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麻帆良演義 プロローグ 投稿者:シュラーク 投稿日:04/09-03:48 No.140
―この物語はある人間離れした者の長い人生の中のほんの一部を記した話……のはず
―【麻帆良演義 プロローグ 「若作りの仙人は麻帆良に降り立つ?」】―
ピト……ピト
天井部分から伸びた鍾乳石を伝い、湿気によって生じた水滴が零れ落ちる。
何十年、何百年と昔から変わらない動作だが、そのなんでもない音が、
「う……う~ん?」
ある男を深い眠りから目覚めさせた。
「……むにゃ?」
男は地面に寝そべっていた身体を起こし、辺りを見回した。
だが周囲には天井から突き出ている鍾乳石しかなく、誰もいない。
「はぁぁぁうぅ~ん……はて? ここはどこだったか……?」
大あくびを掻いて辺りを見回していた男は、14~5歳の少年の面影を残している。しかしなにか違和感があった。
その違和感は彼から発せられている言葉である。
「……おお、そうだそうだ! 涼しいところを探しておったらここに着いて、そのまま寝むってしまった……んだったかどうだかの記憶が曖昧だのぅ……」
なぜか見た目は少年なのにジジイ言葉で喋る男は、そう独り言を呟いた。なんだかこんな人気もない所で喋っても空しいだけな気がしないでもないが。
男は柔軟体操のような身体を曲げ、身体が動くこと確認すると仕上げに何回かジャンプをして「よし」と呟く。
「……さて、外に出てみるとするか……」
男は外に向かって歩きだした。出口に近づくにつれて光が強くなっていく。
その光に片手で目を覆いながら、男は出口を塞いでいる岩を退けて外に出た。
「おお~!! わしが見ない間になかなか面白いことになっておる!!」
視線の先にはブルドーザーやトラックなどがごった返し、都市開発だか開拓だかをしている様子が見えた。
別に珍しいことでもなんでもないのだが、男は眼を輝かせてその光景を見ている。
少しの間、その光景を眼に焼き付けるように見ていると、彼はまた一人呟いた。
「しばらく見ない間にこの国も栄えたのぅ……そいじゃあ、暇つぶしにあの国へ行ってみるとするか」
男はいきなり宙に浮き、空に飛翔した。翼が生えているわけでも、機械を使っているわけでもないのだが、それでも宙に浮く。
だが男は『そんなことは当たり前だ』というように気にすることもなく、その場から飛び去ってしまった。
―数時間後、日本の麻帆良市上空
「やはりまだあったか……図書館島」
深夜の図書館島、その上空にいたのは先ほどの男。宙に浮き、月光に映し出されたシルエットはまるで別の生き物のようだ。
彼の下に離島という形で存在している『図書館島』という巨大建造物は、中から明かりが漏れることもなく、沈黙している。
見た目の古さも相まってまるで廃墟のようだが、彼の心は踊る。
「さ~て……あれからどれだけ本が増えたか確かめにいかんとな……」
男はゆっくりと下降して図書館島の最上部に着地し、視線を地面に落として辺りを見回し始める。それはまるで落としたモノを探すような感じだった。
「確かここらへんに……お、あった!」
なにかお目当てのモノを見つけたのか、男は地面にしゃがみ込んだ。そこには金属製の取っ手のような物があるようだが、暗くて細かい所までは見ることが出来ない。
だが男は地面についたその取っ手を迷うことなく開け、注意深く中を覗き込んだ。中は光が全くと言っていいほどに無い闇しか無い。
それはダストシューターのようになっているらしく、開いた床の底にご丁寧にも「この先、最深部」の文字が書いてあった。
「アレから何年経ったかは知らぬが……期待しておるぞ!」
顔に笑みを浮かべながら男は躊躇うことなく、闇の中に身を投げた。
―それと同時刻
『この本が欲しくば……ワシの質問に答えるのじゃー!!』
巨大な石像が突然動き出し、少年少女の前に立ちふさがる。この状況だけ見るとまるでRPGのようだ。
しかし彼らにとってこれは現実であり、もちろん現在進行形で進んでいる大変な事態である。
「ななな……石像が動いた!!?」
「こ、これは……ゴーレム!?」
という現実離れした事件が上で起きている時、男は・・・
「やっぱり桃を食べながらの読書は格別よのぅ! カーッカッカッカッ!!」
桃を片手に読書をしながら満足そうにバカンスをしていた。周りは水と本棚に囲まれており、ここもここで現実離れしている場所だ。
彼は桃を齧っては本をめくり、また齧ってはめくりとその動作を繰り返す。しかし笑いながらでは不気味なことこの上ない。
だが、その楽しいひとときも終わりを告げようとしている。
・・・ドォン
「ん?」
離れたところから生々しい音が聞こえ、その音がこの図書館島最深部に響いた。
もちろんその音は男の耳にも届き、彼は本に栞(しおり)を挟んで立ち上がる。
「なんか面白そうなことでもおきたのかのぅ……? ……いつもの流れで言うと、ろくなことにならん気がしないでもないが……」
しかしその音に対する興味は捨てきれず、本と食いかけの桃を持ってノロノロと物凄く面倒くさそうに音のする方へ歩いていった。
「え~っと……これは……人間か?」
男は頭の上に疑問符を浮かべて倒れている少年少女を観察する。よく見てみると少年やらでっかいのやらちっちゃいのやらと色々倒れこんでいる。
たった今、上から落ちてきたようだが、どう見たって天井まで50mは軽くある。しかも上の大きな穴から落ちてきたということは、さらに上から落ちた可能性が高い。
一番近くにいた少年に近づき、手首を触った。特に問題もなく、脈は元気に動いていた。これはただ単に気絶・・・というより寝ているに等しいかも知れない。
「……よくもまぁ、あの高さから落ちて人間が助かったのぅ……」
なんとも信じられない出来事に男は苦笑いするしかなく、食いかけの桃を齧りながら彼らをもう一度観察した。
別になんの変哲もない子供達だが、こんなところに迷い込むなんてことはかなりの確率でありえないことだ。
そのことを分かっているせいか、別に男は急いで抱き起こすようなことはしない。しかしいつまでも放っておくわけにもいかなかった。
「……お~い、起きろ~」
声をかけるが反応が返ってこない。しばらく待ってみるが結果は同じだった。
「……仕方ないか。ほれ」
人差し指の先に光を集め、その光の波動を彼らに放った。光は彼らの身体に吸い込まれて消える。
そしてしばらく経つと、変化が現れ始めた。
「……う~ん……」
「ここは………どこ?」
波動を受けた者達全員が起き上がって薄目を開け、唸って身体を動かす。
まるで上から落っこちてきたという事実がないくらいに元気に腕を伸ばしたり、首を捻ったりしている。
そして彼らが大体意識がハッキリしてきたと判断すると、男は彼らに聞いた。
「……おぬし達、大丈夫か?」
「え……あなたは誰ですか?」
14、5歳の少女達に囲まれた中で一人だけいる小さな少年がやっと男に気づいた。
少年の言葉に反応し、やっと少女達も男の方を向く。
男は質問に答えるが、それは彼らには到底理解できないことであった。
いや、この言葉は通常の人間全てが理解に苦しむ内容だった。
「わしか? わしの名は太公望。まぁ一応『仙人』だ」
あとがき
Fate/stay night風 太公望のイメージ
――――体は桃で出来ている。
血潮は桃汁で、心はダイヤ。
幾たびの戦場を越えて不敗。
ただの一度も逃走しなかったことはなく、
ただの一度も楽をしなかったことはない。
彼の者は常に仲間と共にあり 西の地で酒に酔う。
故に、力に意味はなく。
その体は、きっと桃で出来ていた。
どうも、フェイトにヤバイくらいハマっているシュラークです。友人の話でゲームをやっていないのに大体のストーリーを把握しています。
上の解説は……しておいた方がいいのかな? 大体は納得ですよね? ちなみに桃汁はエヴァ談(まだ投稿は先になりますが旧5話くらい?)で、心(意思)はダイヤくらいに硬いという意味。
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