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page.5 ~出会いの始まり~ 投稿者:戯言師 投稿日:04/14-22:55 No.311


―小さな魔法使い達は騎士のおかげで無事に迷宮からでれました。

     でも小さな魔法使い達は素直に喜べません。

          何故なら小さな魔法使い達を助けてくれた騎士が見つからないからです。

               小さな魔法使いは騎士を探しました。

                    それでもまだ見つかりませんでした。

                         でも案外すぐ近くにいるかもしれません―



     騎士と妖精と人形の
          page.5 ~出会いの始まり~



学園長室に向かう廊下の中僕は一人歩いている。
あの後無事に地底図書室から出れて期末試験を受ける事が出来た。
試験の結果は皆さんが頑張ってくれたおかげで2-Aはなんと学年1位になった。
それで僕も正式な先生になる事が出来た。

(アキトさんって言ったけ……あの人は無事かな)

けれど、心残りがあった。
あの時助けてくれた人の事を考える。
あの後、あのゴーレムは学園長が操っていたというのがわかったので安心したけど、あの時から姿を見ないから不安になってしまう。

(クーフェイさんに聞いても大丈夫としか言わないし)

あの人と知り会いだと言うクーフェイさんに聞いても、大丈夫あいつは無事ネ。としか言わない。
その顔は本当に無事だと信じている顔で、不安に思っているこっちの方が変だと思ってしまう。
そうこう思っている間に学園長室の前に辿り着く。

―コンコン
「学園長先生、ネギ・スプリングフィールドです」

ドアをノックし名前を告げる。
そういえば急に呼ばれたけれど、未だ何の用事か聞いていなかった。

「ふむ、入っていいぞ」
「失礼します」

返事をしてドアに手を掛ける。

―ギィ……

ドアがゆっくり開く、人一人通れる分扉が開いた。
そして目に飛び込んできたのは、あの時の助けてくれた黒ずくめ人と、メイド服の女性が居た。

「えっ!?」

僕が驚いた声を上げると二人が此方に振り向く。

「久しぶりだな」

黒ずくめの男―アキトさん―が挨拶をし、メイド服の女性は無言で頭を下げる。
正直に言えば、全身黒ずくめで目元が全く見えず、口元を微かに曲げ感情の殆ど篭っていない声で話すその様子はかなり怖かった。
それでも、自分達を助けてくれた恩人。多少引け腰になりながらもお礼を言う。

「あ、あの! 先日はありがとうございました!」
「いや、友人に頼まれただけだからな。礼ならその子達に言えば良い」

友人?誰の事だろう?
そんな疑問が顔に出たのかアキトさんが苦笑しながら返してくる。

「風香ちゃんと史伽ちゃんだ、確か君のクラスだと思ったが…」

聞こえた言葉に驚いた。
その顔でちゃんで呼ぶのはどうかど…って風香さんと史伽さん?

「風香さんと史伽さんの知り合いなんですか!?」
「あぁ、前にちょっとな」
「そうなんですか…」

今日はもう何度驚いたのか判らない。
それぐらい意外だった。風香さんと史伽さんとアキトさんが知り合いだなんて思ってもいなかった。

「ほっほっほっ、話はそれぐらいで終りにしてそろそろ自己紹介したらどうじゃ?」

今まで話に入ってこなかった学園長先生が話に入ってくる。
それにアキトさんは、わかってる、と返事をし口を開いた。

「俺はアキト、天河アキトだ。君はネギ君だったかな?」
「黒乃サレナです。以後よろしくお願い致します」
「あ、はい。僕は、ネギ・スプリングフィールドです。えっと、アキトさん、サレナさんよろしくお願いします」

慌てて自己紹介する。女性の方はサレナさんと言うらしい。
そして、はっと気付く、あの時の事を説明しないといけない。

「あのアキトさんサレナさん、あの時の事なんですが…」
「あぁ。その事か、あれは学園長が操っていたんだろう」
「えっ! 知っていたんですか!?」

驚き自分でも大袈裟だと思う反応をする。
考えればあそこにいる時点で関係者だとわかるはずなのにそこまで頭が回らなかった。

「あぁ、ついでに言っておくが裏については多少関りがある程度だ」
「マスター、あれだけの事件を起こして多少というのは無理があると思いますが」
「本当にのう世界屈指の魔法使いの癖して何を言うんじゃ」
「少しは魔法を使うが魔法使いでは無いんだがな」

ポカンと口を開けているのが判る。
あまりの事実に、話に着いてゆけない。
世界屈指の魔法使いってどういう事ですか。て言うか事件って何?

「まぁ、話はその辺にしといて2人を今日呼んだ訳じゃが…」
「あ、は、はい」

学園長が話を本題に戻した。
慌てて、口を閉めて背筋を伸ばす。
でも頭はまだ先ほどの会話について考えている。

「来年度からアキト君に3-Aの副担任をしてもらうんじゃが……」

長い、長い沈黙が降りる。
僕は当然、アキトさんとサレナさんも驚いている。
そんな様子に学園長は、はて? と首を傾げている。

「……………………………………………………………何?」

長い沈黙を破いたのは当の本人であるアキトさんだった。

「そんな事は聞いていないんだが」

アキトさんが学園長に向って疑問の声を上げる。
どうやら本人も聞かされていないらしく、声には驚きが混じっていた。

「お主が旅から帰ってきたら話すつもりじゃったんだが、今回はちと期間が長くての、話す機会が無かっただけじゃ」
「……わかった。とりあえず2人だけで話したい」
「ふむ、いいじゃろう。ネギ君少しの間席を離れてくれんか?」
「は、はい、わかりました」

返事をして少し足早にドアへと向かう。
ドアに手を掛けるとチラリと後ろ振り向く。
アキトさんとは、驚いてばかりであんまり話が出来なかった。
でも、同じ先生になるかもしれないと思うと興味が湧いてきた。


―バタン

ネギ君が部屋から出て行った。
これで本題に入れるが、念の為という事もある。

「サレナ、念の為に防諜結界を頼む」
「はいマスター。……展開完了しました」

学園長の雰囲気からこの話が普通ではない事が判る。
何か聞かれては不味い事があるかも知れない。念を入れて損する事はない。

「それで学園長、俺を教師にしたい理由はなんだ?」

簡潔に本題を切り出す。
俺を一箇所に留めて置く理由はどんなのか気になる。

「ほっほっほっ、用心深いの。実はある生徒の護衛を頼みたいのじゃが」

アキトの問いに苦笑交じりに返答してくる。

「護衛?」
「うむ、護衛対象はワシの孫の木乃香じゃ」

学園長の孫の護衛? 孫贔屓だから護衛を付ける等と言うつもりなのだろうか。
が、そんな理由では無いはず。
そんな考えが顔に出たのだろう。

「ふむ、相変わらず鋭いのう。木乃香は知ってのとおりワシの孫じゃ」

先ほど言ってきた事をもう一度、確認するように言ってくる。
当たり前だと言う気持ちと同時に微かな疑問が生じる。

「そして木乃香の父親―わしの婿養子じゃが―は関西呪術協会の長をやっておって、それでの……」

その一言で、疑問が一気に消える。
それと同時に学園長の言いたい事が判る。

「それで、西の長の娘が東にいる事が気に入らない奴等が木乃香ちゃんをどうにかするのを阻止して欲しいか」
「ふむ、察しが良くて助かるの」

東と西の仲の悪さは実際に経験しているから判る。
が、再び別の疑問が浮かび上がる。
確か木乃香ちゃんが在籍している2-Aには、裏関係の生徒が複数いた筈。

「エヴァちゃんから聞いた話だが、2-Aには相当の実力を持った生徒が複数居る筈だが?」
「確認している情報だけでも、神鳴流剣士、甲賀、ガンナー、シスターを確認しています」

そう護衛ならば彼女等の方が都合がいいはずだ。

「ふむ、彼女達は実戦経験の少ない者が多いんじゃ。だから実戦経験もあり実力もあるお主に頼むのじゃ」

恐らく予想していたのだろう。直ぐに答えが返ってくる。
学園長の言い分も正しいと思う。そして言外の意味も判る。
しかし、俺には果たさなくてはならない目的がある。

「その話は断らせてもらう。俺には見つけなければいけない子がいる」

―ラピス
彼女を見つけ出すまでは他の事には構ってはいられない。

「ふむ、それの事じゃが、彼女に関係すると思われる情報を入手したのじゃが」
「……何?」

そう決意を再確認した瞬間、学園長が口を開いた。
その言葉にはどこか、何かを含んだ感じを受ける。

「タダで教えるわけに行かないしのう」
「……」

確かに今までは対価に様々な仕事をしてきた。
が、今度は最低でも1年。完全に終わるとすると、いつ終わるか判らない。

「まぁ今回は特別じゃ」

が、次に学園長の言葉に呆気に取られる。
何を考えている? という思いを隠さず表に出す。
今までも幾度かその口車に乗せられている為素直に信用する事が出来ない。

「そう身構えなさんな。実はの、西の過激派に例の組織が接触していると言う情報が入ったんじゃ」

―例の組織
その言葉に瞬時に反応する。心の片隅に歓喜が沸き起こる。
ラピスと同じく捜し求めているモノ。そこに篭っている思いは正反対で、絶対に見つけ出すと誓っていた。

「本当か」

声に多少殺気を混ぜる。
今すぐ情報を寄越せ、寄越さなければ手段は問わない。その思いを込めながらバイザー越しに睨む。

「まぁ待て。今すぐ西に行ったとしてどうする? 奴等は西に協力しているようじゃ、たとえ一派と言えど襲撃すればただでは済まん」

確かにそうだ。西の一派に襲撃を掛ける。
それは関西呪術協会という巨大な組織を敵に回すという事。
その危険性を考え、少し冷静になる。
が、その程度では止まる筈も無い。

「だが、だからどうしたと言う。そんなのは関係ない」

元は全て一人でやろうとした事。それが元に戻るだけだ。
それに慌てて学園長が制止を掛けてくる。

「だから待てと言うに。その過激派が狙っているのはな…」

西の過激派が狙うモノ。
その一言で何が言いたいのか判る。

「近衛木乃香を狙っているか…」
「ふむ、そうじゃだから…」
「木乃香ちゃんの護衛をしながら奴が襲ってくるのを待つ、か」
「そうじゃ、そちらの方が安全じゃろう」

その言葉に徐々に頭が冷めていく。
確かに正当防衛と言う名目があれば、襲撃よりも言い訳が立つ。
しばらく思考を巡らす。
此方から出向いて危険を負うか、唯向こうから来るのを待つか。

「一つ聞くが、過激派の襲撃はいつ頃になるのか判っているのか」

俺を此処まで引止めようとしているのならば何か情報を掴んでいるのだろう。
が、学園長は冷や汗をかいて目線を外している。

「い、いやの、接触しているまで情報を掴んだのはいいのじゃがの、その後が問題での」

色々と誤魔化そうとしているが判り安過ぎである。
その様子にため息の一つでも吐きたくなるが、其処を堪える。

「そうか、なら勝手に遣らせて貰う」

そう言って立ち去ろうとするが再び止められてしまう。

「いや待て言うに。向こうから来るのは判らんが、こっちから行く用事があるんじゃ」
「行く用事だと?」

その言葉に疑問を持つ。何故自ら獲物を待つ獣の前に行く用事があるのだろうか。

「いやの、木乃香には未だ此方いや、裏側については教えていないし教えるつもりも無いんじゃ」

と、一旦言葉を区切る。
唐突な話に首を傾げるが、同意する。できる限り関わらせたくないという気持ちは理解できる。

「それでの、今年度の修学旅行が京都になりそうなんじゃ」

それで理解する。
敵の本拠地に行くかも知れないから相応の護衛が欲しいというところか。
学園長の考えには何時も苦い思いをさせられる。
結局は受けるも受けないも同じ事。いや、受けた方がメッリトが大きくなる。


「だから「わかった。その話受けよう」…ふむ…」

たとえ奴等を倒せても、ラピスを見つけ出せるとは限らない。
だから下手な賭けには出ず今は待つ方がいい。

「そうか受けてくれるか。それは助かるのう」

ほっほっほっと笑っている老人を見つめる。
狸が…と心の中で悪態を吐く。元よりこうするつもりだったのだろう。
数瞬学園長をバイザー越しに睨むも、こうしている訳には行かず、後ろにいるサレナに話し掛ける。

「サレナ、防諜結界を解除してくれ。後、ネギ君を呼んで欲しい」
「はいマスター。…結界解除完了。ネギさんを呼んできます」

そう言うとサレナはドアへと向かって行く。
俺は心の中で思う。これで良かったのかと。何処となく胸騒ぎがした。


―ギィ…
ドアの開く音が聞こえる。
その音に後ろを振り返るとそこにサレナさんが居た。

「ネギさん、話が終わりましたので中に入ってください」
「はい、わかりました」

返事をしてサレナさんが開けてくれた扉をくぐり再び部屋に入る。
其処に居たのは先ほどと変わらず立っているアキトさんと学園長先生だった。

「ふむ、それではアキト君、今後は3-Aの副担任として頑張るんじゃよ」
「言われなくても」
「???」

二人の会話が聞こえるが、話が見えない。
一体何の話をしているんだろう。

「ふむ? あぁ、ネギ君アキト君が3-Aの副担任になる事が正式に決定したぞい」
「えぇ!? 本当ですか?」
「あぁ、本当だ」

最初の感じでは断りそうだっただけに驚いた。
だけど、世界屈指(学園長談)の魔法使いと一緒に働けるんだと思うと喜びが湧き出てくる。
が、それでも見た目の所為かやや引け腰になる。

「ふむ、それでは明日の終業式で全校生徒へ挨拶をするとしよう」
「わかった」

そういえば僕も明日正式な先生になる事を全校生徒の前で言うらしい。
そう思うとアキトさんと一緒に働けるという実感が湧き出る。

「それでは、今日の用件はこれで終りじゃ。アキト君明日の朝もう一度此処に来るように」

その言葉が合図になってこの場は解散になった。
学園長室から廊下にでた後アキトさんに話し掛ける。

「あの、アキトさん」
「ん、何だ」

その場から立ち去ろうとしたアキトさんは立ち止って振り返った。

「えと、今後とも先生同士よろしくお願いします」

そう言って右手を差し出す。
こんな凄い人と一緒に働くと思い、緊張しながらも喜びが湧き出てくる。

「こちらこそよろしく頼む」

そう言ってアキトさんも右腕を差し出した。
アキトさんの手が僕の手を掴んで軽く握手する
少しの間そのままにしているとアキトさんがおもむろに口を開いた。

「そうだな、何か困ったら相談しろ。連絡先は……これだ」

そして右手を離して、今度は紙を懐から出して僕に差し出した。

「えっと…」

その紙をどうしようか少し悩んだものの紙を受け取る。

「それじゃ、また明日会おう」

そして、後ろを振り返って歩み去っていく。

「それではネギさん、また明日お会いましょう」

サレナさんもそう言うとアキトさんを追っていった。
唐突な別れに呆気に取られた僕はそんな2人の背中を目で追っていく。



―騎士と人形は小さな魔法使いの前に現れます。

     騎士と人形に出会えた小さな魔法使いは喜びました。

          そんな様子の小さな魔法使いに騎士は一緒に仕事をしようと言いました。

               小さな魔法使いのお仕事は女の子達に勉強を教える事です。

                    小さな魔法使いは大変喜びました。

                         そして騎士は小さな魔法使いと一緒に居る事になります―

騎士と妖精と人形の / page.6 ~悲しみの思い出~

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