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大魔導士は眠らない 11話 三つの制約(×ダイの大冒険、オリ有り) 投稿者:ユピテル 投稿日:04/08-04:47 No.77
「ん~いい天気~~」
裕奈は身体を伸ばす。日が燦々と降り注ぎ思わず目を覆いたくなるほど、見事なまでに快晴だ。
「そうやな~」
亜子も楽しそうに裕奈の隣を歩いていく。久々の都会に気分が高揚しているのだろう、顔には常に笑みが浮かんでいた。
「それにしてもみんなで買い物なんて久しぶりだよね」
まき絵は楽しそうに周囲を見回す。たくさんの店に目移りしている様子だ。
「確かに……何ヶ月ぶりくらいかな」
アキラはみんなで原宿に来たのはいつだったか顎に手をあて考える。
「では!」
まき絵はぎゅっと拳を握る。
「原宿でショッピング、行ってみよ~!」
「「「おぉ~!!」」」
四人一斉に拳を掲げる。明後日の修学旅行の準備に向けて、Let's go !!
大魔導士は眠らない 11話 三つの制約
「わ~! これ可愛い~」
「まき絵! そんなの買うと服買えなくなるよ!」
「そんな~」
まき絵は裕奈に引きずられ、泣く泣くその商品と別れた。
「まき絵は相変わらずだな」
かなり見苦しい格好にアキラは苦笑いを浮かべる。
「まったく、いつもそれで後で泣きつくんやで~」
亜子も半眼でまき絵を見つめる。
「だってしょうがないでしょ、可愛かったんだから!」
憤慨するまき絵は三人は笑う。
「それにしてもホントに久しぶりだよね~」
「そうやね~みんな部活で中々時間があわへんからな~」
裕奈は嬉しそうに周囲を見渡し、亜子もきょろきょろと周りを見る。アキラも良い品がないか物色している。
「……ちょっと!みんな来て!!」
まき絵の切羽詰った声にみんなまき絵の元へと向かう。
「どうしたんや?」
「いいからあそこ!あの人形の近く!!」
まき絵が指差す方向にみな目を凝らす。するとその先にいたのは……
「ポップさん!?それにエヴァちゃんもいるじゃん!!」
裕奈は目を大きく見開いた。亜子とアキラを二人の姿を凝視する。
「もしかして……デート?」
アキラの発言に一斉に振り向くその顔は異様なまでに強張っていた。
「やっぱりそうなのかな!?そんな~ポップさん~!!」
まき絵は泣きそうな表情で二人を見つめ、亜子の顔も曇っていく。
「でもいくらネギ君みたいに教師じゃないとはいえちょっとマズくない?」
裕奈の発言にまたしても四人は二人の姿を凝視する。
「どっちが誘ったんやろ」
ボソッと亜子の口から疑問の声がこぼれる。
「…………見た限りエヴァちゃんだよね」
みんな一斉に頷く。何故なら彼女たちの視線の先には満面の笑顔を浮かべながら歩いているエヴァの姿がはっきりと見えていた。
何故エヴァがそのような笑みを浮かべているかというと当然訳があるわけで……
「はっはっはっは~」
エヴァは馬鹿笑い、いや高笑いをあげていた。その様子にポップは苦笑する。並んで歩く二人の姿は恋人というよりか兄妹のように見える。
「どうだ、久々の外の世界は?」
ポップの問いにエヴァは楽しげに笑う。
「あぁ……最高だな、自由と言うのは素晴らしいな」
エヴァの手に魔力が篭る。その密度は今までとは比較にならない。今まで普通の人間であるはずの彼女が何故魔力を放出できるのだろうか。
「エヴァ……」
「分かっている」
エヴァはすぐに魔力を霧散させる。そういう制約なのだ。話は昨日の夜に遡る。
「おい、エヴァ」
「なんだ……」
「エヴァは支度しないのか?」
ポップはごそごそと修学旅行の仕度をしていた。その様子をエヴァは苦々しく、そして何処となく寂しげに見つめる。
「私は……いかない」
エヴァの発言にポップは困惑する。
「いかないってお前、どこか調子でも悪いのか?」
心配そうに見つめるポップにエヴァは顔を背ける。
「マスターはここから離れることが出来ないのです」
「どういうことだ……説明してくれ」
「そういえばお前にはまだ話していなかったな……」
エヴァは重い溜息をつく。
「私にはある呪いがかけられている」
「呪い? あぁ、この地と繋がっているアレか?」
「分かるのか!?」
エヴァは思わず目を大きく見開いてしまう。別系統の魔法を瞬時に解析するなど並みのレベルではまず不可能である。そのことが分かっているだけにエヴァの驚きようがどれ程のものが計り知れよう。ポップは驚くエヴァに首を傾げる。
「そんなに驚くことか? ただ単純にエヴァとこの地に何らかの繋がりがあったから何かあるとは思っていたがまさか呪いだったとはな……」
顎に手を添え何やら考え込むポップにエヴァはまずそのポップのありえない解析力に呆れ、そして彼と共にいけないことに諦めの声を漏らす。すでに分かりきったことなのだ、今更どうこういったところでどうしようもない。
「そういうわけだ…………お前だけでも楽しんでくるんだな」
ふんとエヴァは再びそっぽむく。
(行けるなら私も行きたいわ…………お前と一緒に)
今回、三年には問題児が多い(ほとんど3-Aだが)という理由から緊急にポップの同行が決定したのだ。それに湧き上がったのは三年の生徒達、何せ五日も彼と共に旅行できるのだ。
それに対し嘆いたのは残りの一、二年の生徒達だ。何せ五日も彼と話すことができないのだから。おかげでポップはこの一週間、一、二年の生徒達に泣きつかれ困ったのだった。
ポップの楽しげな表情に我慢できずエヴァは自分の部屋に戻ろうとした。その時ポップはポツリと呟く。
「…………解けるかも」
その呟きにエヴァは物凄い勢いで振り返った。
「ポップ……今なんて言った?」
「いや、だから呪い解けるかもって……」
「何だと!?どういうことだ!!説明しろ!今すぐ!!」
必死になってポップの服を掴むと揺らす。その勢いはかなりのものだ。
「ちょ、ちょっと落ち着けよエヴァ!!」
「これが落ち着いていられるか!!」
必死な形相で揺するエヴァにポップの顔色が青くなっていく。泡を吹きそうだったので茶々丸がエヴァを何とか引き離した。
「げほっげほっ……花畑でハドラーが手を振ってたよ」
どうやら危ないところまで逝っていたようだ。
「早く説明しろ!!」
そわそわした面持ちで待ちわびるエヴァに苦笑するとポップは説明を始めた。
「別に大したことじゃない、呪いは掛かるなら解けるのもまた当然だろ」
「だが、この呪いは強力だぞ」
エヴァの心配そうな顔にポップは頭を撫でて落ち着かせる。
「ん~、俺の世界だったらだいたいある魔法で呪いは解除できると思うぞ」
簡単に言ってくれるが例えポップの世界でも魔法の威力は人によって違う。それは魔力の保有量や質などそれこそ効果も千差万別だ。しかし忘れてもらっては困るがこれでもあの世界で三本の指に入るであろう魔法使いなのだ、魔力の量も質も一般人とは比較にならない。
そのため大体の呪いなどは解除できるのだが当の本人は当たり前すぎてどれだけ凄いことなのかイマイチ分かっていない。
「それじゃあ、いっちょやってみるかな」
ポップは右手をエヴァへと翳すとそこに彼の魔力が集いだす。そのあまりの密度にエヴァは思わず溜息を漏らす。
(本当にヤツは大魔王と闘ったのだろうな…………この密度、未だに信じられん)
自分を上回る使い手であるポップにエヴァは嫉妬などはせず純粋に尊敬の念を抱いた、まぁ相手が彼だからなのだが。ポップはその手の魔力を解き放とうとして、ふとその魔力を留めたままエヴァに問いかける。
「エヴァ、呪いが解けたらどうするつもりだ?」
(呪いが解けたら? 決まっている、まず苦渋を舐めさせてくれた学校を破壊し、サウザンドマスターをこの手で八つ裂きにしてくれる!)
未来の姿に思いを寄せ、怪しく笑うエヴァにポップは苦笑する。
「学校を壊すとかだったら呪いは解かないぞ」
ギクッ
エヴァは身体を強張らせる、もろバレである。
「そ、そんなことはしないぞ」
もっともらしく言っても最初にどもる時点でアウトである。ポップは空いている手で頭を掻く。暫くして何か思いついたのだろう、顔には笑みを浮かべている。
「エヴァ……俺が呪いを解いたらお前に制約を三つ課す、それでどうだ」
三つというところに眉毛が少し反応する。
(三つか……少々多い気もするが…………あいつなら無茶なものはないだろう)
「いいだろう、私の呪いを解いたならお前の制約を受けよう」
エヴァの答えに満足すると、ポップは魔法を開放した。
「シャナク!!」
強烈な閃光がエヴァを包み込む。光が幾重にもエヴァの周りを回転する。光のリングは徐々に回転速度を上げ、そのうち光の繭を形成する。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!!」
突如ポップが苦しみだした。
「お、おいポップ!?」
「ポップさん!?」
「主様!?」
「マスター!?」
その様子に皆が一斉に動揺するがポップは自分の苦痛を無視するかのように手に集う魔力を更に強めた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
裂帛の気合と共にエヴァの光が膨張する。そして音をたてて砕け散った。
「おい、ポップ!!」
床に膝をつき荒い息をしているポップにエヴァたちが駆けつける。
「はぁはぁ……大丈夫だ、どうもお前に呪いをかけたヤツが随分と強引にお前を縛り上げていたから反動が俺に来たらしい……」
荒い呼吸をするが心配かけまいとポップは笑うがどこか無理をしていることなど共に生活している彼女たちにはすぐに分かった。
「いいからそこで横になれ!!」
エヴァと茶々丸はポップをソファーに横たえる。
「すまないなみんな、心配かけて」
「気にしないでください、ポップさん」
「私たちが主様の身を案ずるのは当たり前です!!」
「そうだ、あまり無理はするなよマスター」
皆に感謝の声をかけるとポップは静かに思考する、それは先程の魔法についてだ。確かにさっき言ったような原因もある、しかし…………
(やはり魔力の消費が…………)
以前から違和感があったのだ。いつもなら何の問題もなく使える魔法がやけに魔力を消費しているように感じていたのだ。決定的だったのが刹那を助けたときの戦闘だった。いつもならものの数秒で終わっているのにあまりに時間が掛かり過ぎた。
(これは気をつけないとな…………)
以前と同じように魔法を使っていたらすぐに自滅するに決まっている。ポップは視線をエヴァへと向ける。
「どうだエヴァ?」
「何がだ?」
「だから呪いだよ」
「あ、あぁ……」
すっかり動転していたようで自分の状態どころではなかったようである。エヴァは全身に魔力を循環させる。するとエヴァから以前とは比較にならない波動を放出する。
「問題ないようだな」
エヴァは嬉しそうに笑う。先程の考えなど星の彼方へと飛んでいったようである。
「おめでとうございます、マスター」
茶々丸は嬉しそうに笑う。すると突如ドアが独りでに開かれる、ドアの開かれた先には小さな人形がポツンと立っていた。
「ドウナッテルンダ御主人、何デウゴケルンダ?」
「チャチャゼロ……」
歩みよるチャチャゼロにエヴァは珍しく嬉しそうに微笑んだ。ポップは今まで見たことのない相手に首を傾げる。そのことが分かったのかエヴァはポップ達にチャチャゼロを紹介する。
「そうか……俺の名前はポップ、ポップ・W・パプニカだ、ポップでいい。それとこいつらはメイランとデュラン、俺の使い魔でありパートナーだ」
「メイランです、これからよろしくお願いします」
「デュランだ、よろしく頼む」
「チャチャゼロダ、御主人ノ従者ヲヤッテル。シカシ御主人随分ト丸クナッタナ」
今まで見たことのないエヴァの表情にチャチャゼロは不思議そうな顔をするが目の前に立つポップを見つめ、半ば勝手に納得する。
「男……カ」
「何を言っているか!!」
顔を真っ赤にして怒鳴るエヴァにチャチャゼロは己の推論が正しかったことを悟る。
「マスター」
「あ、あぁそうだったな」
チャチャゼロと子供のような小競り合いをしていたが茶々丸の声に己がまず何をしなければいけなかったのかを悟る。
「お前のおかげで呪いが解けた、礼を言うぞ」
エヴァは素直にポップに頭を下げた。その様子にチャチャゼロは分かっていても驚きを隠せないでいた。
(御主人ガ感謝ノ言葉ヲ言ウナンテナ……ベタ惚レダナ、コリャ)
「では約束どおり私に制約を課せ、お前は私に何を望む」
エヴァの真剣な視線にポップはゆっくりと身を起こすとエヴァの真正面に座る、こうしないとエヴァの首が疲れるからだ。
「じゃあまず一つ目は無闇に魔法を使わないこと」
「あぁ……」
(それは考えていた、どうせ私が暴れないようにとでも思ったのだろう。そんなことはもうする気はないのだがな……)
「次に二つ目だが……」
ポップはチラッと茶々丸を見るとすぐにエヴァへと視線を戻した。
「ずっと茶々丸と仲良くすること」
「そんなことで……いいのか?」
「あぁ大事な制約だ」
ポップは屈託なく笑う。エヴァは茶々丸を見つめ、茶々丸もエヴァを見つめる。そしてお互い可笑しそうに笑いあうのであった。その光景をポップは暖かく見つめる。
「それで……最後の一つは何だ」
もう驚かないつもりだった……だがエヴァの考えは浅はかだったことを知ることとなる。
「最後の一つは…………俺がこの地にいる限り俺の側から離れるな」
その発言にエヴァの思考は停止した。
(今コイツは……何と言った?)
幻聴だろうか、エヴァは最初そう考えた。しかし彼女の聴覚は極めて正常である。その言葉を脳が噛み砕き意味を理解すると知らず知らずのうちに彼女の身体は小刻みに震える。
「そんなことで…………いいのか」
声も自然と震えていた。だがそのことに気がついていないのか、または気にもしていないのかポップは平然と答える。
「俺にとっては大事なことだ…………異論はないな」
「……………………あるものか」
ポンとエヴァは額をポップの胸に預けた。
「…………離れないぞ」
「あぁ」
「お前が邪魔だといっても…………離れないぞ」
「あぁ」
「……ずっと離れ………ヒクッ………ない……ィク……ぞ」
「あぁ」
エヴァは静かに泣いていた。今まで自分の側にいる者など一人もいなかった。
(誰も彼の私を置いていった……サウザンドマスターのように…………)
エヴァの脳裏に過去の出来事が走馬灯のように過ぎる。
(確かに茶々丸やチャチャゼロには感謝している、だが私は……人の温もりが欲しかった)
自然と右手を彼の左胸に当てる。彼の鼓動が手を通して感じられる。
(離すものか、初めて手に入れたこの温もりを……この温もりを奪う者は…………例え神だろうと殺してみせる!!)
―――――――――ここに契約は完了した
「ホラ、次を渡るぞ!!」
「お、おい引っ張るなよエヴァ」
エヴァはポップの手を引きながら店を見回り始めた。手のひらに感じる彼の体温を離さぬ様にしっかりと握りしめる。
(決してこの手を離しはしない!)
その顔は純粋に二人の時間を楽しんでいることが誰の目からも一目で分かるほど輝いていた。
「怪しいね」
「怪しいな」
「怪しいわ」
「怪しいよ」
四人は彼女の様子にその瞳を光らせていた、それはつまり……
「「「「つけるしかない!!!」」」」
――――――――――――人の温もりは幸せの香り、人の尾行は犯罪の香り
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