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魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~(×デジモン オリ主・オリ有) 第三幕 『“騎士”VS“真祖”』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:04/11-08:34 No.277
風を切る。
シュン!
交差する、紅と漆黒。
ビュン!
そして、
斬、と何かを切り裂く鈍い音と、
「――― へ?」
意外そうな間の抜けた声が、響いた。
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第三幕 『“騎士”VS“真祖”』
グレンは手元にある【剣】―――【グラム】と、斬った敵とを交互に見つめた。
確かに手応えはあった。 それも確実な。
―――イコール、斬った。
敵は既に粒子化しており、その姿はもはや、無い。
―――たった三合打ち合っただけ、である。
「み、見かけ倒しも大概にしろよ――――!?」
意味も無く大声が出たが、敵が復活するわけでもない。 かえってそれは迷惑だ。
思わず、もう一言叫びそうになったが、止める。
近所迷惑もあるが、馬鹿馬鹿しくなったからだ。
「………兎に角、今夜の宿を探さなくては」
暦の上で春とは言え、今の時期の野宿は、流石にツラいものがある。
(どうしたものか………)
時計塔を見ると、時刻は午前三時を回っていた。
(本当にどうしよう……)
グレンの背中に、嫌な汗が流れた。
一先ず移動しようと、その場から一歩、踏み出した――― その時。
「―――ッお前! 『ナギ』!?」
誰かが驚く声が聞こえた。
グレンはその声に、反射的に振り返った。
―――― 黒いマントを羽織った少女が、街灯の上にいた。
風になびく絹の様な金の髪に整った顔立ちと、今は驚愕に見開かれているが、
その瞳―――恐らくはエメラルドグリーン―――が生み出す造形美は、一目見れば忘れることはないだろう。
それともう一人。
その横に“いる”メイド服を着た、完璧なまでに無表情な少女。
遠目から見ても目立つ緑髪と、それ以上に目立つ、妙な耳飾りからグレンは、
(………これまた随分と判りやすい “人形”じゃないか)
と、ありきたりな感想を抱いた。
――― 何故なら、背中と脚部から、火を噴出して飛んでいるのだから。
(小さい方は、さっきの野太刀の娘より小柄だな…………誰だ?)
グレンは真面目に過去に該当する人物と照らし合わせたが、すぐに止めた。
理由は、至極単純である。
(この『世界』で知っているのって、“さっきの二人”しかいないじゃないか)
これだ。
(さて、知らない娘ではあるが、このまま黙っているのも失礼だ)
「………人違いだと思うぞ、『お嬢さん』?」
少し皮肉っぽかったかな、と言ってから後悔した。
「………人違いだと思うぞ、『お嬢さん』?」
目の前の男はそう言った。
言われてみれば、確かに違う。 髪の色や身の丈、全体に漂う雰囲気は似ていたが、全くの別人だ。
第一、奴はあんな悪趣味なマフラーなどしていなかった。
「……そうか」
(――― あんな奴と違うなど……まったく、どうかしている)
内心で溜息をつきながら、『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』はそう思った。
「じゃあ『侵入者』、さっさと消えてもらおうか……」
その言葉に、男が僅かに反応を示した。
満月だったのが運の尽き。
勝負は一瞬にして決める!
「茶々丸!」
「ハイ、マスター」
以心伝心。
一瞬の間もなく、茶々丸が男めがけ突っ込む。
「――――! ちょ……ッ!!」
男が何か口に仕掛けたが、茶々丸の攻撃がそれを許さない。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」
茶々丸に気をとられているその間に、試験管と丸底フラスコ―――魔法薬を放り、詠唱を開始する。
「氷の精霊17頭(セプテンデキム・スピリトゥス)、
集い来たりて 敵を切り裂け(コウエンテース・イニミクム・コンキダント)!
【魔法の射手 連弾・氷の17矢(サギタ・マギカ・セリエス・グラキアーリス)】!!」
詠唱、完了――。
容赦無く、一斉に解き放つ!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
茶々丸が、素早く離脱し、――――17の氷の矢が、男めがけ降り注いだ。
「―――!!」
男は、声を上げる暇も無く、
ズドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
矢の群れに飲み込まれた。
「まだだ! 【氷爆(ニウイス・カースス)】!!」
ズガァンッ!!
ダメ押しにもう一撃。 凍てつく空気と爆風が、炸裂した。
爆煙が、視界を埋めつくす。
「………フン、この程度か」
着地した街灯の上で、エヴァンジェリンは鼻を鳴らした。
「魔力反応は無し。 ですが生命反応を確認――― 油断はできません、マスター」
茶々丸が傍で、そう報告した。
「ちッ、次で仕留め―――」
ようと、エヴァンジェリンは詠唱を開始しようとして、突然その声は響いた。
「…………ふむ、コミュニケーションの欠落が諍いを産む、か」
――――― 背後ノ街灯カラ。
「口で言うのは簡単だが………矢張り“ムツカシイ”もの、だな」
悟ったようなふうな口調だった。
エヴァは、茶々丸は、振り返った。
――――男ガ、“イタ”。
その手で、刃渡り1m程の紅の剣を、文字通りもてあそんでいながら、だ。
「!!?」
咄嗟にエヴァンジェリンは、街灯一間隔分後退し、また茶々丸もそれにならった。
「貴様……ッ! 何者だ!?」
ありえなかった。
いくら呪いの効果があるとはいえ、いとも簡単に自分の背後を取るこの男が。
魔法の矢が直撃した筈なのに、ほぼ無傷であるこの男が。
そして何より、『千の呪文の男』と同じ“空気”を放つ、この男が。
だから、エヴァは言った。
「答えろッ!! 貴様、何者だ!!」
が、
「………只のしがない『騎士』さ」
返答は、非情にして非常に簡潔なものだった。
「―― 吾の方からも、一つだけ尋ねる」
翡翠色をした男の瞳が、此方を見た。
――――ドクン、と心臓が跳ねた。
“ときめき”などという甘ったるいモノでは、決してない。
あの一瞬だけ、この男の姿が、“赤いマントを翻した死神”のように見えたからだ。
「『伯爵』という名――― 知っているか?」
「?」
意味が判らなかった。
「何のことだ?」
苛立ちがつのる。
「判らないなら、君は違うようだな……」
「さっきから何を言っている!? 貴様……!」
苛立ちがつのる。
「いや、良いんだ。君から“人外の匂い”がしたから、もしやと思ったんだが……すまない、疑って悪かった」
何やら一方的に誤っているが、またもや意味が判らない。
この態度が、エヴァンジェリンの感に障った。
「このッ……私を愚弄するか! 貴様はッ!!」
「!?」
男が、たじろぐ。
「茶々丸ッ!!」
「了解です、マスター」
エヴァンジェリンの声に、瞬時に反応した茶々丸は、脚部ブースターを唸らせ、街灯の上にいる男めがけてつっこむ。
「失礼」
容赦なくその拳を男に叩きつける。
「!」
男は剣で防ぐが、勢いは殺せず、
「うわっ!?」
――――落下。
ズドン!
大きく粉塵が上がる。
「これで終いにしてやる! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック―――」
刹那、粉塵の中を、男が跳んだ。
「な―――」
思わず、詠唱が止まる。
(茶々丸の拳を耐えるとは……!)
なんという頑丈さか。
「! マスター!」
茶々丸が飛翔し、男の前に立ち塞がる。
―――が、男はいとも簡単に、片手で茶々丸を押しのけた。
そして【剣】は逆手―――即ち、投擲の構え!
男の視線が、此方を向いた。
すると、刀身に光が収束し、【剣】は【槍】となり――― ブン、と凄い勢いで放たれた。
「しまっ――」
今からでは【氷楯】は、到底間に合わない。勿論、回避することも。
エヴァは思わず目を瞑り、
―――男の指が、パチンと鳴った。
「―――【誇り高き破邪の剣(ロイヤルセーバー)】」
碧の閃光が、背後の“悪魔”を射抜いた。
「―――な、に―――?」
エヴァは背後の――もはや粒子と化している“悪魔”と、すでに着地を終えた男とを、交互に凝視した。
「もう一体いたのか……危なかったな、アレは君を狙っていたぞ」
男は此方に笑顔を向けて、言った。
「な、何なんだ……お前は……」
地上に降りたエヴァの口から、無意識に、そんな言葉が出た。
先程とは違う、純粋な問いだった。
そんなエヴァの心境が伝わったのか、男は真面目に、こう言った。
「我が名は『グレン・MD・サマーフィールド』。 またの名を『紅蓮の聖騎士』と言う。……ある事情によりこの地へ来た」
ピンと張り詰めた夜の空気に、その声は、凛とした響きを残した。
つづく
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて。
第三幕はこれにて閉幕。
吸血鬼の真祖――エヴァンジェリン等との対面&対決の後に待つものは!?
そして忘れてはいけないもう一人の主人公、
『魔法先生』――ネギ・スプリングフィールド。
二つの『運命』が出合う時、物語は本格的に動きます(多分)。
次回、
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第四幕 『“魔法先生”、その名はネギ』
次回は魔法先生に、ドッキドキ♪(古)
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