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page.2 ~野原の道か、茨の道か~ 投稿者:戯言師 投稿日:04/09-05:43 No.227

―騎士は分かれ道に辿り着きました。



     片方の道は、平和で何も悲しい思いをしなくても良い道です。でも、その代わり、大切なものが手に入らない道でした。



          片方の道は、とても辛く悲しい思いをいっぱいする道です。でも、その代わり、大切なものが手に入る道でした。



               どちらの道も、手に入るものがあって、手に入らないものがありました。



                    そして、騎士は道を選びます…―





     騎士と妖精と人形の

          page.2 ~野原の道か、茨の道か~





麻帆良学園学園長室前。

そのドアの前に立つのは、金髪の少女と黒尽くめの男。

エヴァとアキトである。彼らは、あの後特に話もせず無言のまま目的地に向かって歩いていた。(ちなみにチャチャゼロは先にエヴァが帰らせた)

数瞬の間の後、エヴァが口を開く。



「ここが一応麻帆良学園の責任者にあたる奴の部屋だ」

「あぁ、ありがとう。案内させてすまなかったな」



アキトが礼を良い。一人で学園長室に入ろうとする。

が、エヴァはが立ち去る様子を見せない。



「ん? まだ何か用があるのか?」



若干困惑を含んだアキトの問いに対してエヴァは、



「ふん、貴様の正体をまだ暴いてないからな。この中でじっくり聞かせてもらうつもりだ」

「…まぁ、別に良いがな…」



その返答にアキトがやや諦め気味な声を出す。

心なしか顔に疲労の色が見え隠れする。

そんな、様子のアキトにエヴァが、



「おい、さっさとドアを開けろ。」



相も変わらず命令口調でドアを開けろとを急かせる。

そんなエヴァの様子を無理やり無視してドアを開ける。



「ふぉふぉふぉ、良く来たの。先ほどの戦いの様子は見させてもらったぞ」



ドアを開け、目の前に現れたのは、後頭部が異様に長くなっている老人だった。

一瞬視界に入った物が何か気が付かなかった。そして徐々に視覚情報が脳に浸透し目の前にある生物についての情報を探ろうとする。



「……妖怪?」



―ピクッ



余りにもストレート過ぎるが、どう考えても妖怪に類するモノに見えてしまう。

その本音が思わず表に出てしまった。

小さい声だったが、聞こえていたようで、老人の眉が僅かに動いた。



「ふぉふぉふぉ、そう思われとるのは慣れているが、真正面から言われたのは初めてじゃのう」

「あ…いや、その、すまなかった」



動揺したのだろうか。声がやや高くなっている。

会話が出来る事から人間なのだろうと、信じる事にする。が、今だ妖怪という言葉に頭の隅に残る。

謝った後、まだ挨拶をしていない事に気がつく。



「本当にすまなかった。俺の名前は、アキト、天河アキトだ、そちらは?」

「わしは近衛近右衛門じゃ。別に学園長でも良いぞ」



学園長? ならば此処は麻帆良学園というのは街で正しいんだろう。

学園の責任者が学園長とはそのまんま過ぎるのではないかと思うがこの際小さな問題は無視する。

簡単に挨拶を交わした後、本題を切り出す。



「早速だが、聞いて欲しい事があるんだが」

「まぁ待て、此方からも聞きたい事があるんじゃが、此方が先でよいかのう?」

「おい、私が先に聞きたいんだが」



と、エヴァが会話に割り込んでくる。

正体を暴くと言っていた。学園長の前では嘘は付かせないという意思がありありと見える。



「ほっほっ、まぁ少し待て。お主とわしとでは聞きたい事は同じだろう」

「むっ…」



その言葉にエヴァは少し脹れた様だが黙る。

少し間をおき、



「……まぁ、いいだろう」



学園長に先を譲った。

自分が聞きたい事と一致すると思ったのだろう。納得した様子だった。何故か此方をジト目で睨んでくるが。

学園長が頷き、口を開く。



「此方から聞きたいことは三つじゃ。まずは、お主の事、麻帆良学園に来た理由、お主の使った不思議な術の事じゃが…」



閉じていた目を少し開き、此方を見据える。

その瞬間、学園長の存在感が一気に膨れた。老人の体に似つかわしくない圧力が此方に向けられる。

真実を言わなければ唯では済まない。それを一瞬で悟る。



「……元から話すつもりだったんだが……全てを話すことが出来ないが、それでも良いか?」



一応確認の為に問いかける。

向こうも元々全部話話さないことは承知していたのだろう。



「ふむ、いいじゃろう」



予想通り学園長は頷く。

頷き返し、若干俯く。

話すべき内容。話さない個所。話すべきではない部分を分ける。



「まず最初にだが、俺は異世界から来た」



話したことは、異世界から来たこと、火星での出来事、戦争の顛末、その後の悲劇、そして自分が此処に来た理由、自分の今の状態、自分と共に居た少女がいなくなったこと。

自分の犯した罪は全て話した。だが、ユリカ達のことには触れないように話す。

話している最中、エヴァは最初ふざけているのかと怒った様子だったが最後あたりには、苦い顔をしていた。

学園長の方は、相も変わらずプレッシャーを浴びせながら「ほっほっ」と笑っていた。



「ふむ、中々信じ難い話しじゃの・・・。しかし・・・お主の言う事を信じよう」



一応は、信じてくれたようだ。

それでもまだ半々という感じだが、全く信じていないよりはましだろう。

ホッとしながら横を向くとエヴァが難しい顔をしていた。

未だ、信じ切れていないのだろう。少々複雑な心境になっていると想像出来る。



「さて、お主への質問はそれで全てじゃ」



そう言って目で語りかけてくる。次はお主の番じゃぞ、と。

だが、その瞳はまだ此方への警戒を忘れてはいない。信じるが、行動次第では……、と語りかけてくる。

その圧力に負けないようこちらも力を入れる。伊達に戦いつづけてきた訳ではない。この位ならばどうにでもなる。



「此方からは、二つだ。一つは、この世界の情報提供。もう一つは、最低限の行動が可能な物資が欲しい」



まぁ、最後は無理なら要らないが。と付け加えておく。

俺の答えに学園長の威圧感が少し軽くなる。

それに安堵し軽く息を吐く。どうやら思いのほか緊張していたようだ。



「ふむ、そうか」



そう一言言うと、そうかそうかと繰り返し呟く。

何か算段をつけているのだろう。学園長としての立場もあるのだろう。かなり長考している。



「して、情報と物資の提供をしたらお主はどうするつもりじゃ」



長考の果ての答え。これも前と同じく試す雰囲気がある。

だが、答えは決まっている。約束をした、ならばそれを守らなければならない。



「もちろん、ラピス―俺と一緒にいた少女を探しに行く」

「ふむ、此処に留まるつもりは無く、直ぐに旅発つと?」



そうだ。と答える。直ぐ傍にラピスがいなかったと言う事はどこか別のところに要ると言うことになる。

ならばここに留まるより外に探しに行くのは道理。



「それは難しいのう。お主が知っているように、この世界には魔法という常識を逸脱したモノがある。

 そして、お主は異世界の住人。その上、不思議な術を使うとなると裏に生きるものにとっては格好の獲物じゃろう」



稀有な存在は様々なモノから狙われる。それは向こうでも同じだった事。

ならば、この場に居ない彼女は? 狙われているかもしれない。だからこそ探しに行くのは当然の事。



「だからこそ「此処で提案じゃ、お主はここに居て、わし等がラピスという少女を探し出すのはどうじゃ?」・・・何だと?」

「組織の探査能力は、個人の其れを凌駕する。わし等が探した方が効率がいいじゃろう」

「お主は治療を受け一般人としての立場を用意しよう。その代わり麻帆良から出る事はできんが、平穏な生活は約束しよう」



それは、魅惑的な提案だった。この広い世界から、たった一人を個人だけで探すのは限界がある。

組織に頼れば楽だろう。それに、もはや受け入れられない筈だった自分を受け入れると言っている。

居場所が生まれる。日向の場所へ帰れる。それは、何よりも変え難いだろう。だが…



「ラピスは俺が探し出す。魔法を使うもの達が俺を襲ってくるだと? ならば、そいつらを倒すために、逆に魔法を学べばいい。

 平穏な暮らしが欲しいかだと? たとえ世界が変わろうとも俺が数万人の命を奪ったのには変わりない。

 ただ、俺はラピスを守る。それだけだ」



約束した。それだけで十分だった。

彼女との約束は、俺を繋ぐ絆。俺を正へとしがみ付かせるの鎖。

だからこそ、俺が見つけ出す。



「貴様、本当にそんなことが出来ると思っているのか?」



今まで黙っていたエヴァが問い掛けてくる。

本当に出来るかだと、そんな事は……



「出来る出来ないが問題じゃない。俺が、やろうとするかが、問題だ。

 エヴァちゃん、君もそう言った筈だ」

「うっ・・・」



その言葉にエヴァは押し黙る。

自分で言った言葉だ。だから返答のしようがないのだろう。だが、

俺を見るその眼差しは、どこか眩しいものを見るような目をしている。



「ほっほっほっ、お主の覚悟は本物か?

 当然、それは茨の道になるじょろう。それでもか?」



学園長がどこか見定めるような目で聞いてくる。

俺の評価はどうでも良い。答えは決まっている。



「当然」



たった一言。それだけで十分だ。

少しの間の後、学園長が口を開く。



「ふむ、合格じゃ」

「―――何がだ」



意味不明な言葉に思わず口をはさむ。

いや、意味不明ではない。俺の評価の事だろう。それでも何故合格?



「勿論、お主の今後の事をどうするかじゃ」

「………はぁ?」

「最初は、問答無用で放り出そうと思っていたがの、思いのほか良い志をしている。

 だからこそ情報及び物資の提供を喜んで行おう」



そう言って一旦間を置き再び口を開く。



「さらに、お主に魔法を教えようと思う」



何を言っている? さっきまでとは雰囲気が違いすぎる。今はかなり友好的になっている。

隣ではエヴァが、同じ事を考えているのだろう。何を言ってるんだと言う顔をしている。



「いやの、お主はどうせ止めても行くのだろう」



その言葉に当然だと頷く。



「ならば、少しでも危険が無くなる様にするのは当然じゃろう。だからこそ魔法を教えるのだ」

「…じじぃ、本気か?」「…理由を聞いてもいいか?」



エヴァと同時に口を開く。

お互い驚いていた。だから素直に聞き入れる事が出来ない。



「お主が魔法を悪用するような奴じゃ無さそうだからのう。

 それに、お主の事を気に入ったからじゃ」



ほっほっほっと笑っている。

正直信じられ無い。なぜそう簡単に信用するのだろうか。

でもそういう訳にも行かない。



「…ありがたいが断らせて「勿論、ラピスと言う娘も此方で探そう。当然修行中のみならずその後もじゃ」

「そして、魔法習得後は自由に行動しても構わん」



……魔法を習う時間すら惜しい、と言おうとすると駄目押しを挿される。

なぜ其処までするか疑問が生まれる。自分で言うのも何だが見るからに不審者である俺を。



「なんで? という顔じゃの。それはの、異世界からの来訪者を保護するのは当然の事だろう」



そして、どうするこの話を受けるか、とくる。

そこまでされると断る理由が無い。ラピスは見つけ出したい。だが個人では限界がある。



「―――わかった。ラピスの事は頼む」



そして頭を下げる。

自分の頭一つで助ける事が出来るのなら安いものだろう。



「ふむ、わかった。それで、お主に魔法を教えるのは「私が教る」エヴァに・・・は?」



エヴァが少し顔を赤くしそっぽを向きながら話した。

思わずその顔を見詰める。そうしていると此方に顔を向けてガーと吼える。



「ふん! 勘違いするな。ただ貴様には先の戦いでの借りがある。それを返すだけだ!」



いいな、勘違いをするな! と再び吼える。

少し呆けた顔をしていた学園長が目を覚ましたように顔を横に振る。



「…ふむ、元々エヴァに頼むつもりだったからちょうど良かろう」



しかし、まさかエヴァが・・・等と言う呟きが聞こえる。

よほど予想外なのだろう。

少し話した程度だったがこのようなことを言い出す性格ではないと思っていた。



「そういう事だ。今日から貴様は私の弟子だ。びしばし扱くから覚悟しろ。へまをしたら許さんからな!」



再びそっぽを向いて言い捨てる。横顔はまだ赤い。

その姿はまるで告白しているみたい少女みたいで微笑ましく、思わず笑みを零してしまう。

このやり取りに、どこか懐かしさを感じた。

微かな笑い声が聞こえたのか、さらに顔を赤くし、こちらに顔を向け。



「おい、貴様! 何故笑う!」

「いや、何でもない…ただエヴァちゃんが可愛くてな」



ボンと音がするような勢いで顔をさらに赤くした。



「なな、な、き、貴様! 何を言っている! 」



赤い顔をしたまま怒鳴ってくる。

そして気づく。

そうだ、この懐かしさ。まるでナデシコのような……



「いや正直に言ってみただけだ。今後ともよろしく頼むエヴァちゃん」

「き、貴様~!」



再び怒鳴りついてくる。

だが、その姿は可愛らしく、迫力が全く無かった。





怒鳴りながら―どこかじゃれ付いているようだが―部屋から出て行く二人の背中を見送る。

静かになった学園長室でゆっくりと思考に浸かる。

あの男―天河アキト―最初は、侵入者か、潜入を目論むスパイだと思ったが違う様子だった。

簡単な記憶術で思考を探ろうとしたが、その精神力は強く殆ど読めなかった。

だが、時折漏れる思考は硬く、そして脆さを含んでいた。

通常ならばこのような措置はとらなかっただろう。

なら何故こうしたのか?

漏れ出した思考の中に見つけたたった一つの言葉。



―ラピス。俺は、俺は、絶対に守ってみせる。

  もう、後悔、しない。失わない。絶対に、守ってみせる。絶対にだ!

   だから、だから、もう、泣かないでくれ………―



それは、あまりにも重く、悲しかった。



エヴァに魔法を教えさせようとしたのは、監視を含んでの事だった。

だがそれも無駄に終わるかもしれない。

現状でもエヴァに勝利したのだ。鍛錬を積めばいつかエヴァを追い越すかもしれない。

そうなったら……



(いや、止めて置こう。決まったわけではないんじゃ。今は助けると約束した。それで十分じゃ)



そう、それで十分な筈。





―騎士は選びます。茨の道を



     でも騎士は後悔しません。



          大切な自分の半身とも言っていい妖精を見つけ出せるから―

騎士と妖精と人形の / page.3 ~始まりの終りと、終りの始まり~

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