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第十九幕 『お騒がせ妖精(トラブル・フェアリー)、参上! 前編』 投稿者:笹谷蟹 生 投稿日:06/08-14:26 No.695
時は戻ること一週間前。
ここウェールズの山中を駆け抜ける、一匹の小動物の姿があった。
体長30cm程の細長い身体をした、白いオコジョだ。
「―――くう……っ! ネカネの姉さんも心が狭いッッ! 何でわかってくれねぇんだ……」
それもただのオコジョではない。
彼の名は“アルベール・カモミール”。通称「カモ」。
本人曰く、「かの有名な『猫の妖精(ケット・シー)』に並ぶ、由緒正しい“オコジョ妖精”」である。
「―――“妹”のために“ちょっと下着を拝借”してただけだというのにッ! たった“二千枚”ぐらいでッ!」
―――訂正。由緒正しいが、“エロオコジョ妖精”である。
「だが! このまま、おいそれと捕まってる俺っちじゃないぜィ!」
というわけでカモは、現在脱走―――から、逃亡の身なのだ。
だが、このまま国内にいては、いずれ捕まってしまうことは明白である。だから彼は、ある場所へ向かっていた。
―――目指すは、日本。
5年前に出会い、その姿に『漢』を見た、あの少年の下に―――
―――――フッ………
「!?」
頭上に、妙な影。空を仰ぐとそこには………凶悪な猛禽類が一羽、空を飛んでいた。
「たっ鷹ぁああッ!? や、やべぇッ!!」
“妖精”と言えども、見た目はただの小動物。天敵などは普通のそれと何ら変わりない。
急いで物陰に隠れようとするカモだったが、生憎とそこは見晴らしのいい場所。隠れる場所など何処にもない。
そうこうしているうちに、鷹はカモに狙いを定め、急降下を開始する。
「ぎゃああああああああああ!?」
ムンクの『叫び』みたいな表情で絶叫するカモ。早くも絶体絶命だ。
鷹の鋭い爪が、カモを捕らえるまで、あと3秒。
2秒。
1――――――――
「ぴぃぃぃ~~~~……ぴぴ―――――ッ!!」
「!?」
突然、謎の雄叫びが接近。
これに驚いた鷹は、カモを掴み損ね、地面に激突――――するかと思われたが、
ぴたっ。
地面すれすれで停止した。
「―――ふ~~~やれやれ、危なかったっぴ。危うく殺生してしまうところだったっぴ」
と、カモの頭上で、妙な声が。
カモがそちらを見ると、そこにはピンクのボールに羽が生えたような生き物の姿が。
「あ、あんた一体、何者なんだい?」
カモは、辛うじてそれだけをひねり出し、
「ん? オイラは“ピッコロモン”の“ピィ”だっぴ。よろしくだっぴ」
と、毛玉人形――――ピィは言った。
これが、二匹の(マスコットキャラの)出会いだった。
――――別に運命付けられていたわけでは、ない。
…………たぶん。
『魔法先生と紅蓮の聖竜騎士 ~X-EVOLUTION ANOTHER~』
第十九幕 『お騒がせ妖精(トラブル・フェアリー)、参上! 前編』
職員室にて。
「…………まいったな……」
グレンは椅子に腰掛け、腕組みをしながらそう呟いた。
ネギが、定例である朝の職員会議を無断欠席したのだ。
「……ネギ君、昨日のアレで“登校拒否”とかにならなければ良いのだが………」
………やっぱコイツ、予知能力とか持ってんじゃないのか? (んなわけはない)
先程のグレンの呟きの理由はこれでもあるが、実はもう一つあった。
それは…………
ドドドドドドドドド…………
「ひえ~~~ん! おろしてください~~~~っ!」
と、廊下から聞こえる騒がしい足音と少年の悲鳴によって、グレンの思考は現実に引き戻された。
「………ネギ君? と、この足音は神楽坂か………ただの遅刻だったのか?」
そう言うとグレンは、次の授業で使う教材を手に、教室へと向かった。
「あ~~~ん! ま、まだ心の準備が~~」
「もうっ! いい加減にカクゴ決めなさいよ~~~!!」
「…………何やってるんだ? 二人とも」
教室の前で、何やら引っ張り合いをしているネギと明日菜に、グレンは訊ねた。
「あ! グレンせんせえ~~~!!」
「わっととと………どうしたんだ? ネギ……先生?」
グレンの後ろに回ったネギは、涙目でこう訴えた。
「だ、だって~~! もし、またエヴァンジェリンさん達に襲われたら~~~………」
「だ~か~ら~~! その時は停学とかにしちゃえばいいって言ってるでしょ!」
「そんな簡単な話じゃないんですってば~~~!!」
けんけんごうごう。(……違うか)
その会話を聞きながら、グレンは
「……どうやら、予想は当たってたみたいだな………」
何故か痛くなってきた頭を押さえつつ、グレンはネギに向き直った。
「………ネギ君」
「……な、何ですか?」
まだビクついているネギ。 これは重症だな、とグレンは思いつつ、言葉を続けた。
「君が心配していることだが、その心配は無いよ」
「え? それはどうして――――わわッ!?」
グレンは、半ば強引にネギの腕を引いて、教室に入る。
「―――ホラ、見てごらん。 教室を」
言われて、恐る恐る教室を見渡すネギ。
「―――エヴァはいないだろ?」
廊下側の一番後ろの席は、確かに空席である。
「……ホントだ……いない……よかった~~~~………」
ホッと胸をなでおろすネギだったが、
「――――マスターは学校には来ています。 すなわち“サボタージュ”です」
「わ……わあっ!?!?」
背後から唐突にかけられた声に、飛び上がった。
「おはよう、茶々丸」
「おはようございます、グレン先生」
その反面、グレンは至って普通に挨拶を交わした。
「って、何で普通に挨拶してるんですかグレン先生!?」
「何って、クラスの生徒なのだから当たり前だろう?」
そうじゃなくって、とネギは言いかけたが、
「―――ところで先ほどの続きですが、ネギ先生。 マスターにご用があるのでしたら、お呼びしますか?」
「いいいいえッ! け、結構ですぅ!!」
逃げるように教卓に向かったため、話はそこで流れた。
キーンコーンカーンコーン
HRの後から見ても、ネギの様子は明らかにおかしかった。
授業中は上の空(グレンのフォローで事なきを得た)だったし、急に生徒達に対して
「つかぬことをお伺いしますが……
パ、パートナーを選ぶとして、10歳の年下の男の子なんてイヤですよね――――……」
などと言い出して、クラスをどよめかせた。
極めつけは、退室する際の元気の無さ。
まあ、ドアの角に頭をぶつけた時は、正直「痛そう」とか思ったが…………
「…………やはり昨夜の件で、相当参っているみたいだな……」
こういう状況(ケース)には遭遇したことが無いので(完全に理解はできていないが)、グレンはネギに同情した。
いくら『魔法使い』で、『先生』であっても、それ以外はただの10歳の少年なのだ。
(後でエヴァと話をしてみるか……訊きたいこともあるし……)
一先ず保留することにし、グレンは今やるべきことに意識を向ける。
それは――――
ザワザワザワ
どよどよどよ
ワイワイワイ
このクラスのざわめきを中断させることだった。
「とりあえず皆………休み時間は終わったぞ………?」
次の授業は、グレンの国語だった。
キーンコーンカーンコーン
昼休みの屋上。
ポカポカとした春特有の陽気が、そこら辺に漂っていた。
(昼は……眠い………)
壁に背を預け、半ば「ぼけ―――」とした思考で、エヴァンジェリンは呟いた。
まあこんな陽気では、眠たくなるのも無理はない。
そのまま、ぼうと空を見上げる。
空は、これでもかと言わんばかりに真っ青だった。
「……鬱陶しい“青空”だ………」
思いがけず、口から言葉が漏れる。
「―――そうか? 俺は好きだがな、こういう青空は」
と、突然に聞こえた声が、エヴァの思考を中断させた。
「………他人の独り言に耳を立てるのは、失礼じゃないか? グレン」
エヴァの視線が、急に鋭くなる。
「………そんなスゴイ敵意をこっちに向けるなって。昨日のは……まあ、悪かったから」
グレンは苦笑しながら、歩み寄ってきた。
「五月蝿い! 私はこう見えて齢百歳を軽く超えているんだ! 子供扱いするな!」
その態度が感に障り、エヴァンジェリンは―――もはや意識するまでも無い―――決まり文句を吐いた。
「すまんすまん、悪かった」
「フンッ!……………で、何の用だ? わざわざ私をからかうためだけに来たわけではないだろう?」
「察しが良くて助かる。実はな、昨夜の――――」
と、グレンが言いかけた時だった。
パシィンッ!
「ん?」
妙に乾いた音と気配を、エヴァは感じた。
「………エヴァ?」
「―――悪いなグレン。“何か”が学園都市の【結界】を越えたようだ。続きは後にしてくれ」
そう言うと、エヴァはグレンを素通りして階段を下りた。
途中、
「あ、おいエヴァ! 午後の授業はサボるんじゃないぞ!」
と、グレンの声がかかったが、
(何で私がこんなことを………全くもって厄介な呪いだ。 面倒くさい………)
その耳には届かなかった。
一方。
「―――どうやら上手く入り込めたみたいだっぴ」
「―――そうみてぇですなぁ」
草むらの中で、二つの小さな影が「潜入成功!」といった顔でニヤニヤと笑っていた。
…………やばい、ちょっと怖い。 リアルにこんな光景と出くわしたら引くぞ。
「スゴイっぴ。 こんなレヴェルの高い『女子校』、初めて見たっぴ」
「ふっ、俺っちのセンサーに狂いは無いぜ?」
通りを行く女子生徒を見て、(小声ながらも)盛り上がる二匹。
…………つか、何のセンサーやねん。
「……では行きやすか、ピィさんや」
「……応よ、カモさんや……っぴ」
そう言うと、二匹は人が通らなくなったのを見計らって、二匹―――“カモ”と“ピィ”は、草むらから飛び出した。
ちなみに、ここに来た当初の目的を、二匹はすっかり忘れていたりする。
………しかし息がぴったりだな、この二匹(?)。こういうのを、ことわざで…………何て言うんだっけ?
………『馬が合う』? ………違うか。
キーンコーンカーンコーン
放課後。
「―――だから心配しすぎだっての。向こうだっていきなり取って喰うような真似なんかしてこないって」
昨日の今日なんだから、と励ます明日菜。
「う~~~~そんなこと言っても~~~~~~~」
対するネギはまだ、あうあうと泣いている。
「とにかく、何かあったら今度も私が追っ払ってやるから、元気出しなさいよ!」
「アスナさんはあの人達の恐ろしさを分かってないんですよ~~~~~」
相手は(自称)最強の魔法使いにして吸血鬼―――それも真祖。その上、従者(パートナー)までいる。
今のネギでは、万に一つも勝ち目は無い。
というより昨日の時点で助かったのは、奇跡に近い。
「ハイハイ、分かってるって」
それを知ってか知らずか、明日菜は軽く流した。
(もしまた襲われたら………ブルルッ……)
血を吸われて大変なことになっている自分の姿を想像して、ネギは小さく身震いした。
と、次の瞬間。
ガボッ!!
急に布のようなものを被せられ、ネギの視界が真っ暗になる。
「!? !?」
悲鳴を上げるよりも早く、誰かがネギの身体を担ぎ上げる。
感触からして、少なくとも誰か二人が身体を担いでいることを、ネギは混乱しつつ理解した。
(ア、アスナさ――――ん! 助けて―――――――!?)
だが口から出たのは「もがもが」という不鮮明な音だけで、明日菜には伝わらなかった。
やがてネギは担がれたまま、廊下の角に消えた。
「……………あ、あれ? ネギ…………?」
その時間は、明日菜がネギから目を逸らした、ほんの2、3秒の出来事だった。
後編に続く。
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