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魔法先生と紅蓮の聖竜騎士  ~X-EVOLUTION ANOTHER~(×デジモン オリ主・オリ有) 第二幕 『麻帆良の園にて』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:04/10-18:09 No.275



「えっと………ひょっとすると……君たちの獲物だった……のかな?」

それは、予想していた言葉より、遥かに間の抜けた台詞だった。

「「………はぁ?」」

だから、私達も、思わず間抜けな声を出していた。






『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士  ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第二幕 『麻帆良の園にて』






(――――― 困った)

青年は、胸中でそう思った。

(たまたまこの娘達が、【ドクグモン】に襲われて苦戦しているようだったから助けに入ったのだが………)

――― 因みに【ドクグモン】とは、先刻の大蜘蛛のことだ。


『【ドクグモン】:昆虫型・ウィルス種・成熟期デジモン。 
ウィルスの影響で、触れるだけで物を腐らせてしまう凶暴なデジモンだ。
必殺技は、獲物に毒の牙を突き立てる、【スティンガー・ポレーション】だ!』(平田○明ボイス)


…………何やら、天の声が聞こえた気がするが、気にしてはいけない。

閑話休題。

青年は再び、少女達を見る。
困ったことに、警戒されているようだ。
緊張を解こうとして、努めて軽い口調で話しかけたのが拙かっただろうか?

(なんか「はぁ?」とか言われたしな……)

困った。 実に困った。
他の“面子”なら、言葉巧みに上手くやるのだろうが、如何せん自分はそういうことが不得意だ。

(如何したものか…………)

なんとかこの緊迫した空気を如何にかしなければ。

(如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する如何する…………)

思考を続けながら、少女達の武器と、自分の【剣】とを交互に見つめる。

―――ん? 【剣】?

(そうか!!)

青年は閃いた。

「あ―― われ……俺は君たちと争う気は無い。 断じて無い」

「「??」」

「まあ、一先ずお互いの得物をしまおう。 話せば判るから……」

と、此処までは良し。
『月並みな台詞』と言ってしまえばそれまでだが、効果がまるで無い訳ではない。

――― だが、この先の行動は拙かった。

青年は、確かに得物を“しまった”。
仕組みはどの様なものかは判らないが、“しまった”ことには変わらない。
ただ、事情を知らない者が見れば、こう思うだろう。

――― まるで、『魔法』の様に“消えた”と。






「「!!」」

少女達の警戒の色が、更に濃くなった。

(………あれ?)

青年には訳が判らない。

(何が拙かったのだろう。どこかいけないところがあっただろうか?)

それが【剣】を“消した”ことにあることを、青年は知らなかった。

「………貴方は、『魔法使い』か?」

小柄な少女が、厳かに訊いてきた。

(―――『魔法使い』?)

聞いたことはある単語だ。
だが、少なくとも青年が識っている、【魔法使いの世界(ウィッチ・チェルニー)】のことを言っている訳ではないことは判った。

「………いや、俺は『魔法使い』じゃない」
「では、『陰陽術師』の類か?」

今度は、長身で褐色の肌の少女が訊いてきた。

拳銃の銃口を、こちらに向けながら、である。

(『陰陽術師』?)

識ってはいるが、それは青年にとって専門外だ。 むしろ、いたとしても、現在使える者は極少数のはずだ。
………あくまで、“こちら側”の場合ではあるが。

「いや、違う」
「では、先ほどの“現象”は、如何説明するのだ?」
「? さっきのって?」

「「【剣】を消してみせただろう!」」

いい加減にしろ、とでも言いたげに、声を荒げる少女達。

(―――― 怖いな)

だが、漸く青年にも合点がいった。

「……こういうことかい?」

と、もう一度【剣】を出してみせる。

「「!!」」

やっぱり驚いている。

「どう説明したらいいかな………」

コレばかりは感覚的なものなので、説明が難しい。

「………この【剣】は、俺の手――― つまりは身体の一部みたいなものだ」

「身体の一部……?」

「そうだ。 普段はただの手だが、必要な時に手から“浮かび”、事が済んだら手に“戻る”。 ……猫の爪とか、そんな感じ……かな?」

かなり無理のある説明だが、これで納得してもらうしかない。
何せ、本当に身体の一部みたいなものだから、仕方が無い。
これが駄目なら、自分のことを一から全て話すしかない。
だが、自分でも全てを把握しきれていないことを話すのは厄介だし、何より理解してもらえる自信が無い。

(――― さあ返答は!?)

何だか、クイズ番組の司会者みたいな気持ちで、青年は次の言葉を待った。

「………もう一つ訊くが、先程のあの大蜘蛛、貴方が“けしかけた”のではないのか?」

顎に手を当てながら、褐色の少女が尋ねる。

「いや、君たちが苦戦しているのを見つけたから、助けに入っただけだが?」

(なんだ、誤解されていたのか)

内心「ホッ」としつつ、青年は答えた。

「フン……その言葉、本当の様だ」
「だな……失礼しました」

ようやく納得し、二人は各々の得物をしまう。
青年も、もう一度【剣】をしまった。

「不思議だな………その剣は確かに“消えて”いるのに、“魔力”の気配が感じられない」
「“気”の質とも違う………本当に、貴方は何者なのですか?」

青年は少し考え、こう答えた。

「―――― 正義の、味方だ」

「…………」
「…………」

(あれ?)

ノーリアクション。

(な、何だ? この嫌な間は!?)

本人には悪いが、俗に言うと………スベったな。

(ガ―――――ン!)

青年に、会心の一撃が決まった。






青年が、打ちひしがれた表情を見せた。

少し哀れに思えてきたので、真名は、

「じゃあ、その『正義の味方』さん、貴方の名は?」

と尋ねた。

「ちなみに、私は『龍宮 真名』だ」
「私は、『桜咲 刹那』です」

「………グレン……『グレン・MD・サマーフィールド』だ」

青年――― グレンは、気を取り直して、そう言った。


―――― 気が付くと、いつの間にかあの妙な霧は、影も形も無くなっていた。






数分後。

森から、影が飛び出した。

「―――― すると、二人ともまだ中学生なのか? それにしては随分な“使い手”だな」

意外そうな、グレンの声。

「………いえ、まだまだ修行中の身です………」

謙遜する刹那。

「いやいや、凄いよ。 普通なら技術の習得まで何年もかかるだろう?」
「まあ、ね。 色々苦労があった訳なんだよ」

ふふっ、と真名が小さく笑う。

「………あの、サマーフィールドさん?」

おずおず、といった感じの声で、刹那。

「グレンでいいぞ」
「では……グレンさん………そろそろ降ろして貰えないでしょうか?」

刹那が、やや頬を赤らめながら、言った。

―――― 無理もない。

何故なら今の刹那は、グレンに『お姫様抱っこ』されている状態なのだから。
ちなみに真名は、グレンにおぶさる形でいる。

何でこんな事になったのかと言うと、あの会話の後に二人は今度こそへたり込んでしまい、
それを見かねたグレンが、有無を言わさず二人を『抱っこ』&『おんぶ』して、

「送っていく。 帰り道はどっちだ?」

などと言い出したからだ。

「ダメダメ。 消耗しきった身体で山を降りるなんて、危ないだろう? それに今日は寒い。 女の子は身体を冷やしちゃいけないよ」
「む………」

それきり、刹那は黙ってしまった。

「……でもグレンさん、もう少し“普通の道”を通ったら良いんじゃ?」
「いや、こっちのほうが速いし、何より周りが“よく見える”じゃないか」

説明が少し遅れたが、今グレンが通っている道は、“道”ですらない。

――― 早い話、木の上を跳んで渡っているのだから。

確かに速かろうが、反面かえって冷えそうな気もするのだが―――本人はそこまで頭は回らない。

「あ、あの大橋の辺りで降ろしてくれ」

真名が、向こうに見える大きな橋を指差した。

(って龍宮、何でお前はそんなに普通なんだ?)

刹那が、抗議の視線で、真名に問う。

(刹那、こういうタイプの人には何を言っても駄目だ。 親切心からの行動なら、受けるのが礼儀だ)

早い話が“諦めろ”ということだ。

(…………そういうものだろうか?)

刹那は胸中で嘆息した。






ところ変わって、麻帆良学園都市内・桜ヶ丘4丁目29――― 学園都市の外れにあるログハウス。

―――ドバンッ!!

その扉が、乱暴に蹴破られた。

「ええいっ! 全く!! どこのどいつだ!? 折角の『満月の日』だというのに結界などを越える不届き者は!?」

現れたのは、まだ十代前半に見える幼い少女。
普通にしていれば“美しい”と言える綺麗な顔立ちであるが、今現在、いささかそれは怒りに満ちていた。

「マスター、あまり大声で騒いでは……」

と、続いて現れたのはメイド服に身を包んだ、緑髪の少女。
こちらもなかなかの美人だが、その表情は完璧に“無表情”だ。

「わかっている!!」

マスターと呼ばれた少女は、尚も声を荒げながら言った。

「フンッ! この怒り、侵入者にぶつけてくれる!」

言うと、少女は黒いマントを翻して――― 闇夜に、飛んだ。






―――トン。

静かに、着地。

「ふう、到着~~~」

グレンは軽く息をつき、二人を降ろした。

「……大橋の辺りで良いと言ったんですが……」
「いや、話だと“ここ”は全寮制なんだろ? だったら、近いほうが良いかと思ってさ」

実を言うと、今グレン達がいるのは寮のすぐ近く―――というか、真ん前だった。

「どうも、ありがとうございました」
「今日は助かった。 ありがとう」

お礼を言い、頭を下げる刹那と真名。

「いいよいいよ、ヒトとして当然の事をしたまでだ」

そんな二人に、手を振って答えるグレン。

「じゃあ二人とも、学校に遅刻しないようにな」
「はい……では」
「私達はここで」
「ん、ではな」

二人は軽く手を振って、寮らしき建物へと消えた。






「――――――― さて」

グレンは二人を見送ると振り返り、急に鋭い目つきで、言った。

「出て来い。 闇の下僕」

そう言うと闇からソレは、姿を見せた。

「サスガハ『紅蓮ノ聖騎士』。 “肉ノ身”ヲ纏ッテモ、我ノ気配ニ気ヅイタカ」

頭部に生えた二本角、ボロボロの蝙蝠の様な翼、両腕の鋭い爪。
その姿は、堕天使――― 悪魔そのものだった。

「フン、下級悪魔のお前らは“臭い”からな。 嫌でも気付いてしまうさ」

実際、グレンは、大橋を越えた辺りから、この存在を察知していた。

「ホザクナヨ、『騎士』ヨ。 ソノヨウナ“肉ノ身”デ、我ラニ刃向カウ事ナド出来ンゾ?」

【黒い悪魔】は身体を前に折り曲げ、今にも飛び掛らんとしていた。

「………ならば――――― 試してみるか?」

それと同時に、グレンは【剣】―――【グラム】を手に取った。



つづく


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


さて。

第二幕はこれで終了。
麻帆良に足を運んだ『紅蓮の聖騎士』、グレンを待っていたのは、『黒い悪魔』、“デビモン”でした。
果たしてグレンの運命は?そして、エヴァンジェリンの出番はあるのか!?
………少し私情を挟みつつ、お話は続いていきます。


次回、
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第三幕 『“騎士”VS“真祖”』


次回は、白熱バトル?

魔法先生と紅蓮の聖竜騎士  ~X-EVOLUTION ANOTHER~ 第三幕 『“騎士”VS“真祖”』

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