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改定版 一時間目 「転移のち出会い」(1) 投稿者:よみびと 投稿日:06/09-23:35 No.709



幾多の種族が織り成す戦乱に満ちた大陸『ネバーランド』。
そこに存在する、天に至りし塔『スペクトラルタワー』。
一万階にも及ぶその頂を制覇し者は無限の力と知識を得ると言う。

その中を行く一人と一匹。
一人はくすんだ銀髪に金の瞳をした長身の男で、名はアキラ。
かつて不完全な異界の魂として『チキュウ』より召喚され、幾多の経験を経て仲間と共に復活した天魔王を打ち倒し再び封印した剣士。

その肩に乗っている一匹は白い体毛を持ったヒヨコ虫と呼ばれる生物で、名をシロ。
本名シャルロワールと言う、かつて天魔王を封印せし古代先史文明時代の賢者が魂を入れ替えた存在である。

天魔王とは世界を破滅へと導き新たな世界を創りだす存在である。
アキラと同じ不完全な異界の魂の男が創り出した邪教団によって復活させられたのだが、
力が不完全だった事と世界でも有数の実力者が揃ったアキラ達一行の活躍により封じ込められる事となる。
今度こそ、世界の終わりまで眠り続けるように完全な形で。

アキラとシロは戦いの後、『神器』を再び封印する為、各地を旅していた。
戦いの中で自らの運命を大きく変化させることになった『神器』への関りを最後まで終えるためにアキラ本人からこのことを申し出、それにシロが付いて行く事にしたのだ。
この世界に来た当初に出会い、それからも共に旅をしてきた二人は姿形の違いはあれど、中の良い相棒同士でもあり親子の様でもあった。

数ヶ月の後、封印を終えた二人は目的を世界を見て回る旅に切り替え、多くの国々や遺跡を巡っている。
その先々で多くのトラブルがあったものの、旅の中でさらに磨かれたアキラの剣腕とシロの知識によって道を拓いていった。
また、この世界においての寄る辺無い旅人である二人にとって、遺跡で得られる幾つもの魔法のアイテムなどは貴重な資金源でもあった。

そうして辿り着いたスペクトラルタワー。
その数百を越える階に彼等はいた。

アキラの手にした野太刀が一閃し、両断された魔物が血を吹き上げながら崩れ落ちる。
今し方切り捨てたのが最後なのだろう。辺りを一瞥し、動く敵が居ない事を確認すると長い刀身に付いた血を払うように一振りして鞘に収める。
軽く息を吐くと、壁際に置いておいた荷物を回収する。

「ふむ、ヌシにしてはなかなか時間が掛かったちね」

「さすがにこの辺りの魔物は手強くなってきたからな。数もそうだが一体一体が面倒だ」

軽い口調で話し合う二人だが、並みの冒険者ではその一体にも大変な苦労をさせられる事から、アキラの力とそれににれに対してのシロの信頼が伺えた。

「しかし長いな、この塔は。……もう七、八百階は昇ったぞ」

「まだまだ、1割にも達していないっちよ。弱音を吐くのは早いっち」

シロの言葉に、はあ、と溜息を吐く。
チキュウへの帰還方法を探しに来たものの未だに何の手掛かりも掴めていないまま、1ヶ月も塔に篭もっている。その上で1割にも満たないと言われれば無理も無い反応だろう。
が、その顔を真横で見るシロは

「どうせ、無理に帰りたいなどとは思ってないくせにっち。ヌシに付き合ってこんな女気の無い所に連れ込まれたワシの方が不幸っちよ」

と非難してくる。
シロの愚痴は何時もの事なので、アキラは軽く肩をすくめて流すと足を進ませた。
暫く細く長い回廊を歩いているとシロが肩の上で足踏みをして呼び止める。

「少し待つっち」

「何だ」

「そこの壁に違和感を感じるっち。極僅かにじゃが魔力を帯びてる様っち」

言われて、指し示される壁に近づいて見る。
一見何の変哲も無い様に見える壁だが、手を触れた瞬間、淡い光を放って壁が消えていた。
その奥には小部屋があり、中に入ると魔方陣が床一杯に描かれていた。

「これは……」

「ふーむ、どうやらこれは何らかの儀式の為の部屋であり、そのための魔方陣の様っちね」

「わかるのか?」

「これでも元賢者っち。とは言え、近くでもっとよく見ないと詳細まではわからんっち」

とりあえず詳しく調べてみようというシロの意見もあって部屋の中央へと向かう。
小部屋は五メートル四方の正方形をしていて、壁には魔法で灯されていると思わしき燭台が連なっている。
辺りを見回しながら歩くアキラが、魔方陣の中心に立った瞬間、突如として魔方陣から光の文字が浮かび上がり、二人を囲むように広がり始める。

「っく、何だこの光は!?」

「い、いかんっち。これは転送の魔方陣っち!」

浮かび上がる文字を見るシロの声は焦りに満ちていた。

「転送だって!?」

「何処に飛ばされるのまではわからんっちが、間違いないっちよ!」

「くそっ、なら発動する前に!」

そう言って入り口に駆け出すアキラ。

「道が……!?」

だが先ほどまで存在していた道は壁に塞がれており、今度の壁は先程の様に触れようが叩こうが一切反応を示さなかった。

「シロ! 何とかならないのか、元賢者なんだろう?」

「無理を言うでないっち!」

言い争う二人を他所に魔方陣の光はますます強くなりやがて視界は真っ白な光に埋め尽くされる。

(くそっ! こんなところで……)
 
徐々に体の感覚があやふやになり、意識も薄れてきている。
そうして己の意識が切れる寸前、アキラはどこかこの感覚に懐かしさを覚えていた。

(この感覚、どこかで…… そうだ、これは…… 最初に召喚された時の……)

そのまま、光に溶かされるようにしてアキラとシロの姿は消えていった。
しばらくの後、光が止んだ跡には何も無く、まるでそこには何も存在しなかったように魔方陣すら消え去っていた。






魔法先生ネギ魂(ソウルズ)! 一時間目 「転移のち出会い」(1)





幾つもそびえる山々に樹海の如き森。
その上空から一筋の光が舞い降りてくる。
徐々に光が収束して成人男子程の塊になると、やがて空に解けるようにして消え去って行った。
光が去った後には一人の男と一匹の生物が横たわっていた。

「くっ……ここ、は……?」

体を起こした男―アキラ―が辺りを見回すとそこにあるのは先程までの壁に囲まれた小部屋などではなく、数々の緑が広がっていた。
頭は混乱していたが、何はともあれまず現状の確認をしようと己の身を周りを確認する。
身に着けていた装備は一通り有り、傍には気を失っているシロと道具を詰めた袋が転がっている。
特に無くなったり、大事になっていることは無い様なので安堵の息を吐く。

「それにしても凄い森だな…… プリエスタ辺りか?」

「う、う~む……」

呻き声に振り返るとシロが小さな体を震わせながら起き上がっていた。

「ああ、気が付いたか。大丈夫か」

「うむむ……頭がクラクラするっち。ここはどこっち?」

「さあな。とりあえずあの世じゃなさそうだが……」

おれの方が知りたいよ。と呟いた瞬間、弾かれた様に振り返った。
そのまま森の奥を強く睨み付けるように凝視していたが、やがてゆっくりとシロを己の肩に乗せ、荷物袋を括り付けると立ち上がる。

「……魔物っちか?」

「たぶんな。ギラギラしたものを感じる」

襲い掛かってくるなら躊躇はしないが、場所も時間も分からない状況でわざわざ戦うことは無い。
迫ってくる気配に背を向けると俊敏な動きで走りだした。



鬱蒼と茂った森の中でも常人以上の速度で駆け抜けるアキラだが、後ろからの気配は徐々に数を増しながら近付いて来ていた。
このままでいけば追いつかれるのは明らかである。

「くそっ、しつこい奴らだ!」

「こうなれば迎え撃つより無かろう。ちょうど開けた場所が在るっち」

シロの言うとおり前方には、空から見ればまるで緑の絨毯に丸く穴が開いたように見えるであろう、広場が在った。
振り返れば後ろにはすでに数メートルという距離にまで気配―魔物―の姿が近付いていた。

仕方ない、と気持ちを切り替えると駆け抜ける勢いはそのまま、体から荷物を外すとその上にシロを乗せ脇に抱える。
体がちょうど森の切れ目に差し掛かった瞬間、広場中央に向けて荷物ごとシロを投げ飛ばすと同時に振り向きざま抜刀する。
振りぬかれた銀閃の後、アキラを刺し貫かんとしていた狼人型の魔物は腕を断たれ、苦悶の叫びを挙げる。

「GAAAAA!!?」

「こりゃーーっ、もっと丁寧に扱うっちーーー!」

「そのくらい平気だろ!」

シロの方は見ないまま返事をすると、次々に襲い掛かってくる魔物を両断していくアキラ。
その手に持つ太刀は時に剛(つよ)く、時に柔らかに敵を屠り、その体捌きは霞の如く身に触れさせない。

やがてその半数以上を切り倒された魔物達は事ここに至って、目の前にいる存在が哀れなる獲物ではなく、自分達を遥かに超える力量の持ち主であることを理解し始めたのだろう。
先程までの様にむやみに襲い掛かってくることはせずゆっくりと包囲するように扇状に広がり始めていた。
魔物の動きに変化があったことに気付いたアキラは後ろ足でシロに近付く。

「――気付いているか」

「うむ」

アキラとシロが言っているのは魔物の事であった。
今まで相手にしていた魔物はネバーランドでは見たことの無い種類が混じっている上に、倒された魔物が死骸さえ残さず消えさっている。
アキラはそれほど長くネバーランド居る訳ではないが多くの土地へ旅をしており、またシロは千年以上生きている存在である。
その二人が見たことも無く、また切り捨てたあとに何も残す事無く消え去る魔物はいないことは無いが明らかにそれと違う。

「まあ、考えるのは後だな」

「じゃな」

結論を置いといて武器を構えるアキラ。
そこに、

「伏せてください!!」

という声が聞こえた瞬間、背後で何者かの気が膨れ上がった。


「神鳴流秘剣 百花繚乱!!」


言葉に従って身を伏せた二人の横を放たれた気の奔流が駆け抜けて行き、魔物達の一部を根こそぎ消し飛ばす。
思わず振り返ったアキラの目に入ってきたのは、身の丈ほどの野太刀を振りかざした、小柄な少女の姿だった。

魔法先生ネギ魂(ソウルズ)! 改定版 二時間目 「転移のち出会い」(2)

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