HOME  | 書架  | 

当サイトは「魔法先生ネギま!」関連の二次創作投稿サイトです。ネギま!以外の作品の二次創作も随時受け付け中!

書架

[]

page.1 ~吸血姫と騎士との出会いは~ 投稿者:戯言師 投稿日:04/09-05:42 No.226

―騎士は遠い遠い世界にたどり着きました。



    でも、着いたそこには妖精は居ませんでした。



        騎士は妖精がいない事に大変悲しみました。



            そんな騎士の元に、美しい吸血姫が現れました―





    騎士と妖精と人形の

        page.1 ~吸血姫と騎士との出会いは~





満月が頭上に昇る頃、深い森の中、光と共に男が現れた。

男は全身黒ずくめで暗闇の中では一目では見つけにくい。

男の名前は天河アキト、かの世界で漆黒の王子と呼ばれた史上最悪のテロリスト。



「くっ・・・、ジャンプしたのか。ここは・・・どこだ?」



呟いて周りを見渡す。

うっそうとした森。明らかに自分が先ほどまでいた戦場とは違う。



(戦場・・・?そうだ、ユリカと戦って・・・)



先ほどまで自分の置かれていた状況を思い出す。

愛する人から攻撃を受け撃墜され、その後・・・



(その後・・・そうだラピスが緊急ジャンプをしようとして・・・)



ジャンプフィールド形成中に攻撃されランダムジャンプで跳んでしまった。



(ユーチャリスとブラックサレナも無い。そうだ・・・ラピスは? ラピス!)



辿り着いた思考に衝撃が走る。

焦りを抑えようとしながら、リンクを通して自分の半身とも言える守ると誓った少女に話し掛ける。



(ラピス!)

「くそっ! ラインが切れてる」



先ほどまでは混乱していて気が付かなかったが、常に繋がっていた筈のラインが切れている。

ラインが切れている。それは、致命的なことだ。ラピスからの五感のサポートを受けれないため僅かな触覚と、機械のサポートがあってやっと人並みになる視覚、聴覚だけしか残されない。

それによって、様々な行動に支障がでる。

今だって僅かな触覚と視覚によってやっと立っている状況だ。今、敵に出会えばほぼ間違いなく負けるだろう。

いや、それ以上の問題がある。ラインが切れるという事は、ラピスの身に何かが起きたということだ。



―ガサッ

(!?)



直ぐ傍で物音が聞こえ反射的に物陰に隠れる。

物陰に隠れた直ぐ後、二人組みが歩きながら向かってきた。



「あのジジィ、いくら人手が足りんからと言ってこの私まで駆りだすとは、まったく何を考えてるんだ」

「マァマァ御主人、ソノオ陰デ魔力ヲ少シダケ開放シテモラエルンダロ」



現れたのは、12歳くらいの長い金髪の少女と、緑色の髪をした『人形』。

自分の目を疑った。今の技術力でもあのような人形は作れたという報告は一切ない。

それ以前に、ここまで近づいていたのに二人が接近してくるまで気が付かなかった。焦っていたとは言え常に周辺に気を巡らせていたのに。



「それもそうだな。くく・・・日頃溜まった鬱憤をここで晴らしてくれる」

「俺ハタダ獲物ヲ切リ刻メバ満足ダケドナ」



そう言って二人とも立ち止まる。

気配は消している。なのにその様子は、獲物を見つけたような…



「マァ弱ソウダガナ」



人形はそう呟くと視線をこちらに向けた。



―気づかれた!?



殺気を感じ物陰から一気に飛び退く。



「ケケッ、遅イゼ」



が、追いつかれたのか目前に人形が迫っていた。

地面に足を着けるのと同時に人形が真横に迫る。



―早い!



人形が何時の間にかその手に持っていたナイフで切り掛かかってくる。

大振りのそれは見た目で思えない程の速さで迫る。



「くっ!」

―ザシュ



左腕の二の腕を斬られるが、それを無視して人形に拳を振り上げる。

それは真っ直ぐに人形の胴体に吸い込まれる。



―ガッ!



まさか攻撃を受けながらも攻撃してくるとは思って無かったのだろう。あっさりと人形が吹き飛ぶ。

痛覚が殆ど無いのが幸いした。視認でだが腕の傷は血があまり出ていない。おそらく大丈夫だろう。

だが、人形を殴りつけた感触はまるで鋼鉄を殴りつけたように硬い。



「ほう。チャチャゼロに攻撃を当てるとは中々やるな」

「チッ、油断シタゼ」



人形―チャチャゼロと言うらしい―が何も無かったかのの用に立ち上がる。

『異常』。ただそうとしか言いようが無い。普通ならば大の男でも倒れる程の力で殴ったはずなのに人形には汚れはあるがキズ一つ無い。

ならば、その後ろで控えている少女にはどれだけの『異常』を秘めているのだろうか。



「次からは私も行かせてもらうぞ」

「ナンダヨ。俺一人デモ十分ダゾ」



文句を言いながらもこちらに一瞬で向かってくる。

首を狙う一閃。こちらもナイフを取り出し弾き返す。



―ギンッ!



鈍い音が響く。―重い。あの小さい体にどれだけの力を秘めているのだろう。

想像よりも思い一撃に体勢を崩すが直ぐに立て直す。

が、人形の追撃は終わらない。再び重い刃を弾いていく。



『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!氷の精霊17頭 集い来たりて敵を切り裂け!』



少女が何かを唱える。

意味は理解できない。だが、直感的にあれはヤバイと感じる。



「チャチャゼロ避けろ!『魔法の射手・連弾・氷の17矢!』」



少女が最後の一節と思しきモノを声高らかに叫ぶ。

その瞬間、人形が飛び退き虚空から氷の矢が飛び出す。



「なに!?」



驚愕の声をあげる。

普通、何も無い空間から氷の矢などと言うものが出てくるはずがない。

いや、ここは普通などと言う言葉は通用しない。自分にとって全てが『異常』だ。

思考をしながらも体は危険に反応し、横に飛び退く。

氷の矢が直ぐ横を通り過ぎる。



「ふん、その程度で避けたつもりか」



その様子を見ていた少女が薄く笑みを浮かべる。

見下したような、笑うような声でまだ終わっていないと宣言する。



「何!」



少女の言葉に後ろを振り返った。

やり過ごしたと思っていた矢は止まっておらず、アキトに向かって迫ってきている。



―間に合え!





爆音。地面が凍りつき砂塵が舞う。

砂塵によって視界が利かない。

だが、魔力や気を感じることが出来なかった。

障壁も張れなかったのだろう。あれだけの直撃では、最低死んでなくとも動く事は出来まい。



「ア~ア、アッケナカッタナ。ツマンネー」

「ふん、つまらん。もう少し手ごたえがあると思ってたんだがな」



二人が不満げにぼやく。それでも一応は生存確認するために近づく。

直ぐに砂塵が薄まる。そして現れたのは、凍りついた地面に立っている黒ずくめの男だった。



「なっ!」



驚きの声を響き渡る。

それもそうだ、先ほど魔力のまの字さえ感じさせなかった相手が、『魔法の射手』を完全に防いだのだから。





これは半分賭けだった。

相手が放った攻撃は、こちらの常識とはまったく当てはまらなかった。

そんな攻撃をディストーションフィールドで防げるのかは全くの未知数だった。

そんな異常な攻撃を普通に放っている相手、動いている人形、それらをあわせて考えると、



(考えている通りだと、やはりここは…)

「貴様、一体何者だ」



思考を遮るように少女が問いかけてくる。

その表情は驚愕に彩られている。



「全くの予兆も魔力も感じさせずに転移してきたときは只者ではないと思ったが、

 実際に会ってみれば魔力や気さえ感じない。だが次には、私の攻撃を全て防いだ。

 もう一度聞く、貴様、本当に何者だ?」



少女がもう一度問いかけてくる。

その言葉にアキトは確信する。ここは自分居た世界とは違う世界だと。

聞きなれない単語。そしてその話し振りが、此処にとっての『常識』が、此方にとって『異常』と言っていた。

アキトは少し思考を巡らせ返答の言葉を選ぶ。



「俺は、信じられないだろうが異世界から来た。」

「……は?」



少女が口をぽかんと開け呆けた声を出す。

でた言葉は思考をめぐらせた割には単調だった。

まぁ、確かに急に異世界から来たと言われればそうなるだろう。

暫し時間がたった頃、少女がやっと口を開き、



「貴様、ふざけてるのか?」



多少、怒気を含みながらも聞き返しくる。

ふざけていると取られても不思議ではない。

が、ふざけていないと訂正しようとすると、



「ナァ御主人、ソンナ事気シナイデ、サッサト殺ッチマオーゼ」

「くっ・・・そうだな。ボコって無理やり聞き出せばいい事だ」



今まで忘れられていた人形と少女がかなり物騒なことを話す。

殺る。という言葉にこの世界は殺人が正当化されているのか。という場違いな考えが一瞬脳内を過ぎるがそれを直ぐに振り払い制止の言葉を投げかける。



「いや、俺は敵対するつもりは無い」



今のままでは確実にやられる。

そう思い、ナイフしまい両手を上げ敵対する意思はない事を示す。

その様子を見た少女が、



「ふん、貴様にやる気があるか無いかなど問題ではない。私が、やりたいか、どうかが重要なんだ」



なんて、とんでもない事を言う。

この傍若無人ぶりは誰かを思い出す。



「いや、そういう問題じゃ・・・」

「今度は全力で行くぞ!」

「アイサー御主人」

「こっちの話を聞け!」



こちらを無視して再び人形が迫ってくる。

直ぐに後ろに飛ぶが、再び目の前に人形と共に迫り来る斬撃を、ナイフを取り出しつづ避ける。



―シュン! ガキ! ザシュ! シュン! シュン!



急所を的確に狙ってくる連撃を、避け、ナイフで受け、貰い、二度避ける。

傷は脇腹に一閃。深くは無さそうだが何度も受けるのはヤバイ。

敵との身体能力の差は厳しい。

機動戦で鍛えられた動体視力でもぎりぎり避けられるレベルだ。

思考しながらも迫り来る刃を避けつづける。



『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック! 来たれ氷精 闇の精!』



少女の詠唱が始まる。

先ほどとは呪文が違うようだが、こちらはそれを気にしている暇は無い。

全力で斬撃の雨を避けつづける。



『闇を従え吹けよ常夜の氷雪!『闇の吹雪』!』



呪文が完成する一寸前に人形が横に飛ぶ。

避ける事に集中していた体はそれに反応できず硬直してしまう。

そしてその一瞬の好きを狙うように、少女の掌から肌で感じるほど巨大な力がこちらに向かって一気に流れ出す。



「っ!」

―ディストーションフィールド展開



腰に装着されているDF発生装置に意識を向け、見えない壁を作る。

一瞬の間。静寂の後、巨大な力と科学の結晶とがぶつかり合う。





―轟音





衝撃が、弾きだされた力の余波が、周りの木々をなぎ倒す。

だが、対峙する二人はどちらも揺るぎなくお互い一歩も引かない。

その間に介入できる筈が無く人形は主で様子を見守る。



―ググッ



そんな膠着状態が長く続くことがある筈も無く、徐々に押されていく。

押された足が地面を抉る。差し出した腕から軋む音が聞こえ始める。



「くっ!」



少女の顔に焦りが出始める。

そう、押されているのは少女の方だった。

全盛期には遠く及ばなくても並みの術者を超えるその力を、魔力を全く感じさせない男が押し返している。

その事実が少女の集中力を乱していく。



―パァン



軽い音と共に力の傍流が治まる。

両者はお互い無事で戦況には変化が無いように見える。

しかし、少女は違った。

魔力を感じさせないのに強力な結界を展開させることが出来る。

ならば、それ以上の何かを持っているかもしれない。

早く決着をつけなければ、そんな焦りが出てくる。

だが、それは男も同じだった。

ディストーションフィールドは、攻撃を防御することは出来ても衝撃までは吸収できない。

その衝撃で飛ばされたくなければ力を抜くことは出来ない。

感覚の無い体に力を入れることは想像以上に難しい。

それでも無理に体に力を入れることにより精神的疲労はピークに達していた。

アキトの方が早く決着をつけなければならないと強く思っていた。

一瞬の静寂。だがそれは直ぐに崩れる。



「チャチャゼロ行け!」



そんな少女の気持ちを悟ったのか人形はいつもの無駄口をたたかない。

そして先ほどよりも早くナイフで切り掛かる。

だがアキトは、それよりも早く、そして遠く後ろに飛んでいた。



「貴様、この後に及んで逃げる気か!」



もちろん、アキトに逃げる気は無い。

素の状態で勝てない以上、持てる全てを使用する。

ディストーションフィールドもそのための布石。



―ジャンプフィールド形成

全ての距離を無にするため、条件の整う『場』を作り上げる。

―イメージ構築 

それは正確に正面にいる少女の真後ろを捉える。

―イメージ完了

そして全ての条件を整えた今、必要なのは飛ぶための合図。



「ジャンプっ!」



これは、完全に賭けだ。

ボソンジャンプを司っていたのは火星の遺跡。BJ演算装置と呼ばれるもの。

だがそれはアキトの居た世界での話。

自分の常識が通じないこの『世界』でもそれがあるかどうかは全くの不明なのだから。





一瞬の間、そして男が光に包まれる。

少女は最初それを唯の目くらましと思っていた。が、光の消えた後其処には男の姿は全く無かった。



「なっ!」



何度目の驚愕の声か。転移する寸前、魔力は全く感じられなかった。

だから、男が最初何を行ったのか分からなかった。ただの目くらましだろうとは思っていた。だがだからと言って一瞬で姿を消す事ができるだろうか。

思考が止まり体がこう着する。そうて、その一瞬が致命的な隙になる。



「御主人、後ロダ!」



チャチャゼロの声と共に真後ろに気配を感じバッとを振り返る。

そこには、自分の頭に銃を押し当てている消えたはずの男が居た。



「終りだ」



男が勝利を宣告する。

いつでも、自分の命を取れると言う宣告。それは絶対だ。

チャチャゼロは遥か前方。此方に着くのと男が引き金を引くのとどちらが早いか言うまでも無い。

それに此れほど驚愕させられた相手だ。魔力は感じないがこの銃も何か礼装なのかもしれない。そう真祖である私を殺す程の。

だがしかし、あろう事か男は頭に当てていた銃を下ろした。



「何っ! 貴様、なぜ武器を下ろす!」

「俺は、元々戦いたいわけではない。それとも銃は下ろさない方が良かったか?」

「ぐっ・・・」



そうだ。ナイフを首筋に当てられて良いとは思わない。

それは理解できる。元々戦う事が目的ではないのに、ナイフを押し当てる理由は無い。

だが納得はできない。こちらが反抗するかもしれないのに何故?



「御主人、無事カ?」



傍に着た従者の問いに怪我は無いと答えるが、頭の中では悔しさと、憤怒、それにプライドを傷つけられた事で煮え繰り返していた。

男は近づいてきた従者に若干警戒していたが此方に向き直ると口を開く。



「そのかわりだが、こちらの話を聞いてほしい」

「―――――――――わかった」



長い沈黙の果て、何とか返事をする。

今だ納得できないが、返事をした事で冷えた頭では戦う気の無い相手では意味が無いだろうと言っている。

それに、このまま戦闘を続けて逃げられるか、本当に殺されるかもしれない。



「それじゃあ、少し話を聞いていたんだが責任者がいるのだろう? そこに連れて行って欲しい」



いつの話の事かは分からないが恐らくジジィの事だろう。

どこの誰だか分からない奴の言う事聞かなければならないのは癪だが仕方が無い。

こちらは敗者で、向こうは勝者。それは絶対。

それに、この状況で武器を下ろした奇妙な男に若干興味が湧いた。



「わかった。ついて来い」

「ナンダ御主人、コンナ奴ノ言ウコト聞クノカヨ」



五月蝿い従者の頭を小突きつつ歩き出す。それでも素直に傍にいることは此方の考えを呼んでいるのだろう。

その直ぐ後に男が頷く気配がし、後ろについてくる。

そういえばこいつの名前を知らないなと、唐突に思う。

いくら油断していたとはいえ自分を負かし後一歩で殺せたかも知れない男だ。名前を知っていても損は無い。



「おい」



前に向って歩きつづ後ろの男にぶっきらぼうに声を掛ける。



「貴様の名前は何だ」



そんな当たり前の質問。

それに男が考える素振りをする。



「……アキト、天河アキトだ。君の名前は? それとここの地名。あと西暦も教えて欲しい」



少しの間の後、正直に答えてくる。

アキトという名前か。

が、問題はその後の質問だ。名前はまだ分かる。しかし、何故地名と西暦を知りたがる。



「エヴァンジェリン、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。

 こいつはチャチャゼロ。私の従者だ。

 それとここは麻帆良学園、西暦は今年で2000年だ。貴様そんな事も分からないのか?」

「あぁ、こちらには着たばかりだからな。」

「?」



なんだ、こいつまだ異世界から来たと言うつもりか?

疑問に思いつつも学園長室へ向かうため足を進める。





―騎士と吸血姫は出会いました。



     最初はいがみ合っていた二人ですが、徐々に仲良くなっていきます。



          騎士は吸血姫に頼みました。



               自分を老賢者の下に連れて行って欲しいと―

 騎士と妖精と人形の / page.2 ~野原の道か、茨の道か~

  HOME  | 書架top  | 

Copyright (C) 2006 投稿図書, All rights reserved.