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麻帆良演義 第一回 投稿者:シュラーク 投稿日:04/18-20:13 No.332

―そして一人の仙人の長い人生が一部だが……ハチャメチャとなる。






―【麻帆良演義 第一回 「極東島国のはぐれ仙人」】―






「仙人……ですか?」
「世間一般的に言えばそうなるのであろう?」

怪しい(ネギ達視点)男――太公望はアッサリと言ったが、彼以外は大口開けて放心状態だった。
だが太公望本人はその反応の意味がわからないようで、硬直している彼らに首を傾げるしかない。

「……どうしたのだ? 仙人なんて別に珍しくもなかろうに」

その言葉にいち早く反応し、正気に戻ったオレンジ色の髪をした少女は一言、

「バッカじゃない?」

と、まるでかけ算が満足に出来ない親に対して子供がいうような(つまりかなりバカにしている)感じで言った。

「なっ!?」

少女の言葉という『名』のナイフが太公望の心臓を突き刺した。まぁいきなり非現実的なことを言われたのだから当然といえば当然の反応ではある。
太公望は少女の言葉の意味をすぐに理解し、驚いた表情で疑うように訊いた。

「お、おぬし……仙人も知らんのか!?」
「はぁ? あの雲の上にいるやつとかじゃないの? あれ、山の奥の方だっけ?」

少女は「まぁどっちでもいいか」とあまり深く考えるのをやめた。そんな楽天的な少女とは違い、太公望は開いた口が塞がらない。
IQ200を軽く超えるであろう彼の頭をフル回転させても考えがまとまらない。もしかしたら寝すぎて脳が錆びついているのかもしれない。
いや、すでに長く使いすぎて思考回路が腐れ落ちている可能性もあるが・・・太公望にとって今はそんな事が問題ではない。

(仙人を知らない!? ……この最深部に来たというのに“こっち”の世界の住人ではないのか? まさか……ありえん)

太公望が頭の中であれこれ考えていると、今まで黙っていた彼らの内の一人が、オレンジ色の髪をした少女の肩を叩いた。
彼女は肌の色が若干濃く、顔の感じからいって日本人といった感じではないように見えた。

「違うネ、アスナ。仙人とは古代中国の偉人のことアルよ。その辺りのことを間違えないでもらいたいアルな」

オレンジ色の髪をした少女の言葉になにやら訛りが混じった日本語で、なんとなく喋り方が中国人っぽい少女が訂正を加えた。
詳しく説明できる辺り、彼女は中国人のようだ。太公望は日本に渡った中国人がやけに「アルアル」と言っていたのを見た記憶がある。
そもそも彼も中国の人なのだが、今まで一度たりとも語尾に「アル」などと付けたことはない。そしてこれからも永遠につけることはない。

「まぁ、そんなところでいいかのぅ……。で? おぬし達、ここに何しに来たのだ?」
「あ、えっとですね……」
「ちょっと待って、ネギ」
「え? どうしたんですか、アスナさん?」

ネギと呼ばれた、この中でただ一人の少年は、彼が明日菜と呼んだ少女の言葉に反応して説明するのを中断した。
その行動を太公望は理解できなかったが、明日菜はなんだか怒りの形相で彼に近づいていく。
そして目の前に立ったが、彼はこの見た目、それにただでさえ身長が高くないので、彼女を見上げる形となった。。

「アンタ……」
「な、なんだ……?」

ムギュッ

「イタタタタタタッ!!!!!」
「チビのくせに年上に対して偉そうな態度をとるな、こんのクソガキィィィ!!」

彼女の怪力によって太公望の頬はまるで餅のように伸びる。彼女からすれば自分よりも年下であろう者に偉そうな口を利かれるのは屈辱でしかない。
確かに太公望の見た目は「やっと中学生になりました」みたいな感じなのだが、実年齢は彼女達よりざっと二百倍は上。
しかしそんなことを知らない明日菜にとって、目の前にいるのはただのジジィ言葉を喋る変なクソガキだった。







暗転







「あ~……話をまとめると、つまり……『メルキセデクの書』を探しにきたと」
「はい。それで目の前までは行ったんですが……」

太公望は引っ張られた頬を撫でながらネギの話を聞く。ちなみにネギの横では怪力お姉さんが未だにプンプンしていた。
・・・ちなみに他の少女達は、話が良く分からないと言ってそこら辺にある本棚の本を漁っている。

「石像に邪魔をされて落ちた、か。なんともアホらしいのぅ」
「うるさいわね!」

明日菜は指をポキポキさせながらまた近づこうとするが、今度ばかりは彼も負けるわけにはいかない。

「わしはありのままを言ったまでだ。あまり怒鳴るとシワが増えるぞ? その歳でシワが出来ては老後が心配だのぅ~」
「こんのガキ……」
「まぁまぁ、落ち着くでござるよアスナ殿」

やけに長身の少女がいつのまにか後ろにいて明日菜の肩を掴んで落ち着かせるが、彼女はまだ殺意の眼差しを太公望に送っている。
明日菜は長身の少女に話の邪魔になるからと強制連行されていくが、そんな明日菜の方を向きもせず、太公望はネギに訊く。
その時の彼の表情はなんとなく威圧感のような物が含まれているようで、ネギもそれを悟って唾をごくりと飲んだ。

「おぬし……もしや『魔法使い』ではないか?」
「え!? どうしてそれを!?」
「ハブッ!?」

周りに聞こえないようにネギに近づいて言ったせいで、太公望は驚きの大声をもろに喰らってしまった。すぐに耳を塞いだが、中で反響してキンキンと鳴っている。
その大声を聞いて皆集まって来るが、ネギが「なんでもないです」と言うとまたどこか散策に行ってしまって、ここにはまたネギと太公望だけが残された。
彼はしばらく「あ~」だの「う~」だの呻いて耳を押さえながら顎を動かして、耳が大丈夫か確認する。
特に異常はなかったが、ダメージがあったのは事実だった。

「あ~……痛い。そんなに驚かんでも……」
「ご、ごめんなさい……」
「しっかしまぁ、そんだけ驚くということは図星だな?」
「……はい。でもなんで貴方は『魔法使い』のことを?」
「ん? ああ、わしも“そういう世界”の者だからのぅ。知っているのは当然のことよ」

彼のいう“そういう世界”とは、もちろん裏の世界・・・言い換えると“魔法界”のことである。
別に裏だからといって、マフィアとかヤクザを思い浮かべてはいけない。
この物語での魔法界は、“魔法族”“魔族”“精霊”そしてそのどれにも属さない“仙人”で構成されている。

「え……じ、じゃあさっき言った“仙人”っていうのは冗談とかじゃなくて……」
「無論、本気だ。崑崙山所属のれっきとした仙人……いや、まだ道士だがな」
「ほ……のだ……」
「は? なんだ、聞こえんぞ?」

独り言のように呟くネギに、太公望は近づいて耳を立てる。しかし先ほどの展開と同じだと彼が気づいた時はもう遅かった。

「本物の仙人だぁぁぁぁ!!!」

キンッ

「ぐおっ!?」

ネギの感動の声に太公望はあからさまな擬音が出るくらいのダメージを耳に負った。クリティカルヒット、効果は抜群だった。
しかしそんな太公望の苦しみに気づきもせず、ネギは耳を押さえている太公望の手を無理矢理引き剥がし、握手した。

「まさか仙人に会えるなんて!! もう現代ではほとんどお目にかかれないって言われてるのに!!」
「あ、ちょ、待って……」

必死に言葉を発しようとするが、ネギはそれを確実に無視……というより聞こえていないのだろうが、彼の腕を上下にブンブンと振る。

「太公望さんって言いましたよね!? 『神界仙道協会』の楊ゼンさんと会ったこととか・」
「待てとゆうとろうが、このダアホめがぁぁぁぁ!!!」

肉というカバーに包まれた骨が一瞬、悲鳴をあげる生々しい音がその場に響く。それはもう想像するだけで寒気がするような音だった。

「はへぶっ!?」

自分の手を握って上下に振るネギに、太公望は空いている方の手で思いっきりアッパーを喰らわせた。
あまりにもキレイに決まったせいか、ネギは華麗に舞うように大きな水飛沫を上げて湖に落ちた。

「ハァハァ……腕を全力で振るなバカモノ!! 肩が抜けると思ったわ……」
「……ご、ごめんなさい……」

ネギはそう言いながらすぐに湖から這い出してきた。太公望自体、あまり腕力があるわけではないので、ネギに目立った外傷はない。
それを見て安心したのか、はたまた開放されて安堵したのかはわからないが、太公望はため息をつく。

「ふぅ……それにしても仙人ってそんなに有名だったか? というより何故にそこで出てくる代表が楊ゼンなのだ?」
「いえ、有名といえば有名なんですが……僕の場合、お姉ちゃんから色々と話を聞いてまして……」
「ほぅ……例えば?」

彼の眉が若干釣り上がっているところを見ると、凄く興味があるように見える。
ネギはそんな太公望の表情には気づかずに、記憶を辿るように語った。

「遥か昔に仙人達が悪しき者達と戦って世界を守ってくれて……それのお陰で今は世界が平和なんだよ、ってお姉ちゃんは言ってました」
「ふむふむ……そうかそうか」

なんだか嬉しそうに太公望は頷く。確かに自分の活躍が後世に言い伝えられていれば、誰だって喜ぶだろう。
・・・が、現実はそんなに甘くはない。

「で、その仙人達を率いていたのがあの天才『楊ゼン』さんで……」
「ふむふむ、楊ゼンが……って待てぇぇぇぇい!!!」
「な、なんですか……?」

ネギはいきなりの大声に驚いて数歩下がったが、もっと驚いていたのは太公望自身のはず。
彼の耳に異常が無ければ、今確実に『楊ゼン』と聞こえた。ちなみにゼンが漢字でないのは作者のパソコンでは出ない漢字だからだ。
仙人達を率いていたのは太公望(実質的には違う部分もあるが)であり、もちろん楊ゼンではない。

「あ~……コホンッ! な、なんでもない。それで? おぬしの姉は楊ゼンをなんと言っておった?」
「はい。楊ゼンさんは今現在、“神界仙道協会”の代表を務めていて、しかも容姿端麗、頭脳明晰、最強無敵の人で、女性魔法使い達の憧れだとか……」
「あ、ああ……そうか……そういうことか……」

してやられた。太公望が仙人界から逃げている間に、情報操作がされていたのだ。このことから首謀は楊ゼンとしか考えられない。
ネギが自慢気に話す辺り、お姉ちゃんから話を聞いていて、子供の頃から憧れを抱いていたりするのだろう。おそらく、その姉も楊ゼンにお熱なのかもしれない。
しかし太公望の思い出す限り、なぜか高飛車な事を言っているシーンの方が多く出てきてしまい、彼の悲しい過去とかがそれに埋もれてしまう。

(……これはわしに対する一種の復讐なのか? いや、それにしてはやり過ぎ……だが女性魔法使いの憧れというのはなんとも奴らしいような……)
「あの……どうかしましたか?」
「あ、いや……なんでもない」

本当はなんでもなくなんて全然ないのだが、適当に言葉を濁した。改めて考えればこれはあってもおかしくない事。
そう、どう考えても仕事をサボった太公望が悪いのだ。それに彼自身、名声などにはこれっぽっちも興味はない。
ちょっと悔しさも残るが、それ以外にも訊きたいことが山ほどあったので、太公望はネギに訊く。

「それより、おぬし……ええっと……」
「あ、僕の名前はネギ。ネギ・スプリングフィールドです」

その名前を聞いた瞬間、彼の顔がピクッと引き攣った。

「むぅ? スプリングフィールド……どこかで聞いたような……?」

思い出してはみるが、なにせあまりにも長く生きているため、彼の頭の中には膨大な量の記憶が詰まっている。すぐに思い出すのは難しい。
すぐに諦めて「やっぱり気のせいか……」と呟き、その考えを冥王星の遥か彼方までぶっ飛ばした。
多分、彼は痴呆症なんて言葉は知らないだろうし、知っていても認めるなんてことはしないだろう。

「で、ネギ。なぜおぬしはメルキセデクの書なんて物騒なもんを手に入れたいのだ? 見たところ、おぬしは魔法使いとはいえまだ子供であろう?」
「いえ、僕が使うんじゃないんですよ……。実は、テストでいい点を取るために必要で……」
「テ、テストでいい点取るためにメルキセデクの書を使うとは……なんちゅう贅沢なことを……」

魔法界で最高の魔法書を、まさかテストでいい点を取るために使うなんて、太公望からすれば罰当たりとしか思えなかった。
だがネギ自身は結構軽く思っているらしく、照れながら頭を掻く。というか照れる場面じゃない。

「あ、やっぱりですか? でも言い出したのはバカレンジャーの方達でして……」
「あやつらのことか? 何者なのだ、あやつらは?」
「僕のクラスの生徒です。皆、あれでもいい人達なんですよ」
「……生徒ぉ?」

今、太公望の前にいる少年ネギ(推定年齢9~11歳)が言ったことを彼は理解できていない。耳はいい方だし、今の自分の言葉をネギが否定しない辺り、言葉に偽りはない。
しばらく悩んだ後、彼は一つの結論に行き着き、勝手に解釈して一人でうんうんと頷いた。

「そうかそうか……わしが寝とる間に日本の法律はそんな面白いことに……これは日本の学生の学力はたかが知れておるのぅ……」
「あの~……僕が教師をやっているのは特別な理由があるだけで、別に日本の法律がどうとかというのは関係ないんですが……」
「む? そうなのか? なんだ、そうだったら面白かったのだが……」

面白いどころか文部科学省と教育委員会、というよりむしろ日本自体がひっくり返るだろう。ちなみに何が面白かったのかは永遠に謎だ。
太公望はちょっと残念そうな顔をしていたが、すぐに真剣な顔つきになり、キッパリとネギに言った。

「まぁ、この際そんなことはどうでもよいわ。メルキセデクの書なんて諦めて、すぐに帰った方がいい」
「ええっ!? ここまで来たのになんで……」
「……別におぬしがその若い命をここで散らしたいというのなら、あえてわしは止めんが?」
「…………」

その瞳は静かな輝きを放っていて、ネギは蛇に睨まれた蛙のようになにも言えなくなってしまった。暑くもないのに、背中の方に汗が吹き出る。
このまま睨み続ければネギはいつか大声で叫んで逃げてしまうんではないかと思われた時、いいタイミングで彼女達が帰ってきた。

「見て見てネギく~ん!! 果物とかい~っぱいあったよ~!!」
「なぜかトイレにキッチン、食材まであるのでござるが……この際、気にしない方がいいでござるか……」
「しかも全教科のテキストも本棚にあったえ。至れり尽くせりやな」

彼女達の腕の中には果物、教科書などがどっさりと抱えられていて、今言ったことが嘘ではないことがわかる。
今のところ三人しか帰ってきてないようで、他の三人はどこか違うところを見に行っているのかも知れない。

「……あれ? ネギ君、どうしたん?」
「え!? あ、はい……大丈夫です!! それじゃあ皆、戻ってきたら食事にしましょうか!」

ネギはさっきの緊張で引き攣った顔を無理矢理笑顔に変えてそう言った。太公望もそれを見てため息・・というより鼻で笑うように息を吐き出す。
そしてその場から気づかれないように去ろうとしたのだが、

「ちょいと御仁……」
「ん?」

長身の少女に肩を掴まれて後ろに倒れそうになった。しかし少女が支えてくれたお陰で、倒れることはなかった。

「なんだ? わしになにか用なのか?」
「ん~……用といったらこれといってござらんが……」

太公望の身長だと上を見上げる形となってしまい、なんとなく傍目から見れば立場的に負けている気がする。
しかしそんなことは少女からすれば気になどしていないので、上の目線から言葉を言う形にはならない。

「太公望殿……と、言ったでござるな? 拙者達と一緒に飯でも……と思ったのだが」
「むぅ? なぜわしなんかと……」
「いやいや、太公望殿はここに長くいるようでござるから、色々と話を聞けると思った次第で……」

温厚そうな表情に中に微かに疑うような感情が見られるのを、太公望はすぐに悟った。
こんなところに見た目が12~14歳くらいの少年がいたら怪しまれることくらい、本人が一番理解している。

「……わしは構わんよ。ではわしも同行させてもらうとしようかのぅ……ええっと……」
「拙者の名前は長瀬楓。あっちの活発そうなのが佐々木まき絵殿、そんでもっておっとりした方が近衛木乃香殿でござる」
「ふむふむ……ではよろしく頼むぞ、長瀬楓とやら」
「あいあい♪」

楓は笑顔でそう言っているが、内心では全然違うことを考えていた。

(太公望殿……不思議な感じのする気を放っているでござるが……今のところは危険は無いと判断してよいでござるかな……)

そんな楓の気も知らずに、太公望はネギ達の後をついていった。







あとがき

縮めてみるとなかなか短いモノですね。今後は一話はこのぐらいにおさめてみましょうかね。

麻帆良演義 麻帆良演義 第二回

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