入り口であると思われる橋が見える。距離はおよそ300メートル。
私は、地を踏む足に力を入れ・・・・跳んだ。
トン
一瞬のうちに橋の手前まできた。
思い出したのは歩き出してすぐ・・・・頭の中に自分のことだけが浮かんできた。
自分が吸血鬼であり、人並みはずれた身体能力を持っていること。
自分が死徒達の処刑人であり、自分は真祖の姫であること。
自分が誰かに殺されたこと。
自分が誰かを愛していたこと。
思い出したその全てが自分自身のこと。
自分が何をしていたのか・・・・
自分が誰に殺されたのか、・・・・・
自分が誰を愛していたのか・・・・
それが分からない。
そしてもう一つ覚えていたこと。
彼の顔
その彼が私を殺したのかもしれない。
その彼を愛していたかもしれない。
でもそんなのは、あやふやな推測。
とにかく私は色々なことを思い出した。それならばいつか彼のことも、思い出せるだろう。
そう思い私は自らの身体能力をフルに使い森を走り出し、今ここにいる。
「それにしても、でかいわねー」
そう呟いた。
とにかくでかいのだ、橋が。
全長一キロぐらいあるのではないか。
「ここに来るまでの森も広かったし・・」
そんなことを思いながら橋をゆっくり歩き出した。
橋も半ばまできただろうか。
「あともうちょいね」
再び歩み始めようとしたとき、寒気を感じた。
振り返ってみると、長髪で金髪の髪をなびかせ、少女が宙を舞っていた。
そして私に敵意を込め一言
「貴様、何者だ?」
「あなたこそ、何者?」
と、私が返すと、
「黙れ、聞いているのはこっちだ、さあ答えろ」
しょうがないな、と思い答えてあげることにした。
「私の名は・・・アルクェイド・・・・アルクェイド・ブリュンスタッド。
吸血鬼よ」