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麻帆良に来た漢!第五話(ネギま!×リアルバウトハイスクール) 投稿者:ゆの字 投稿日:07/03-07:39 No.2630
「な、なんで魔法を封印なんかしたのよ!?」
「だ、だって南雲先生がフォローしてくれたからあの場は収まったものの、僕は生徒の皆の事も考えず自分だけで……。だから期末テストまでは安易に魔法に頼らないように封印して……南雲先生みたく堂々と、一教師として生身で生徒にぶつかろうと思ったんです!」
「なんてタイミングの悪い……って、もしかして南雲先生も魔法使いだったりするの!?」
「え?確か違うって言ってたような……って、アスナさん!?お願いですからこの事皆にばらさないで下さいよ!?南雲先生もアスナさんみたいに偶然巻き込まれた、ってタカミチが言ってたんだから!」
「え、高畑先生が?うん、わかったわ。秘密にする」
高畑の名前が出ただけで明日菜の態度は一変する。
「ところで、あのーえーと……皆さんは何でこんなトコに?」
未だに状況が理解できないネギは、明日菜に状況説明を求めた。
「ええぇぇ~~~!?ここに読むだけで頭が良くなる『魔法の本』がある~~!?」
「そ~らし~え♪」
「手伝ってネギセンセー♪」
お気楽に答える木乃香にわりと必死なまき絵。そんな二人に翻弄しながらも、バカレッドである明日菜へと詰め寄るネギ。だがそんなネギを明日菜は理不尽にも切り捨てる。
「こ、今回は緊急事態だし、カタイ事言わずに許してよ?このまま私達の成績が悪いと大変な事になっちゃうし……」
「そ、そんなカタイ事って言われても……」
せっかく自分が教師として安易に物に頼らないように決心したというのに、その生徒が自発的に物に頼ろうとしている。ネギはその事実にショックを受けていた。
『第五話 課題とバカレンジャーと探検と~その③~』
愕然としながらも、ネギは先へとどんどん進んでいく生徒達を置いて帰る訳には行かず、仕方なしにその後に付いて行く。しかし普段とは違い、魔法を封印している今のネギの身体能力は年相応でしかない。気付けば図書館島が誇る?トラップに度々引っ掛かっては、体力自慢のバカレンジャー(一人除く)に助けられていた。規律を重んじる教師としての自分、しかし目的はどうあれ一生懸命な生徒の意思を尊重しようとする自分との葛藤、十歳のネギの思考はギリギリまで追い詰められていた。
(タカミチや南雲先生みたいに立派な先生を目指したいのに、今の僕って酷く中途半端だ……)
そんな心中のネギの事も知らず、明日菜はただの子供と化したネギに苛ついていた。
(全く、魔法が使えなかったらホントにただの足手まといのガキじゃない……やっぱり連れてくるんじゃなかったな)
二人に流れる微妙な空気に気付かないまま、一同は目的地である地下十一階へと降りていく。途中休憩もかねて軽い食事をとったりして、非常識な図書館島館内を進んで行く一同の服はボロボロになっていった。なにせ浅い湖を歩いたり、狭い地下道を這って歩いたりしたからである。地下道の終点で上部に開けられそうな石戸があるのを確認して、先頭を進んでいた夕映は後ろを振り向いて言う。
「この区域には大学部の先輩達ですら、簡単には到達する事はできません……中等部では私達が初めてでしょう。ここまで来れたのは、バカレンジャーの皆さんの運動能力のおかげです。おめでとうです……さあ、この上に目的の本がありますよ!」
そう言って石戸を下から押し開けて出た先は、広い空間が待ち受けていた。古菲曰くラスボスの間のような広い空間の前方に大きな台座、そしてその上に並び立つ二対の巨大な石像が聳え立っている。そしてその二対の石像の丁度中間に小さい台座があり、そこには一冊の本が安置されていた。
「見てっ!あそこに本が!!」
「!?あ、あれは……!?」
まき絵が指差した方を見るネギ。そこには古めかしい装丁の本があり、その下の台座の文字を解読するとどうやら本物の魔法の本『メルキセデクの書』らしい。思わず呟いたネギの言葉に浮かれてそこへ走っていく生徒達の姿に、ネギは思わず戸惑っていた。確かにあの本は本物らしく、ちょっと頭を良くする事ぐらいできそうである……だがネギの信じる魔法の力というものは、誰もがそう簡単に行使していいものではない。
「あ!皆さんちょっと待ってくださいー!」
やはり止めようと生徒達を追いかけた時、彼女らの姿が不意に沈む。落とし罠か?と慌てて近づくネギはすぐ下の石の床に生徒達の姿を確認し安心する。本の台座への道が崩れて、そのすぐ下の床に落ちただけだった……が、その床には何やら奇怪な文様が描かれていた。
「いたた……って、何コレ?」
「ツ、ツイスターゲーム……?」
ネギもそこへ降りて行ったその時、前方の石像から何やら気味の悪い声が聞こえてきた。
『ふぉっふぉっふぉ……この本が欲しくば、わしの質問に答えるのじゃー!!』
「ななな……石像が動いてる~~!?」
驚くネギ達一同の前で、二対の石像がゴゴゴッと本の前に立ち塞がるようにして立つ。魔法教師としては、明らかに魔法っぽい力で動いているゴーレムを明日菜以外にどう誤魔化すか、それ以前に魔法を封印した身でこの脅威から生徒を守れるのか……とか、ネギの頭脳はショート寸前である。
そうこうしている間に目の前の石像は、狼狽しているネギ達に問題を問いかけてきた。
『では第一問!〈DIFFICULT〉の日本語訳を答えよ~!!』
目の前の石像がとりあえず急にこちらに何か攻撃を仕掛けてくる気配は感じない。そう判断したネギは生徒達を落ち着かせて、石像の問題に答える事にした。
「み、皆さん落ち着いて!大丈夫です、問題に答えれば罠が解けるハズ……」
『対象は上の段に乗ってる五人のみじゃ~!残りの二人は答えを教えたら反則じゃぞ?ヒントくらいは見逃すがのぅ……』
「(それにしてもこの声どこかで……?)落ち着いて!〈DIFFICULT〉の訳をツイスターゲームの踏んでいくんです!!」
こうしてバカレンジャーと動く石像のツイスターゲームが始まった。
数十分後……四苦八苦しながらも問題に答えていく明日菜達バカレンジャー五人、現在の体勢は無理があるの一言に尽きる。側でヒントを与え続けてきたネギと木乃香の二人から見ても、その体勢はもう長く続かないと感じていた。そこに石像から救いの声がかかる。
『最後の問題じゃ~〈DISH〉の日本語訳は!?』
「やった、最後だって!」
「え~っと、でぃっしゅ?」
慣れぬ頭脳をフル回転し、ツイスターゲームでギリギリの体勢にさすがのバカレンジャーにも疲労の色が見えてきた。しかしこれが最終問題、ネギは最後のヒントを木乃香と一緒に贈る。
「ホラ、食べるやつ!えっと食器の~~!!」
「メインデッシュってよくゆ~やろ~?」
その言葉にプルプルと震えながら明日菜が閃く。
「わ、わかったわ!『おさら』ね!?」
「『おさら』っとOK~!!」
『お』、『さ』、と正解を踏んでいき、最後の『ら』に明日菜の左足とまき絵の左手が同時に辿り着く。
「……あれ?」
「……お・さ・る?」
呆然と呟くネギ。そう、彼女達二人はあまりに焦っていた為に間違えて『ら』ではなく『る』の文字を踏み抜いていたのだ……つまりは失敗。
『ハズレじゃな~?ふぉっふぉっふぉ……』
「違うアルよ~~~!?」
「アスナさんーーー!?」
「まき絵~~!?」
絶叫する彼女達を見ながら、石像は手に持っていたハンマーを容赦なく床に叩きつける。
バカンッ
凄まじい音を立てて砕ける床。
「アスナとまき絵のおさるーーーーー!!!」
二人以外の全員の非難を受けながら、為すすべなく穴のそこへと七人は落ちていった……。
その翌日、麻帆良学園中等部職員室にて……。少し遅めに出勤してきた慶一郎は、そこにクラスの担任であるネギの姿が未だ見えない事を不思議に思い、既に授業の準備をしていたしずなに聞いてみる事にする。
「しずな先生。ネギ先生を知らないかい?まだ出勤してきてないようだが……」
「ネギ先生ですか?私もちょっと……ああ、高畑先生。丁度よかったです、ネギ先生がまだ来てないんですけど何か知ってますか?」
「ん?ネギ君がかい?いや、僕も知らないなぁ……もしかしたら風邪で病欠なのかも。同じ部屋でクラスのアスナ君と木乃香君が何か知っているかもしれないが……」
後ろを丁度通りかかった高畑も呼び止めて聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「う~む、教師が連絡無しで病欠とは感心しない……」
そう言いかけて慶一郎は言葉を切った。元の世界で教師を始めた頃、異世界ソルバニアへの召喚の際に自分がやってきた行動を思い出したからである……人の事は言えなかった。
「まあ、とにかく教室に行って二人に聞いてみますよ。もしもの時は俺が代理で授業を受け待ちますし」
「ああ、済まない南雲先生。学園長には一応病欠って報告しておくよ」
HRの時間も近い事もあり、慶一郎はとりあえずネギがいない場合を想定して準備し、教室に向かう事にした。
教室に着いた慶一郎は何故か少ない生徒達を不審に思いながらも、HRを始めようとした……が、その瞬間乱入してきた遅刻者二人の声によって中断されることになる。
「みんなーー!大変だよっ!ネギ先生とバカレンジャーが行方不明にーーー!?」
「あぅぅ……ネギ先生が~~」
地上でバックアップとして残っていた二人、早乙女ハルナと宮崎のどかだった。
「ええぇぇ~~~~~っ!!?」
教室でクラスの成績向上を検討していた雪広を始め、残りのクラス全員が騒ぎ立てる。その様子を見ていた慶一郎も、予想以上に面倒な事態にどう対処したものかと軽く現実逃避していた。
数分後……当事者二人から事情の説明を受けていた慶一郎は溜息をついた。
「つまりアレか?あのバカレンジャー達は期末テストで最下位だったクラスが小学生からやり直しなんていうデマを信じた挙句、勉強に自信がないからと言って図書館島とやらの噂に過ぎない頭の良くなる本を探しに行き、ついでに担任のネギ先生まで巻き込んで行方不明、と……?」
端的にかつ非常に分かりやすく状況を説明した慶一郎に頷く二人。
「全く……中学生のくせに無駄に行動力あるな?そんな保証もない情報に踊らされるとは……ところで朝倉。報道部ではそういった情報の確証を得ていないのか?」
「え?い、いやぁ~報道部でも両方とも確証は……無し、ですね~」
いきなり話を振られた朝倉は、少し慌てながらも答える。というよりも期末テスト云々の事を知っていたら、むしろ問題である。さりげなくひっかける慶一郎を恨めしげに見る朝倉。だが慶一郎はまったく気にしない。
「今更隠すのもなんだから言ってしまうが、初日で俺が言ったことは事実だ。学園長が教育実習生のネギ先生を正式採用する為の課題が、今回のテストの結果だ。もしも最下位だったらネギ先生は故郷へ帰ることになるだろうな」
慶一郎の言葉に雪広を筆頭に、クラスは騒ぎ立てる。しかし慶一郎は手振りでそれを抑えると、クラスに現在の状況を説明していく。
「まあこの状況で課題がどうなるかは知らないが、問題なのは連中が事故で行方不明になったわけではなく、自発的に行動した結果という事だな。不運な事故であれば捜索隊が出されるだけだが、聞く話だと連中は自分達の意思で不法に侵入し結果として行方不明になったという。その場合事故だった時と違って、救出された後それぞれ全員に『責任』というものが付いてくるわけだ。自発的に不法侵入した者、それを止めるべき教師と言う役職の者、そして止めなかったクラスメイトもまた然りだ」
「「…………」」
的を得た指摘にハルナとのどかは顔を青ざめて絶句する。
「一応言っておくと何も知らなかった副担任の俺とそこの二人を除く生徒はその範疇ではないからな。……まあ逆に擁護することも出来んけどな、とにかく俺らがここで何を言おうとも最終的にはトップの学園長が判断する事だ。分かったら全員席に着けー、HRは終わっちまったけどその後は本来ネギ先生の授業だ。代わりの用意はしてきてたから、俺が引き継いで授業をするぞー」
そう言って念の為に用意してきた授業用のプリントを取り出す慶一郎。
しかし人間、頭では理解できていても納得できない事もある。その中の一人の名に、雪広あやかという少女がいた。彼女はクラスメイトが席に戻っていく中で、一人慶一郎に真剣な目を向けていた。
「ま、待ってください、南雲先生!教師とはいえまだ子供であるネギ先生や、自分が副担任として受け持つ生徒が一晩行方不明になっているんですよ!?どんな危険な目にも合っているかも分からないんです!暢気に授業している暇があるのでしたら、今すぐ学園長の所に行って捜索隊を要請して下さい!」
雪広のそんな態度に教室は静まり返っていた。だが慶一郎はそんな彼女に試すように問いかける。
「雪広の言い分も分かるがな、『かもしれない』だけじゃ物事は動かせないぞ?それに雪広はネギ先生を子供扱いしているが、いくら子供だろうと公的にネギ先生は教師なんだよ、それに生徒と一緒に行方不明といってもまだ一晩に過ぎない。もしも一晩もいると危険な所だというならば、そもそも初めから行かなければいいだけの事だ。それを自分から進んで行ったのであれば、それは最早ただの自業自得だろ?冷たいと思うかもしれないが、副担任とはいえ俺にそこまで面倒を見る義務も責任もない……そうは思わないか?」
「で、ですが……!?」
「心配するな、とは言わんが……それに囚われて問題を見失うな。他の生徒達も同じだが、間違っても連中の後を追う等してくれるなよ?然るべく大人が然るべく対応するはずだから、それを邪魔したりはしないことだ」
「くっ……」
なお食い下がろうとするが、雪広は慶一郎の正論に対し有効な反論を持っていなかった。そんな悔しげな態度の雪広を見ていた慶一郎は、軽く頭を掻くと革ジャンのポケットから携帯電話を取り出し手早くボタンを押していく。実際に『魔法』などという裏の世界がある以上、その図書館島も例外ではなく危険な所なのかもしれない。杞憂ならそれが一番いいが、万が一と言うこともあるので慶一郎はその判断を仰ぐ事にした。
「あ、学園長?もしもし南雲です。ネギ先生と生徒数人が図書館島で昨晩消息を絶ったそうですが、どう対応します?ええ、はい。じゃあ授業が終わり次第そちらに向かいますね。ではまた……」
「な、南雲先生?」
慶一郎のいきなりの行動に驚く教室一同。雪広はキョトンとした顔で固まっている。
「どうせあのまま授業を続けても頭に入んないだろう?それじゃあ意味がないからな」
「でも、さっきは義務も責任もないって言っていたではないですか?」
「それは行方不明の連中に対しだ、ここにいるお前達に勉強をさせる義務や責任とは別問題だからな。そして教師として副担任として、お前達が集中して勉強できる環境を用意するのが俺の仕事であるわけだ。さあ、一応望みどおりに学園長に話をつけたんだから、雪広もいい加減席に着け」
「は、はい」
何か釈然としないものを抱えながらも、こちらのわがままを聞いてくれた慶一郎の指示に大人しく従う。ネギ第一主義の雪広が教師の言う事に素直に従っている……そんな珍しい光景にクラスメイトは驚いていたが。
「今この場にいないネギ先生の心配よりも、無事帰ってきた時の為にできる事を考えたらどうだ?……そうだな、ネギ先生に学期末テストのトップ賞のトロフィーを取ってあげる、とかな。アレ随分気に入っていたからな、ネギ先生」
「そ、それはさすがに無理なんじゃ……」
「それですわ!南雲先生、グッドアイディアですわっ!!」
つい口にしていた慶一郎の提案に、名案とばかりに立ち上がる雪広。しまった、と思っても遅い……教室は再び彼女を中心に盛り上がって騒いでいく。
慶一郎は盛大に溜息をついた。
(……どうしてこのクラスはいつもこうなんだ?)
2-Aの授業が終わり、次の授業までの間にと学園長室へ向かう。
軽くノックをして部屋の中に入ると、学園長の他に生徒である刹那が何故かそこにいた。
「あれ?なんで桜咲がここにいるんだ?」
「え、いや……その私は」
「以前話したじゃろ?孫のこのかの置かれている状況、彼女はそのためにこのかの父親が関西呪術協会から遣わした護衛なんじゃ」
「ふ~ん……で、その彼女が何故ここに?」
慶一郎がそう言うと、学園長は溜息をつき刹那は睨んでくる。……なんでだ?
「……行方不明者の中には木乃香お嬢様も含まれています!」
「そ、そういえばそうだった、すまんな桜咲」
今にも刀を抜きそうな殺気に思わず謝っていた。そんな慶一郎から視線を変えると刹那は学園長に迫る。
「学園長!何故お嬢様の救出に行ってはいけないのですか!?」
「お、落ち着くんじゃ、刹那君!」
「待て待て、さっきからそう殺気だって話を進めるな桜咲。ところで俺も聞きたいですね、図書館島とやらは『魔法』的に危なかったりします?もしそうなら早めに捜索隊送った方がいいんじゃないですか?」
「いや、ネギ君達なら無事じゃぞい。何せこのわし自らゴーレムを通してからかっ……護衛監視しておるからのぅ」
微妙に途中の言葉を誤魔化しながら学園長は言う。
「今ネギ君達は『地底図書室』という所にいての、期末テストの勉強をさせておるんじゃよ」
「しかし何故そんな所で……?」
「うむ、2-A最下層の五人では普通の勉強では中々向上しないじゃろ?ならばいっそ逆境に置いてみる事でその危機感を煽り、勉強に対する意識変革を考えてみたんじゃ。いくらなんでもこのままではネギ君、課題落ちそうじゃったんでの」
「そういう事であれば仕方ない、ですが……」
「という事は、俺らは特に何もしなくていいって事ですか?」
「……そうじゃのぅ」
学園長は何か考え込んでいる。直感的に嫌な予感を覚えた慶一郎は、横の刹那に向けて言う。
「桜咲……護衛として不本意だとは思うけど、学園長が全責任持って近衛やネギ先生達をテストの日までには帰してくれるだろうから。とりあえず、教室に戻るといい……そろそろ次の授業始まるぞ?」
「はい、そうですね。では学園長、お嬢様の事くれぐれもよろしくお願いします」
そう言って刹那は学園長室から出て行く。
「……で?何か面白そうな事でも思いつきましたか、学園長?」
「いやなに、テスト前日に帰す時にちょこっとゴーレムで追い回してみようかな~と思っただけじゃよ」
「……桜咲がいなくて良かったですね。いたら真っ二つにされてますよ、頭」
とんでもない事をさらりと言ってくる辺り、大門高校校長といい勝負だ。……巻き込まれる方としては、本当にたまったものではないが。
「さっきも言ったじゃろ?勉強に対する意識改革じゃよ、生徒の事を思っての言葉じゃよ?」
「俺は何をすればいいんです?」
目を潤ませる気持ち悪い学園長は無視して用件だけを聞く。
「その連中が帰る際に陰ながら守ってくれるだけで構わんよ。怪我などさせるつもりはないが、それなりに危機感を煽る演技をするしの。地底図書館まではわしが魔法で当日転送させるから、用意は必要最低限でいいぞい」
「わかりましたよ……ところで一ついいですか?」
「む?なんじゃ南雲君?」
急に真剣な目をした慶一郎に、学園長は冷や汗を掻いた。
「あまり自分勝手な悪戯とかしていると、いい加減刺されますよ……桜咲の刀で」
本人がいたら必死になって弁解するだろう、そんな一言だった。
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