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第十八幕 『桜並木の吸血鬼 後編』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:05/31-12:12 No.647

「さて、改めて歓迎の挨拶をさせてもらうよ、“先生”。 ――――――いや、“ネギ・スプリングフィールド”」

静かながらも、その笑みには強者の貫禄が在った。

「な……何者なんですか!? あなたはっ!! 僕と同じ『魔法使い』なのに、何故こんなことを!?」

色々と疑問があったが、エヴァンジェリンが放つプレッシャーの所為か、
ネギが辛うじて引き出せたのはその言葉だけだった。

「この世には……『いい魔法使い』と『悪い魔法使い』がいるんだよ、ネギ先生」

言うなり、エヴァンジェリンは懐から次なる『魔法薬』を取り出し、

「『氷結・武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)』!!」

ネギにめがけ、投げつけた。

「うあっ!?」

ネギの眼前で、閃光が爆ぜた。






『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第十八幕 『桜並木の吸血鬼 後編』






ネギは咄嗟に左手を突き出し、放たれた【武装解除】の魔法を、どうにか『抵抗(レジスト)』することに成功した。

―――爆煙が巻き起こる。

パキィィィ………ィィン

だが、完全な『抵抗』とまではいかず、余波を受けてパーカーの袖が氷結し、砕け散った。

(くっ……エヴァンジェリンさんが噂の【吸血鬼】で、しかも『魔法使い』だなんて………!?)

威力は弱いものの、この魔法には複雑な魔力の制御が要される。
そこからは、エヴァンジェリンの『魔法使い』としての技量(スキル)の高さが窺えた。

「あっ…………そうだ、宮崎さん、大丈夫―――――」

と、存在を忘れかけていた、腕の中の少女に声をかけ、

「―――って、わあっ!?」

あられもない姿になっていたことに気付き、先程とは違った意味で驚く。

「あわっ……あわわ……」

と、うろたえるネギの耳に、

「何や! 今の音!?」
「あっ! ネギ!!」

木乃香と明日菜の声が届いた。
だが生憎、この二人は救いの主たりえなかった。

「あうっ!?」
「あ、あんたそれ……!?」

「い、いえ、あの、これは……」

ネギは狼狽した。
明日菜なら兎も角、一般人である木乃香に「魔法でこんなんなりました」などと、言えるわけがない。

「ネ、ネギ君が【吸血「―――誰の仕業だ!? ネギ君!」」

と、今度こそ救いの主―――グレンが、珍しく声を荒げてネギに問うた。

(この声………グレンか? ……ここは一先ず、引いた方が無難だな……)

その隙にエヴァンジェリンは、爆煙にまぎれて消える。

「あっ! 待て!!」

ネギは足元の杖を拾い上げると、

ゴォォォ……―――――――――――

自らの脚に風を纏わせ、

「宮崎さんを頼みます!」
「待てっ! ネギく……」

…………――――――――ドンッ!!

物凄いスピードで、走り去ってしまった。

「うわっ! はや!?」
「ちょっとネギ――――!?」

明日菜達が静止する声を出したときには、すでにネギの姿は完全に見えなくなっていた。

「……あのガキンチョ! 一人で突っ走って………!!」

一瞬の自失の後、悪態を吐くと、明日菜もその後を追って走り出した。

「あ、アスナ―――!!」
「待て、近衛」

グレンは静止の声を木乃香にかけ、続けてこう言った。

「近衛は宮崎の介抱を頼む。俺は二人を追う」
「えっ? あ、はい―――」

と、木乃香が言い終わる頃には、グレンは風になっていた。






「………………」

一人残された木乃香は、気絶しているのどかを抱え、

「みんな足速いな―――――オリンピックとか“SA○UKE”とかに出ればええのに」

などと、のたまった。

………っていうか、状況分かってる?






「―――――! 見つけたっ!!」

走りこと1分弱。
ネギは視界に、黒い外套を翻す、エヴァンジェリンの後姿を捉えた。



(迅い…………そういえば、坊やは【風】が得意だったな)

などと胸中で呟きながらエヴァンジェリンは、歩道橋の手すりを飛び越え、

「あっ!」

と言う間に、その身を宙に躍らせた。
黒い外套が、蝙蝠の翼のようにはためく。



「くっ……」

ネギも杖を使い、同じく飛翔する。
両者はグングン高度を上げ、遂に上空50mにまで達した。

―――満月が、二人を照らす。



「待ちなさ――――い!! エヴァンジェリンさん、どうしてこんなことするんですか――――!?
 先生としても許しませんよ―――――!!」

ネギは声を張り上げて言うが、

「はは! 先生、“奴”のコトを知りたいんだろ? “奴”の話を聞きたくはないのか?」

と、エヴァンジェリンは笑い混じりでそう返した。

「ぐっ………」

ネギは押し黙った。

(やっぱり……この人、僕のお父さんを知っている……?)

ネギの父であり、憧れであり、世では死んだと言われている、
“MAGISTER MAGI”―――【サウザンドマスター】。

その情報を知っている人物が、目の前にいる――――――

ネギの心は、ぐらついていた。

「……どうだ? 私を捕まえられたら教えてやってもいいぞ?」
「!!」

―――その一言で、ネギの本心は決まった。

「…………本当、ですね……?」
「……ああ。 もっとも――――“捕まえられれば”の話だが、な」

エヴァンジェリンは、ニヤリと笑った。






「―――――まったく、何処行ったのよ!? あのネギ坊主!!」

その頃明日菜は、学園内を疾走していた。

後を追いかけたは良かったものの、矢張りスタートの差が、痛手となった。
――――要訳すれば、見失ったのだ。

にしても。

かれこれ10分以上、フルスピードで走っている割に、明日菜の顔には疲労の色は少ない。
惚れ薬事件(第六幕参照)の時もそうだったがこの娘、以外にタフなのである。
毎朝、新聞配達で走っているからとはいえ、このタフさはちょっと異常だ―――というのは、この際どうでも良い。

「ええい! こうなりゃヤケよっ!!」

そのとき。

ヒュウン―――――――――――――――――――

「え?」

――――――――――――――シュタッ

空中から弧を描いて、人影が降りてきた。
思わず、足が止まる明日菜。

「………漸く見つけたぞ、神楽坂」
「グ、グレン先生!? ど、どっから出てきたの!?」

人影の正体は、紅いマフラーをなびかせた、グレンであった。

「見ての通り、上から――――と言うのは正しくないな。正確にはあの屋根の上からだ」

と、グレンは横に見える体育館の屋根を指差した。

――――これも要訳すれば、グレンは建物を屋根伝いに、ピョンピョンと跳び越えてきた、ということになる。

「……って、冗談聞いてる場合じゃなかった! ネギを見ませんでしたか!?」
「(冗談じゃないんだがな………)多分、こっちだ」

脇の道を指差し、走り出すグレン。
明日菜も、その後に続いた。






「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
【風精召喚・剣を執る戦友(エウォカーティオ・ウルキュリアールム・コントゥベルナーリア・グラディアーリア)】!!」

詠唱と同時にネギの周りに、剣・槍・鎌―――など、様々な武器を手にした、8体の“ネギ”が躍り出た。

「『捕まえて(アゲ・カピアント)』!!」

掛け声と共にネギの形をとった精霊が、一斉にエヴァンジェリンを狙う。



(ほう……風の中位精霊による自身の複製(コピー)を、8体同時召喚、か……10歳の見習いとは思えん魔力だ………)

内心舌を巻きながらも、あくまで冷静にエヴァンジェリンは対処した。
フラスコを五つ、背後に放る。

―――ガキキンッ!!

『魔法薬』を触媒に使った【氷楯】によって、8体の精霊の内5体が砕かれる。



(――――やっぱり………!)

それを見て、ネギは確信した。

これまで、エヴァンジェリンが使ってきた『魔法』の殆どは、【武装解除】か【氷楯】のみ。
だがエヴァンジェリンは、それらの全ての呪文の発動に、触媒として『魔法薬』を使用している。

(何故かは分からないけど、この人は魔力が全然弱い………)

加えて、使用魔法の威力の弱さ。今のネギのそれと比べれば、明白だ。

(これなら――――――勝てる!!)

ネギは、一気に勝負にでた。



残った精霊を3方向に展開、同時に向かわせ、エヴァンジェリンの気をそちらに逸らす。

バシッ!!

案の定、エヴァンジェリンは【氷楯】を発動。 精霊は、全て砕かれる。

瞬間、ネギは一気に加速。
エヴァンジェリンの背後を―――とった!

(―――――――――ここッ!!)

気付いたエヴァンジェリンが振り向くが、遅い。

「これで終わりです! 【風花・武装解除(フランス・エクサルマティオー)】!!」
「!!」

エヴァンジェリンの衣服が、下着を残して全て蝙蝠の群れへと還った。






――――タッ

――――スタッ

二人は、手近に在った建物の屋根に降り立った。

「…………やるじゃないか先生」
「こ、これで僕の勝ちですね……約束通り教えてもらいますよ」

できるだけ今のエヴァンジェリンの姿を見てしまわないように、手で顔を隠しながら、ネギは言った。

「……何でこんなことをしたのか。…………それと―――」
「お前の父親―――【サウザンドマスター】のことも、か? ふふふ………」

(――――――!! 何故それを…………!?)

「と、とにかく!! 魔力もなく、マントも触媒もないあなたに勝ち目はありませんよ!! 大人しく……」

このとき、ネギは動揺していて、気がつかなかった。






「―――“勝ち目はない”?」 

ス………と、屋根で何かが動いた。

「………これで勝ったつもりでいるのか?」

―――――――――――――――ズシャッ

このとき、ネギは動揺していて、気がつかなかった。

――――エヴァンジェリンの傍らに降り立った、伏兵の存在に。






「なっ………!?」

(新手!? 仲間がいたのか?)

迂闊だった。
真逆、此処に降りたのが“偶然”では無く、相手の計算の内だったとは。

「さあ、お前の得意な呪文を唱えてみせろ」

エヴァンジェリンが、挑発的に笑った。






(仕方ない! 二人まとめて―――)

ネギは二人を捕らえようと、詠唱を開始する。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
『風の精霊11人(ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーエス)、
縛鎖となりて 敵を捕まえろ(ウィンクルム・ファクティ イニミクム・カプテント)!」

「ふ……」

エヴァンジェリンが笑みを浮かべるのを合図に、背後の人影が動いた。

ザッ――――

「【サギ……

びしっ☆

あたっ!?」

不意に飛んで来たデコピンによって呪文が遮られ、発動直前だった【戒めの風矢】は、間抜けな音を立てただけに終わった。

「あたた……えっ、あれ!? き、君はウチのクラスの―――」

不意打ちから立ち直ったネギは、またもや驚いた。

「紹介しよう、ネギ“先生”」

エヴァンジェリンは、余裕綽々といった表情で、言った。


「―――私のパートナー………3-A 出席番号10番『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』、“絡繰 茶々丸”だ」


「え……なっ!? ええ~~~~~~~~~~~っ!? 茶々丸さんがあなたのパートナー!?」

予想外の相手の出現に、ネギは驚きを隠せなかった。

「ふふ……形勢逆転、だな。 ぼーや……」






「―――――――いた! あそこ!!」

走りながら明日菜は、前方の建物の屋根に、複数の人影を認めた。
ここからでは正確な状況までは見えないが、大体ならば判る。

「―――!! いかん!!」
「どうしたの!? グレン先生!!」

急にグレンが、声を上げる。

「ネギ君が―――捕まっている…………!」
「捕まってるって……ええっ!?」

驚く明日菜の声を流し、グレンは走りながらも考えあぐねていた。

(ここからじゃ跳躍しても届かない。 『グラニ』を喚ぶか? いや、遅すぎる………)

かといって、【誇り高き破邪の剣(ロイヤルセーバー)】を使っても、角度的にアウトだ。
第一、そんなものを使って、万が一外れたりしたら、ネギの身が危険だ。

それに、殺すことが目的ではない。助けることか目的なのだ。

(何か……何か手はないか………!?)

考えている間にも、建物との距離は縮まっていく。
そろそろ、本当に何か手を打たないと、拙い状況だ。

(…………壁に【グラム】を突き刺して、それを足場に…………)

先程グレンは「跳躍しても届かない」と言ったが、「一跳びでは届かない」という意である。

“不可能”ではない。

が、それでも、

【グラム】を突き刺す → 腕を軸に一回転 → 【グラム】の上に着地 → 再跳躍………
と、5秒以上はロスする。

(くっ………少しでいい。 ほんの少し、上に到達できる時間が作ることができれば――――)

相手を5秒以上、その場に止まらせることができれば。

(…………そうだ! これしかない!!)

ズザザザ――――――――――――ッ!!

グレンは、急ブレーキをかけた。

「え? 先生!? ちょ、ちょっと―――――――――!?」

が、後ろの明日菜は止まれない。

「キャア―――――――――ッ!?」

(ぶつかる!?)

と、目を閉じた、刹那。

――――フワリ。

「――――――――――え?」

奇妙な浮遊感を感じた明日菜は、恐る恐る目を開き―――

「え? ええええッ!?」

グレンに、持ち上げられていることを理解した。

もう一度言う。

“持ち上げられて”だ。“抱きかかえられて”いるのではない。

両手で、高々と、頭上に。

「すまん、神楽坂―――」

持ち上げつつ、身体を捻り始めるグレン。
その体勢から連想される意味は、一つしかない。

「―――――ま、まさか………」

「後は―――――――頼んだッ!!」

グレンはその体勢から、おもいっきり―――――――

「おりゃあああああああああああああああああああああ――――――――――――――ッ!!!!!!」

―――――ブン投げた。


「ウソでしょおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――――………………!?」


明日菜の身体は(きりもみをしながら)、天高く舞い上がった。




―――余談になるが、この時のグレンの投げのフォームが完璧に、
三機変形合体で有名な“某ダイナミックロボ”の三号機の必殺技(OVA版)を描いていたとか、いなかったとか。

…………完っっ全にどうでもいい話である。






「……悪いが、死ぬまで血を吸わせてもらうぞ………」
「うわあ~~~~~~~ん!! 誰か助けてぇ~~~~~~~~っ!!」

必死にもがくネギだったが、茶々丸に押さえられているため、まったく身動きがとれない。

かぷっ……

「うあっ」

首筋に、犬歯が突き刺さる。

「ああっ………うっ……あぁ……」

そこから、血を吸われているのが、はっきりと分かる。

(こ……こんなことになるんだったら……誰かパートナーを探しておくんだったよ~~~~~!!!)

途切れかけてきた意識の中で、ネギは叫んだ。
救いの神が降りたのは、まさにその時だった。


「コラ―――――――――ッ!! この変質者ども――――――――――っ!!!」


声は、頭上から。

「………ん?」

この後の状況を、エヴァは「振り返ったのが拙かった」と、後に語っている。

何故なら。

「ウチの居候に――――――何すんのよ――――――――――――――――っ!!!!」

ド ズガンッ!!!

「はぼろばっ!?!?」
「あっ」

空中で回転が加わり、威力が倍化した【きり○みキック】を、モロ顔面に喰らってしまったからだ。

ドゲシャ―――――――――ッ!!

と、吹っ飛ばされるエヴァと茶々丸をよそに、華麗に屋根に着地する明日菜。

…………っていうか、今度は『超人獅子座(要英訳)』の技ネタか。判りにくい…………ついてこれてる?



「くっ……何だ!? この力は!?」

エヴァは蹴りを喰らって腫れあがった頬を押さえ、痛みに耐えながら叫んだ。

―――ヒリヒリどころじゃない。 ズキズキだ。 かなり重い一撃をもらったとみえる。
だが、彼女の災難はそれで終わらなかった。

―――――――――ビュウンッ!!!!

満月に、何者かのシルエットが重なった。

(う、イヤな予感――――)

エヴァは、本能的に危機を察知し、一歩動いて―――


「【誇り高き破邪の剣(ロイヤルセーバー)】(弱)―――――――ッ!!」


シュバッ!!!

―――その鼻先を、閃光の剣が掠めた。

「ひッ………!」

エヴァは、息を呑んだ。

(こッ……殺す気かああああああ――――――――――ッ!?!?)

効くか効かないかは兎も角、その威力の恐ろしさだけは、エヴァは十分知っているのだ(第三幕参照)。

――――――――スタッ!

「そこまでだ、エヴァンジェリン。 ネギ君を離―――せ?」

と、ここで着地したグレンの声が上擦った。

理由は簡単。

「うっ……ううっ……」

エヴァが、マジ泣きしていたのである。

「お、おい、エヴァ? どうし………あ」

泣いている理由を問おうとして、グレンは、ハッとなった。

威嚇のつもりで投擲した【グラム】が、彼女スレスレのところに突き刺さっていたからである。

「い、いや……エヴァ……ワザとじゃないんだ。………その、えと……だから……」

さすがの【紅蓮の聖騎士】も泣く娘には勝てないのか、おもいっきりうろたえている。

…………っていうか、判っていたんなら、明らかにやり過ぎです、アンタ。

「う……うわあああああああん!! 覚えておけよ貴様ら~~~~~~~~ッ!!!!」
「あ……マスター……!」


そう捨て台詞(若干一名は違うが)を残しながら、エヴァと茶々丸は屋根から飛び降りた。

もちろん、明日菜が「あ、ちょっと!!」と制止しようとしたことなど、聞くはずもなく。






「…………ここ8Fよ……?」

明日菜は、屋根から下を覗き見て、言った。

「……そう言う君は、逆に上ったんだぞ?」

そそくさと【グラム】をしまいながら、グレンは言った。

「そうですね………って、先生がブン投げたんでしょうがッ!!」

ポグッ!!

「あ痛ッ!!?」
「あ……す、すみません!!」

つい、いつもの調子でグレンにツッコミを入れてしまった明日菜。

「いや、いい。俺がいきなり投げたのは事実だし」

と、雑談はさておき。



「うっうっ……ひっく……」
「あ、ネギ!」

明日菜は、泣いているネギに駆け寄った。

「も~~~~! あんたってば一人で犯人捕まえようなんてカッコつけて! 
グレン先生のおかげで間に合ったからよかったけど、取り返しのつかないコトになってたらどーすんのよ!!」

と叱る明日菜だったが、首の傷を見て、

「……って、あ、あれ? ちょっと……首から血が出てるじゃない。だ、大丈夫? ネギ……」

だがネギは何も言わず、明日菜に抱きつき、

「う……うわ~~~~~~ん!! アスナさぁ~~~~ん!!」

おもいっきり、泣きじゃくった。

「わッ、ち、ちょっと、危ないってば、ネギ」
「こっこわ……こわ……こわかったです――――――!!」
「あ―――はいはい、もう大丈夫だから。よしよし…………」

困った表情を浮かべつつも、優しくなだめる明日菜。
そんな二人を見ながら、グレンは小さく微笑んだ。






一方。

「…………思わぬ邪魔が入ったが……坊やがまだパートナーを見つけていない、
今がチャンスであるコトには変わりない……
 ふふ……覚悟しておきなよせんせ――――――って痛ッ!?!? 痛いぞ茶々丸!! もっと優しくしろ!!」

「あ……すみません、マスター」

湿布を貼る際に走る猛烈な痛みのあまり、茶々丸に抗議の声を上げるエヴァンジェリン。
顔が腫れる腫れない以前に、骨が砕けていないのが不思議なくらいだ。

「ぐぐぐ…………この怪我の礼、後でタップリしてやる!! 覚悟しろ!! 
“神楽坂 明日菜”と―――特に“グレン”!!!!
 ―――――って、痛たたたた………!!」

…………うわ、優先順位が変わっちゃったよ。





××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××


某所。


キチキチキチキチ………


「足リ、ナイ……」

「  」は、血を欲していた。


キチキチキチキチ………


―――満たされぬ飢え。満たされぬ渇き。


「  」は、血を欲していた。


キチキチキチキチ………


「……ウウウウウるぅ………」


低く、唸る。


「  」は、血を欲していた。


キチキチキチキチ………


「………モウスグ………」
「………モウ少シ………」


―――もうすぐ、日も暮れる。もう少しの辛抱だ。

もう少しすれば、自分の“世界”がやってくる。


「……ヨル……」
「……ヤミ……」「……アンコク……」

夜が来る。
忌々しい太陽が消え、闇が空を覆う、暗黒の世界がやってくる。


『僕』ノ『私』ノ『俺』ノ『アタシ』ノ『儂』ノ―――我ラノ世界ガヤッテクル!!


キチキチキチキチ………


「  」は―――今日も、血を欲していた。


その理由は、一つ。


「―――ヤツノ血ヲ、我ガ手ニ」


キチキチキチキチ………


暗闇の中、蟲の啼く声が、聞こえた。



つづく


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



次回予告。

???・1:「エヴァンジェリンに敗れ、意気消沈するネギの兄貴。
そんな兄貴を元気づけようとクラスの生徒達が、兄貴を元気づける会を開くんだな、これが」

???・2:「その頃、グレン様はエヴァンジェリンと“あること”について話してるんだな、っぴ」

???・1:「…………ん? 俺っち達が誰かって?」
???・2:「そいつは次回までの秘密だっぴ!」

グレン:「……いや、もうバレてると思うぞ? この作者、隠すのが下手だから。
……というか、隠す気がまったく無いだろ」

???・1:「えええっ!!? マジっスか!?」
???・2:「じゃあなんでオイラ達『???』でここに出てるんっだっぴ!?」

グレン:「それはアレだ。どっちか片方が、次回予告“のみ”の登場キャラとか」

???・1&2:「「マジっスか(かっぴ)――――――――ッ!?」」

グレン:「というわけで、
     次回、
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第十九幕 『お騒がせ妖精(トラブル・フェアリーズ)参上!』
お楽しみに!」

???・1&2:「「マジでどうなるんスか(だっぴ)――――――――ッ!?」」

魔法先生と紅蓮の聖竜騎士  ~X-EVOLUTION ANOTHER~ 第十九幕 『お騒がせ妖精(トラブル・フェアリー)、参上! 前編』

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