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大魔導士は眠らない 13話 京の都へ(×ダイの大冒険、オリ有り) 投稿者:ユピテル 投稿日:04/22-20:54 No.367



荒々しく開かれる扉に青年の意識は覚醒していく。その顔は酷く不機嫌そうである。


「なんだよ……エヴァ」


目を擦りながらポップの瞳には仁王立ちしているエヴァの姿が映し出されていた。その顔には彼女にしては珍しい純粋な笑みで彩られていた。


「朝だぞ!起きないか!!」


エヴァは毛布を問答無用にひっぺがす。ポップは突然の冷気に体を震わし、仕方なく上半身を起こすと隣に置いてある目覚まし時計を見て驚きの声を上げる。何故ならば……


「朝……ってまだ朝の二時じゃないか!?」


窓の外はまだ漆黒に染まり空には巨大な月が鎮座し、星が小さな輝きを放っていた。エヴァ、余りに早いすぎるのではないだろうか。












大魔導士は眠らない 13話 京の都へ












「二時だろうが朝は朝だ! さっさと起きないか!!」

「何で今日はこんなに早いんだよ……」

「マスターは待ちきれないようです。今日は何と私たちの起こし無しに目を覚ました……いつもこうならよろしいのですが……」

「茶々丸!!」


エヴァは顔を真っ赤にして茶々丸のネジを巻く。エヴァのその姿は子供そのものである。


「この口が! この口が言うのか!!」

「やめてくださいマスター、あ、あぁぁ……」

「御主人テレルナヨ」


何やら悶える茶々丸にのしかかるエヴァ……何かを連想させるがポップはさして気に留めなかった。


「仕方ない……」


溜息を吐きながらポップは服を脱ぎだした。


「お、おい!何を脱いでるんだ!!」

「見れば分かるだろう……服だよ」

「私たちがいる前で着替えるな!!」


顔を先程とは別の意味で赤く染めるエヴァ、茶々丸も瞳孔も激しく収縮を繰り返していた。


「別に見たきゃ見てもいいぞ」

「誰が見るか~~~~!!!」


エヴァは茶々丸の腕を掴むとすぐさま部屋を出てドアを閉めた。ついでにチャチャゼロはずっとエヴァの頭の上である。


「まったく……」


ポップは溜息をつくと今度こそ服を着替えようとした。すると何故かドアから視線を感じる。


『デュラン』

『わかった』


ポップの念話の意味をすぐさま理解したデュランはドアを見つめる。


(やはりな……)


デュランの視覚とリンクしたポップの瞳にはドアの微かな隙間から覗く二つの瞳が見えていた。


(あの二人……何をやっているんだが)


ポップは気にせず着替えようとしたが手がふと止まった。なにやら思いついたらしい、顔には子悪魔な笑みを浮かべている。

ポップはさり気なく今の隙間からでは見えない位置に移動するとドアの隙間がゆっくりと広がっていく。

思わず笑いそうになるがポップはすぐに着替えにかかる。そして着替え終わったポップはと言うと……


―――――――――レムオル


呟きと共にポップの姿が透明になり、エヴァたちは彼の姿が未だに見えないため更にドアを開けていく。

ポップは忍び足でドアのほうへと向かう。数歩歩くとポップはドアの目の前にたどり着いた。

彼の瞳には何故か部屋を覗いているエヴァと茶々丸の姿が……


「茶々丸!そんなに押すな!」

「私は押していません、押しているのはマスターかと」

「そんなことはない!!」

「必死ダナ御主人ト妹ヨ」


ぼそぼそと会話するエヴァと茶々丸、そして冷静に突っ込むチャチャゼロに思わず笑いが口から漏れそうだが何とか抑える。文句を言い合いつつ覗く姿はなんと表現すればいいのだろうか。

ポップは頬の筋肉を引き締めると魔法の効果を打ち消した。突如ポップが目の前に現れたことに二人は驚愕する。


「お、おまえ! いつの間に!!」

「あ、あのですね……私たちがしていたのは、その……」


あたふたしながら言い訳する二人にポップはポツリと呟いた。


「…………エッチ」


ボン!!!


二人の顔が瞬時に真っ赤に染まる。頭から湯気を出し人差し指をもじもじさせる。その二人の様子に思わずポップは笑い声を上げ、頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
そして彼女たちはその声に更に顔を赤く染めるのであった。

しかし彼女たちは忘れていた、彼の素肌を毎日凝視している一匹の姿を……彼女たちがそれに気がつくとき、それは世界の終焉を意味するのであった。


「マダマダダナ」









「しかしこんなに早く出ることになろうとは……」

「別にいいだろう、遅刻するよりマシだ」

「ならマスター、もう少し早く登校することを推奨します」

「うるさい!!」

「御主人ガ一番煩イゾ」

「…………」


まだ日も出ぬうちにポップたちは駅へと向かっている。周りには当然生徒がいるわけもない。


「それにしても……」


ポップはエヴァの首下を見る、するとそこには紫色に輝く宝石が存在を主張していた。


「なんで外に出してるんだ? むしろ学校に持っていってはいけないはずだが……」

「どうしようと私の勝手だ!」

「でも見つかったら没収されないか?」

「うぐっ……バレなければ問題ない!!」


ふんとエヴァは顔を背け、けれど右手には宝石が握り締められていた。エヴァはポップから貰ったネックレスを四六時中つけているのだ。

むしろエヴァがネックレスを外したところをポップは未だ見ていなかったりする。だがポップは知らない、茶々丸のシャツの中にも碧の光を放つ石があることを……。


「はぁ……生徒がいたら外さなくてもいいからせめてシャツの中に入れておけ」

「……わかった」


エヴァは渋々といった面持ちでポップを見つめた。


「そのかわり……」


エヴァはそっとポップの手を握った。その手にポップは思わずエヴァの顔を見つめてしまう。


「エヴァ?」

「こっちを見るな!!」


顔を真っ赤にしてエヴァは怒鳴る。だが決して離そうとはしなかった。


「駅に着くまで……手を繋げ」


エヴァは小さく呟いた。その様子にポップは苦笑いするというとおりにしておいた。顔を赤く染めつつもエヴァは頬が緩むのを止められなかった。


「…………」


茶々丸は無言でポップの手を見つめていた。その視線に気がつくとポップはそっと手を出した。


「ほら」


ポップの意図に気づいた茶々丸はおずおずと手を繋いだ。


(これが……人の温もりというのですね…………)


茶々丸はその熱に不思議な想いを抱いたのであった。









「それにしてもこんな金属の箱が動くんだから凄いよな~」


ポップは電車を眺めるとそう呟いた。


「お前の世界だと移動手段は何だったんだ?」

「大体馬だな。まぁたまにモンスターで移動しているやつもいるけど……」


電車の扉が開き中へと入る。


「かなり文明に差があるな……」

「恐らくこの世界の十六世紀あたりの文明レベルと推測されます」


電車に揺られながら、世界の相違について語り合う。幸いなことにあたりに乗客はいない。


「コンロを捻ったら火が出たときは目を疑ったぞ」


ポップはその時の光景を思い出しているのか、面白そうな表情を浮かべる。


「それにしてもポップさん、この世界の適応は早かったですね」


そうなのだ。何もかも初めてなはずなのに、ポップは一度説明を受けるだけでほぼ完璧に理解していったのだ。


「言ったろ?これでも世界最強の魔法使いって。魔道書は一度読めば暗記できるし、覚えるのは得意なんだ」


ポップは力こぶを作る。結局ポップはこの世界の一般常識を一週間程度でほぼ完璧に理解したのだ。まぁ理解するのと実際触れるのではやはり勝手が違うようだが……


「でも俺にとっちゃ飛んでいったほうが早いんだが場所が分からないしな」


ポップは残念そうな表情を浮かべる。


「確かに……ってお前の飛行速度は反則だぞ! 何だあれは!!」


日曜日、ポップはエヴァのお気に入りのケーキを勝手に食べたのだが速攻でバレたのだ。そして激昂した彼女からポップは空へと退避したのだが案の定追ってきたのだ。

深夜の空に激しく火花を散らすデットヒート! 結局ポップはエヴァを振り切り見事勝利を掴んだのである!!


「結構早かっただろ? なんてったって俺は勇者にすら勝った男だぞ」


自慢げに語るポップに……


「いつか抜いてやる」


妙な対抗心を燃やしたエヴァがいたりした。


(俺話セネェンダケド、何トカシロヨ)


そして一人会話に参加できずに不貞腐れるチャチャゼロがいたとかいないとか。









「おはよう」

「「「「おはようございます」」」」


すでに十名ほどが到着していることにポップは驚いた。


「お前たち早いな~」

「待ちきれなくて始発で来ちゃった!」


まき絵は目をキラキラさせながら待ちきれないと言わんばかりだ。


「…………皆似たようなものだな」

「何か言ったか?」

「別に?」


エヴァから鋭い視線を受けるがポップはさらりと流す。


「おはようございま~~~す」


振り返ると手を大きく振りながらこちらに近づく小さな影が目に飛び込んできた。


「よっ! ネギ」

「ポップさん! おはようございます!! 京都楽しみですよね~」


目を輝かせるネギの姿は小さな子犬を彷彿させる。


「そうだな、一緒に楽しもうな!」

「はい!!」


ぐりぐりと頭を撫でるポップにネギは力いっぱい頷いた。









とは言ったものの……


「エヴァちゃん、ちょっと席交換してよ!」

「お願い~」


さっきから周りがやかましいことこの上ない。おかげで眠れやしない。

一応眠ったフリをしているのだが、どうやら隣に座っているエヴァの席を交換したがっているようだな。

疑問に思うポップだったが流石に五月蝿かったので目を開けることにした。

それと同時に沸きだす生徒達……何故?


「ちょっとお前ら五月蝿すぎだぞ!一体どうしたって言うんだ」


俺の少々怒気を含んだ声にみんな静まりかえ……るはずもなく……


「だってエヴァちゃんが少しでいいから席を換えてって言っても答えてくれないんだもん!!」


まき絵が駄々っ子の如く……というか駄々をこねる。


「だが席順は学校で既に決まったはずだろ?」

「ちょっと位いいじゃん!」


裕奈の言葉にみんな賛同の声を上げる。ホントにパワフルなクラスだな……ネギも大変だろうに……

思わず涙がこぼれそうになるがそんなことはしない、だって男の子だもん!

俺が窓側で真ん中からエヴァ、茶々丸と続くのだが……何故エヴァの席がいいんだ?

よく事情は分からないがこのままだと五月蝿くて眠れないので俺はエヴァに交渉し始めた。


「エヴァ……少しの間でいいから彼女たちと換わってやれよ」

「却下だ、何故わざわざ席を換わらねばならん」


不機嫌そうにエヴァは俺を睨む。何故俺が睨まれなければならないんだ?


「そういうなよ……」

「……………………」


エヴァは無言でそっぽ向いた。周りから巻き起こるブーイングの嵐……仕方ない……

ポップはそっとエヴァの耳元でこう呟いた。


『今朝のこと……バラすぞ』


ビクッ!!


振り返ったエヴァは物凄い形相で俺を睨みつけ、顔は面白いぐらい真っ赤である。周りもエヴァの豹変にまた何やら話が飛び交っている。そして俺の耳にも当然入るわけで……


「ねぇ今のエヴァちゃんの顔見た! あれは何かあるよ!!」

「もしかしてあっちで抜け駆けでデートとか!?」

「「「「私とデートして!!」」」」


何やら凄いことを口走っている。何故そこまで飛躍するのだろうか。


「…………わかった」


エヴァは顔を未だ朱に染めたまま席を立った。それに沸き立つ乙女達。やっとこの五月蝿さから開放されるかと思ったら…………甘かった。

先程のエヴァについて色々聞かれ、また何回も席を入れ替えては俺に話し込んでくるため寝るどころか休む間もない……勘弁してくれ。

俺はこのクラスに置いた学園長にちょっとした殺意を抱いたね。まぁこのクラスになるのは当たり前なんだけどな……


――――――――話は数日前に遡る






「何故俺が京都へ行かねばならない」


学園長室で腕を組んでも問う俺の姿はどうみても警備員の態度ではないだろう……


「さっきも言ったじゃろう……生徒を守るため、そして何より生徒の暴走を食い止めるため、お主に……」

「建前はいいからさっさと本題に入ってくれ」


近右衛門の言葉に耳を貸さず、さっさと本題を聞き出すことにした。学園長も顔を変える。麻帆良の学園長から一人の魔法使いへと。


「知っての通りこの間、我が校に不審者が侵入したのは無論知っておろう」

「あぁ…………」


自然と顔から表情が消えていく。


「あれは西の刺客での~」

「西?どういうことだ……」


俺の質問に学園長は一寸間を置く。


「聞いたと思うがこの世界では魔法は秘匿されているのは知っておるの」

「あぁ、エヴァから聞いている」


ポップは彼女に一般常識はもちらん裏の話も聞いていた。


「我らの力はこの世界では強力じゃ……そこで…………」


近右衛門の瞳が細まる。


「その力は裏の世界では巨大な権力と成りうる。そこで強力な魔力を持つ者は裏の世界では拉致の対象になるのじゃ」


ポップの瞳に冷たい色が宿る。


「…………それで」

「日本では東と西で勢力が二分されているじゃが、西の狙いは恐らく…………」

「このかか」


俺の発言に近右衛門は驚愕する。


「気づいておったのか」

「まぁな……」


前から巨大な魔力の波動を秘めているのは一目見てわかった。だが彼女が狙われているとわかったのはヤツラを痛めつけ吐かせた後だ。もっとも有益な情報を聞きだした後、消したが……となると……


「俺はこのかの護衛役というわけか」

「流石じゃの」


近右衛門は自慢の髭を撫でる。


「しかも西の総本山がお主たちが行く京都なのじゃ、恐らく刺客もこの間の比ではないじゃろう…………」


真剣な眼差しで近右衛門は俺を見つめる。


「頼めるかの」


頼める……か、言うまでもない。


「あんたには借りがあるしな……それに…………」


俺は屈託なく笑った。


「このかはネギの生徒であり俺の友でもある。その依頼受けよう」


その返事に近右衛門はほっと胸をなでおろした。


「依頼を受けないと思ったのか?」


からかう俺に学園長は再び髭を撫でる。


「お主なら引き受けてくれると思っておったが……少しその気配を抑えてくれ、わしも歳なんじゃからな」


近右衛門の額には汗が滲んでいた。どうやら知らぬうちに殺気を放っていたらしい。悪いことをしたな……つい拉致の言葉に反応してしまったようだ。


「話は変わるが……」


彼の雰囲気も元の学園長に戻ると彼はある相談事を頼んできた、それで何かとというと……


「お主、このかをもらってくれんか?」


いきなり爆弾発言をしてくれたわけです、この爺さん。


「いや何、お主の実力はかなりのものじゃし、このかを守れる器だと思うのじゃがどうじゃ?」


冗談かと思ったらマジな顔してるし、勘弁してくれ……まぁあたふたして断るのは俺の性分じゃないここは一つ。


「別に俺は構わないがこのかが嫌がるに決まってるだろ?このかがいいっていうなら話は変わるだろうが……」


俺が不敵に笑ってやると……なんか爺さんまで不敵に笑ってるぞ、その言葉を待っていたといわんばかりに…………


「なら今度わしがこのかに聞いてみよう、楽しみにしておれ♪」


何て言ってくれました、まぁそんな心配いらないだろうがな、このかが俺をそんなふうに見ているわけがないし。

と思ってたら後日、昼食中にこのかが俺を婚約者扱いしたものだから大変だった。阿鼻叫喚の地獄絵図とはまさにあれだろう。

しかもエヴァからとんでもない殺気を叩きつけられたし、茶々丸はやけに反応が素っ気なくなるし。

さらにはメイランから乱れ突きは喰らうし……散々だったなあの日は…………









っと何時の間にか寝ていたらしい、ゆっくりと瞼を開いていくと何時の間にかエヴァが俺の隣で寝ていた。俺の肩に頭を乗せ、口元には微かに笑みを浮かべ静かに眠っている。


(これじゃ動けないな……)


仕方ないので俺は再び夢の世界に旅立つことにした、おやすみ~






その後、生徒達の話によると俺が寝ていた間に何故かカエルが大量発生したらしい。恐らく西の仕業だろうが、これは刺客というよりからかいが主だろうな、殺気も感じなかったし。

また俺のほうに飛んできたカエルは片っ端から拳で殴ってたらしい……やばいな、まだ癖が抜けていないようだ。おかげで古菲に勝負をせがまれたのは余談である。















―――――――――――英気を養い、いざ京の都へ





大魔導士は眠らない 大魔導士は眠らない 14話 初めての日本旅行

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