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第八幕 『風雲! 図書館島大決戦 その1 ~騎士と剣士は闇夜に踊る~』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:04/21-16:08 No.355



「―――と、以上です、学園長先生」

ここは学園長室。

「そうかそうか、うまくやっておるか、ネギ君は」
「はい。グレン先生と協力して、よくがんばっていますわ。
この分ですと、指導教員の私からも合格点をだしても良いかと」

学園長に報告しているのは、しずな先生だ。どうやら、ネギに関する話題らしい。

「フォフォフォ、そうか、けっこうけっこう。……じゃが、彼にはもう一つ、“課題”をクリアしてもらおうかの」

学園長は一枚の紙を取り出すと、サラサラと筆を走らせた。

「才能ある魔法使い――“立派な魔法使い(マギステル・マギ)”候補生としての“課題”を、の―――」





『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第八幕 『風雲! 図書館島大決戦 その1 ~騎士と剣士は闇夜に踊る~』





「……何だか他のクラスの皆さん ピリピリしてますね――」

「そろそろ中等部の期末テストが近いからね」
「来週の月曜だよ、ネギ君」

ネギの問いに、本日の日直である『明石 裕奈』と『椎名 桜子』が、簡単に説明してくれた。

「へ――大変だなあ…………って! うちのクラスもそうなのでは!? 大丈夫なんですか!!」

「あ――うちの学校、エスカレーター式だからあんまり関係ないんだ」
「特にうちのクラスはず――っと学年最下位だけど、大丈夫大丈夫」

(大丈夫じゃないでしょ~~!? 全然~~!)

心の中で叫びを上げるネギだったが、それはお気楽集団の人間には伝わらなかった。

(う~~ん……担任なんだから、そういうのは何とかしたいな……あ、確か、そーゆー時に効く魔法が―――)

「―――お、ネギ先生」
「あ、はい! ……グレン先生、どうしたんですか?」

声をかけられたので振り向くと、そこにはグレンの姿が。手には、一通の便箋を持っている。

「いや、さっきそこでしずな先生に、これを渡すように頼まれてな。何か深刻そうな顔をしてたぞ」
「え? 何でしょう……」

ネギは、グレンから便箋を受け取ると、表を見てみた。

「え!? 僕への最終課題!?」

そこには、『ネギ教育実習生 最終課題』と、達筆な字で書かれていた。

(あわわっ! 今頃こんな課題が出るなんて――!?
これをクリアしないと、正式な先生にも“立派な魔法使い”にも、なれなくなっちゃう――!?)

ネギの脳裏に、『攻撃魔法200個取得』とか『悪のドラゴン退治』とか、無理難題な課題が浮かび上がった。

(……ど、どんな課題なんだろ……?)

ドキドキドキ…………

ネギは緊張した面持ちで、便箋を開く。

グレンも、固唾を呑んでそれを見守った。


『ネギ君へ  

次の期末試験で、二-Aが最下位脱出できたら、正式な先生にしてあげる。 

麻帆良学園学園長 近衛 近右衛門』


「…………」
「…………」

「な、な――んだ、簡単そうじゃないですか~~びっくりしたー」
「そ、そうだな、これからなら、十分できるな」

あはは、と笑う、2-Aの担任と副担任。

だがそれは、予想以上に困難な試練だということを、二人は知る良しもなかった。





「―――と、いうわけで、HRは大・勉強会にしたいと思います! 期末テストも、もうすぐそこなので……」
「特に今回は、最下位脱出を目標に頑張ってもらいたい」

「そ、そうです……! 実はうちのクラスが最下位脱出できないと……その(僕が)、大変なことになるので~~」
「そういうわけだから、誰かこうして欲しいというものがあったら、遠慮なく言ってほしい」

ざわめく教室。

「は―――い☆ じゃあ、提案提案~~」
「はい! では桜子さん」

「ここは『英単語野球拳』がいーと思いま――すっ!!」

おお~~~っ!

教室が、一気に沸きあがる。

(むむ……“野球”を取り入れた勉強法なのかな……?)
(“野球拳”? はて、何処かで聞いた覚えが……何かの武術だったか?)

いま一つ意味が判っていないネギと、微妙に勘違いしているグレン。

「……じゃあ、それで行きましょう」
ネギがGOサインを出した。

「え!?」
盛り上がるクラスとは対照的に、驚愕する明日菜。

「ちょっとネギ! アンタ意味判って言ってんの~~!?」
「ほら、アスナもこっちこっち」
「いやーアタシ脱がされ役に決定じゃん! っていうか、グレン先生も止めて~~」

引きずられながらも、悲鳴を上げる明日菜だったが、当の先生は、

(何だったっけな~~……)

野球拳のことを思い出すのに必死で、明日菜の声は届いていなかった。

生徒達がワイワイと騒いでいる頃。

「えーっと、成績表をわかりやすく図にすると……」

こっそり魔法で図にしたクラス内の順位を見つめる、二人の教師。

「これは……随分、極端だな……」
「そうですね……特に右端の五人は厳しいかも……」

(い、意外とやばいのかも……)

そのとき、頭上に何かがフワリと落ちてきた。

「ん?」「え?」

それは………なんと言いますか、下着です。当然、女物の。

「「んなッ!?」」

そして二人は、漸く気がついた。
明日菜を始めとする―――通称『バカレンジャー』と呼ばれる五人が、
裸一歩手前の姿まで追い詰められた光景があることに。

「な、何やってるんですか――!?」
「何ってホラ、答えられなかった人が脱いでいくルールなんだよ。野球拳だもの」

(ああ、思い出した! 
そういえば昔、そんな卑猥な遊びがあったと、“シェンウーモン”の翁が言っていたっけ……)

桜子の言葉に、グレンは、ポン、と手を打った。



ここで補足。

“シェンウーモン”とは『デジタルワールド』を護る神に近い存在『四聖獣』の1体で、
北の方角を守護する聖獣デジモンである。

が、本来ならば北の聖獣「玄武」の中国語読みは「スーツェ」が正しいはずなのだが、
過去に『デジタルワールド』の時間軸の歪みによって発生した位相のずれによって、
南の守護者である「朱雀」のデジモン、「シェンウーモン」と守護方位が入れ替わるといった事態が起こったのだ。

つまり、現在の「スーツェーモン」が「シェンウーモン」の名で北方を、
現在の「シェンウーモン」が「スーツェーモン」の名で南方を、といった感じである。

これにより『デジタルワールド』の一部が消滅、時間軸が歪む、など大きな災害に見舞われた。

現在、それらの修復は完了しているが、その二体の名称のデータだけがどうしても変更することができず、
結局そのまま放置するという形で、現在に至っている。




(そういえば、翁は元気にしているだろうか……)

確か最後に会ったのは、過去に“デジタルワールド”を崩壊の一歩手前まで追い込んだ、
史上最悪の大戦が終わった後だった。

(今思えばあの時――――)

グレンは現在の惨状も忘れて、思い出にトリップしてしまった。

(こ、これは……本気でマズいのかも……?)

ネギはネギで、自身の状況の危うさに、大きく困っていた。

「ハッ……そうだ思い出したぞ。3日間だけ天才なれる“禁断の魔法”があったんだ……」

おもむろに、杖を取り出す。

「副作用で、脳細胞の3分の1が死滅するけど、仕方ない!! ラ・ステル・マ・スキル……」

「コラコラコラ―――ッ!」「やめやめやめ―――ッ!」

サラリと怖い発言をしたネギに、トリップから帰還したグレンと、野球拳から逃れた明日菜のツッコミが炸裂した。





2階へ向かう階段の踊り場にて。
ネギと明日菜、そしてグレンが、そこにいた。

「あんたねえ、いい加減に魔法に頼るのやめなさいよっ!! 魔法バレたら即・帰国なんでしょ!?」
「で、でも……このまま最下位だったら、僕、先生になれないし、“立派な魔法使い”にも……」
「それは違うよ、ネギ先生」

ネギの言葉をやんわりと遮るグレン。

「よくは知らないが、“立派な魔法使い”は、困っている人々を助ける存在なんだろう? 
だが、何でもかんでも魔法によって解決することが、“本当の意味での助け”になるのかい?」

「!」

我に返るネギ。グレンはそれを確認すると、更に続ける。

「……今、君は目先のことに囚われて、肝心なことを見失っている。
……もっと皆を、自分自身の力を、信じてみてもいいんじゃないのか?」

「そうだよ。それに、そんなふうに中途半端な気持ちで先生やってる奴が担任なんて、
教えられる生徒だって迷惑だと思うよ!」

「!!」


(ガ―――――――――――――――――――――――ン!!)


ネギは、目から眼鏡―――もとい、鱗が落ちる心境だった。





放課後。

(そ、そうだ……グレン先生とアスナさんの言うとおりだ……それなのに僕は、自分のことだけに……ううっ)

ネギは、グレンと明日菜に言われたことに、ショックを受けていた。
魔法を過信し、生徒達の気持ちなど考えてもみなかった自分が、赦せなかった。

「……うん、そうだよ。魔法で安易に成績を上げようなんて、甘い考えだった……! ――よし!」

ネギは、ある決心をした。

(期末テストの間、魔法を封印しよう! 一教師として、生身で生徒達にぶつかるんだ!)


「ラ・ステル・マ・スキル・マギステル……
『誓約の黒い三本の糸よ(トリア・フィーラ・ニグラ・プロミッシーワ)
―――我に三日間の制約を(ミヒ・リーミタチオネーム・ペル・トーレス・ディエース)』―――!!」


黒い糸のようなものが虚空よりネギの腕に絡みつき、三本の線となって右腕に浮かび上がる。

「これで僕は三日間、ただの人だ。正々堂々、先生としてがんばるぞ~~~」

ネギの目に、やる気が満ちていく。

「こうしちゃいられない! 早速、明日の授業のカリキュラムをグレン先生と相談しなくちゃ!!」

ネギは、勇み足で駆けていった。





その夜。女子寮の大浴場『涼風』にて。

このとき、偶然にもバカレンジャーは勢揃いしていた。

「え―――っ!? 最下位のクラスは解散~~~!?」

その中、明日菜が素っ頓狂な声を上げた。
まだ、ウワサの領域を出ていないが、2-Aの成績不良に腹を立てた学園長が、

『今年は、特に成績の悪い者を留年、もしくは初等部から再教育し直す』

ということを言ったらしいのだ。

(ま、まさかネギの言ってた“大変なこと”ってこのことじゃ……)

「ん―――まずいでゴザルな」

と、ゴザル口調は『バカブルー』こと『長瀬 楓』。

「ま、まずいよね。はっきり言って、クラスの足引っ張ってるのは、私たち5人だし……」

焦っているのは、『バカピンク』、『佐々木 まき絵』。

「でも今から死ぬ気で勉強しても、月曜日には間に合わないアルね」

エセ中国語を話すのは、『バカイエロー』、『古 菲』。

(中でも足引っ張ってるのは私なのよね……)

深刻に悩む『バカレッド』、明日菜。

(くっ……やっぱりネギに頼んで……いや、でも脳細胞の死滅っていうのはちょっと……)

そのとき、非常に冷静な声が、言った。

「――こうなったら、“アレ”を探すしかないかもです……」

声の主は、バカレンジャーイチの頭脳、『バカブラック』こと『綾瀬 夕映』だった。

「夕映!?」
「何かいい方法があるの!?」

明日菜は藁にもすがる思いで、夕映に詰め寄った。
なんせ、生死が係っているのだ(脳細胞の)。

「図書館島はご存知ですね? 我が『図書館島探検部』の活動の場ですが……」
「う、うん。あの湖に浮いてるでっかい建物のことでしょ?」

聞く所によれば、かなり危険であると言われている所だ。

「実はその図書館島の深部に、読めば頭が良くなるという『魔法の本』があるらしいのです」

抹茶コーラを片手に、夕映は淡々と言った。

(((ま、魔法!?)))

残りのメンバーが驚いた。
……約一名「抹茶コーラ!?」と、無関係なものに驚いてたが、無視する方向性で。

大抵のものは、それを聞いて噂話だ、と笑い飛ばしたが、明日菜だけは違った。

(そうよ……『魔法使い』のネギがいるくらいだもの……
『魔法の本』の一冊や二冊、あったって不思議じゃない!!)

そして、明日菜は高らかに、

「みんな―――行こう!! 図書館島へ!!」

……その瞳には、普段は滅多に見られない、やる気の光が宿っていた。





それから少し時を進めて、女子寮の玄関。

「……さて、明日使う教材はできたし、早速見回りに行くか」

最初に着ていた白い服とマフラーを身につけ、ハッカパイプを咥えるグレン。

見回りは、この格好がデフォルトになっている。

「…………ん?」

一歩踏み出そうとして、何かの気配を感じ取る。

(この“匂い”は……刹那?)

人に聴かれたら、誤解を招きそうなことを思いつつ、背後を振り向くグレン。

間もなく、玄関から竹刀袋に入った野太刀―――【夕凪】を携えた刹那が現れた。

「どうしたんだ? 刹那。こんな時間に」
「グレン先生はこれから見回りですか?」

「ん、まあそうだが」
「私も今夜、その割り当てなんです」

「……真名は? 一緒じゃないのか?」
「龍宮は、今、学園外で別の仕事をしています」

「え? でも今はテスト前だろう? 大丈夫なのか?」
「それはそれ、これはこれです。それとも……私と見回りをするのは嫌ですか?」

「い、いやっ! 嫌とかそういうことじゃなくってだな……」

どう言ったらいいか判らず、口ごもるグレン。

「冗談ですよ、グレン先生。今夜の見回りが終わったら、私も勉強に専念しますから」
「そ、そうか………でも、今日は早めに切り上げるぞ。あまり遅くなると、健康にも悪いしな」

「ハイ、グレン先生」

そうして、二人は歩き出した。

―――時計は、夜の8時を指していた。





そのころ。

バカレンジャー達はネギと木乃香をチームに加え、図書館島の、

「うわひゃァァァァァ!?」

―――盗掘者防止用の罠を、潜り抜けている真っ最中だった。

分かり易く言うと、その量は原作の3倍!
故に、ネギにかかる負担も3倍!

「ハァ、ハァ、ハァ……こ、ここはホントに図書館ですか?」

ネギの疑問も尤もだ。こんなところにまで入り込む盗掘者の気が知れない。

「しっかり、ネギ君! 『魔法の本』を手に入れる為なんだよ! がんばろっ!」
「あ、ハイ……まき絵さん」

だが、魔法の加護を受けていないネギは、ただの10歳の少年である。当然フラフラだ。

「ほら、しっかりしなさいよ、ネギ」
「あ、アスナさん。すみません」

見ていられなくなったのか、ネギに手を差し伸べる明日菜。

(まったく、こんなときに限って魔法を封印するなんて……)
(す、すみません……)

それでも、小声で非難するのを忘れない。

「皆さん、のどか達の連絡によると、この先に休憩所があります。そこで一度休憩にしましょう」

先頭を行く夕映が、息も切らさずにそう言った。

「お――♪」「待ってたアルよ――♪」

嬉しそうに言う、忍者とカンフー娘。

「ほら、行くよネギ」
「ハイ。……? 夕映さん?」

そこでネギは、訝しがっている夕映の姿に気付いた。

「はい? ……何でしょうか」
「どうしたんです? 難しい顔をして」

……あ、ホントだ。ビミョ~~に眉間に皺がよってる。

「いえ、何でもありません。私の気のせいでしょう」
「……?」
「さあ、行きましょう」

そう言うと、皆の方向へ言ってしまう夕映。

(…………気のせい、です。きっと………)

夕映は心の中で、自らにそう言い聞かせていた。



ちょうど、ネギやバカレンジャー達の死角になる位置。

本来、そこに在るべき本棚が、三つほど足りず、

―――“千切れた”木片だけが、そこに転がっていた。





「―――ふむ、今日は何も無いようだな」
「そのようですね」

見回り組みの二人は、図書館島付近の道を歩いていた。

「…………おかしいな……奴等がそう簡単に、目標の獲物を諦めるとは思えんのだが……」

(では、今はその“狙いのモノ”が無い、というのか?)

グレンは首をかしげた。

「……先生?」
「あ、いや、何でもない。じゃあ、そろそろ戻―――」

ふと、グレンが言葉を止めた。

理由は簡単。

「!! この霧は!?」

あの奇怪な“霧”―――“デジタルフィールド”が、再び形成されたからである。
二人は咄嗟に目を覆った。

―――強い光が、“世界”となる。

霧の向こうからは、無数の影が、うっすらと確認できる。

「……刹那、少し長引くが、いいか?」
「ええ、いつでも」

刹那は、竹刀袋から【夕凪】を取り出す。

―――影の集団が、ゆっくりと此方に近づいてくる。

「1、2、3………ざっと見て、30体ぐらいですね」
「ということは、1人15体の割り当てか」

内ポケットに、パイプをしまうグレン。

―――影の行進は止まらない。

「刹那。前にも言ったかも知れんが、こいつらは―――」
「『概念的には妖怪や魔と同じ』、ですよね。解っています」

―――影の姿は、赤銅色の鬼や紫の刃狼、金色の猿といった、統一性に欠けたモノたちばかりだった。

共通することは、ただ一つ。

すべて“デジモン”であることだけ!!


「「「「「GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」」」」」


敵が、一斉にとびかかって来る。


「いくぞ!!」
「ハイッ!!」


シャリィィ―――ィィィ………ン


抜刀音は一つ。


ザンッッッ!!!


斬撃音も一つ。


「「ギャあア亜アあ■■■■■■■■――――――――――――!?!?!?!!!!!!!?!?!?」」



上がる悲鳴は二つ!



「―――随分手馴れてきたな、刹那」
「―――いえ、先生が作ってくださった『攻略法』のおかげです」

【グラム】と【夕凪】が、闇夜を切り裂く。


『騎士』と『剣士』の、舞踏が始まった。


つづく

魔法先生と紅蓮の聖竜騎士  ~X-EVOLUTION ANOTHER~ 第九幕 『風雲! 図書館島大決戦 その2 ~魔弾の王~』

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