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第十二幕 『風雲! 図書館島大決戦 その5 ~駆ける騎士~』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:05/09-08:47 No.474
―――期末テストまで、あと二日。
その日の一時間目は、グレンの国語の授業だった。
「朝からすまんな、真名」
「このくらい、どうということは無いよ。先生」
グレンは、真名に授業で使うプリントを運ぶのを、手伝ってもらっていた。
「―――そうそう、刹那から聞いたよ、先生。昨日の夜はイロイロ大変だったみたいだね」
「………何か引っかかるな、その響きが」
「そうかい? 聞く人が聞いたら誤解を招きそうな発言に聞こえそうかな?」
「……………ホントに勘弁してくれ」
「冗談だよ」
そんな、平和な日常の時間だった。
ピンポンパンポーン♪
『中等部国語科の“グレン・MD・サマーフィールド”先生。
至急、学園長室までお越しください。学園長がお呼びです。繰り返します―――』
当然響く、校内アナウンス。
「? 何だ? もうすぐ授業が始まるというのに………」
「行ったほうが良いんじゃないのかい、グレン先生。このプリントは、私が運んでおくよ」
真名が横で、そう言った。
「うむ……じゃあ真名、悪いが……このプリントを頼めるか?」
「ああ、お安い御用だ」
「すまん」
真名に詫びて、グレンは学園長室に急いだ。
―――――穏やかなひとときは、静かに終わりを告げた。
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第十二幕 『風雲! 図書館島大決戦 その5 ~駆ける騎士~』
「失礼します」
扉に声をかけ、静かに開く。
扉を開いたその先には、机に向かっている、頭の長い学園長の姿が―――
「………あれ?」
無かった。
「……おお、グレン君。こっちじゃこっち」
声は、真横からした。
大人しく言うことに従い、視点を横に向けたグレンは
「!! が、学園長!? どうしたんです、その姿は!!」
部屋の隅に急遽設けられたベッドで、臥せっている学園長に、驚愕の声を上げた。
身体に巻かれた包帯が痛々しい。
「何があったんですか、一体」
「うむ、手短に話そう。……グレン君、君は昨夜、図書館島付近で“デジモン”の襲撃に遭ったそうじゃの?」
「ええ、そうですが…………まさか、他で誰かが襲われたんですか!?」
「あ、いや、そうではない。………実は、図書館島内部でそれらしき“生物の姿”が確認されての―――」
「何ですって!?」
学園長は昨夜の状況を、掻い摘んで説明した。
「それで『土人形』―――君の報告書からすると『ゴーレモン』というらしいの―――を、
蹴散らしたまでは良かったんじゃが………」
黒いフードを被った男が突如現れ、学園長が操る『ゴーレム』を、一切手を触れずに破壊したのだ。
あまりの威力だったため、急遽『術』をキャンセルしたにも関わらず、
ダメージの一部を受けて負傷してしまい、現在に至るというわけだ。
「破壊された『ゴーレム』の“眼”で“視”た、最期の映像を見る限りでは、
ネギ君を含む2-Aの生徒達が、地下に落とされてしまったらしいのじゃ」
「ちょっと待ってください、“生徒達”―――? どうして生徒達が出てくるんですか?」
「う……うむむ……怒らないで聞いて欲しいのじゃが………」
ネギの最終課題。
それは子供であるネギが、今後も2-Aの担任をまとめあげ、引っ張っていけるかどうかを確かめるが目的だった。
だが能天気な2-Aの事である。普通のやり方では、それは絶対に難しい。
そこで多少荒療治とだが、
図書館島全体を使用した体験型の勉学アトラクション―――『マホラ・クエスト』作戦を決行。
そこでのネギの動向から、先生をやっていけるかどうかを判断するというものであった。
参加し安い様、予め『魔法の本』なる噂を広め―――そして昨夜、2-Aの生徒六人とネギが、
勉学の場と化した図書館島に入っていった。
「……まさか、それがこうして裏目に出てしまうとは……すまん、グレン君」
学園長は、頭を下げた。
「まことに……誠に身勝手だとは思うが、後生じゃグレン君! どうかネギ君達を助「―――学園長」」
普通に穏やかな声で、グレンは学園長の言葉を遮った。
「学園長だけが悪いわけではないですよ。昨夜、近くにいたのに気がつかなかった俺にも責任があります」
「グレン君………」
「皆は―――俺が必ず、助け出します」
そのころ、2-Aクラスは、期末テストで最下位脱出しなければ、ネギがクビになるという事をクラス全員が知り、
さらにネギとバカレンジャー達が行方不明になったという事態で大騒ぎだった。
そこへ、
「―――騒がしいぞ、みんな」
グレンが教室に入ってきた。
「ぐ、グレン先生! 実は―――「みなまで言うな。事情は判っている」え?」
グレンの返事に、(ネギのことで)一番慌てていたあやかが、呆気にとられた。
「突然だが、今日の国語は自習だ。プリントを置いていくので、各自それに取り組むように。
プリントの七割はテストに出るから、よく勉強しておくんだぞ。
―――雪広、英語の授業も多分自習になると思うから、ネギ先生の机のプリントを、皆に配っておいてくれ」
それだけを伝えると、グレンは教卓に置いていたマフラーを引っ掴み、教室を飛び出した。
背後であやかが、
「わ、わかりました」
と答えるのをしっかりと確認して。
図書館島最深部。
ゴォォォォォ………
遠くで、水が流れる音。これは―――“滝”の音?
「う………ん」
その音に気がついて、ネギは目を覚ました。
(ここは………いったい―――)
思考が上手く働かない。
頭を振り、覚えている限りの情報で、現在の状況を整理しようと―――
「!!」
思った矢先、ネギの目には、自分の周囲に倒れている生徒達の姿があった。
そこで自分たちが、地下に落とされたことを思い出すネギ。
「皆さんしっかり!! 目を開けてください! アスナさん! みんな!!」
「う……」
「うーん……」
ネギの必死の介抱のおかげで、皆は目を覚ました。
「ん……あれ……ネギ?」
「う……ここは……?」
「アスナさん、皆さん、大丈夫ですか!?」
「ん……大丈夫―――……って、ここはどこ――――――――――――っ!?」
突然叫ぶ明日菜。
だがそれも、無理はない。
そこは、巨大な地底湖のような、空間だった。
至る所に木々が育ち、まるで昼のように明るい。更に、奥のほうには建物らしきものまである。
それに加え、空間のあちらこちらに書物が入った本棚が、無秩序に鎮座していた。
「まさか…………ここは、幻の『地底図書室』!?」
急に夕映が驚愕の声を上げた。
「『地底図書室』!?」
「何やそれ 夕映?」
「……地底なのに常に暖かい光に満ちていて、数々の貴重品にあふれた場所。
―――本好きにとって、『楽園』とも『桃源郷』とも言われている、まさに幻の図書室……」
まるで夢を見ているような面持ちで答える夕映。
「へ―――そんな場所だったんだ」
「図書館にしては広すぎると思うけど」
他の面子は驚きを通り越して、唖然としてしまっている。
まあ、これが普通の反応だろう。
「―――ただし、この図書室を見て、生きて帰ったものはいないとか………」
急に目を怪しく輝かせ、オドロオドロしい声音で言う夕映。
「え~~~~~~~~っ!?」
「じゃ 何で夕映が知ってるアルか?」
……ごもっともな意見である。まあ、夕映なりのジョークのつもりなのだろう。
だがそれは、現状では些かキツイものがある。
混乱するバカレンジャー達。
「み、皆さん落ち着いて~~」
ネギは懸命に、皆を宥めた。
「痛ッ………」
「アスナさん!?」
その最中、突然明日菜が、痛みで顔をしかめた。
左肩の辺りを押さえている。
「か、肩を怪我したんですか!?」
「いや 大丈夫、別に何でもないわよ」
「一体、いつ………まさか!」
ネギの脳裏に、一つの映像が浮かんだ。
落下していくネギ。
空中でジタバタともがくが、どうにもならない。
もう駄目だ、と思った瞬間、明日菜の腕に抱きとめられ、
そして―――
「あのとき……僕を庇った所為で……」
「大丈夫だって、大したことないから」
「ダメですよ、肩を見せてください! 今 僕が、治癒魔法で―――」
と、ネギは、かざした右腕に並ぶ黒い線に気が付き、そこで、ハッとなった。
(しまった! 今 僕は、魔法を封印してるんじゃないか………!)
ネギは、何もできない無力な己を呪った。
「だめですね。やはり、どこからも上には登れないようです」
「ふ~~む、八方塞りでござるな」
「パルとのどかが、救援を呼んでくれているとは思うのですが……」
「期末までに間に合うかネ?」
「あれ? そういえばまき絵、『魔法の本』は?」
「うう……ごめ~~ん。落ちたときにどこかにやっちゃったみたい」
ざわめく生徒達。
(く……魔法が使えれば、この杖で外まで飛んでいけるのに……)
ネギは、自らの右腕を見た。腕にある三本の封印は、二本に減っている。
恐らく、気絶している間に解けたのだろう。
(一つ目の封印は解けたから……あと二日………そうすれば、ここを出られる)
ネギは生徒達を、チラリと見た。
(みんな不安なんだ………今こそ、僕がしっかりして勇気づけなくっちゃ!)
魔法使いである前に教師として、今こそ、その技量を発揮するとき!
「み、皆さん、元気出してくださいっ! きっとすぐに帰れますよっ!
だから……諦めないで、期末に向けて勉強しておきましょう!」
「「「「べ…勉強~~~!?」」」」
その場に居た面子が、大げさに驚きの声を上げた。
「……ぷっ……アハハハ! この状況で勉強アルカ――?」
最初に声をあげて笑ったのが、古菲。
「ハイ! きっとすぐに出られますから!」
「何かネギ君、楽観的で頼りになるトコあるな―――」
次に木乃香。
「ありがとう、ネギ君。せっかく見つけた『魔法の本』も、失くしちゃったのに……」
「そんなことないですよ!! 『魔法の本』なんかなくても、今から頑張れば、十分大丈夫!!」
落ち込んでいたまき絵を、ネギは励ます。
「幸いなことに教科書には困らないようですし……」
夕映は、本棚から国語、数学、英語……と、教科書を出しながら、言った。
「よ~~し、じゃあ早速授業を―――」
ぐぎゅるるる~~~っ………
誰かの、腹の虫が鳴った。
「―――と」「その前に……」
夕映を除くバカレンジャーの四人は、顔を見合わせ、
「「「「食料探しだ~~~~~っ!!」」」」
一斉にダッシュを始めた。
「あ―――っ! 待ってください! 僕も行きま―――す!!」
ネギは慌てて四人を追っていった。
地上、図書館島。
「………ここから入ったのか」
グレンは、持ち前の嗅覚を駆使して、ネギ達が入った裏手の入り口まで来ていた。
「よ……っと………」
扉が、重い音を立てて開かれる。
「…………ここには奴らの“匂い”はしないな……」
だが、楽観視はできない。
(地上付近に居ないということは、敵の目的は地下にある“何か”を狙っている、ということか?)
グレンは一歩、足を踏み出した。
「ネギ、みんな、無事でいてくれよ……」
―――騎士は、駆け出した。
つづく
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