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大魔導士は眠らない 10話 Just a moment !!(×ダイの大冒険、オリ有り) 投稿者:ユピテル 投稿日:04/08-04:46 No.76
巨大な闇が小さな光を飲み込む時、舞い降りしは魔法を極めし者。
邪悪な想いが聖なる思いを飲み込む時、討ち払うは絶対なる意志。
さぁ謳え、英雄の凱歌を!!
大魔導士は眠らない 10話 Just a moment !!
「ひゅーひゅー」
刹那の口から漏れ出すは小さな音だが明らかに健康な状態時に出す音ではない。自分の出す呼吸音すら気にならないのか刹那は瞳を小さく見開いた。ポップは一瞬刹那は状態に辛そうに見つめるが彼女の視線に気づくと屈託なく笑った。
「危なかったな~」
ポップの声に刹那の瞳が潤んでいく。刹那が喋れないことを理解するとポップはすぐさま呪文を唱えた。
「ベホマ」
言葉と共に刹那の身体が聖なる光に包まれる。
「そんな馬鹿な!?」
仮面の陰陽師は驚愕した。何故なら瀕死の重傷だった少女の傷が目の前でみるみると塞がっているのだから。ものの数秒で彼女の肉体から全ての傷が消え去った。
「ポップ……さん?」
「何だ?」
呆然と呟く刹那にポップは優しく笑うが彼女の頭はこの現状に半ばパニック状態に陥る。
「何でポップさんがここに!? それに他の陰陽師が学園に!! お嬢様は!!!」
ポップの胸倉を掴むと揺すろうとする、が動かす力は残っていないようで服を軽く掴むことしかできない。ポップはその手をそっと包み込む。
「おいおい無理するな、さっきのは傷は癒せても、失った血液までは戻せないからな」
「私のことはどうでもいいんです! 早くこのかお嬢様を!!」
「大丈夫だって」
ポップは安心させるように微笑むが混乱している彼女には効果がない。
「しかし!!」
「いいから少し休んでな」
刹那を優しく横たえるとポップは優しく彼女の頭を撫で、そして小さく呟いた。
「ラリホー」
撫でている手から魔法が放たれる。その光は酷く安らぎを覚える。
「ポップ……さん……な…に………を……」
刹那はポップに向かい手を出すがその手から力が抜けて大地に落ち、またゆっくりと瞼を閉じ静かに眠りについた。刹那が寝たことを確認するとポップはゆっくりと立ち上がる。
「大丈夫だと? 馬鹿を言うな、任務は順調に進んでおるわ! 目標はもう捕獲している時間だ」
勝ち誇った声を張り上げる陰陽師をポップはただ冷たく見つめて、いや眺めていた。今のポップの姿を見て何人彼だと気づくだろうか、彼の瞳にいつもの温かさは……消えていた。
「他のヤツ……お前みたいなセンスの欠片もない仮面をつけてたヤツラだろ?」
静かにポップは語りだす。その小馬鹿した態度に陰陽師は不機嫌さを表すかのように妖気を放出する。しかしポップは眉一つ動かさない。
「人が声をかけたのに挨拶もしないなんて礼儀がなってないと思わないか?」
「貴様……何をした」
「何を? 別に……ただ……」
口が小さく歪む。
「殺しただけだ、全員な」
ポップの声が闇に消える。暫しの沈黙の後、仮面の君が哂った。それは酷く可笑しく、まるで狂ったかのような笑いであった。
「ははははははっ!! 馬鹿なことを言うな、あれだけの数を貴様一人でだと……もう少しマシなハッタリなどないのか?」
人を心底見下す視線にもポップは動じない。ただ淡々と事実を告げる。
「嘘だと思うなら連絡の一つでもとればいい……もっとも…………」
ポップの口が歪む。それは学園で見かける彼の笑みとは真逆のものでった。
「答えるわけがないがな……」
表情一つ変えないポップに仮面の男も徐々にうろたえ始め、やがて何やら印を結ぶ。瞑想しているようにも見えるがあれは連絡をとっているのだろう。その隙だらけな姿をみてもポップは何もせずただ眺めていた。
「そんな馬鹿な!!」
男から動揺の声が漏れ出す。先程から連絡を取っているのに誰一人返事が返ってこないのだ……つまり本当に殺されたのだ、目の前にいるこの男に。仮面の陰陽師はすぐさま鬼たちにポップたちの殲滅を命じる。
「「「「「ガァァァァァァァァ!!!」」」」」
鬼の咆哮が大地を震撼させ、怒涛の如く突進してくる。それを冷めた瞳でポップは見つめていた。
「メイラン」
「はい」
何時の間にかポップの左右に二匹の獣が静かに主の命を待っていた。
「彼女を守れ、傷一つ付けるな」
「御意!」
メイランは刹那の上空に留まる。その黄金の瞳が鋭く鬼たちを射抜く。
「デュラン」
「はい」
ポップの視線が刹那から鬼たちへと向けられる。その視線は限りなく鋭く冷たい。
「お前は俺と共に来い…………殺し尽くすぞ」
「イエス、マスター!!」
デュランの咆哮が天空を震わせる。
――――――――それが始まりだった
「イオラ!」
彼の周囲には幾つもの球体が浮かんでいる。宙に浮かぶ球体はジリジリと大気を焦がす。ポップは迷うことなくそれを振り下ろすと球体は恐ろしい速度で鬼たちに襲い掛かる。
触れた瞬間大気が爆発し周囲の存在を破壊し尽くす、そこには慈悲など一切存在しない。ポップが腕を薙ぎ払うたびに幾つもの命が散っていく。
爆音と爆風が周囲を震撼させ、閃光が辺りを照らす。閃光の中から鬼たちがポップに向かい猛進する、まるで死など恐れないかのように……
「ガァァァァァァァ!!!」
身の丈がポップの三倍以上ありそうな鬼がポップにまるで大木の幹のような太い腕を振り落とした。
―――――――トベルーラ
ポップは一瞬にして空に躍り出る。鬼たちはまるで消えたような錯覚を覚えたに違いない。上空からポップは冷徹な瞳で遙か眼下に群がる鬼たちを射抜く。
両手を広げ手に魔力を込める、すると手の周囲の空間が急速に歪んでいく。ポップはその手を容赦なく振り下ろした。
「ベタン!!」
ドン!!!
鬼たちが立つ大地が悲鳴をあげる。それは通常の重力の比ではないのだ。鬼たちは成すすべなく…………
グジャ
圧死することとなる。理性を持たない鬼たちに恐怖が襲い掛かる。
動揺する鬼たちの中に突進する一つの金色の影がある。その影が通り過ぎるたびに鬼たちは成すすべなく両断されていく。
「弱い! 弱すぎるぞ!!」
デュランの牙が、爪が敵を一瞬にして葬っていく。すると突如デュランの足が止まる。それを好機とばかりに一斉に鬼たちが襲い掛かる。
デュランは大地に前肢を突き立て、体勢を低くする。彼の口から白い息が漏れ出し、空気を凍てつかす。その口内に広がる圧倒的な冷気をデュランは躊躇うことなく吐き出す。
――――――――輝く息
一瞬にして極寒の地へと変貌する。鬼たちは一瞬にして氷の彫刻と化した。デュランはその彫刻を一瞬にして粉々にしていく。
「ぬるい! ぬるいぞ!! この程度でマスターに楯突くなど恥を知れ!!」
闇に巨狼の咆哮が鳴り響く。圧倒的過ぎる二つの影に仮面の陰陽師は恐怖した。
「女だ! 女を殺せ!!」
眠っている刹那を狙うことで彼らの動きを鈍らそうという考えだったのだろう。しかし彼の思惑は裏切られることとなる。
「「「「「ガァァァァァァァ!!」」」」」
狙いを変えた鬼たちは一斉に刹那へと殺到する。後一歩、というところで鬼たちの身体には幾えもの穴が開いていた。
「主様の命は絶対! あなた達が彼女に触れることなど不可能と知りなさい!!!」
メイランの放たれる羽の弾丸は一瞬にして鬼たちを絶命させていく。刹那は安心したように静かに眠ったままだ。
(主様の為に少しで敵の数を減らさねば!)
メイランは大きく息を吸い込む。すると胸元に灼熱のような熱が込み上げる。目を大きく見開き彼女はその熱を吐き出した。
――――――――灼熱
地上に地獄の業火が姿を現した。一瞬にして全てが燃き尽くされる。まさに悪夢と言うべき光景が陰陽師の前に繰り広げられていた。そしてモノの数分で全ての妖魔の命の灯火は消え去った。
「そんな……馬鹿な!?」
陰陽師は後退る。その姿をポップは何の感情も宿さない瞳で眺めていた。
「残念だったな……」
陰陽師は震える。彼のそのあまりの冷たい声色に。
「た、助けてくれ! ど、どうか命だけは!!」
仮面の男は恥じも外見も捨て命乞いをする。男は土下座し、頭を地面に擦り付ける。デュランとメイランは再びポップの横で静かに待機していた、それは即ち主の如何なる命令にも瞬時に反応できるように。
ポップは暫しの沈黙の後、口を開いた。
「……いいだろう」
「ほ、本当か!?」
男はガバっと頭を上げる。
「ただし……二度と俺たちの前から姿を見せるな」
そう言い放つとポップは男から背を向け刹那の元に歩き出した。その様子に陰陽師は仮面の下で哂った。
(相手がとんだ甘ちゃんで助かった……ヤツの力は危険すぎる。ここで殺すしかない!)
男は一瞬にして妖気を圧縮するとポップに向けて解き放った。妖気の弾丸は無防備なポップの胸を容易く貫いた。ポップはゆっくりと崩れ落ち、大地に横たわる。
「ははははははははは! 馬鹿め! その甘さが命取りなんだよ!!」
勝ち誇り、高笑いする彼に……
「残念だな」
淡々と死刑宣告が言い渡された。
――――――――メラ
ポップの呟いた言葉と共に男は一瞬にして蒸発した。その光景を何の感慨もなく見つめると今度こそポップは刹那の元へと歩き出した。彼が貫いた男はゆっくりと輪郭がぼやけ、そして静かに消えていった。
「……ここ……は……」
刹那に瞳がゆっくりと開かれる。まだ焦点があっていないのか視界が酷くぼやける。
「起きたか」
「ポップさん……」
(何故か自分の目の前にこの人の顔があるのだろう)
「あぁ、動かないでくれるとありがたいな」
何を考えているのか分かるのだろう、困ったように笑う彼に刹那は自分の状況を確認しようと目を奔らせ、絶句した。
「ポ、ポポポポポポップさん! 何故私がその、このような……」
人差し指をもじもじ動かす。刹那は今、ポップに抱えられながら夜の道を歩いていた。ぶっちゃけるとお姫様抱っこである。
「だから動くなって、俺の上着が落ちるぞ」
何時の間にか自分には彼の上着がかけられていた。疑問に想った刹那はかけられた服をそっと持ち上げ自分の状態に声を失った。
刹那は先程の戦闘で衣服の殆どが吹き飛んでいたのだ…………つまりほとんど全裸と言うわけだ。
「おんぶでも良かったんだがそれだと俺に直接当たるだろ? それは流石にマズイと思ったんだが刹那はどっちが良かったか?」
「こ、こちらのほうで……」
顔を真っ赤にさせながら刹那はあまりの恥ずかしさに上着を口元まで持ってきた。
「……そこまで上げると下が見えるぞ」
「きゃーーーーーーっ」
刹那の悲鳴が夜の空に木霊した。
「その……すみません」
「別にいいんだけどな」
肩に止まるメイランが爛々とした瞳で刹那を睨んでいた。ポップの頬には赤い紅葉が咲いており、夜の闇をもってしても遮ることが出来ない。
「あの……ありがとうございました」
刹那は静かに礼を言った。
「私一人ではどうすることもできませんでした……」
刹那は悔しそうに顔を歪める。もし彼が来なかったならば自分の命は尽きていたことを彼女は充分に理解していた。
「気にするな」
「……はい」
それきり二人の会話は途切れてしまう。だが刹那は一定に刻まれる振動と、彼の腕の中にいる温もりで再び夢の世界に旅立ちそうになるが何とか意識を現界に繋げとめる。
「刹那……」
「何ですか?」
「死にかけたとき、君は何を思った」
彼の言葉に刹那は目を瞑った。私が死にそうになった時、自分は誰を思い描いたのか……刹那ははっきりと覚えていた。
「……このちゃん」
「このちゃん?」
自然と出た言葉に刹那は慌てる。
「このちゃんとはこのかお嬢様のことです」
何故呼び方が変わっているのか、ポップは特に何も聞かなかった。
「死ぬ間際っていうのはな……」
ポップは静かに語りだす。
「そいつの一番大切なもの、人が思い浮かぶものだ……」
「…………」
刹那も静かにポップの言葉に耳を傾ける。
「お前の大切な人はこのかなんだな」
刹那は静かに頷いた。
「なら……」
ポップの視線が刹那に向けられる。その視線は学園にいる時の道化の瞳ではなかった。
「何故、刹那はこのかと共に生きようとしない」
口を噤み刹那はその質問に答えようとしない。ポップは彼女が語るのを待つ。数秒、数分しただろうか、ポップは苦笑した。
「刹那、ちょっとした御伽噺をしてもいいか?」
「御伽噺……ですか?」
意味が良く分からなかったが刹那は小さく頷いた。刹那の了承を取るとポップは静かに語りだした、ある竜の騎士と臆病な魔法使いの物語を。
ポップが語りだす物語を刹那は静かに聞き入っていた、何故なら彼はまるで本当にその場にいたかのように話すからだ。
「そして竜の騎士は大魔王を倒した、そして騎士はみんなと共に平和に暮らす……筈だったんだ」
ポップの顔が微かに曇るのを刹那は不思議と気がついた。
「筈……とは」
刹那は遠慮気味に質問した。彼女には分かっていた。
(この話はきっと……)
「最後の最後でヤツラはある置き土産を置いていったんだ……それは一つの大陸を滅ぼしかねないほどの爆弾だ」
刹那は息を飲み込む。満身創痍の状態にそのようなものを処理しなければいけないなど、はっきり言ってどれだけの絶望感があったことだろうか……。
「大陸で爆発したらそれこそ救った世界が壊れてしまう……そこで唯一空を飛べる竜の騎士と魔法使いが爆弾を抱えて空へと向かった」
(それでは魔法使いは……)
刹那はポップに視線を向ける。彼の表情は隠しきれないほどの苦渋に満ちていた。
「魔法使いは騎士と一緒に世界から消えるつもりだった……だが!!」
自然にポップの語気が強まる。
「あいつは! ……竜の騎士は魔法使いを途中で突き飛ばしたんだ」
刹那は大きく目を見開く。それはその人物の行動に、そしてその後起こったであろう出来事に。
「竜の騎士は文字通り身体を張って世界を救った……でもな」
ポップの瞳は小さく揺れていた。
「魔法使いの心を救ってはくれなかった……」
「…………」
沈黙が二人に圧し掛かる。刹那は知らぬ間に身体を小さく震わせていた。それは夜の寒さによるものではないことを彼女は理解していた。
「刹那……」
ポップの瞳に刹那は吸い込まれるように見つめていた。
「何故刹那がこのかを影から守るのか俺は知らない……でもな、今のままだと別れた時おまえは後悔するぞ、絶対にだ……」
刹那はポップの服を握り締めた。彼の言葉が胸に突き刺さる。お嬢様と、このちゃんと別れるなんて考えたくもない。けれど刹那は理解してしまった、もしこのまま時を重ねたら起こりうるだろう悲劇を。
「刹那……」
暖かな、そして男の声が刹那の鼓膜を震わせる。
「後悔したくなかったら……明日にでも彼女と話せ」
アドバイスではなく命令。刹那の瞳が激しく揺れる。
(私はが本当に話していいのだろうか、一緒にいていいのだろうか……)
「分かったな」
有無を言わせない彼の迫力に刹那は気がつくと小さく頷いた。刹那の答えに満足するとポップは前を見て歩き始めた。
刹那は静かにポップの胸に頭を乗せる。瞳を閉じ身体を彼に委ねる。額から彼の体温が伝わってくる。伝わってくるのは体温だけじゃない、想いも伝わって来るような気がした。
(ポップさんは……私の背を押してくれている)
後悔はするなと、幸せになれと彼は言っているのだ。
(ありがとう…………ございます)
刹那は静かにポップの腕の中で眠りについた。その顔は赤子が母の腕にいるかのような確かな安らぎに満ちていた。
「そろそろだな……」
ポップの言葉に刹那は急にそわそわする。いつもの彼女を知る者にとっては目を丸くする光景である。
「あの……やっぱり後で…………」
「駄目だ」
「あぅ……」
刹那はこれ以上ないほど落ち着いていなかった。さっきから何度もポップの前を行ったり来たりしている。その態度にポップの心には悪戯心というものが芽生えるわけで……
「おっ、このか!」
バッ!!
刹那は一瞬にしてポップの背後に隠れ、そこからそ~と顔を覗かせるのだ。そしてポップがからかっていると分かると……
「ポップさん!」
顔を真っ赤にして怒るのである。すでにこのやりとりを何回していることか。
「少しはリラックスしろよ刹那、それじゃあこのかと会った時に何も喋れないぞ」
「し、しかし……」
指をもじもじさせる刹那にポップは苦笑する。その姿はいつものギャップもあり相当の破壊力を秘めているが彼には通用しない。ポップはある気配を察知し視線を通学路に向けるとある人物が目に入った。
「刹那、このかが来たぞ」
ポップの言葉に刹那は流石に背後に隠れるということはなくなった。
「もうひっかかりませんからね!」
頬を膨らませてポップを睨む刹那の目の前に……
「おはようポップさん!せっちゃんもおはよう!」
満面のこのかが現れた。
「あ、あぁ……」
刹那は顔を真っ赤にしてぱくぱくと口を開く。すでに頭の中は真っ白らしい。その様子にポップは……
『刹那』
出来るだけ優しい声と共に刹那の背を押してやった。
「あの……その…………」
刹那は何かを言おうと口を開けては閉じていた。刹那は縋りつくようにポップを見つめる。ポップはと言うとただただ微笑んでいるだけだった。それはまるで自分が成し得なかった事を期待しているかのように。刹那はついに心を決めた。
「あの……」
「何せっちゃん?」
いつもと違う刹那にこのかは首を傾げる。刹那は顔をこれ以上ないほど赤く染め、ぎこちなくだが確かに微笑んだ。それは作りものではなく本物の笑顔。
「おはよう……このちゃん」
刹那の言葉にこのかは思考が止まる。
「このちゃんって……せっちゃん」
思わず聞き返すこのかに刹那は……
「今までごめんな…………これからはいっぱいお話しするから許してくれへん?」
縋るように想いを伝える。このかは身体を震わす。その姿に刹那の鼓動は跳ね上がる。受け入れられるだろうか、それとも拒絶されるだろうか。幾重の葛藤が刹那の身体を否応なく熱くさせる。
「せっちゃん……せっちゃん!」
涙を流しながら刹那に抱きついた。彼女が受け入れてくれたことを知ると刹那もまた涙を流す。
「今までごめんね、このちゃん……このちゃん!」
刹那もこのかを抱きしめる。朝日が二人を包み込む……まるで二人の仲を祝福するかのように。ポップはその光景を暖かく見守っていた。
(良かったな、刹那)
ポップは空を見上げた。空は雲ひとつない晴天である。
(ダイ……お前は今、何をしている?)
ポップは異世界の親友に想いを馳せた。
――――――――――――――再び想いは紡がれる
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