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第十七幕 『桜並木の吸血鬼 前編』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:05/24-10:47 No.597
それは、綺麗な満月が昇った、ある春の夜のことだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
一人の少女が、桜並木を駆け抜けていた。
だが、様子がおかしい。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………!!」
その顔は恐怖で引きつり、明らかに“追われるもの”の表情をしていた。
ザザァァァァァァァ…………!!!
「ひっ………!」
突如、少女の目の前で、何者かの影が躍った。
それに腰を抜かして、少女は尻餅をついてしまう。
影が、近づく。
「い……いや……ぁ……いやぁ…………」
遂に影は少女を覆い―――
「いやぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~!!」
少女―――“佐々木まき絵”の意識は、そこで途切れた。
翌日。
ブロロロ………ン
低いエキゾーストを響かせ、一台の大型バイクが現れた。
「ったく………カエデのヤツも人使いが荒いぜ……何が『遅刻しそうだから乗っけて行ってほしいでござる』、だ」
バイクの上でぶつくさ言っているのは、黒い衣服の上に革ジャンを羽織った男、アッシュ。
事の原因は、楓にあった。
本来なら昨日の内に寮に戻らねばならなかったのに、日にちを一日間違え、山篭りを続けてしまったのだ。
今日が始業式だということを知ったのは、楓の携帯にルームメイトの“双子”から、メールが入った後だった。
―――その時間は、午前8時。
始発の電車が発車してしまった後のため、
【ベヒーモス】でフルスピード+最短距離を突っ切り(途中でパトカーに捕まりそうになりつつ)、
女子寮まで、車で1時間以上かかる道のりを、20分弱で走破。
更に、30分はかかる校舎前までは6分で送った。
(大体、トウコウ時間とやらにはまだ余裕があるじゃねえかよ……ったく……)
…………それは、その“化け物バイク”で走ったからでしょう。
起き抜け一番での運転だったのだが、何だかんだ言いながらもしっかりと送ったあたりが彼らしい。
アッシュはイライラを静めるために、校内をツーリングしていた(もちろん無断で)。
(しばらくはテントを使っていいとか言ってが……どうすっかな)
なんて事を考えながら、アッシュが偶然、桜並木にさしかかった時だった。
『 ?』
「あ? どうした、【ベヒーモス】」
相棒の【ベヒーモス】が、突然勝手にスピードを緩めた。
『 、 ?』
「あ? 何がどうし……」
と、言葉を止めたアッシュの先に、一人の少女が桜に寄りかかるようにして倒れていた。
「何ここで寝てるんだ? あのガキは。………ま、オレには関係ねぇし―――」
『 ! !』
「わかったよ、助けりゃいいんだろ!! ………ったくお前はオレのオカンかっつーの」
そう言うと、アッシュは少女を抱え上げた。
「……………」
と、思ったら、ふと動きを止めた。
「………なあ、【ベヒーモス】」
『 ?』
「なんかオレ、最近“オヒトヨシ”になってないか?」
『……… 、 ♪』
………き、気のせいですよ♪
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第十七幕 『桜並木の吸血鬼 前編』
麻帆良学園女子中等部、教室前の廊下。
生徒達が行きかう中、開いた窓の縁に腕を置いて、グレンは電話をしていた。
(※以下の電話による会話は全て、周囲に聞こえていない声だと思ってください。)
「――――は? デジモンの集団失踪、だと?」
『まぁ、有り体に言えば、そうだな』
電話の向こうの相手は、随分落ち着いた声で答えた。
落ち着き払ってる場合じゃないだろう、と思いつつも、グレンは続けた。
「それで、いなくなったデジモンの属性は? 【Da】? 【Vi】? ……まさか【Va】ではないだろうな」
ここで、補足しておこう。
デジモンには「属性」というものが存在し、特殊な例を除いて【Va】、【Da】、【Vi】の三つに分類される。
【Va】は【ワクチン】、【Da】は【データ】、【Vi】は【ウィルス】の意で、それぞれ、
【Va】は【Vi】に強く、【Da】に弱い。
【Da】は【Va】に強く、【Vi】に弱い。
【Vi】は【Da】に強く、【Va】に弱い。
と、ちょうど“じゃんけん”のような相互関係を持っている。
これに当てはめると、グレンの場合、得意な属性は【Da】、苦手な属性は【Va】となるわけである。
しかし、この相互関係も、“究極体”クラスになると意味が無くなる上、
【Va】の殆どが正義感の強いデジモンであるため、そうそう戦うことはないが―――
(―――例外、というのもある)
グレンは、自分の予想が外れてくれることを祈った。
結果は―――――
『―――【Vi】の【成熟期】。 それだけだ』
(……セ―――フ)
ホッ、と胸を撫で下ろしつつ、妙なことに気がついた。
(“それだけ”だと?)
「待て、それだけとは如何いう意味だ? 単一種族だけという意味か?」
『ああ、しかもつい最近誕生した“新種”だ。 判ったのは属性とクラス。
あとは―――【マシン型】だということぐらいだ』
詳しい事は検索中だ、と相手は付け加えた。
『こちらでも“破邪ノ使徒(ウィルス・バスターズ)”達で捜索してはいるが……何分、人手が不足気味でな。
万が一そちらの【世界】に行った時には、対処を頼む』
「了解した。 気をつけておく」
グレンは、ケータイの向こうの相手に、そう伝えた。
相手は、『そうか』と答えた。
『―――しかし、お前が教師だとはな。 理屈っぽいお前には、随分と似合った職業じゃないか』
電話の向こうの人物の声が、少し笑いを含む。
「………放っておけ。 ……ああ、そうだ。 それより、“例のモノ”は?」
『ああ、アレか。 “在庫”はあった。 近いうちに、そちらに適当な者を行かせる』
「わかった。 だが、できるだけ急いでくれ。 残り“2回”分しかないんだ」
『心配するな。 では、切るぞ』
「ああ、すまなかったな、“マグナモン”」
ピッ
会話終了。
「――――ハ~~~…………ヤツとの会話は疲れるな………」
『黄金の聖騎士』、『秩序の守護者』、『奇跡の輝き』―――と、数々の異名をもつ“同僚”であるが、
矢張りどこか苦手だ。
(…………やっぱり、属性の所為か……?)
それは関係ないだろう。 現に、“盟友”であるアイツだって――――
(――――アイツは一体、何処で何をしているのだろう……)
行方の知れない“盟友”のことを思いつつ、グレンは、ケータイをポケットにしまった。
「おはようございます! グレン先生」
今日も元気の良い声―――ネギが挨拶をしてきた。
「おはようございます、ネギ先生」
思考を瞬時に“教師”に切り替え、グレンは笑顔を返す。
「あ、おはようございます」
「おはよーございまーす」
「おはよう、神楽坂に近衛。 今日は間に合ったみたいだな」
からかい半分に、グレンは言う。
「ええ、今日はどっかの誰かがベッドに入り込んで来なかったですから」
「うう~~アスナさん、それはないでしょう~~~!」
ブンブンと手を振って講義するネギ。
「ハハハ、仲が良くって何よりだ」
グレンは『中等部2年A組』というプレートを、『中等部3年A組』に掛け直した。
キーンコーンカーンコーン……
「3年!」 「A組!!」
「「「「「ネギ・グレせんせ―――――!!!」」」」」
今日も元気だ3-A。
元気なことは良いことです。
(バカどもが……)
(アホばっかです……)
若干2名ほど疑問を持つ者がいたが、そこはスルー。
―――訂正。疑問を持つ者は、もう一人いた。
(ネギ・“グレ”? タイプミスじゃなくて?)
……ごめん。 そのままだと語呂が悪かったんだ。 ゆるせ。
それはおいといて。
(まだまだお話していない生徒さん達も一杯いるし……この一年間で31人全員と仲良くなれるかなぁ……)
ネギは浮かれ半分、不安半分の気持ちで呟いた。
ネギの修行は、これからが本番なのだ。
「―――ん?」
そんなとき、ネギは誰かが鋭い視線を放ってくるのを感じた。
その気配を辿ると―――
一人の少女と、目が合った。
(―――――ッ!?)
唐突に、ネギの身体に悪寒が走った。
(え!?)
と思ったときにはすでに、少女の視線は逸れていた。
(……あの娘は……?)
気になったので、ネギは出席簿を開いてみた。
(えっ~~と……あった。 『出席番号26番、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』さん―――――)
囲碁部・茶道部に所属。
そしてその下に、「困ったときに相談しなさい」と高畑先生のお言葉が。
(どういうことだろ? ……後でタカミチに訊いてみよう)
コンコン
「ネギ先生、グレン先生。 今日は身体測定ですよ。 3-Aのみんなも準備してくださいね」
何時来たのか、扉を叩きながらしずな先生がそう言った。
「ああ、そういえばそうでしたね」
「わ、わかりました! みなさん!! 身体測定なので脱いで準備してください!!」
し~~ん
「え? ……あれ?」
ネギは、クラスの大半以上のニヤけた笑顔や困った表情と、
「ネギ先生? 早く出ないのかい?」
「ハッ!!」
すでに廊下に出ていたグレンの声で、漸く状況を理解した。
「「「ネギ先生のエッチ~~~~ッ♪」」」
「うわ~~ん!! す、すみませ~~~~ん!!!!」
ネギは慌てて教室を飛び出た。
それを見てグレンは、
「………やれやれ」
と苦笑しがならハッカパイプを咥えた。
測定中。
「ところでさ、最近寮で流行ってる“あの噂”のこと、どう思う?」
唐突に、“柿崎 美沙”がそう切り出した。
「え? なによソレ」
「ああ、あの“桜通りの吸血鬼”ってやつね」
「「「え―――!? 何ソレ―――!?」」」
「何の話や?」
鳴滝姉妹と桜子、木乃香が興味深そうに会話に入り込んだ。
「しばらく前からある噂なんだけど……」
不気味なくらいにはっきりとした満月の夜。
女子寮の桜並木に、ソレは現れるのだそうだ
真っ黒なボロ布にその身を包んだ――――――血塗れの吸血鬼が。
「「キ…キャ――――――――――――――ッ!!?」」
悲鳴を上げる双子。
「ほ、ほほう」
「あ、ウチもそれ知っとるえ。
太っちょで口とかから何か出したりエセ中国語で話したりする幽玄道士のことやろ?」
「いや、確かに合ってるけど、ソレはそれでまた違うし……そういえばこの間、どっかに飛ばされてたわね。
………って、このネタわかる人いる?」
「「「キャアアアアアア――――――――――ァァァッ!?!?」」」
…………↑なんか、悲鳴を上げている声が増えている気がするが、気にしてはいけない。(汗
「そんなどうでもいいこと言ってないで、早く並びなさいよ」
身体測定そっちのけで話に入る面子に、注意を促す明日菜。
「そんなこと言って、アスナもちょっとこわいんでしょ~~~」
「違うわよ! そんなのが日本にいるわけ……って、ちょっとこのか!? 何描いてんのよ!?」
某吸血生物に続けて、某吸血鬼ハンターとかを描き出そうとする木乃香を、間一髪で止める明日菜。
「ったく吸血鬼なんているわけ…………」
ない、と否定しようとして、はたと明日菜の動きが止まる。
(……でもないか。 “魔法使い(ネギ)”がいるくらいなんだから、吸血鬼ぐらいいても………)
「―――そのとおりだな、神楽坂 明日菜」
「え?」
明日菜の思考を中断させたのは、氷のように冷たい印象を受ける声だった。
声のした方を見ると、そこにいたのは中学生にしては小柄すぎる少女、エヴァンジェリンだった。
「ウワサの吸血鬼はお前のような元気でイキのいい女が好きらしい。 十分気をつけることだ……」
「え…………!? あ……はぁ…………」
殆ど会話したことがない相手だった事と、突然話しかけられた為もあって、明日菜は殆ど自動的に返事をしていた。
そのため、“自分の思考を読まれた”という事に、明日菜は気がつかなかった。
「あれ……?」
ふと、ネギは違和感を覚えた。
(何だろ。この感じ………)
グレンも同時に、
(妙な“匂い”………何だ、これは―――)
違和感を、感じ取った。
だが2人の思考は、
「先生―――――――っ!! 大変や―――――――――っ!!」
廊下を走ってきた3-A保健委員、“和泉 亜子”の声によって、脳の端に追いやられた。
「亜子さん?」
「どうかしたのか?」
「ま、まき絵が……まき絵が―――――!」
―――ガラッ
「何!? まき絵がどーしたの!?」
「「わ゛ぁ~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」」
………下着姿のまま廊下に出てきた生徒達に、2人の教師は悲鳴を上げた。
保健室。
ベッドの上で安らかな寝息を立てているのは、件の少女、まき絵。
「これは………」
「ど……どうしたんですか? まき絵さん!?」
「今朝、“桜通り”で寝ているところを、通りがかりの人が見つけて運んできてくれたらしいのよ………」
しずな先生が、質問に答える。
「へぇ~~親切な人ですね。 後でお礼を言わないと」
「だな」
「―――――ヘックショイッ!!?」
『 ?』
「う―――………そうだな、ホントに風邪かもな」
そんなことはおいといて。(汗
「なんだ、大したことないじゃん」
「甘酒飲んで寝てたんじゃないかな―――?」
「昨日暑かったし、涼んでたら気を失ったとか………」
能天気なクラスメイト達は、各々の意見を口にする。
…………↑なんか、どれもヒドイな、オイ。
「……………」
そんな中、ネギの表情は晴れなかった。
(これは……? ………ほんの少しだけど……)
「………ネギ? どうしたの、急に黙っちゃって」
と、背後からかけられた明日菜の声で、ネギは思考を一時中断した。
「あ、いえ何でもありません。 ……まき絵さんはただの貧血だと思うので、心配ないかと……
それとアスナさん。 今日は僕、帰りが遅くなりますので、二人で先に食べててください」
明日菜に無用な心配をかけまいと、ネギは努めて言った。
「え……? う、うん。 わかったけど……」
「僕の分は要りませんから………じゃあ皆さん、教室に戻ってくださ~~~い」
「「「「は~~~~~い」」」」
ネギに促され、皆は教室に戻っていった。
「じゃあ、しずな先生、ありがとうございました。 後は自分たちが」
「ええ。 後は、お願いします」
と、しずな先生も退室。
保健室には、ネギとグレンの2人だけになった。
「これといって外傷はないが……どう思う? ネギ君」
ふと、グレンがそう切り出した。
「ほんの僅かですが……まき絵さんの身体から、『魔法の力』を感じます」
それを聞くと、グレンは「やはりか……」と呟いた。
「? 何か心当たりでも……?「ネギ君、一つだけ約束してくれ」……はい?」
そう言うグレンの表情は、真剣だった。
「もし、今回の犯人を見つけても、絶対に1人で行動しないこと。 ………いいね?」
「え? ……あ、ハイ………」
その言葉の意味が判らず困惑しつつも、ネギは返事をした。
日が暮れる。
空の色は、暗闇と満月が支配する世界へと変わり始めていた。
「じゃあ、先帰っててね、のどか―――」
「はい―――♪」
「………本屋ちゃん、一人で大丈夫かな?」
明日菜は、一人で帰るのどかの後姿を見ながら、心配そうに呟いた。
「『吸血鬼なんていない』ゆーたんアスナやろ?」
「そりゃあ、そうなんだけど………」
もう一度、後ろを振り返る。
―――妙な胸騒ぎがしてならなかった。
友人達と別れたのどかは、順調に家路についていた。
だがその進路には、例の桜並木が。
「あ……」
夜桜が綺麗であったが、今ののどかにとっては、恐怖の対象にしか見えない。
「こ……こわくない~~~♪ ……こわくないです~~……こわくないかも~~~……」
即興で歌を歌いながら、自分を励ましつつ、歩く。
ざわっ………
「こわっ……キャッ!?」
木々がざわめく音に、驚くのどか。
「………?」
だが、おかしい。
木々を揺らすほどの風は、“吹いていない”。
つまり、これの意味することは―――“誰か”が“意図的”に“揺らしている”!
ザザァッ………!
「え……」
気がついたときには、彼女の目の前の街灯の上に、黒い影。
黒いとんがり帽子と、外套を羽織った―――噂の【吸血鬼】が、いた。
「………27番“宮崎のどか”か……」
それは、口の端を「ニィッ……」と吊り上げると、
「悪いけどその血……少しだけ分けてもらうよ」
バサァッ!!!
外套をはためかせ、襲い掛かった。
「キ……キャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
のどかが、あまりの恐怖で悲鳴をあげ、意識を手放したそのとき、
「待てぇ――――――――――ッ!!!」
「―――!!」
疾風の如く、一つの影が飛来した。
「僕の生徒に、何をするんですか――――ッ!!!!」
疾風―――ネギは、叫んだ。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
『風の精霊 11人(ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーエス)、
縛鎖となりて 敵を捕まえろ(ウィンクルム・ファクティ・イニミクム・カプテント)!』
【魔法の射手・戒めの風矢(サギタ・マギカ・アエール・カプトゥーラェ)】!!」
ズバァッ!!
幾本にも及ぶ風の鎖が【吸血鬼】を捕らえんと、一斉に放たれる。
それを、当の【吸血鬼】は、
「もう気付いたか……」
冷静に、懐から丸底フラスコを取り出し、
「【氷楯(レフレクシオー)】………」
―――放った。
「―――やっぱ、気になる」
明日菜は、そう呟いた。
「? アスナ?」
「ゴメン。やっぱり、本屋ちゃん送ってくるよ」
先に行ってて、と駆け出す明日菜。
「あ、アスナ―――」
ドンッ!
「ウヒャ!?」
「わッ!?」
明日菜が、急に現れた人影とぶつかった。
「……せやから危ないて言おうとしたのに~~」
「「先に言いなさいよ(言わんかい)っ!!」」
明日菜ともう一人は、激しくツッコんだ。
「いたたた……」
「っ~~……すまない、大丈夫か?」
「あ、ハイ……って……」
((あれ?))
“二人”は同時に思った。
「え? グレン先生?」
「神楽坂か? ……どうした、こんな時間に」
明日菜とぶつかったのは、グレンだった。
「暗いし、危ないから本屋ちゃんを送っていこうと思って……グレン先生は?」
「俺は見回りだ。……ここ最近のウワサがあるから念の為に、な」
と、そのときだった。
―――――――――――バキキキキキ……ィィンッ!!!!!
響き渡る、破砕音。
「!? この音は!?」
「桜通りからだ………!!」
気がつくと、二人は走り出していた。
―――――――――――バキキキキキ……ィィンッ!!!!!
風の鎖が、不可視の【楯】にぶつかり、消滅する。
「!! 僕の呪文を全部撥ね返した!?」
(や、やっぱり犯人は………)
ネギは驚嘆し、そして確信した。
魔法である【戒めの風矢】を撥ね返すことができる存在を、(今のところ)ネギは一つしか知らない。
それは――――――
(『魔法使い』…………!?)
「やるものだな………」
低い、しかし幼い少女の声が、言った。
撥ね返した際に起こった突風で、【吸血鬼】の帽子が吹き飛ばされる。
「!! あ、あなたは!?」
ネギの声が、驚愕に染まる。
ネギが驚くのも、無理はない。 何故なら。
「ウチのクラスの―――――エヴァンジェリンさん!?」
相手が、自分が受け持つクラスの生徒だったからだ。
「ウチのクラスの―――――エヴァンジェリンさん!?」
ネギの、驚愕に染まる言葉を聞き、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、不敵に笑った。
「10歳にしてこの力――――さすがは“奴”の息子だけはある」
エヴァンジェリンは、指についた己の血を、愛おしそうにペロリと舐め、言った。
「フフ……さて、新学期に入ったことだし、改めて歓迎の挨拶をさせてもらうよ、“先生”」
ザッ、と一歩、歩を進める。
「――――――いや、“ネギ・スプリングフィールド”」
後編につづく
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