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大魔導士は眠らない 3話 居候と交渉と(×ダイの大冒険) 投稿者:ユピテル 投稿日:04/08-04:39 No.69




「ほう……異世界から来た、と」

「はい」


学校の長、学園長室で対峙するは一人の老人と青年。その老人は只の面妖な爺だけではなく関東の魔法使いを束ねる同盟の長でもある。

それゆえに彼の発言力は日本において大きな力を秘めている。

その老人に真正面から向き合っている者もまた、只者ではない。彼は異世界より来たりし魔法使い、その名はその世界において知らぬものはいないほどだ。

それは人しかり、魔物しかり、天使しかり、神しかり、だ。

静かに交わる視線と視線。その瞳にお互いはいったい何を感じたのか、それは誰にも分からない。












大魔導士は眠らない 3話 居候と交渉と












ネギとアスナは静かに事の成り行きを見守っていた。だがお互い何処と無くそわそわしているように見受けられる。

エヴァは壁に寄りかかり、腕を組みながら耳を傾ける。また彼女はこの部屋に来る前に損傷した茶々丸を麻帆良大学工学研究室に置いてきている。そこでハカセに叱られたのは全くの余談であるが。


「それは本当なのじゃろうか?」

「えぇ、信じられないでしょうが……」


老人の視線に懐疑の様子はない。どうやらあまり疑っていないらしい。その事にポップは僅かに眉を顰める。


(どうもこの爺さんは喰えない気配がするな……)


ポップはこの老人の雰囲気から喰えない相手と推定した。その為、彼の発言に限らず、その口調、表情から相手を分析することにする。


「エヴァよ……お主はどう思っておる」

「どうもこうも、信じたから此処に連れて来た」


視線が自然とエヴァへと向けられるが、彼女はふんと素っ気なく答える。闘いたくなかったから連れてきたとは死んでも口にはしない。

エヴァはちらっとポップを見つけるがすぐに視線を近右衛門へと戻す。


「それにジジイもどうせ見ていたんだろ……アレを」


不機嫌そうにエヴァは睨みつけた。アレとは無論、聖母竜のことである。近右衛門は惚けるがその態度が如実に物語っていた。


「まぁ確かにそうじゃが…………しかし、ポップ君と言うたな。お主、何故此処に来たのか分かるかのぅ?」


近右衛門の質問にポップは顎に手を当て、考える。


(救ってくれたのは聖母竜でほぼ間違いないだろう、だがしかし……)


何故自分を助けたのかが彼には理解できなかった。本来聖母竜は竜の騎士が生を終えた時に姿を現し、亡骸を包み込んで現世から姿を消す。そして新たな竜の騎士を産み落とすのが彼女の使命である。つまり自分を助ける理由が存在しないのである。


(俺がダイの親友だから……いや、そんな理由で助けるわけがない。では一体何故……)


幾ら考えても答えがでないためポップは静かに首を横に振った。


「すみませんが俺には分かりません。何故、聖母竜が俺をこの世界に送ったのか……」

「そうか……」


そこで会話が途切れた。老人は暫く何かを悩んだ様子である。その姿をポップは何気ない顔で見つめる。


(さて、どうでる。こちらの情報は明らかに少ないため、相手にとってはこちらを判断する材料はないといってもいいだろう。別に嘘を言った覚えは無い……全てを話したわけではないがな)


初対面の相手にそう自分の情報を渡すほどポップは愚かではない。ポップは少ない情報に相手がどのような対応をするのか静かに待つ。数分経っただろうか、近右衛門は静かに口を開く。


「ポップ君、お主これからどうするつもりじゃ?」

「どうすると言われてもな……」


特にやるべき事など何もない、目的は既に果たしたのだから。そもそもここは異世界だ、言葉は何故か通じるが言語が読めるとは限らない。この何も知らない世界で何かを決める要素は何もない。

逆に何もないからこそ、やりたいことをやるだけではあるのだが……

ポップが沈黙を保っているところに再度近右衛門は口を開く。


「お主がよかったら、この学園では働かんか?」

「「学園長(爺さん)!?」」


その言葉に驚きの声を上げたのは今まで黙って成り行きを見守っていたアスナとカモである。エヴァは特に驚いた様子などなく、静かにポップを見つめていた。ネギはその発言に嬉しそうに笑みを浮かべる。


「ちょ、ちょっと学園長正気ですか? こんな怪しげなやつ雇うっていうんですか!?」

「そうじゃが何か不服かの?」

「いや爺さん。だってよ、明らかに異常なほどの魔力を秘めてるですぜ? 素性が一切分からない相手を懐に入れるなんて正気かよ!?」


(いや、全くもってその通りだぞオコジョよ)


カモの発言にポップは心の中で首を縦に振る。素性の知れぬものを雇うというのは基本的にありえない。何故ならば相手を知らなければ自分にとって利であるかどうかさえ分からないのだから。


「それは俺にとったら願ってもないことだが…………何が目的だ」

「ふぉっふぉっふぉ~、いやな、話を聞いたところお主は魔王とやりあったそうじゃないか」


何の警戒心も抱いてないかのように見えるポップに近右衛門は楽しげに笑った。


「それでな、お主の力を借りたいと思ってな……どうじゃ?」


似合わずウインクをする学園長にポップは口端を小さく釣り上げる。それは小さな皮肉の現れである。


(力を借りる……それが全てではないだろうな。恐らく俺の力を監視するために近くに置きたいというのが正直なところだろう。どうもこの爺さんは相当の位のようだからな。)


ポップはちらりとエヴァを見つめる。今の彼女からは先程のプレッシャーを全く感じない。話によると呪いによって力を封じられているらしい。だがその彼女と近右衛門の先程のやりとりから察するに、この爺さんはかなりの力を有しているのだろう。

すぐさま視線を近右衛門へと戻す。上手く力を隠しているようだが、彼の瞳は誤魔化せはしない。彼が持つ力にポップは完全ではないがある程度把握していた。


(また単に俺の力の真偽を図りたいといった思案かもしれない。もしその力が本物だと分かったら利用する、とかな)


ポップは軽く息を吐く。


(仮にそうだとしても俺の情報はそう簡単に外部に漏れることはないだろう、それにここに雇われることで外部への情報が漏れずに逆に遮断もしれくれるだろう。何せドラゴンが落とした人間など前代未聞だろう。裏の世界の住民ならその情報を掴んだらすぐにでも此処に集まることは明白だろう。力を有するものは特にだ。
それほど貴重な存在を放っておくことなどありえないだろう。またその件とは別に俺はこの世界のことをよく知らないから情報収集も必要だろう。その為にもここに暫くは留まったほうが無難だろう)


「……それで俺は何をすればいい」


メリット、デメリットを考えた結果、ポップはその誘いに乗ることにした。









「それで、だ……」


エヴァの声は震えていた。顔を俯かせ拳を作る、あまりに力を加えているのか指先が真っ赤である。肩をプルプルと震わせてついに彼女はキレた。


「何故貴様らは我が家のようにくつろいでいる!!」


―――――――ガオーーーー!!


エヴァの背後で巨大なトラが咆哮を上げているような気がしたが気のせいだろう、気のせいだ、きっとそうだ。


「だって我が家になるわけだし」

「図々しいにも程があるわ!!」


バンバンとエヴァはテーブルを叩く……そんなに叩いて壊れないのだろうか?

まぁ確かに怒りたくもなるのも無理はない。

さてまず人間が生きていくために最低限必要なものは何か分かるだろうか……そう衣食住だ。だがものの見事に俺には全てない。

だが現在の俺の服装は至ってまともである。あの誘いの後、近右衛門が魔法で俺の服装を変えたのだが、流石に俺も驚いた……どうやらこの世界の魔法は万能らしい。

改めて異世界にきたと実感させられる。その次に食事と住居の問題点だが今の会話を聞けば分かるとおり俺は今エヴァの家にいる。

本当はどこか部屋でも借りようかと思ったんだが学園長の決定でこうなった。その決定の後エヴァの魔法が近右衛門に炸裂していたが特に気にすることではないだろう。

それで現在の俺の状態はというとソファーに横たわってポテチとやらをぽりぽり食っていた。うむ、なかなか美味だな。


「しかも私が茶々丸に見つからないよう隠していた菓子を! どこから取り出した!!」

「いやデュランに頼んでさ」

「そんなことに使い魔を使うな!!」


なんかテーブルひっくり返したよ、ちゃぶ台のほうが迫力が出ると思うんだけどな。

息を荒げるエヴァをよそにポップは何をしているかというと……


「主様……」


目を輝かせて催促するメイランの口にポテチを運んでやる。


「はいはい、あ~ん」

「あ~ん」

「どうだ?」

「美味しいです主様!」


メイランは頬を染めながら恍惚の表情を浮かべる。


「そうか、そいつは良かった。じゃあ次はデュランな」

「……俺はいらん」

「そう遠慮するなよ」


使い魔達とイチャイチャしていたりする。エヴァの拳が小刻みに震える。何時の間にかエヴァの身体から魔力が立ち込めていた。


(今なら呪いがあろうとこいつらを殺れる気がする!)


額にドデカい青筋を立てながらエヴァは手を突き出し魔力を集える。


「貴様ら!いい加減にしろ!!!」


―――――――――――深夜に爆音が轟いた。






「おいおい拗ねるなよ」

「拗ねてなどいない!」

「拗ねてるって」

「拗ねてない!!」


少し涙目になりながらエヴァは俺から目を逸らす。エヴァから放たれた氷の矢は俺のマホカンタで跳ね返されて自分にダメージを喰らってしまった。俺のベホマで怪我は治っても心の傷は治らないようでさっきから目を合わせてくれない。


――――――――――仕方ないな


「すまんが、ちょっと台所借りるぞ」


そういうと俺はすたすたと台所へと向かった。よくわからない箱の中には新鮮な食材が山ほどあった、これなら何でも作れるだろう。俺は静かに袖をめくると目の前の食材に集中した。


さて……いっちょやってみっか!!






「ほれ」


既にテーブルには様々な料理で埋め尽くされていた。それは長年生きてきたエヴァでさえ見たことがない料理が出来上がっていた。まぁ異世界から来たのだから当然といえば当然なのだろうが。

料理から漂う香ばしい匂いがエヴァの鼻を刺激し、口内に唾液が溢れてくる。


「これは……お前が作ったのか?」

「俺以外に誰が作るんだよ」


エヴァは信じられないといった面持ちにポップは苦笑いを浮かべる。手についた水滴を拭うとポップはさっさと席に着いた。またメイランとデュランも床にスープが置かれている。


「おい飯が冷めるだろ、とっとと座った」

「私に命令するな!」


しぶしぶといった感じでエヴァも席に座る。だがその瞳は顔とは異なりかなり輝いている。


「じゃあ食おうか」

「あぁ……」


静かにエヴァはフォークを手に取ると目の前にある料理に手をつけた。


パクッ……モグモグ


ゴクンと料理がのどを通過する。するとエヴァの手は止まり、驚いた面持ちでポップを見つめた。その様子に満足したのかポップも自分の料理に手を出し始めた。


「……お前が作ったんだよな」

「だから俺以外に誰が作るんだよ」

「しかし……信じられんな。そもそもどうやって調理したんだ? コンロやオーブンなど使い方は分からないはずだが……」

「コンロ? オーブン? よく分からないが何かしらの器具か?」


仕方なくエヴァがその名称と道具を照らし合わせていく。


「なるほどな……俺それ使ってないぞ?」

「はっ? じゃあお前はどうやって調理したんだ?」

「簡単だ……こうやって」


ポップは人差し指を立てる。すると先端に小さな火の玉が浮かび上がる。その火の玉にエヴァは口角を引き攣らせながら尋ねる。


「まさか……魔法でか」

「正解♪」


エヴァは思わず額に手を当てる。何処の世界に調理をするために魔法を使う奴がいる!


(ここにいるがな)


エヴァは頭が痛くなりながらも他の料理にも手を出す。


(しかしやはり、その、悔しいが……美味しい)


悔しいと思いつつエヴァは手を止めることができずにいた。その様子を嬉しく見つめながらポップは何故自分がここまで料理が出来るようになったのか語りだした。


「何故か俺の周りには料理ができるやつが皆無でな~」


懐かしい顔をしながらポップはサラダを頬張る。


――――――――先生のときはよかったんだよな……


昔アバン先生と二人で旅をしていた時の食生活は最高だった。宮廷料理なんて目じゃなかった、あんなに美味いものがこの世に存在するとは当時は思ってもみなかった。

最初先生の料理を食した時あまりの美味さに涙したものだ。そして俺もこんな料理を作りたいと魔法の修行と同じくらい料理も修業したんだ。

素晴らしき師に巡り会え、俺は幸せだった。あの時が幸せの絶頂っていうやつだろう。

しかし……そう、だがその幸せはあっけなく崩れ去ったんだ。

デルムリン島で先生が死んで(本当は死んでなかったんだけどな)ダイと二人で魔王退治の旅に出たんだがダイは当然のことながら料理なんぞ出来なかった。


できるのはとにかく丸焼きのみ!


それでは流石に栄養に偏りが出ると俺が料理担当となった。俺の作った料理をダイは美味い美味いといって食べてくれた、いつも綺麗に残さず食べてくれた。先生以外に褒められたことがなかった俺は素直に嬉しかった。


あの時からだろう、俺の真の料理修行の旅が始まったのは……


次に俺たちの仲間になったのがマァムだった。あいつに何度殴られたか分からないほど強暴だ。あいつはよく言葉より先に手が出るんだよな……

どんなに男勝りでも女なんだから料理の一つはできるだろう、そう思っていた。


甘かった、どうしようもなく甘かった……チョコとメイプルシロップとハチミツを混ぜ合わせたより甘かった。


マァムはダイよりタチが悪かった。その手で生み出されるはバイオ兵器の数々……試しにダイに食わせたら三日三晩うなされていた。

俺は涙を流しながら料理に明け暮れた……俺の料理の美味さが気にくわず、何度理不尽な暴行を受けたことか。

そして旅をするうちに次第に仲間が一人、また一人と増えていった。


だが何故か料理をできるものが一人もいなかったのだ!!! 信じられるか!?


こうして俺は嫌でも料理の腕が上がったわけだ……もしかして俺、魔法より上達したのかも……


「おいポップ、何故泣いている?」

「ちょっと昔を思い出しただけさ」


知らぬ間に流れていた涙を拭うと俺は心配かけまいと笑みを浮かべた。その悲しみを振り切るような笑みにエヴァと少しときめきメイランは頬を染める。そして俺は再び料理に手を伸ばした。









「ふぅ~食った食った」


ポップは自分の料理に満足したようだ。エヴァは何も言わなかったが微妙に頬が緩んでいることにポップは気づいていたがあえて何も言わなかった。


「さて、じゃあ食器を片付けるかね」


ポップは皿を台所で洗い始めた。何皿か洗い終わると何時の間にかエヴァが姿を現した。


「お前に任すと皿が割れそうだ、私がやる」

「いいからいいから、俺は居候の身なんだからこれぐらいやらせてくれよ」


洗おうとするエヴァにポップはやんわりと断り、屈託なく笑う。しかしエヴァは何故か居心地が悪いようだ。

何故なら視線の先にいるデュランとメイランが不満そうな顔をしているためとしるやポップは軽く溜息をつく。


(まったくウチの使い魔はどうしてこうも俺至上主義かな)


「それにな、お前のパートナーも傷つけちまったしな。ならせめてもの償いと思ってくれ」


そして視線を使い魔たち、特にデュランに向けられる。そのパートナー、茶々丸をボロボロにしたのはデュランだからだ。

デュランはその居心地の悪い視線に背を向け身体を丸めた。その様子に思わず吹き出すところだった。俺は皿を全て洗い終わるとそのまま食器戸棚にしまった。


「さてと……じゃあそろそろ寝ますか」


既に日時は変わっている、流石にもう休んだほうがいいだろう。


「なぁエヴァ……ベットは余っているか?」

「だから気安く名前を呼ぶな! ……ベットなど余っていない、床にでも寝ていろ!!」


エヴァは突き放すように言い放つとそのまま自分の部屋へと戻っていった。一人取り残されたポップは結局ソファーで横になることにした。

俺が横になるとデュランが俺の腹で丸まり、メイランは俺の頬に擦り寄るようにして身を預けた。

時計の針の刻む音が部屋に静かに響き渡る。その音を聞きながらポップは静かに眠りについた。


――――――――ダイはみんなと会えただろうか









「あの青年…………」


とても澄んだ瞳が印象的な青年。あの青年が悪い者でないことは一目見てすぐにわかった。

しかし近右衛門の表情はどこか寂しげであった。

あの瞳は強烈な光を宿していた、だがその光の奥底に闇を抱えているのを近右衛門は感じていた。


一体彼はどのような人生を歩んできたのか……


異世界の青年の語られない過去に近右衛門は静かに目を閉じた。















――――――――――――――どうかこの世界で彼に幸あらんことを





大魔導士は眠らない 大魔導士は眠らない 4話 The first mission

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