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罪を背負って生きる者(プロローグ) 投稿者:血影 投稿日:05/21-20:51 No.2452

―それは、青々と月の光る静かな夜。


空とは対照的な紅い世界。

死屍累々と積み上げられた、無残な人形(ひとがた)。

月光を跳ね返す無数の刀剣。

一人立ち尽くす若き青年。

そのどれもが蒼く、それ以上に紅かった。


そこかしこに漂う死臭。

飛び散った脳漿。

どす黒くぬめる血液。

そのどれもが、ここが一級の「戦地」であったことを伝えている。


ガッガッ。

一人の老人が杖をつき現れた。青年に反応はない。

「お前はここで、何をしたかったのじゃ?」

青年に反応はない。うつむき立ち尽くすまま。

「お前はここで、なにができなかったのじゃ?」

青年に反応はなく、立ち尽くすまま。

「お前はここで、なにができたのじゃ?」

青年は顔を上げて、

「何も、何もできなかった。望んだことは何一つ」

とつぶやいた。

「お前はこれから、何をしたいのじゃ?」

「…何を、何をしたいんだろう?」

顔をあげた男の瞳はうつろで、どす黒い血のような赤だった。

「お前はこれから、何をするべきだろうな?」

老人の口調が変わった。師匠が弟子に答えを問うような口調へと。

「償いを、俺のすべてをかけての償いを」

青年ははっきりと答えた。老人は一瞬苦笑とも微笑とも取れる複雑な表情

をした後、ふところから輝く短剣を取り出した。

「ならば裁きはワシが下そう、お前を次元流しに処す」

青年が老人をまっすぐに見据えた。

「その罪償い終わりし時まで永劫の時がかかろうともお前をこの世界へは
帰さぬ。覚悟せよ」

青年はうすく笑いながら叫ぶ。

「師匠、あなたにお元気でというのも変な話ですが、元気でやってください」

青年の瞳は焔のように赤く、赤く輝いていた。

「ワシの心配をするなど1000年は早いわ、出直して来い」

老人は内側から輝く宝石でできた短剣を振りかぶり、青年は足元に刺さっている愛槍、稲妻と呼ばれし灼熱の槍を手にとった。

「では、縁があればまた」

青年が笑いながら言い、老人が腕を振り下ろす。
同時に、青年はこの世界からいなくなった。


「…お前は優しすぎる。他人の罪まで背負っていてはいつかつぶれるぞ」

老人は一人になった戦地でそうつぶやき、同じくこの世界から消えた。

二人の優しき魔術師達 別世界での真祖との会合(第一話)

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