ブレイブXVII 一つの戦いが終わり、新たなる出会いが起きる勇気



「宇宙刑事!!ギャバン!!」

ギャバンは高いところより、名乗りの声を上げた。それを聞いた千草たちは唖然とし、ネギたちはその勇姿に勝利を確信していた。すると、突如天から声が聞こえてきた。

『宇宙刑事ギャバンが、コンバットスーツを蒸着するタイムは、僅か、0.05秒にすぎない』
「な、なんや!?誰が喋っとるんや!?」
『天の声である。とりあえずこの年増は無視して続けよう』
「な、なんやてーーーーー!!」

千草の講義は無視され、天の声は説明を続ける。

『では、蒸着プロセスを、もう一度よく見てみよう』

すると、突如空に“でっかい画面が”が出現し、和樹の蒸着が再生される。

『了解。コンバットスーツ、転送、します』

地球の衛星上にいる超次元高速機“ドルギラン”から、特殊合金製コンバットスーツが粒子の状態で転送され、その粒子が体に吹き付けられてスーツを構成、それによりギャバンの蒸着は完了する。

「な・・・・・な・・な・・・・」

千草を含めた三人&一匹は、“あまりにも”常識無視な光景に何も言えなかった。それに引き換え、ネギたちは声援すらしていた。状況慣れとは、恐いものである(汗)。

「お前たちの悪事、見逃す訳にはいかない!!」

ギャバンの言葉に、ハッと意識を戻す千草たち。

「はん!!あんさんには虫鬼と式紙だけで十分や!!」

そう言い、千草は虫鬼たちに指示を出す。すると、奇声を上げながら式紙が襲い掛かってきた。

「行くぞ!!トォ!!」

すると、ギャバンは跳躍しながら地面へと舞い降りた。そして、着地と同時に駆け出す。

「シギャーーー!!」
「タァ!!」

ギャバンは跳躍しながら、式紙の顎に蹴りを叩き込んだ。そしてその蹴った体勢から、魔力+スキルレベルIIによって強化された拳を、後ろから斬りかかった式紙にぶち当てた。それによりその波動力が貫通し、後ろから追走していた式紙たちを全て打ち抜いた。

「な、そんなバカな事が!?」
「あら〜、凄く強い方ですね〜♪」
「やるやないかあの兄ちゃん。で、ワイらの相手は?」

小太郎が千草に問いかけると、ネギたちの方を指差した。それにより、二人のうずうずしていた戦闘本能が動き出す。

「よっしゃ!!月詠のねーちゃんはあの神鳴流の姉ちゃん頼むわ。ワイは・・・・・アイツをやる」

そう言うと、小太郎はネギの方を向いた。すると、それに答えるようにネギも牙狼剣を構える。それが合図となり、ネギVS小太郎・刹那VS月詠の戦いが始まった。


「トゥ!!」

ギャバンは虫鬼に向けてとび蹴りを放った。それを受けた虫鬼はゴロンと転倒するが、すぐに起き上がった。

「キャシャーーーーーーー!!」

どこぞの暴走嫉妬娘の台詞を吐きながら、虫鬼は背中をギャバンに向けた。すると、背中の斑点から紅い光球が発射される。

「なんの!!レーザー・Zビーム!!」

ギャバンは声と共に右手を前に突き出すと、一度後ろに下げすぐに前に突き出した。すると、三角形の形をしたレーザーがギャバンの右手から発射され、放たれた光球を相殺させる。

「な、なんやそのスローなんに間に合う光線は!?」
「常識無視が成せる技だよ」
「無茶苦茶しよる。だが、これはどうや!?炎・大文字焼き!!」

千草は懐から札を取り出すと、そこから強力な炎をギャバンに向けて放った。しかし、それでもギャバンは動じない。何故なら・・・。

「バリアー!!」

また反則気味な防御で防いだからである。

「な、なんなんやアンタはーーーーー!!」

千草は半狂乱になりかけながらも、懐から対抗できる札を探す。すると、一枚の札を見つけるや否や、ニヤリと笑みを浮かべた。

「強いな〜あんさん。せやけど、私が召喚した鬼たちにとって“最適”な空間では、敵うやろうかね〜。さぁ、とっておきの札を使いますえ!!」

そう言うと、千草は一枚の札を取り出し、宙へと投げた。すると、突如空にヒビが割れ、暗い闇が出現した。

「こ、これは!?」
「はっはっは!!“魔”にとっての“空間”。まぁ、“魔空空間”とでも呼ばせてもらいまひょか。さぁ、その空間に引きずり込まれるといいですわ!!」

千草の言葉に従うように、虫鬼はその空間に吸い込まれるように入っていった。すると、それに対抗するように、ギャバンは己が“従者”もとい“従馬”を呼ぶ。


「サイバリアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」


すると、空中で待機していたドルギランから、一台のバイクが射出された。ギャバンはそれに乗り込むと、そのまま魔空空間へと飛び込んでいった。


「だりゃ!!」
「この!!」

ネギは小太郎の繰り出す拳撃を、剣で流すように回避していた。しかし、小太郎の放つ拳速は、どんどん加速力を増していく。

「へっ、やるやないか!!同年代でここまで戦るたぁ、かなり鍛えとるな!!」
「鍛えてるからね・・・・僕なりに!!」

そう言うと、ネギは後ろに回転しながら刃を横に一閃した。小太郎はそれを気で強化した腕で防ぐが、さすがに防御しきれずバランスを崩した。

「ちっ・・・・狗神!!」

バランスを崩した小太郎は、地面に手をつけると、そこから影で出来た犬を作り出し、ネギ目掛けて解き放った。ネギはそれを牙狼剣で防ぐものの、連続で放たれた狗神によって弾き飛ばされてしまった。

「うわっ!!」
「大丈夫か兄貴!?」
「気をつけろ・・・あのガキ・・・・かなり出来るぜ」
「うん・・・・」

カモとザルバに心配されながらも、ネギは立ち上がりながら牙狼を構え直した。

「へっ、それがお前の戦闘スタイルか・・・よっしゃ、ならワイも久々に刃を振るってやるか!!」

小太郎はそう言うと、学ランの後ろに隠してあった忍者刀のような刀を二本引き抜き、逆手持ちで構えた。

「あ、兄貴!!アイツも刀取り出しやがったぜ!!」
「ん・・・・・あの構え、どっかで見たような・・・」

カモが心配する中、ザルバは小太郎の構えにデジャブを感じていた。そして、ザルバは和樹のまだ使用前のギアに語りかけた。そう、とある“もう一人”の騎士の使い魔に・・・。

(・・・おいシルヴァ)
(ん・・・・何よ?牙狼の使い魔がアタシに何か聞きたい訳?)
(ああ・・・・シルヴァ、あのガキの剣の構え方・・・どう見える?)
(何って・・・・・あら、“銀牙”の構え方と同じじゃない。それに、よく見たら銀牙によく似てるけど・・・・なんなのあの子?)
(分からん。だが、もしかしたらアイツ・・・・・)
(・・・・まさか、あの子が○○騎士なの!?)

ザルバとシルヴァが話している中、ネギと小太郎は刃を交えていた。小太郎の変幻自在の二刀流に、さすがのネギも苦戦していた。

「はぁぁ!!」
「やぁぁ!!」

小太郎は二本の刃を通常持ちにすると、ネギに向けて振り下ろした。ネギは膝をつきながらそれを防ぐ。しかし、その隙をついて小太郎は狗神を右足に宿すと、ネギの腹に蹴りを叩き込んだ。それにより、ネギは吹っ飛ばされ階段を転げ落ちた。

「さぁ、これで終いや!!」

そう言うと、小太郎は逆手持ちに戻し跳躍し、ネギ目掛けて刃を振り下ろ・・・・せなかった。何故なら・・・。


「やあああああああああああああああああああああああああああ!!」


明日菜がハマノツルギでそれを防いだからである。

「な、なんや!?鬼たちの相手をしてたんやないんか!?」
「お生憎様、さっさと熊とお猿は片付けちゃったわよ」

そう言い明日菜が指を刺すと、そこには紙に戻っている鬼たちが置かれていた。

「ちっ!!やるやないか姉ちゃん!!」

小太郎は後ろに跳び間合いを取ると、二人に向けて構える。それを見た明日菜が小太郎に挑もうとすると、横からネギの手がそれを遮った。

「・・ネギ?」
「すいません明日菜さん。僕・・・あの子に勝ちたいんです。それに・・・・何故かあの子を僕は知っている気がするんです」
「・・・勝てるの?」
「分かりません・・・・でも、明日菜さんがいる限り、僕は負ける気がしません!!」

そう言って微笑むネギに、明日菜は頬を赤く染めるが、それと同時に強い信頼感を感じていた。

「分かったわ。ただし、絶対に勝ちなさいよ!!最悪の場合、私が助けに入るからね!!」
「はい!!」

そう言うと、ネギは小太郎と対峙した。すると互いの脳裏に、黄金・・・・そして銀色の騎士が背中を預けて戦っている姿が映し出された。

(な、何今の!?)
(何なんや!?今の映像は!?)

二人は困惑しながらも構えは崩さないでいた。そして互いに意識を相手に向けた。そして、互いの緊張感が最大に膨れ上がった瞬間、二人の一撃必殺が、発動した・・・。


「ざ〜んが〜んけ〜ん!!」
「くっ!!」

月詠の放つ剣撃は、普段大太刀しか使わない刹那にとって戦いずらい相手だった。それにより、防戦一方で後退していた。

「センパ〜イ、本気でかかってきてくださ〜い」

月詠は更に速度を上げながら、刹那に向けて斬岩剣を放つ。その時、刹那はバランスを崩していたため、月詠の放った斬撃を防ぎきれずに夕凪を弾かれてしまった。

「最後ですな・・・・センパイ」

月詠は笑顔を浮かべながら、刹那に向けて刃を振り下ろした。刹那は敗北を覚悟した・・・しかし、頭に流れたのは走馬灯ではなく、和樹に教えられた“ある事”だった。


【回想】
「あの、先輩」
「何、刹那ちゃん?」
「私に・・・先輩の対術を教えてはいただけませんか?」
「僕の?」
「はい・・・」

刹那は辛そうな表情で、話し始めた。

「私はこのちゃんを護りたい。ですが、もし私の武器である夕凪がない場合、私はこのちゃんを護り切れる自信がありません。ですから、もしもの時を考えて、先輩から対術を学びたいんです」
「そうだね・・・じゃぁ、我流なんだけど覚えてみる?」
「はい、お願いします」
「じゃぁ・・・・ちょっと僕に夕凪で突きを放ってみて」
「えぇ!?しかしそれでは先輩が・・・」
「大丈夫。ほら、やってみて」
「・・・分かりました」

刹那は頷くと、全身から気を放ち出した。そしてそのまま、夕凪を構える。そして・・・。

「・・・はっっっっっ!!」

全身全霊を込めた突きが、和樹目掛けて放たれた。それはどう考えてもスピード・タイミング共に必殺だった。しかし、和樹はその放たれた突きに対し、身体を僅かに右に反らした。そしてそのまま、放たれた夕凪の先端に右手を軽く添え、左に軽く押した。それにより、刹那の放った夕凪は右の方向へと向かってしまった。それにより、刹那もバランスを崩した。しかし、倒れそうな刹那を和樹は抱きとめた。それにより、刹那の顔はトマトよりも真っ赤に染まってしまった。

「あ・・・ああ・・・・」
「大丈夫?」
「え・・・・あ・・・・・はい」
「どういう仕組みか分かった?」
「え・・・・・いえ、どうやって私の突きを避けたのですか?」
「避けてないよ」
「・・・へ?」
「避けたんじゃなくて、突きの軌道を僅かに変えたんだ。ほんの僅かでも変えることが出来れば、どんな加速力・パワーも敵わない。つまり、相手にミスしてもらうって戦法」

それを聞き、なるほどと頷く刹那。

「いい?受け流しの力はタイミングを間違えると大変なことになるんだ。だから使い時は慎重にね」


〈そうか・・・・確かこう・・・〉

刹那は振り下ろされる刃を見ると、右手に気力を込めた。そして、振り下ろされる刃の先端に右手を添え、ポンと左に押した。それにより、月詠の刃は地面に突き刺さった。

「あら〜?」
「喰らえ!!はっ!!」

月詠の隙を突き、両足で蹴りを叩き込んだ。そしてそのまま起き上がると同時に、宙に舞っていた夕凪を手に取る。

「神鳴流奥義・・・・・百烈桜花斬!!」

それを受けた月詠は、あれ〜と言う間も無く吹き飛ばされていった・・・。


「く・・・・・ここは?」

サイバリアンから跳躍したギャバンは、空間の中にある砂漠へと降り立った。そこには何の生命も存在せず、ただただ砂漠しか無かった。すると、突如砂漠が吹き上がり、赤い光球が放たれた。それを捉えきれずに、ギャバンの鎧が火花を散らす。

「く・・・・・どこだ・・・・?」

ギャバンは辺りを見回すが、敵の姿はどこにも見当たらなかった。

「こうなったら・・・・レーザースコープ!!」

ギャバンがそう言うと、目を覆っていたカウンターに目がライトのように光りだした。そして、そのまま辺りを見回すと、ある箇所に虫鬼の姿が映った。

「そこか!!レーザー・Zビーム!!」

ギャバンは再びビームを放った。それにより、敵のステルス機能は消失したらしく、姿を消せなくなっていた。

「ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」

すると、突如虫鬼は空に向かって叫び始めた。すると、突如空から蜂の姿の戦闘機が出現した。そしてそれは、地上のギャバン目掛けて針型の爆弾を投下し始めた。

「うわあああああああああああああああああ!!」

連続での爆撃を受け、ギャバンも吹っ飛ばされてしまった。そして爆撃を避けながら、とある名を呼ぶ・・・。


「電子星獣ドルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


すると、軌道上に待機していたはずのドルギランの戦闘メカ部分が解除され、ドルギランは宇宙船から、龍型のサポートメカへと変身する。そして、異空間である魔空空間の壁を突き破り、ドルギランが姿を見せた。

「頼むよ、ドルギラン!!」

ギャバンの指示に従い、ドルギランは蜂型の戦闘機に向けて口から火炎を放射した。それにより、戦闘機の大半は破壊された。そして最後のお約束として、全身のしなりを利
用した尾によるムチ攻撃により、戦闘機は全て叩き落されてしまった・・・。


「・・・・・・・・はっっっ!!」
「・・・・・・・・だりゃっ!!」

ネギと小太郎は同時に飛び出すと、ネギは牙狼剣に光の矢を纏わせ、小太郎は狗神を刃に纏わせる。そして二つがぶつかった瞬間、強大な反作用が辺りを覆い尽くす。

「僕は・・・・・負けない!!」
「ワイかて・・・・負けられへんのじゃ!!」

二人は決して引こうとはせず、互いにぶつかり合っていた。すると、ネギへと一つの言葉が掛けられた。

「頑張れ、ネギーーーーーーーーーー!!」

そう、明日菜の声援である。それを受けた瞬間、ネギの魔力放出量が最大限に膨れ上がる。

「な、何!?」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


ネギの全身全霊を込めた刃は、小太郎の腹部に直撃した。しかし、小太郎の狗神がレジストしたため、小太郎は空高くへと弾き飛ばされてしまった。

「ちっ!!犬上は戦線離脱かい・・・」

千草はそう言っていると、突如空にヒビが入った。そして割れると同時に、虫鬼がボロボロになりながら飛び出し、地面に倒れこむ。

「な・・・・なんや?!」
「トォ!!」

千草が困惑していると、追走するように一つの影が空間の割れ目から飛び出した。それは、光の刃を右手に持った、ギャバンの姿だった。

「な、なんやてーーーーーーーーーーー!?」

千草の絶叫も耳に入れず、ギャバンはそのまま虫鬼めがけてレーザーブレードを構えたまま落下する。そして、虫鬼との間合いに入った次の瞬間。


「ギャバン・ダイナミック!!」


虚空瞬動で一気に加速し、レーザーブレードで虫鬼を切り裂いた。そして次の瞬間、虫鬼は大爆発を起こして消滅した。

「ちぃ・・・・・・ここは引かせていただきますえ!!月詠はん!!」
「はいな〜♪」

千草は熊鬼を呼び出すと、それに捕まり空へと消えた。無論月詠も一緒にだが・・・。

「ふぅ・・・一時はどうなるかと思ったけど、どうにかなってよかった」

変身を解いた和樹は、ふ〜と一息ついていた。そして、ネカネに支えられているこのかのへと近づく。

「大丈夫?」
「うん、先輩が守ってくれたかや♪」
「僕だけじゃないよ。ネギに明日菜ちゃん、刹那ちゃんにネカネちゃんが居てくれたから,僕は全力で戦えたんだよ」

そう言い皆を見ると、和樹の真っ直ぐな発言に照れていた(笑)。

「あ、そや思い出した。今日、ホテルの近くでちょっとしたお祭りがあったんや〜」
「お祭りか・・・・じゃ、皆で繰り出そうか。嫌な事は楽しんで忘れよう♪」
「「「「「おーーーーー♪」」」」」

そう言うと、皆はホテルに向かって少し早めに歩き出したのだった・・・。


「ふぅ〜、良いお湯ね〜♪」

場所は変わりホテル【嵐山】。そこの露天風呂で、一人の少女が湯に浸かっていた。優しき微笑みに長い髪、3−Aナンバーワンのスタイルの持ち主、那波千鶴である。

「星が綺麗ね・・・・今日は天体観測には最高・・・・・・あらあら?何かしら?」

千鶴が夜空を見ていると、一つの光がこちらに向けて落下してきたのだ。千鶴は慌てる様子もなくホホホと笑顔でいると、その落下物?が湯船に直撃した。

「あらあら・・・・何かしら?」

千鶴は何かが落下した場所を見てみると、そこには・・・・・・ネギに倒され、意識を失った犬上小太郎の姿があった・・・。この出会いは、黄金騎士とは別の系譜を築くもの。銀色に輝く狼の騎士と、その騎士を供に歩む星々に愛されし聖女の出会いだった。


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