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大魔導士は眠らない 14話 初めての日本旅行(×ダイの大冒険、オリ有り) 投稿者:ユピテル 投稿日:04/23-23:35 No.382



「みなさん、準備はいいですか?」

「「「「「「「は~~~~~い!!」」」」」」」


皆さん一斉に手を上げる。相変わらずアスナたちは元気いっぱいの様子である。ネギは生徒達を見回した後、視線をポップさんに向ける。

ポップはその視線ににこやかに微笑み返す。そしてその笑みに励まされネギは笑顔いっぱいで話す。


(父さんの手がかりが残されているかもしれないし、親書の使命もあるから色々大変だけど頑張るぞ!)


「では皆さん!いざ京都へ!!」

「「「「「「「お~~~~~!!!」」」」」」」












大魔導士は眠らない 14話 初めての日本旅行












今日はまさに絶好の修学旅行日和、気持ちまで弾んでしまいます。今日訪れたのは京都にある清水寺というお寺、夕映さんの説明ですと何でも観音様に能や舞を見せるための舞台だそうです。そして能というのは日本の伝統的な舞だそうです。外国だとバレエとかオペラに当てはまるのか、奥が深いです。


「わ~スゴイ!京の街が一望できますね~」


思わず見入ってしまいました。麻帆良と違って木造が多くてとってもいいです。


「そうだな」


僕の隣に立っているの異世界から来たポップさん、僕と同じように楽しそうにその景色を見入っていました。ポップさんの服装はいつもの警備員の制服ではなく僕と同じようにスーツ姿です。

本人は似合ってないと思っているようですが、とってもよく似合ってると思います。何故かポップさん、皆から写真を取られているんですけど、どうしてだろ?


「ポップさんも初めてですもんね」

「そうだな」


思わずお互い笑ってしまう。異世界から来たポップさんは何処だって初めてなのだから。


「おっ、そうだ……ネギ」

「何ですか、ポップさぁぁぁぁん!?」


いきなり僕の視線が急激に高くなる。何故ならポップさんは僕を肩車しているからだ。周りがなんだかざわめきだすけど僕は気にならなかった。何故なら先程とは違う景色に見入っていたからだ。


「うわ~~~~」


急に広がる世界に僕は軽い驚きと深い感動を覚えた。


「やっぱり高いほうが遠くまでよく見えるだろ?」

「はい!!」


僕とポップさんは存分にその光景を楽しんだ。僕が降りた後にまき絵さん達に肩車してくれとせがまれてポップさんは困っていたのが印象的でした。


「ネギ先生、私と一緒にその恋占いなど……」

「ポップさんも一緒に行こうよ!!」


何故かいきなり僕とポップさんはその恋占いの石のところまで行くことになりました。ポップさんはあまり乗り気がしない表情を浮かべていましたが、結局強制的に連れて行かれてました、流石としか言い様がありません。









「ネギ君、あっちあっち~」

「ポップさんも早く~」


みんな僕たちよりずっと先にいます。やっぱり女の人はそういうのが好きなのかな……


「それにしてもやっぱり木で造った古い建物っていいよね~」


僕がうっとり見とれているとカモ君に渋いと言われた、そんなに渋いかな~


「それにしても兄貴、ここはもう敵の本拠地だからもう少し警戒しねぇと!それにあの刹那ってヤツがスパイの可能性もあるし!」

「刹那が? どういうことだカモ」

「ポップの親分! 実は兄貴の親書が式神によって奪われそうになったんだが、その親書を手にしていたのがあの刹那ってやつなんっすよ」


鼻息を荒くしてポップさんに熱く語るカモ君、でもそうは見えないんだけどな~


「刹那がスパイ? ありえないぞ」

「「え?」」


ポップさんの発言に僕とカモ君は思わず驚きの声をあげる。


「ネギも知ってるだろ、このかと刹那の仲を」

「う、うん」


確かにこの頃凄く仲良くしている。大抵学校でも一緒だし……


「で、でもよ。アレは実は油断させる罠かも……」


まだ疑っているカモ君にポップさんは更に言葉を重ねる。


「刹那の話によるとこのかとは幼い頃からの友達だったらしい」

「そうだったんですか……でも最初の頃は刹那さん……」

「彼女にも色々と事情があったんだろ…………安心しろ、彼女は味方だ」


ポップさんは屈託なく笑うと僕の頭を撫でる。なんかポップさんの手ってとても暖かくて安心できる。

僕にはお姉ちゃんがいるけど、お兄ちゃんってこんな感じなのかな?









その後、色々あったけど(カエルとかお酒とか)何とか一日目は無事に終わり、僕が椅子に腰掛けて休んでいるとアスナさんが姿を現した。


「今日なんか色々起こったけどネギ、もしかしてあんた達と何か関係があるの?」


思わず核心を突かれてうっと唸る。


「いっちまえって兄貴!」


僕は仕方なくアスナさんに事情を説明することにした。


「また魔法の厄介事か~」

「うっ、ごめんなさいアスナさん達にまで迷惑かけて」


謝る僕にアスナさんは軽く溜息をついた後、微笑んだ。


「仕方ないわね~なんかあったら私を呼びなさい、手伝ってあげるから」

「で、でもアスナさんも一般人なわけですし……」


そういうとアスナさんに軽く額を突かれた。


「もう充分巻き込まれているわよ、ここまできたら一緒でしょ」


笑みを浮かべるアスナさんに僕は深く感謝した。


「ネギ先生~教師は早めにお風呂をお願いしますよ~」

「は、はい、しずな先生」


危うく聞かれそうになったけど、どうやら聞こえなかったみたい。


「じゃあ続きは後で聞くからね」

「はい、分かりました」


そういうとアスナさんは自分の部屋へと戻っていった。じゃあ僕もお風呂に入ろうっと!









「おっ、ネギも今から風呂か」

「ポップさんもですか」

「あぁ……」


着替え場にはポップさんが今から服を脱ごうとしているところだった。


「じゃあ一緒に入ろうか」

「はい!」


僕もいそいそと服を脱ぐ。スーツが皺にならないようにちゃんと畳んでおく。


「じゃあポップさん、入りましょ……う」


思わず僕の視線はポップさんに釘付けになってしまった。


「ん?どうしたネギ?」


不思議そうにポップさんは僕を見つめているようだったが、気がつかなかった。ポップさんの体は日本人とは違い白い肌をしている。

何より驚いたのはポップさんの身体がこれ以上ないほど引き締まっていたことだ。

男の人の身体を見るのは初めてだけど、ポップさんの身体が普通の人とは違うだろうことはすぐに分かった。

身体はどちらかというと細身なのに全身筋肉で覆われていることがよく分かる。一体どのくらい修行したらこんな身体になるんだろう。


「何突っ立ってんだよ、さっさと行くぞ」


そういうとポップさんはガラリと扉を開けた。


「ま、待って下さい~」


僕も慌ててポップさんの後を追った。






「ほれほれほれ」

「もう少し優しくやってくださいよ~」


今ポップさんが僕の頭を洗ってくれているんだけど、ちょっと乱暴なもんだから……


「ポップさん!目に!目に入ってる!!」

「もうちょっと我慢しろ!」

「そんな~しみるぅ~」


ポップさんは更にごしごしと洗う…………もう限界だよ~


「よし、終わり!!」


ザパァーーーーーッ!!


「ふぅ」

「まったく少しは我慢しろ、男の子だろ?」

「で、でも……」


未だ涙目な僕にポップさんは苦笑する。


「まぁ我慢はしたからな」


ポップさんはごしごしと頭を撫でる。おかげで頭から水気が飛ぶ。


「じゃあ入りますか」

「は~い」


僕とポップさんは揃って温泉の中に身体を沈めた。






「「ふ~~」」


思わず二人の口から声が漏れる。


「気持ちいいな~」

「そうですね~」


風がそよそよと顔にあたり何ともいえないものがある。


「ふふふ」


突然ポップさんが笑い出した。


「どうしたんですか、いきなり?」


思わず聞いてしまった。僕の問いにポップさんは笑いながら答えてくれた。


「いやな、俺が魔王討伐のために旅していたのは知っているだろう?」

「はい……」

「当然基本的に野宿、どうしても身体が汚れるわけだ」

「確かにそうですね……」


僕が頷くとポップさんは話を続ける。


「それで仲間の内一人だけが女だったんだけど、やっぱり気になるみたいでな……」


ポップさんの瞳がここではない遠くへと向けられる。


「温泉なんて滅多にないだろ? でもあいつはよくダダをこねてな……」


ポップさんは何故か頬をさする。


「川とかあると一箇所に水をためて、俺にその水を温めろっていうんだよ」


ポップさんの指から小さな火が灯る。


「風に当たりながら入ったからな…………思い出しちまった」


懐かしそうな顔をするポップさんに僕は何も言えなかった。


(やっぱり、寂しいのかな……)


僕はウェールズを離れ日本に来たけど、最初の頃はちょっと寂しくて泣いていた。でもウェールズはこの世界にあるから僕は帰ろうと思えばいつでも帰れる。


(けどポップさんは…………帰れないんだ)


帰ることができず何も知らない土地で一人きりだなんて僕だったら恐くてどうしたらいいか分からなくなっちゃうと思う。でもポップさんはいつも笑っている。どんなに笑っていたって、絶対寂しいはずなのに。僕は知らないうちに手を握り締めていた。


「あの……ポップさん」

「何だ、ネギ?」


屈託なく笑うポップさんに僕は……


「あ、あの…………」


ガラガラガラ


僕の言葉を遮る様にドアの開く音が鳴り響く。他の先生かと思って覗いてみたら……


「えっ!?」


思わず声を出しそうになるがなんとか飲み込む。僕の視線の先には僕が受け持つ生徒達がいたのだから。


「私たちが一番乗りのようですね」

「そのようだな」


(何で刹那さんとエヴァさんが!?)


思わずパニックに陥る僕に……


「これが噂の混浴ってやつっすよ、兄貴!」


何故か嬉しそうにカモは彼女たちを見つめていた。そんなカモを尻目にエヴァと刹那はすでに温泉に浸かっている。


「ど、どうしましょうポップさん」


僕が小声で話しているところを……


「よぉエヴァ、刹那」


ポップさんは普通に声をかけていた。何でわざわざ!?!?






「「ポップ(さん)!?」」


声に反応してエヴァと刹那がポップ達のほうに振り向く。そして彼らの姿を発見すると急いで肩まだ浸かる。顔は真っ赤で未だにポップ達を見つめている。


(僕もあんな顔だと思う…………だって頬が凄く熱いんだもん)


「な、何故ポップがここにいる!」

「俺たちのほうが先なんだけど」


ポップさんの言葉にエヴァさんは沈黙する。目はつり上がりこちらを睨めつけている。


「で、ですが何故ここに!私たちは女湯から来たんですよ!?」

「どうやら混浴みたいだな」


岩に背もたれしながらポップさんはのんびりと語る。刹那さんはあまりの恥ずかしさに湯を口元まで浸かる。

それにしても何でポップさんは女性と一緒にいるのに顔色一つ変えないんだろう……


「兄貴……あれが大人の男ってやつでさ~」


カモ君は深い感銘を受けたみたい。あれが大人なのか~沈黙が四人(+一匹)の間に漂う。

ふとポップさんを見つめると何やら笑みを浮かべていんだけど、何かいつもエヴァさんが浮かべてる笑みと同じような気がするんだ……き、気のせいだよね。


「おいおい、何恥ずかしがってんだよエヴァ、俺とお前はそんな仲じゃないだろ」


その発言に思わず僕はエヴァさんを見つめた。隣にいる刹那さんも顔を真っ赤にしてエヴァさんを見つめる。


「エ、エヴァさん、やはりポップさんと……」

「ち、違うぞ刹那!そんなことは決してないぞ!!おいポップ何でまかせを言っている!!!」


目には若干の涙を浮かべエヴァさんは猛反発する。


「だって今朝、俺の肌見たじゃん」

「うっ」


ポップさんの言葉にどもるエヴァさん……やっぱり、その、ポップさんと……


「エヴァさん……」


刹那さんも潤んだ瞳でエヴァさんを見つめる。


「や、違うぞ! そういう意味じゃないんだ!! 誤解を招くようなこと言うな!!」


ポップさんは楽しそうに笑っているけど本当はどうなんだろう? 疑問に思っている僕にポップさんは更に爆弾発言を投下した。


「それに刹那、お前の身体だって俺はもう見たことあるんだから別に恥ずかしがらなくてもいいだろ」


その発言に僕とエヴァさんは物凄い勢いで刹那さんを凝視する。エヴァさんに至っては殺気まで放ってるような気がする。


「あ、あれはですね……って違うんですよ二人とも!そういう意味じゃないんですって!!」


必死にあたふたしながら刹那さんは説明するんだけど、その焦り方だとやっぱり……


「エヴァさんと刹那さん、これが噂の、ふ、二股というやつなのかなカモ君」

「そうだぜ兄貴! ポップの親分もやるじゃねぇか! 今度、杯を交わしたいぜ!!」


カモ君はポップさんを褒めてたけど、二股っていけないことじゃなかったの?


「男は小さくまとまっちゃおしまいよ~。兄貴も親分を見習ったほうがいいですぜ」


そ、そうなのかな、何か違う気がするけど……そして刹那さんとエヴァさんは真っ赤になって俯いていると……


「「きゃーーー!!」」


着替え場から悲鳴が聞こえてきた。この声は……


「このちゃん!!」


立ち上がる刹那さんに……


「見えるぞ」

「へ?……きゃーーーっ!!」


ポップさんの言葉で刹那さんは再び温泉の中に沈む。


「……仕方ない、ちょっと待ってろ」


そういうとポップさんは温泉からあがったのだが……


「こ、こらポップ! ま、前を隠せ!!」


顔をこれ以上ないほど真っ赤に染めてエヴァさんは怒鳴る。刹那さんに至っては口を金魚のようにぱくぱくさせているし。


「おっと、悪い悪い」


ポップさんは大して気にも留めずに腰にタオルを巻くとさっさと着替え場へと向かっていった。そして数秒後、再び悲鳴が上がりやがて静かになった。


ガラガラガラ


再び扉が開かれる。すると両方の頬を真っ赤に腫らしたポップさんの姿が、一体何が……


「アスナとこのかに式神が嫌がらせしてたから全て殴り倒したんだが、さらに凶暴な敵にやられてな」


苦笑いを浮かべながらポップさんは再び温泉の中に浸かった。普通そのまま出ません?


「やっぱり男、いや漢だぜ親分!!」


カモ君の瞳がキラリを輝いた。


「……………………大きい」


刹那さんの呟きが京の夜空に溶けて消えた。















――――――――――混浴、即ち混沌なり





大魔導士は眠らない 大魔導士は眠らない 15話 忍び寄る影

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