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大魔導士は眠らない 16話 ネギの憧れ(×ダイの大冒険、オリ有り) 投稿者:ユピテル 投稿日:06/20-21:37 No.777




「バカ猿女~このかを返せ~!!」


私たちは今攫われたこのかを追ってひたすら走っていた。距離はほんの少しずつだけど縮まっている。


(私の注意不足でこのかが! それにあいつとも約束したのに!!)


知らず知らずのうちに拳に力が入る。胸の内に渦巻くのは自分に対する不甲斐無さ、そして約束を破った自分に対する怒りだ。


『それからアスナ、お前は常にこのかと共にいてくれ……頼んだぞ』


あいつの言葉が脳裏に響く。あいつは真剣に私を見つめていた……私を信用していたのだ。それなのに私は……

だから私は今ひたすら京都の街を走っている、大切な親友をこの手で取り返すために!












大魔導士は眠らない 16話 ネギの憧れ












「三枚符術! 京都大文字焼き!!」

「くっ!」


前方に巨大な業火が私の前に立ち塞がった。とても前に進むことが出来ない! 

私は堪らずその場から跳躍し、炎から距離を置く。視線の先には眠りについているこのちゃんの姿が映し出されていた。


「ホホホ、並みの術者ではその炎は越えられまへんえ」


敵の女は余裕の笑みを浮かべている。その手には大切な存在が静かに眠りにつかされていた。

確かにこの炎を突破するのは容易なことではない。しかしこのままでは……


「くそっ! このちゃん!!」


苦々しく目の前に立ち塞がる炎を睨みつける。こうなったら氣で身体を強化して一気に突っ込むしか! 

私は更に炎を弾く水氣を身に纏い、その紅蓮の炎に突撃しようとしたその時、ネギ先生の呪文が発動した。


風花・風塵乱舞フランス・サルタティオ・ブルウェレア!!」


私の背後から圧倒的な暴風が吹き荒れる、その荒々しい風は私や神楽坂さんを素通りし目の前の炎の壁だけを薙ぎ払った。


「……スゴイ」


一瞬で炎を掻き消したネギの実力に刹那は目を見開く。


(あの炎が一瞬にして掻き消えた、やはりネギ先生は相当の……)


思わず私は振り返り、止まった。何故ならネギ先生の顔がいつもとはまるで別人だからだ。

その纏う空気はまるで……ポップさん?


「逃がしませんよ!! このかさんは僕の大事な生徒で……大切な友達です!!」


ネギ先生は毅然と敵に宣言した。その顔、その立ち姿が何故あの人に似ているように感じたのだろう。






契約執行シス・メア・パルス! 180秒間ペル・ケントウム・オクトーギンタ・セクンダース!! ネギの従者ミニストラ・ネギイ『神楽坂アスナ』!!」


僕の魔力をアスナさんに供給する、これで下手な怪我はしなくて済む。

相手は術者が一人に使い魔が一匹。こちらは前衛にアスナさんと刹那さん、後衛に僕。

目指すはこのかさんの奪還、それだけだ!!


「アスナさん! 刹那さん! お願いします!!」

「任せて!!」

「わ、分かりました!!」


アスナさんと刹那さんは一気に相手との距離を詰める。眼鏡の女の人は動揺しているように見える。


「ネギの兄貴!」


カモ君がカードを指差す。カモ君の意図が分かり僕は無言で頷いた。


「アスナさん! 今からアスナさんのアーティファクトを召喚します、受け取ってください!!」


僕はすぐさまカードを構えるとすぐさま詠唱を開始する。


能力発動エクセルケアース・ポテンテイアム! 神楽坂アスナ!!」


するとアスナさんの手に光が集いだす。アスナさんのアーティファクトはハマノツルギ!!

光が止むとアスナさんの手に現れたのは……ハリセン?


「何でハリセンなのよ!!」


それは僕にも分かりません……とりあえず頑張ってください!

術者はすぐさま使い魔を召喚し、今や相手の前衛数も互角だ。


「この~~~~!!」


裂帛の気合と共にハリセンを叩きつける。


―――――パンッ!!


アスナさんのハリセンが程よい効果音を叩き出す……って使い魔が還されてる!?


「おぉーーー!!」


肩にいるカモ君も驚愕の声を上げる。どうやらアスナさんの武器は退魔としてかなりの能力を秘めているみたいだ。


「桜咲さん! そこのクマ(?)は私に任せてこのかを!」

「分かりました! お願いします!!」


刹那さんがこのかさんの下に向かおうとする。すると何時の間にか人影が刹那さんに向かい襲い掛かってきた。


「刹那さん!!」

「くっ!」


刹那さんは奇襲にあの長刀を抜刀し応戦する。どうやら相手は刹那さんと同じ神鳴流らしい。

前衛が膠着している……なら後は僕の仕事だ!! すぐさま僕は呪文を詠唱し始める。


「ラス・テル! マ・スキル! マギステル!!」


僕の周囲には自然と風が舞い踊り、その風に僕の意思を乗せていく。


風の精霊11人ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス! 縛鎖となりてウィンクルム・ファクティ相手を捕まえろイニミクム・カプテント!!」


掛け声と共に風の精霊がこの世界に具現化する。彼らは僕と共に歩むものだ。彼らは僕の命を静かに待っている、あとは彼らに指令を与えるだけだ。


魔法の射手サギタ・マギカ! 戒めの風矢アエール・カプトゥーラエ!!」


手を相手に向かい振り下ろすと彼らは僕の意思に従い敵に向かって突き進む。風の精霊は一瞬でアスナさん達を抜き去り、敵に殺到する。


「あひぃ! お助け!!」


眼鏡の女の人がこのかさんを盾にする。このままでは僕の風はあの術者に当たる前にこのかさんに当たってしまう。


「このか!!」

「このちゃん!!」


アスナさんと刹那さんがこのかさんに直撃しそうで堪らず声を上げるが僕は静かに微笑んだ。


(そんなの、甘いよ!!)


「「「なっ!?」」」


アスナさんと刹那さん、それに相手の従者も驚いている。そうだろう、何故なら……


「このかさんは確かに返してもらいましたよ」


僕の腕に収まっているんだから。


(うまくいきましたよ! ポップさん!!)









「なぁネギ……」

「何ですか?」


それはいつもの夜、僕はポップさんの前で魔法の射手を放っていた。ポップさんがこの地に来てから僕は彼に修行の相手をしてもらっている。

おかげで僕の実力はウェールズの頃より随分成長していると思う。何故ならポップさんのアドバイスが僕を更なる高みへと押し上げてくれるからだ。

ある時、ポップさんはこんなことを尋ねてきた。


「魔法の射手だったな、すまないがネギが覚えている全てをもう一度やってくれないか?」

「魔法の射手ですね……わかりました!」


僕は自分の出来る魔法の射手を全て見せてみた。破壊属性の光の矢、捕縛属性の風の矢、そして電撃属性の雷の矢だ。

全て撃ち終わった後、僕はポップさんに向き直った。


「なるほどな」


ポップさんは小さく頷くとなにやら考え込んでいる。一体どうしたんだろう……数分後ポップさんが僕にあるアドバイスをしてくれた。


「いやな、改めて見てみるけど、やはりかなり優れていると思ってな」


ポップさんが語るのを僕は静かに耳を傾けていた。


「だがネギがその本質を理解しているとは思えなくてな」

「本質……ですか?」

「あぁ、例えば光の矢。ネギは大抵どういうときに使う?」


ポップさんの問いに暫し悩んだ後、僕は答えた。


「大体、敵の魔法の射手の威力が強いときによく使います」


その問いにポップさんは小さく頷く。


「確かにそれは当然の方法だろうな。だがな……その光の矢は他の矢より退魔に優れているって知っていたか?」


その発言に僕は大きく目を見開いてポップさんを見つめた。


「そうなんですか?僕知りませんよ、そんなこと……学校で習ってないし」

「まぁ恐らくそうだろう。だが俺がネギの矢をさっき比較してみたけど、明らかに聖の属性が付加されていた」

「つまり……矢の属性によって効果が違うんですか?」


その問いにポップさんは僕の頭をクシャクシャ撫でて、屈託なく笑った。


「流石だな。あぁ見た限りだと光は退魔、風は速度、雷は麻痺の効果が付加されているな」

「雷の麻痺は分かりますけど、風の速度と言うのは?」

「あぁ、そのまんまだ。風の矢は明らかに敵への強襲速度が他の矢より断然速いんだ。気がつかなかったか?」

「何となくなら……」


確かに言われてみたらそうだ。風の精霊を纏ったら僕の移動速度は通常とは比較できないほど飛躍的に向上する、だったら矢だって……

僕が納得するところを見るとポップさんは更にアドバイスをくれた。


「それから気になったんだが……風の矢って敵しか束縛できないのか?」

「え?」


ポップさんの言っていることがよく分からない。僕の表情から何を思っているのか分かるのだろう、ポップさんは苦笑しながら答えてくれた。


「いやな、束縛っていうのは言葉どおり相手を捕らえるわけだろ?だったら敵じゃなくても束縛できるかなと思ってな」

「敵以外に誰を束縛するんですか?」

「例えば味方とか?」


ポップさんの発言に僕は飛び上がった。


「ど、どうして味方を捕まえるんですか!?」


思わず声を荒げる僕にポップさんは静かに悟る。


「例えば味方または誰かが人質になったとしよう。敵はその人質を盾に逃亡しようとする。ネギ、君はどうする?」


僕は暫く沈黙する。もし誰かが人質になったら……


「人質を助ける!」

「どうやって?」


人質が敵から離れればいい、つまり人質をこちらに連れて来られれば!!


「人質をこちらに連れてくる! 風の矢で!!」


そうか! 何も敵に的を絞らなくてもいいんだ、その束縛するという能力を生かせればいいんだ!


「流石だな……つまりそういうことだ。人質をネギの風の矢で人質を捕獲、そしてそれを自分に引き寄せればいい」


そうすれば敵は己を守るものは何もなくなるのだ。


「スゴイです! こんな方法、思いつきもしませんでした!!」


ポップさんは本当にスゴイ、見たこともない魔法を瞬時に分析して的確にアドバイスするのだ。僕のほうがこちらの魔法を知っているはずなのに……


「ネギの場合は学校の授業内容に縛られすぎなんだよ。俺なんかある意味実戦で鍛えたようなものだぜ」


ポップさんは向こうの世界では大魔導士と呼ばれているんだよね……何か凄く分かる気がする。

実戦だけで技を磨くなんてとてもじゃないけど普通は出来ない。


「まぁ俺は昔は勉強なんか大嫌いだったからな。それに比べたらネギは偉いよ」


思いっきり撫でられて僕はちょっと揺れていた。でもポップさんの瞳は優しい色をしている。


「それにしてもネギの世界では雷は普通の魔法なんだもんな~最初ネギのこと勇者かと思ったぞ」

「勇者ですか! なってみたいな~」

「無理無理、勇者っていうのは化けもんだぞ。アイツに敵うヤツなん何処にもいやしないよ」

「そんなにスゴイんですか?」

「あぁ、アイツに殴られでもしたらマジで星になって輝くぞ」


僕たちは冗談を交えながら笑いあった。ポップさんの屈託なく笑うその姿に僕は父さんとは別の憧れを抱いた。


―――――――――――僕もいつか、あなたのようになれますか?









「さぁ後はあなた達のボコボコにするだけね!」


アスナは巨大なハリセンを上段に構え、敵を見上げる。刹那も油断なく夕凪を構え、相手に近づく。


「くっ! 一時撤退や!!」


眼鏡の女は札から新たな使い魔を召喚すると何処へと姿をくらました。


「待て!!」

「神楽坂さん、深追いは危険です!」


刹那の言葉にアスナは足を止める。しぶしぶといった面持ちでネギのところへ戻っていく。

今このかはネギの腕の中で静かに眠っていた。刹那もその様子にほっと胸を撫で下ろす。


「このちゃんは……」

「眠っているだけみたいですね……」

「「よかった~」」


アスナと刹那の声が見事に合わさる。その様子にお互い顔を見合わせ小さく笑いあった。月夜が静かに彼らに降り注ぐ。風が火照った身体を冷やしてくれる。


「それにしてもネギ、あんたさっきの凄いわね」

「そうですね、一体どうやったんですか?」


アスナと刹那に説明を求められ、ネギはどうしてあのような行動が出来たのか話した。


「ポップさんが……」

「あいつちょっとスケベだけど、実は結構スゴイのね」


二人とも感心した面持ちで頷いていた。僕も頷いた、ポップさんはスゴイ……父さんと同じぐらいに……


「じゃあ帰りましょうか」

「そうね……」

「そうですね……」


僕たちはこの場を後にしようとこのかさんを抱き上げようとした、その時、突如ネギの背後に巨大な鎌が姿を現した。


「「なっ!?」」


アスナと刹那が同時に驚愕の声を上げ、ネギに向かって手を伸ばす。鎌は既に大きく振りかぶられていた。

鎌の妖しく煌く先にはこのかを抱き上げようとするネギの背があった、明らかに狙っている。

ネギはゆっくりと振り返った。その先には目前に迫り来る死の影が……


「「ネギ(先生)!!!」」


必死に手を伸ばすが……届かない! ネギの瞳には巨大な刃が目前に迫りそして…………止まった。

ネギの目前で小さな手が巨大な鎌を受け止めていた。金髪が風に吹かれ静かに揺れる。


「ふん、背後からとは気に食わんな」


夜の街に響き渡るはソプラノの声、だがその声には小さな苛立ちが滲んでいた。

少女は手を一閃する。すると圧倒的な衝撃波が周囲を容易く抉り取る。爆風と爆音が人のいない街に響き渡る。

煙が辺りに立ち込める。その中巨大な鎌は一瞬にして掻き消えた、どうやら逃げたようである。


「え、えぇ!?」


アスナは指を震わしながらある一点を指していた、その指の先には……


「なんだ神楽坂、まるで幽霊でも見るかのようなその反応は」


不機嫌そうに顔を歪めるエヴァの姿がそこにあった。


影の門ゲートか……流石だぜ」


カモ君が冷や汗を流す。僕はというと何が起こったのかまだよく分からなかった。


「まったく……世話を焼かすな、坊や」

「あの……えと、ありがとうございました」


エヴァンジェリンさんは呆れた面持ちで僕を見つめている。僕はよく分からずにとりあえず彼女にお礼を言う。


「まぁいいさ、ヤツに一つ貸しが出来るからな」


エヴァさんは小悪魔の笑みを浮かべています。ヤツっていうのはやっぱり……


「ポップに貸しって何なのよ」


アスナさんが皆の気持ちを代弁してくれました。一体ポップさんはエヴァさんに何と言ったんだろう。

僕たちの様子に満足そうな笑みを浮かべながらエヴァさんは口を開いた。


「何、あいつから連絡を受けてな。お前たちが危なくなったら助けてやってくれってな」

「それで貸しと言うのは……」

「まぁ焦るな。私はタダでは働かないからな。あいつと取引を交わしたのだ、お前たちを助けたら何か一つ願いを叶えるとな」

「……ドラゴン○ール?」

「違うわ!」


アスナさんのボケにエヴァさんが突っ込んだ。いつものとは逆の構図に何か新鮮なものを感じる。


「まぁ願いといっても簡単なものらしいがな……私はヤツに貸しが作れればそれでいいんだがな」


といいつつもエヴァンジェリンさんの眼は血走っていました。しかも頬を赤らめています、かなりミスマッチです。

一体彼女の脳裏には如何なる絵が浮かんでいるか分かりません、分かりたくもないけど。


「ま、まぁともかくそろそろ帰りましょうか……」

「そ、そうだな」


刹那さんの声にカモ君が続く。エヴァさんもどうやら正気に戻ったようだ。


「じゃあ帰りますか」


僕の羽織をこのかさんに被せ、アスナさんが背負うとみんなで夜の京都を歩き出した。









遙か東に幾重の魔力の波動を感じていたが、今は感じられない……どうやら終わったようだな。

本来なら私がこんな茶番に付き合うことなどないのだが、アイツに何かあったみたいだな。

私は深夜の夜間飛行を楽しみながらポップのことを考えていた。何せいきなり私に「あいつらを助けてやってくれ」などと言うのだからな。

アイツは他のヤツが厄介ごとに巻き込まれることを嫌う、そんなやつがわざわざ私に頼んだのだ。

余程のことがあったのだろう……現に先程それを証明するかのような先程の巨大な魔力の波動。


(何か……あるな)


私は顔を見上げる……空には満天の星空だが私の瞳にはある一点が映し出されていた。遙か彼方、宵の明星は不気味に紅き輝きを放っていた。












―――――――――――――闇が啼く





大魔導士は眠らない 大魔導士は眠らない 17話 紫紅の魔皇

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