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麻帆良に来た漢!第四話(ネギま!×リアルバウトハイスクール) 投稿者:ゆの字 投稿日:07/01-13:39 No.2621


 明日菜達バカレンジャーが図書館島へ行く事を決意している頃、麻帆良学園女子中等部学生寮の管理人室で不思議な空間が形成されていた。ニメートルの大男、南雲慶一郎はグレーのTシャツにアーミーパンツという格好の上に、デニム地のエプロンを掛けているが、そのLLサイズのエプロンは誰が見てもSサイズにしか見えなかった。そんな慶一郎が食事を運んでいる食卓には、メガネでスーツな高畑と、物騒な剣術少女の刹那と、心なしか表情がいきいきしているスナイパー龍宮の三人が席に着いている。
 ドンッ、目の前に置かれた料理を見て、刹那は思わず眉を顰めた。丼を超える大きさの深皿に、スパゲティが山盛りになっていたからである。

「南雲先生……一人じゃこんなに食べ切れません」

「誰がそのまま食えと言った?小皿に取ればいいだろ」

 慶一郎はそう言いながらも、次々と料理を食卓へと運び並べていく。スパゲティが三種類、シーザーサラダとチキンの赤ワイン煮込み、そして一見何の変哲もないオムレツといったメニューである。上座についてもらった高畑に料理を簡単に説明していく。

「パスタは茄子とトマトのミートソース、ベーコンと南瓜のクリームソース、それとペペロンチーノの三つがあるから、自分で皿に取ってくれ。ドレッシングは……」

「いや、それくらいは見れば分かるよ。それより、これは全部南雲君一人で作ったのかい?」

「そうだけど……何か問題が?」

「南雲君に料理ができるのが少々意外だったんでね」

「海外を旅していた時は主にレストランの厨房で働いていたんだよ。なにしろ食いっぱぐれる心配がないし、イタリアンとフレンチは本場で勉強してね。タイやベトナム辺りの料理もできるけど、無難な所でイタリアンしたんだが……中華の方が良かったか?」





『第四話 課題とバカレンジャーと探検と~その②~』





 学園長から当面の生活費を渡された慶一郎は、放課後になると最低限の必需品と食料を買出しに学園都市内の店舗を回る事にした。その途中で、学園内を巡回していた広域指導員の高畑を見つけると、これ幸いと買い物の案内及び荷物持ちを頼んだ。高畑は苦笑しつつも、学園長から密かに頼まれた慶一郎の監視と観察を兼ねて、その用事に付き合う事にした。
 その一時間後、大量の買い物袋を持った二人は女子中等部学生寮の前に立っていた。そこに丁度部活を終えた刹那が通りがかり、ここの管理人になった事と先日の礼を兼ねて、慶一郎は二人を夕食に誘った。刹那のルームメイトが龍宮だと分かると、じゃあ彼女も一緒にと言う慶一郎の厚意受け、刹那は自分の部屋に龍宮を呼びに行った。そして話の冒頭に至る。

「いや、そういう事じゃなくて……随分沢山食材を買い込むんだな~とは思ってたんだ。料理ができるんだったらそれほど可笑しい事じゃないな、今考えると……」

 高畑は買い物の際、容赦なく食材を買っていく慶一郎を見て、その荷物の量に心底驚いた。もしや監視をしているのを不快に思い、嫌がらせでもしているのか?と本心思ったほどだ。だが、彼はそんな事は微塵とも考えていなかったのだ……自分の狭量さに高畑はつい反省していた。
 料理が運び終わり、エプロンを脱いだ慶一郎も食卓に着く。

「いただきまーす!」

 行儀良く礼を済ませると、一同は夕食に取り掛かった。
 チキンとオムレツは慶一郎自ら皿に取り分け、特製のトマトソースをサービスした。そのオムレツを口にした龍宮の表情が驚きへと変貌する。

「む!?ただの卵焼きかと思ってたら……すごく美味だな、このオムレツ。知らない味がするが、何が入っているんだい先生?」

「バジリコ風味のオムレツさ。それよりもソースの方はどうだ?少しだけタバスコを効かせてみたんだが……」

「ふむ、私はもう少し辛い方が好みだが、これくらいで丁度いいんじゃないか?市販のケチャップみたく変に甘くなくて、このオムレツによく合うと思うよ。なあ、刹那?」

「え?は、はい……美味しいです。確かに」

 龍宮に同意しながらも、刹那の表情にはどこか釈然としないものがあった。

「口に合わなかったか、桜咲?」

「いえ、その……こんなにも美味しい料理を作れるというのは、私がイメージしていた南雲先生とのギャップが……」

「……どんなイメージだよ、俺って」

「す、すいません!私とした事が先日から失礼な事ばかり……!」

 顔を真っ赤にして慌てて謝る刹那に苦笑する慶一郎。高畑と龍宮は、そんな二人を暖かく見守っている。

「まあいいか、桜咲。そのクリームソース、ものすごく熱いから気を付けてな?」

「…………」

 まるで子供扱いに刹那は眉をひそませながらも、フォークに巻いたパスタを吹いて冷ます。そんな年相応の少女の様子を見ながら、慶一郎はふと鬼塚家の少女を思い出し微笑む。彼女もどこか、ひどく臆病で警戒心の強い未知の動物を餌付けしているような気分にさせる。慶一郎が不意に思ったその感想は、桜咲刹那の本質を捉えていたと知るのは、もう少し先の話であった。

「……あんたら、ちょっと待たんかい!」

 少し関西が混ざる怒気をはらんだその声に、食事をしていた一同の手が止まる。

「この私を無視して、勝手にそっちだけで和気藹々と盛り上がらないでよ!」

 龍宮は声のした方をちらりと横目で見ただけで、わざと顔を背ける。

「そう言えば居たんだな、朝倉……すっかり忘れてたよ」

「忘れないで!この私を忘れないで!?」

 そう涙目で訴える朝倉は、管理人室の食卓には入れてもらえず、一人だけ部屋の隅に追いやられていた。刹那はサラダを食べながら冷たい視線を送る。

「うるさいです……静かに食べてくださいよ、朝倉さん」

「桜咲!?あのねぇ……部屋の隅っこにポツ~ンと一人座らされて、しかも床に直にお盆置いて夕食食べさせられる人間の気持ちが分かってたまるもんですかー!!」

 正しくその通りだった。朝倉にはテーブルどころか座布団すら与えられず、料理の載ったお盆が床の上に置いてあるだけなのだから。

「仕方ないでしょう?座る席がないですし、何より自業自得です」

「ちょっと突撃インタビューしただけで、この扱い!?報道の自由は何処に~」

 刹那が龍宮を連れて管理人室に戻った時、部屋の前には麻帆良パパラッチこと朝倉が張っており、二人はそこで慶一郎との関係についての取材をアレコレと受けた。下手に誤魔化した所で、朝倉の性格を考えてもしつこく付きまとわれる事は目に見えている。刹那は対応を迷い龍宮を伺うと、彼女は懐に手を忍ばせており……実力行使で黙らそうとしていた。

「ちょ、待て龍宮……」

「部屋の前で何してるんだ?」

ゴンッ

 部屋の中から慶一郎がドアを開けて出てきた。刹那は龍宮を止めようとドアの前を運良く離れていた……が、ドアの前にいた朝倉はその直撃を受け、痛そうに顔を抑えながら床に座り込む。

「お?悪いな、朝倉。そんな所にいるとは気付かなかったよ」

「な、南雲先生……?あ、あの~桜咲と龍宮が何故に管理人室前にいるのか聞いていいですか~?」

 昼休みの時の事を思い出し真っ青になってはいたが、必死に報道記者魂で復活し慶一郎に質問していた。しかし朝倉にしては控えた発言にその場にいたもう二人は僅かだが驚いた……あの麻帆良パパラッチが、一人の男を前にして萎縮しているのだから。

「とにかく、お前達中に入れ。高畑先生も待っているんだからな……朝倉、お前もついでに寄ってけ」

 慶一郎の提案に異論を唱える者は、いなかった。
 そんなこんなで朝倉も事情を聞く前に管理人室で夕食を頂く事になったのだが、あいにく席が四つしかなかったので朝倉は泣く泣く床にお盆を置かれていた。

「大体そんなに文句を言うんだったら、最初から食べなきゃいいじゃないですか。普通ならその屈辱的な扱いに、甘んじる事なんてできないと思いますけど……?」

「言うな刹那っち……こっちもまだ夕食食べてなくてさ、お腹空いてるんだよ。……それにしても納得できないんですけど、コレ?」

 朝倉は身を乗り出して、目の前に置かれた料理を見る。カレー用の深皿に炒めたライスを盛り、その上にミートソースっぽいルーがかけられている。

「何で私だけ違う料理なの!?しかも明らかに手抜きのハヤシライスっぽいものだし!」

「そいつはいわゆる『まかない食』というものだ」

「ま、まかない……?」

「厨房で働くシェフ達が、自分達の食事のために作る簡単な料理の事さ。急遽買ってきたコンビニご飯をガーリックライスにして、余った野菜とひき肉で作ったポロネーゼソースをかけたものだ」

「なんというまかないもの……」

「いきなり来たお前にまで食わせる物が他になかったからな」

「うぅ……仕方ないか。食べさせてもらいます~」

 朝倉は涙目でどこか拗ねた顔で言いながら、料理をスプーンですくって口に入れた瞬間、急に真顔に戻った。それに気付いた龍宮は、朝倉の料理を鷹のような眼で見ながら言う。

「どんな味なんだ?こっちのパスタを分けてやるから、交換で一口寄こせ……」

「駄目、これは絶対食べさせない!」

 朝倉は大事そうに皿を抱えて、くるりと龍宮から背を向ける。

「むっ!?さては美味しいんだな?ちょっとくらいならいいだろう、ケチケチするな朝倉」

「ふっ、食べたかったら私と同じ身分になるんだね」

「……それは人間をやめろと言うのに等しいな」

「私って人間以下!?」

 あまりの言葉に絶句する朝倉。慶一郎は食い意地の張った生徒二人の醜い争いに、もはや注意する気もなく残った高畑と刹那と共に食事を取る事に専念した。もちろんその二人も、そんな慶一郎の態度に賛同したのであった。
 結果は身体的能力の差で龍宮の圧勝。朝倉はカレーを一口と言わず、三分の一ほども龍宮に食べられ、しかも交換でパスタすら食べさせてもらえなかったという。慶一郎は常にクールなイメージの龍宮への評価を書き換えた……。





 一方こちらはバカレンジャー含む図書館探検部の皆々。図書館島の裏手の入り口に集う九人、バカレンジャー五人に図書館探検部の三人、そしてパジャマ姿のネギがいた。ネギに至っては寝ているところを無理やり叩き起こされてきた、といった様子がよく分かる……パジャマ姿のままだった。他の面子は制服とはいえ、探検部御用達の装備をつけているのに、ネギだけは何故か愛用の魔法の杖のみを持っていた。夕映は後に残る二人、早乙女ハルナと宮崎のどかに最終確認を取っている。

「じゃあハルナとのどかにはここでバックアップを頼むです」

「おっけ~任せてよ、夕映」

「あ、あの……皆さん気をつけて」

 二人を残し、残りの面子で館内へと足を進める。

「でも大丈夫かな~結構危ない所なんでしょ?しかも立ち入り禁止で、トラップとかも仕掛けられてるとか……」

「(なんて図書館よ、ソレ?)大丈夫、それはアテがあるからさ~」

 不安がるまき絵に笑顔を見せる明日菜。そう言うと寝ぼけ眼なネギの方へ近づき、小声で声をかける。

「ほら、ネギ出番よ!魔法の力で私達を守ってね?」

「え、あの……魔法なら僕、封印しましたよ?」

「えぇ~~~!?」

 明日菜の叫びと共に裏手の入り口の扉は開いていく。





 再び学生寮管理人室にて……夕食を終えた一同は、仕事が残っていると言って帰っていった高畑を除き、食卓でお茶を飲んでくつろいでいる。

「じゃあ、そろそろ話を聞かせてくれます?」

 と内心ビクビクしながらも朝倉は当初の目的、刹那と龍宮の二人が慶一郎と知り合った経緯を聞いていた。二人から朝倉の性格を改めて聞いていた慶一郎は、仕方なしに説明していく。もちろん、慶一郎が別世界から来た事や、刹那と交戦した事など物騒な事は抜きで、だ。

「約七年の海外旅行から帰ってきて迷ってた所に桜咲と出会ってね、広域指導員だという高畑先生に紹介してもらったんだよ。今日はその時のお礼って事さ……ちなみに龍宮は桜咲のルームメイトと聞いたからな、その片方だけ招待するのも何だと思ってね」

「うん、それは最もだね先生。こんなにも美味しい料理が食べられるなら、今後もちょくちょくご馳走してもらいたいな」

「わ、私もその、南雲先生さえ構わなければ……」

 朝倉を納得させる為に少し変化させた話に、ちゃっかり口裏に乗る二人。

「ふぅ~ん、そんなことがあったとはね~」

「ま、そういう事だ朝倉。報道精神も度が過ぎない程度にしておけよ?」

「はいはい、南雲先生のお言葉じゃあ仕方ないですねー」

 朝倉のそんな態度を厳しく見ながら、刹那はそっと慶一郎に囁く。

「よろしかったのですか、南雲先生?彼女は報道部突撃班所属で、情報や事件の為なら執拗に調査すると噂されている人物ですけど……」

「でも下手に隠そうとするとかえって意地になって調査しようとしたりするだろう?だったら必要最低限の情報を敢えて流す事で、その記者魂をそれ以上煽らないようにしてやればいいんだ。むしろ、こっちの掌の上で踊らすとでも考えてくれ」

「さすがは、南雲先生。朝倉の心理を逆手に取るとは……ふっ、朝倉も相手が悪かったな」

 三人に勝手に心理分析されているとは露とも知らず、しかし慶一郎の怖さを本能的に察していた朝倉は、スクープの匂いを感じながらもこれ以上の調査は断念する事に決めていた。

(さすがに私でも命の危険をかけてまで、調査する覚悟はまだちょっとね……)

「さて、そろそろ遅い時間だ。期末テストが近いんだし、部屋に戻って勉強した方がいいぞ?」

 色々と考え込んでいた三人に、慶一郎は教師として声をかける。声をかけられた三人とも思う事は多々あったが、慶一郎が言っている事は学生として重要なファクターであり、全くもって異論はない。

「そうですね、では私達はそろそろ部屋に戻ります。あの、夕食美味しかったです……ご馳走様でした」

「ああ、そう言ってくれると料理を作ったかいがあるってもんだ」

「ふっ、では先生。またの招待、期待しているよ」

「あ、私もいい?今度はもっとちゃんとした……いやあのカレーも絶品だったけど。あの龍宮が賞賛するような料理、興味あるのよね~」

「気が向いたらな」

 そう言って三人を管理人室から見送る慶一郎。数歩だけ歩いた朝倉が、ふと何かを思い出したかのように振り返る。他の二人はまだ何か詮索をするのかとうんざりした視線を向ける。

「ごめん先生!最後に一つだけ……約七年も海外で料理の修業だけしていたの?」

 その問いに慶一郎は少し考えながら……。

「いや、別に大した事はしてないよ。まあ、ちょっとした武者修行をしてたくらいさ」

麻帆良に来た漢! / 麻帆良に来た漢!第五話

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