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麻帆良に来た漢!第三話(ネギま!×リアルバウトハイスクール) 投稿者:ゆの字 投稿日:06/30-07:50 No.2616

 昼休み、慶一郎は二人の生徒から呼び出しを受け、屋上に向かって歩いていた。しかし、その足取りは心なしか思いように見える。何故なら慶一郎は昼休みまでの休み時間毎に生徒の女の子達から質問攻めを受けていたからだ。

「つい先日来たばかりってどこか行っていたんですか?」 七年間ほど世界中を旅行して、最近ではソルバニアという異世界に行っていた。

「わ~じゃあ英語とかペラペラなんだ?」 日常会話、裏世界の専門用語も無問題。

「何か趣味は?」 主に料理か?後は武術の鍛錬かな。

「彼女いますか~?」 あ~厄介なマフィアの女首領とかが自称してたかな。

 まさか本当の事を話すわけにはいかず、慶一郎は対応に苦労した。なにせ若さ溢れる女子中学生、そのパワーは押して知るべし。その中でも特に執拗に質問してきたのは2-Aの朝倉和美という少女。どうも彼女は報道部らしく、スクープを探してまわるパパラッチのようなものらしい。慶一郎はそのしつこさに思わず物理的排除を考えてしまったほどだ。
 しかしまあ、いきなり初日で問題を起こすのも躊躇われたので、軽く耳元で忠告ならぬ警告をしておいた。その後、顔を真っ青にしてガクガク震える朝倉は慶一郎に対する態度を一変させたとか。
 そうして現在、昼休み……慶一郎は予想以上に疲れていた。そんなに男の新任教師が珍しいものなのか?麻帆良学園中等部の生徒達は、慶一郎が知っている大門高校の生徒達に何処か似ている気がする。

「……こんな場所に呼び出して、一体何の用かなお二人さん?」

 校舎の屋上にやってきた慶一郎は、そこで腕を組んで怖い顔(元が可愛い顔だからあまり怖く見えない)でこちらを睨んでいる刹那と、そんな相方の態度に苦笑しながらその彼女の後ろに控えて立っている龍宮を見て尋ねていた。

「少し伺いたい事があるのですが、南雲先生?」





『第三話 課題とバカレンジャーと探検と~その①~』





 刹那は『先生』の部分に皮肉を込めて言った。慶一郎は疲れていたので簡単に流す。

「構わないが……正直疲れているんだ。手短に頼むぞ?」

「最初にはっきりさせておきたいの事があるんです。昨日先生と戦ってから後の龍宮に起こされるまでの記憶がないのですが」

「そりゃ気絶してたしな……って龍宮、説明してないのか?」

「こう憤慨されていてはね、事実ですら曲解しそうな勢いだったんで詳しくは説明できていない」

 やれやれと頭を振って慶一郎に答える龍宮。それ以上に疲れた顔を見せる慶一郎。

「仕方ないな。あの後そこの龍宮とタカミチ……高畑先生が来てね。俺は事情聴取のため高畑先生と学園長室へ、気絶した桜咲を寮に運んでくれたのは龍宮だ。これがあの後の顛末だよ、納得したかい?」

「わ、私が気絶してから龍宮達が来るまでに、その……へ、変な事とかしてないですね!?か、身体を触ったりとか……」

「気絶した瞬間に地面に崩れ落ちるのを支えたくらいは仕方ないだろう?もっとも救援が来ずに俺が悪党だったりしたら、あの状況で何が起きたかは保証できないがね。なにしろ桜咲は可愛い子だから……これからは実力に相応しい対応をするんだな(とりあえず、いきなり人様に真剣で切りつけるのはやめて欲しい……危ないから)」

「そ、それは、いきなり光の中から現れたりするからじゃないですか!私じゃなくても怪しすぎて驚きますよ!」

 顔を真っ赤にした刹那を見て、慶一郎はどこか懐かしさを感じていた。真面目に侍を目指すとある女子高生のような多感な反応だったが、所詮慶一郎にその辺の心理を理解することはできなかった。

「なんで怒るんだ?俺はこれでも紳士的に話しているつもりなんだが……」

「それならば、昨日の出来事について納得のいく説明をして下さい!」

「フッ、南雲先生……私もそれには同感だ。後で説明を聞くと言っておいただろう?」

(……う~ん、どうしたもんか?)

 どうにも説明をしなければこの場は収まりそうにない。かといって、学園長達から魔法関係の秘匿を言い渡されたばかりで、ホイホイ事情を話してしまっていいものだろうか?と慶一郎は迷っていた。
 そんな困惑している慶一郎の態度に刹那はふと気付く。

「……南雲先生?もしかして、私達を魔法関係者と無関係だとか思ってます?」

「……違ったのか?」

 刹那の言葉に目を剥く慶一郎。昨日の学園長の話では、そうそう魔法関係の事は知られていないはずなのだが……一クラスの生徒に二人も関係者がいるとは驚きである。担任に副担任まで関係者なのだから、生徒の方は魔法のまの字も知らないと踏んでいただけに、予想外だった。

(もしかして、魔法の秘匿って随分とアバウトなんだろうか?)

「はい、ですが私達は『魔法使い』ではありません。なんというか、裏の世界を知る協力者、といった所でしょうか……」

 自分に課せられた任務を思い出し、顔を俯かせる刹那。つい感情が沈んでいく彼女の言葉を引き継ぐように龍宮は話を続ける。

「私も裏では仕事を依頼され、まあ色々とやってきたよ。恐らく南雲先生もそれに近い立場なんじゃないかな?」

「ふむ、そういう事なら別に構わない。というかむしろ知っておいて貰った方がいい、が……」

「南雲先生?」

 不意に言葉を切る慶一郎に、訝しげな顔を見せる刹那。龍宮も同様である。

「俺の事情の話ってさ、これから初見の関係者に会うたびに全部説明して歩かないといけないのか?」

 慶一郎の最もな意見に思わずバランスを崩す二人(ずっこけたともいう)。

「た、確かに、それはあまり効率的ではありませんね……」

「そうだな、一々何度も同じことを聞かれるのは……あまり気分のいい物ではない」

 二人とも納得はできなかったが、彼の心境を思うと妥協することを承諾した。

「そういうことで頼む。学園長に言っておくから、その時にでもまとめて説明を聞いといてくれると、こちらとしても楽……いや、助かるかな」

 暫くの間厄介になると思われる世界だが、必要以上には介入する気はない慶一郎だった。そうこういっているうちに昼休みの時間も終わりを迎え、詳しい説明を結局受けられなかった二人はしかし、南雲慶一郎という人間をほんの少しではあるが知る事ができたのであった。



 教室へ戻る途中、慶一郎は校舎のいたる所でピリピリと緊迫した空気を感じていた。すると前の方から、クラスの生徒二人を連れたネギがこちらに気付き歩いてくる。

「よぉ、ネギ先生。ところで校舎のいたる所でピリピリしてるけど、何か知っているかい?」

「え~、南雲先生も知らなかったの?そろそろ中等部の期末テストが近いからね」

「そうそう、来週の月曜からだよ、先生達」

 慶一郎の問いにネギと歩いてた2-Aの生徒、明石裕奈と椎名桜子が割り込んでくる。

「へ~学期末テストですかぁ。大変ですね……ってうちのクラスもそうなのでは!?」

「あはは、うちの学校ってエスカレーター式だから。皆、気にしてないみたいね~」

「特にうちのクラスはず~っと学年最下位だけど、大丈夫大丈夫~」

 あははと笑って済ます二人にネギは動揺しまくりである。かくいう慶一郎も何か嫌な予感がしてならなかった。

(それにしても二人とも……学年最下位を自ら誇るなよな)

 そんな能天気な生徒達に、慶一郎は甚だ呆れるだけであった。それと、先程不意に視界に目に付いた悪趣味なピカピカの花のトロフィーは、テストで学年トップになると貰えるらしい。……慶一郎としてはどうでも良かったが、さっきからチラチラ見ているネギはどうもクラスにそれを飾りたいようだ。

「ネギ先生?」

「あ、はい!ってしずな先生?」

「あの、学園長がこれをあなたにって……」

「えぇ、何ですか?そんな深刻な顔して……って僕への最終課題!?」

(最終課題?ああそうか、ネギ先生はまだ教育実習生だったっけ?)

 しずなから渡された手紙を受け取って、ネギはいきなりで驚いている。

(あぅぅ!?いきなりこんな課題出されるなんて思ってもなかったよー!?どうしよう、これをクリアしないと正式な先生にも『立派な魔法使い』にもなれなくなっちゃうよ~!?悪のドラゴン退治とか!?攻撃魔法二百個獲得とか~!?)

 あまりの驚きで固まっているネギの後ろから、慶一郎はその手紙を見ながら問いかける。

「んで?その課題とやらは何なんだ、ネギ先生?」

「はっ!そ、そうですね、一体どんな……?」

 そう言って封をされた手紙を開いていくと、何とそこには……


『ねぎ君へ 次の期末試験で、二-Aが最下位脱出できたら正式な先生にしてあげる。 麻帆良学園学園長 近衛近右衛門』


 と、書かれていた。

「……な、な~んだ、簡単そうじゃないですか~。びっくりしたな~」

 最悪を予想していただけにネギの安堵は大きかったが、後ろから見ていた慶一郎としずなは全く逆の事を考えていた。隣の彼女を見ると、気まずそうに視線を逸らすしずなに小声で話しかける慶一郎。

「しずな先生。うちのクラスの成績表ってあります?」

「……はい、ネギ先生に渡そうと。これです、南雲先生」

 受け取った成績表を見て、思わず慶一郎は顔を顰める。

(……なんだこのクラスは?学年トップ級がいたりするのに、それを覆す程の最下層に五人。他の生徒は平均的に中の下くらいか……他のクラスがどれくらいかは分からないが、学年最下位というのも何か納得させられそうだな。……ネギ先生には不幸以外の何者でもないが)

「これ冗談じゃないですよね?……この最下層五人って予想以上にひどいですか?」

「すいません、私も上手く言葉が出てきません……」

「そうですか……」

 人としてできた性格のしずなを絶句?させてしまう生徒をどうしたものか、と考えていた慶一郎は当事者達を見る。課題の書かれた手紙を明石と椎名に興味半分で見られそうになって慌てているネギを見て、そんな不幸な少年に慶一郎は密かに合掌していた。





「えーっと皆さん聞いて下さい!今日のHRは大・勉強会にしたいと思います!!次の期末テストはもう、そこまで迫ってきています!」

 午後の最後の授業のLHR。教室に入ってきたネギは生徒達を見回しながら言ってきた。副担任の慶一郎もそんな彼を補佐するべく、やけに分厚い茶封筒を持って教室にいた。

「あのっそのっ……実はうちのクラスが最下位を脱出できないと大変な事に(主に僕が)なるので~~。えっと皆さん、頑張って猛勉強していきましょう~!」

 教壇に立って話しているネギはいつもより落ち着きを失っていた。

(まあ実際に正式教員になれるかどうかの瀬戸際だし、何よりこの2-Aというクラスだからな……そんなネギ先生の為に、少しでもフォローしておくか。というよりネギ先生、突然そんな事を言われた生徒が不安がるとか考えてくれよ……)

 突然のネギの大変な事発言により、ざわついている教室を咳一つで静かにさせる慶一郎。誰もがその存在感に圧倒される……まさに鶴の一声(咳だが)と言えよう。

「あーネギ先生の発言に驚くのも無理はない。就任早々の俺が言うのもなんだが、このクラスの成績表は見せてもらった……見事に個性溢れる一様で、それにずっと学年最下位だったという事も聞いている。そこで是非とも皆に考えてもらいたいんだが、今回も学年最下位だったとした場合一つ問題が提起されるんだが……それが何か分かる奴いるか?」

 座席の一番前に座っているロングヘアーの少女、雪広あやかが徐に口を開く。

「……もしかして、担任であるネギ先生の管理能力に疑問が出る……のでしょうか?」

「正解だ、雪広……就任早々だが俺も当然そう評価される。教育実習生としてのネギ先生なら、下手をすれば解雇されるだろうな。教師として管理能力に問題あり!ってね」

「そ、そんなっ!?」

 慶一郎の容赦ない分析に思わず悲鳴を上げる雪広と、ネギを含むその他大勢。教室はパニック寸前に陥っていた。

「まあ落ち着け。それはあくまでも最悪の事態を想定しただけにすぎん。それならば話は早い、そうならないようにすればいいだけだ。要は問題されているのは連続で学年最下位を取っているという事で、お前ならどうする雪広?」

「最低でも最下位さえ免れれば、最悪の評価はありえない……でしょうか?」

「さすがは前回学年四位の雪広だな、よく問題と回答を考えているな」

 慶一郎は感心とばかりに頷くと、男らしい笑顔を見せた。ショタコンと言われている雪広も思わず赤面して照れてしまう。そこでようやく教室の空気が落ち着いてきた。慶一郎はネギの方を向くと、その額に軽く指を突きつける。

「ネギ先生も落ち着いてくれ。仮にも教師を目指す者が、いきなり生徒を不安がらす発言は控えた方がいいぞ?」

 そしてネギに近づいた慶一郎は小声で注意する。

「『立派な魔法使い』になる為の過程で教師を目指しているのは聞いたが、だからといってその過程の一部分を無理に隠す必要はないだろ?実際に教育実習生としてこの学園で働いている事は事実だし、さっきみたいに自分の事だけを隠すだけで聞こえてくる意味もまた変わる。なに、秘匿が課されているからといって縮みこむ事はない、堂々としてればいいのさネギ先生」

 そう言うと軽くネギの頭を撫で、慶一郎はクラスの方へと向き直す。ネギは呆然としながらも慶一郎を見上げて思った。

(……なんて『大きい』人なんだろう)

 その身体の大きさだけでなく、ネギはその心の在りように感動した。それはまるで千の魔法を使いこなすという自身の父親『サウザント・マスター』に対する憧れにも似た感情だった。

「話がだいぶ脱線したな……ネギ先生、これは高畑先生から借りてきたよく使われる英語の文法の応用問題の小テストだ。いわゆる復習用だが、成績の底上げをするならこれでも十分だろう」

 そう言って持ってきた茶封筒をネギに渡す。

「す、すいません、南雲先生。どうも助かります~」

「気にするな、これも副担任としての仕事のうちだろうさ。……ああ、それとネギ先生。実は学園長に急用を思い出したんだが、俺が抜けて行っても大丈夫か?」

「え、急用ですか?はい、大丈夫です!これでも僕は担任ですからー!」

 先程の激励が功を成したらしい……大きく頷くネギの顔からは不安が消えていた。

「じゃあ、すまんが後は頼んだ。雪広もネギ先生の事見てやってくれ」

「は、はい!確かに任されましたわ、南雲先生!(ほほほ、グッジョブですわ~♪)」

 これなら必要以上に能天気なこのクラスでも流される事はないし、クラス委員長の雪広もきっとフォローしてくれるだろう。そう踏んだ慶一郎は軽く挨拶をし、学園長に会うためにまずは職員室に向かった。

 ちなみに慶一郎が出て行った2-Aは、日頃とは珍しく黙々と勉強会をこなし、周りのクラスから不思議がられていたのはまた別の話。



 麻帆良学園職員室。

「学園長ですか?多分、学園長室にいるはずですけど」

 職員室に授業が休みで待機していた教師の一人がそう教えてくれた。慶一郎は踵を返すと学園長室へと向かい、その前に着くと軽くドアをノックしてから中に入る。

「どうした南雲君?授業で何か問題でも発生でもしたかのぅ?」

「いえ、ネギ先生が思ったより優秀なんで任せてきました」

「ふむ、ネギ君は上手くやっとるようじゃのう。して、お主の方の用事はなんじゃ?」

「なんじゃ?じゃないですよ。聞きたい事なら山ほどありますよ。まずは俺の居住に関する保障、してくれると言っていましたけどどうなりました?もう少しで放課後になるんですけど?」

 学園長がいる机にダンッと両手を叩きつけて、慶一郎は学園長を睨みつける。

「それなら丁度女子中等部の寮が、前の管理人と契約が切れたところでの。南雲君にはそこに新たな管理人として住んでもらう事になったんじゃよ」

「女子寮?男の俺が管理人なんかでいいんですか?」

「別に特別な性癖があるわけじゃなかろうて……冗談じゃ。うちの学校の生徒達は結構特別な生徒が多くての、そういった特殊な環境の中に孫の木乃香も生活しているんじゃが……膨大な魔力を秘めてはいるが、その力はまだ覚醒していないんじゃ」

「というとお孫さんは魔法関係とは無関係?」

 学園長に言われた情報を一度頭の中で整理する。

「今の所は、じゃが。これはネギ君にも該当するんじゃが、強大な力を持つ者は昔から多くの者から畏怖されてきた。故に潜在能力が目覚める前に亡き者にしようと画策する輩は後を絶たんでのぅ、そういった連中が周りを巻き込まない訳がないじゃろう?」

「なるほど、管理人として生徒達の見張り、警備員を兼ねて護衛もしろと言うわけですね?」

「このか個人の事としては、ワシはいいんじゃがこのかの父親の方針でな。魔法の事はなるべくばれないように、フォローしてやって欲しいんじゃ」

 相変わらず食えない老人である。そういうことであるならば、慶一郎としても無碍には断れない。何だかんだいっても、慶一郎はわりと面倒見の良い人間で、わざわざ無関係な生徒を危険に巻き込む性格ではない。

「まあ居住に関してはそれでいいですよ。次は魔法関係者についてですけど、桜咲刹那と龍宮真名の両名はこちら側の人間と言う事で間違いありませんか?」

「む?何かあったのかの?」

「昨日の説明してないからですよ。昼休み屋上で説明を求められました」

「どこまで説明したんじゃ?」

「とりあえず昨日の交戦前後の話だけ。俺が別世界から来た云々は、他にも話さなきゃいけないと俺が色々と面倒くさいから学園長にまとめて聞いてくれ、と言っておきました」

「……さらりと厄介事を押し付けおったな?だが、お主の事情については最低限の人間にしか教えないつもりじゃったから、丁度良かったと言えばそういう事になるかのぅ」

 学園長は腕を組み、思案に耽る。慶一郎の方は居住の確保に、今日接触した魔法関係者の二人の事、最低限の用事を終えたと判断した。そうなれば、ついでにもう一つの用事も済ませてしまう事にした。

「ところで学園長」

「なんじゃ?」

「当面の生活費くれませんか?うっかりしてて忘れてたんですけど、俺の財布の中これしかないんですよ……」

 そう言って慶一郎は財布から紙幣を取り出して学園長に見せる。

「な……なんでやねん」

 何処ぞの虎縞のバンダナをした関西人と同じようなベタなツッコミ台詞を吐く学園長。
 十ドル紙幣だった。





 麻帆良学園女子中等部学生寮、大浴場〈涼風〉にて。

「アスナーアスナー大変やで~」

「何?このか~」

「お~丁度バカレンジャーも揃っとるな~。反省会か~?」

 先に浴場に来ていたバカレンジャーのうち四人、神楽坂明日奈、佐々木まき絵、古菲、長瀬楓にさんぽ部繋がりで鳴滝風香&史伽姉妹は、後から来た木乃香の声に振り向く。その木乃香の後ろには図書館探検部の三人、宮崎のどか、早乙女ハルナ、綾瀬夕映が続く。

「実はな~噂なんやけど……次の期末で最下位を取ったクラスは……」

「えーっ、最下位のクラスは解散~!?」

 木乃香の言葉に浴場の全員が驚く。

「で、でもそんな無茶な……」

「あの南雲先生もそこまでは言ってなかったじゃない?」

 まき絵と明日奈は否定的な意見を口にするが、木乃香達の次の台詞で固まってしまう。

「うちも詳しくは分からないんやけど、何かおじ…学園長が本気で怒ってるらしいんや。ホラ、うちらずっと最下位やし……」

「その上、特に成績の悪かった人は留年!!どころか小学生からやり直しとか……!!」

「え!?」

 明日菜達、バカレンジャーは絶句していた。もう一度ランドセルを背負って、皆仲良く集団登校……そんな未来絵図を思い描いたバカレンジャーは、そのシュールさに思わず絶叫していた。

「ちょ、ちょっと待ってよーっ!?そんなの嘘でしょ?」

「んーでも学園長ならその権限はあると思うでござるな」

「あの学園長ならありえるかも……ま、まずいね。クラスの足引っ張ってるの私達五人だよ~?」

「今から死ぬ気で勉強しても、さすがにテストまでには間に合わないアル~」

 必死になって作戦会議?をしているバカレンジャーの中の一人、夕映は不意に呟いた。

「ここはやはり……アレを探すしかないかもです」

「な、何かいい方法でもあるの!?」

 溺れるアスナ、藁をも掴む。

「『図書館島』は知っていますよね?我が図書館探検部の活動の場なのですが……」

「一応ね。あの湖に浮いているでっかい建物でしょ?結構危険な所って聞くけど……」

 〈抹茶コーラ〉と書かれた怪しげなジュースを飲みながら夕映は話を続ける。ただ一人だけ長瀬楓だけは、その奇怪な飲み物に驚愕していたが。

「実はその図書館島の深部に、読めば頭が良くなるという『魔法の本』があるらしいのです。まあ、大方出来のいい参考書の類とは思うのですが……それでも手に入れば、私達バカレンジャーでも強力な武器になります」

 夕映の話が終わると、皆一様にして乾いた笑いを浮かべる。

「もー夕映ってば、アレって単なる都市伝説だし~」

「うちのクラスも変わってるけど、さすがに魔法なんてね~」

「そーいえばアスナはそーゆーの全然信じないんやったな~」

「いや…待って……」

 皆の言葉を聞いていた明日菜の様子がおかしい。この中で一人だけクラス担任のネギの秘密、『魔法使い』の事を知っていた明日菜はその貧弱な脳細胞をフル稼動して考えていた。

(そうよ……『魔法使い』のネギがいるんだから、『魔法の本』があったっておかしくないじゃない……!!)

 ゆっくりと湯船から立ち上がると、周りの皆を見回して一言。

「……行こう!!図書館島へ!!」

麻帆良に来た漢! / 麻帆良に来た漢!第四話

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